天使の国のシャイニー

悠月かな(ゆづきかな)

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天使長サビィ

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「天使長!天使長、サビィ様!」

栗色の髪の少年天使が天使長室にバタバタと駆け込んで来た。

「どうしたのだマロン?そんなに慌てて…もう少し静かにできないのか?」

書類に目を通していたサビィと呼ばれる天使長が、長い髪を耳にかけながら優雅に顔を上げた。

「た、大変失礼致しました。」

マロンが深々と一礼する。

「まぁ…とにかく、このお茶を飲み落ち着きなさい。」

サビィがパチンと指をならすと、目の前にティーポットとカップが現れた。
再び指をならすとティーポットは、フルーティな香りを放つ温かい紅茶を注ぐとパッと消えた。

「さぁ、温かいうちに飲みなさい。」
「あ、ありがとうございます。サビィ様。」

マロンは、甘い香りを放つ、フワフワと浮いているカップを引き寄せたかと思うと、一気に飲み干した。

「おやおや。そんなに一気に飲んだりしたら、せっかくのマレンジュリティーの豊潤な香りが分からないではないか。」

サビィは、優雅に口元を隠しクスクスと笑いながら言った。

マレンジュリとは、天使の国で収穫される果実で、とても甘く香り高い。
オレンジの爽やかさにマンゴーの甘さが加わったような果実である。
そのままで食べても美味しいが、紅茶にするとより香りが強くなる。
リラックスや癒し効果もある、サビィのお気に入りの果実である。

マロンは、マレンジュリティーを飲み干した後、ゆっくりと深呼吸をし姿勢を正した。

「ご報告致します。先程、あの子が生まれました。ハーニーが名付け親となり、シャイニーと名付けられたようです。虹色に輝く翼と髪を持つ子で、生まれたばかりなのに話し始めました。」

クスクス笑っていたサビィはピタリと笑いを止め、マロンをジッと見つめてた。

「いよいよ生まれたか…分かった。報告ご苦労であった。もう下がっても良い。」

マロンは深々と一礼すると、天使長室を後にした。

サビィは、部屋の中央にあるガラス製の水盤に手をかざした。
水面がユラユラと揺れた後、ゆりかごで眠るシャイニーと、そばで見守るハーニーを映し出した。

「やぁ…シャイニー。私はサビィだ。君の誕生を心から嬉しく思う。もう少し大きくなったら、ゆっくり話そうではないか。」

水盤に映し出されたシャイニーは、一瞬笑顔になり頷いたように見えた。

「私の声がもう聞こえたのか…これは驚いた…君の成長が楽しみだ。」

サビィは、嬉しそうにシャイニーを見つめ少し考えた後、1人の天使の姿を思い浮かべた。
すると、ドアの外からすぐに凛々しい声が聞こえてきた。

「お呼びでございますか?サビィ様。」
「ライルか…入りなさい。」
「失礼致します。」

礼儀正しい声と共に、勇ましく美しい天使が入って来た。

「ライル。お前に頼みがある。例のあの子が生まれた事は知っているだろう?」
「はい。シャイニーと名付けられたと聞いております。」

サビィは、ライルの言葉に頷くと更に続けた。

「全天使に伝えてもらいたい。シャイニーを特別扱いせず、他の子供達と同じように接するように。そして…シャイニー本人にも、子供達にも特別だと気付かれないように振舞う事。」

「かしこまりました。しかし、なぜそのような事をされるのですか?」

「シャイニーは、自分の力で進むべき道を見つけ、使命に気付く必要がある。彼自身が他の天使達とは違うかもしれない…そう感じるのは、身も心も成長している必要があるのだ。シャイニー自身が己の身を滅ぼさない為に。」

「承知致しました。すぐに全天使に伝えます。」

深く一礼して下がろうとするライルにサビィは再び声をかけた。

「それから、ハープ奏者のハーニーを呼んでくれないか?」

「はい。承知致しました。」

ライルは再び一礼すると、天使長室を後にした。

「さて…これから忙しくなりそうだ…」

サビィは、繊細で美しい薔薇の彫刻が施された背もたれの高い椅子に深く腰掛け、ハーニーの到着を待つのだった。

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