天使の国のシャイニー

悠月かな(ゆづきかな)

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瞳の中に宿るもの

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「さぁ、ここが私の部屋だ。」

サビィは、8枚の翼が描かれた大きな扉の前で足を止めた。
シャイニーもフレームも今まで見た事がない大きな扉だった。

「さあ、中へどうぞ。」

ライルが扉を開け、サビィとマロンが中に入った。
シャイニーとフレームが、ためらいながらも中に入ると初めて見る部屋に目が釘付けになった。

「わぁ…」

シャイニーは思わず声を上げずにいられなかった。
部屋の両側には背の高い本棚があり、本がギッシリと並んでいた。
部屋の中央にはガラス製の水盤があり、シャイニーが見た事もない不思議な道具も幾つか置いてあった。

(あの道具は何に使うのかな…)

シャイニーは、不思議な道具が気になって仕方がない。

「シャイニーは、私の部屋に興味津々のようだ。」

サビィは、穏やかな笑顔でシャイニーを見つめた。

「あ!ごめんなさい…あんな騒ぎを起こしておいて…失礼しました。」

シャイニーは深々と一礼した。

「シャイニー、様々な事に興味を持つのは素晴らしい事だ。でも、50頭のユニコーンは行き過ぎてしまったね。」
「はい…ごめんなさい。」

シャイニーは、俯きながら謝った。

「シャイニーは、何も悪くありません!全部俺が悪いんです。俺が調子乗ったから…叱るなら俺を叱って下さい。」

フレームは深く頭を下げた。
サビィは、深い溜息をつくと、2人の頭に手を置いた。

「もういいから2人とも頭を上げなさい。そんな事を言われたら叱れないじゃないか。まぁ、君達を叱るのはハーニーに任せる事にしよう。」

サビィは、そう言うと2人にウィンクをした。
シャイニーとフレームは、ホッとして全身から力が抜けていくのを感じた。

「さて、自己紹介が遅れてしまったようだ。私はサビィ。そして、君達の後ろにいる2人はライルとマロン。」

シャイニーは、サビィの名前に聞き覚えがあった。
どこで聞いたのか、しばらく考え込んでいたがハッとした。
前にハーニーがサビィの事を話していたのだ。
とても美しい天使長が、この天使の国を治めていると…
その天使長の名前がサビィだと教えてくれた事を思い出したのだった。

「サビィ様は、天使長様なのですね?」

シャイニーは、サビィの美しい瞳を見つめながら尋ねた。

「そうだよ。シャイニー。ハーニーから聞いたのだね?」

「はい。サビィ様が天使の国を治め守っていると教えてくれました。それに、全天使の行動も把握している事も聞いています。」

「確かに天使達の行動は全て把握している。しかし、今回の君達の事は予測できず驚かされたが。」

ここまで言うと、サビィはライルやマロンに聞こえないようにシャイニーに耳打ちをした。

「ここだけの話しだが、なかなか楽しませてもら
った。」

シャイニーが驚いて顔を上げると、サビィは再びウィンクをした。

「まぁ、同じ事を繰り返さなければ良い。それに、君達はまもなく慧眼《けいがん》の部屋での学びが始まり忙しくなる。ユニコーンを50頭作る時間などないだろう。」



慧眼《けいがん》の部屋は、人間で言えば10歳位に成長した子供が通う学校のような部屋だ。
ここで、天使の国の事や、子供達の成長にとって大切な修業について学ぶ。
成長の部屋を出た天使は、2、3人のグループとなり、協力し合いながら、同じ部屋で共同生活を送る事も学びとなっている。
シャイニーとフレームは、先日この慧眼《けいがん》の部屋についてハーニーから聞いていた。

「慧眼《けいがん》の部屋の事については、ハーニーがら聞いています。それから成長の部屋を出る時が近い事も…」

フレームが力強い瞳でサビィを見つめながら答えると、サビィは、さりげなくフレームの瞳から目を逸らして頷いた。

「その時はとても近い。しっかりと学びなさい。学び終了後はいよいよ修業となる。これからは忙しくなるだろう。」
「サビィ様、修業とはどのようなものなのでしょうか?修業については、ハーニーは教えてくれなくて…」
「シャイニー、悪いが今はその質問については私も答えられない。慧眼《けいがん》の部屋でラフィが教える事となっている。ラフィとは、君達を教える教師だ。」
「ラフィ先生…どんな先生なんだろう…」

シャイニーは、再び環境が変わる事に不安を感じ顔を曇らせた。

「不安なのか?シャイニー。何も心配はいらない。ラフィは、子供と女性の天使達になぜか人気がある。学びで分からない事があるならば、遠慮せずラフィに聞くといい。彼は君達の質問に丁寧に答えてくれるだろう。」

サビィは、シャイニーの不安を宿した瞳を見つめながら優しく言った。

「分かりました。ちょっと不安だけど頑張ります。ハーニーを心配させちゃいけないし…」
「そのハーニーだが…君達がユニコーン騒ぎから、なかなか帰らない事からヤキモキしているようだ。」

サビィはガラス製の水盤を見ながら、シャイニーとフレームを手招きした。
2人が水盤を覗き込むと、ハーニーが成長の部屋の前の廊下を険しい表情で腕を組みながら行ったり来たりしていた。

「どうしよう…僕、あんな表情のハーニーを初めて見たよ…」
「シャイニー、俺もだ…」

2人は、ハーニーに怒られる事を想像し、気まずそうに
お互いを見た。

「さぁ、もうハーニーの所に戻りなさい。ハーニーを安心させておやり。」

サビィの言葉に2人は深く一礼すると、慌てて天使長室を出て行った。
2人の後ろ姿を見送るとサビィは、後ろに控えていたライルを呼んだ。

「ライル、あの2人をどのように思うか?」
「はい…とても対照的な2人です。2人とも瞳にとても力がありますが…シャイニーの瞳はずっと見つめていたいと感じさせます。しかし、フレームの瞳はなぜか目を逸らしたくなります。これには、どのような意味があるのか、私には分かりかねますが…」
「私も、まだ分からないのだ…しかし、なぜか胸騒ぎがしている。私の勘違いだと良いのだが…」
「あの~」

サビィとライルが真剣に話していると、ふいに背後から声がした。

「マロン、どうした?」
「ライル!どうしたじゃないよ。いつも真剣な話しの時は、私は蚊帳の外じゃないか。」

マロンは、軽く頬を膨らませサビィとライルに抗議した。

「あぁ、マロン。これは済まなかった。では、マロンにも改めて聞こう。あの2人をどのように思うか?」

サビィは、マロンに向き合うと改めて質問をした。

「はい。あのですね…私が思うに2人はですね…え~と、とても元気が良い子供達で…それでいて仲睦まじく…そして…そしてですね…」
「もう良い、マロン。相変わらずお前は鈍感だ…」
「いえ!私とて、ちゃんと分かります!あのですね…え~と…」

サビィは、しどろもどろになるマロンを、暫く黙って見ていたが、耐えられず笑い出した。

「クックック…」

肩を揺らすサビィを見て、マロンは唖然とした。

「あ~!サビィ様!笑いましたね!」
「いや…クッ…お、お前がしどろもどろになる姿は…クッ…いつ見ても…クッ…面白い…クックック…」

サビィは、激しく肩を揺らしながら笑い続けている。

「サビィ様!」

マロンは、顔を赤くしながらサビィを軽く睨んだが、その姿を見てサビィは更に声を立て笑った。

「クックック…クックック…」
「サビィさまぁ~」

情けない声で抗議するマロンの肩をライルが優しくポンポンと叩きなだめた。

「ライルは良いよ。いつも重要な役目を任されてるし。私なんてマレンジュリティーの試飲ばかり…」
「マロン。マレンジュリティーの試飲は、とても重要な役目だ。お前のおかげで素晴らしいマレンジュリティーが出来上がった。とても感謝している。」

サビィは、笑いすぎて瞳に滲んだ涙を拭うと、優雅に一礼して見せた。

「サビィ様!おやめ下さい。頭をお上げ下さい。」

マロンが予想だにしないサビィの行動に、慌てふためきオロオロしていると、サビィが再び肩を小刻みに揺らし顔を上げた。

「クッ…マロン…お前は本当…に面白い…クッ…クックック…」
「あ~また、からかわれた…また、涙出されてるし…」
「まぁまぁ。マロン。からかうのは、サビィ様の愛情表現なのだから…」

ライルは不満そうに呟くマロンを、再びなだめるのだった、
サビィは、そんな2人を温かい目で見ながら、時折り訪れる胸騒ぎについて考えていた。

(シャイニーとフレーム…対照的な2人を見ると胸騒ぎがする。私はなぜ、フレームの力を見抜けなかったのか…とにかく、注意をするに越した事はない。彼の瞳の奥に一瞬浮かんだもの…私が見たものは一体なんだったのだろうか…)

サビィは、フレームの強い瞳の奥に見たものの正体を掴めずにいたのだった…

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