天使の国のシャイニー

悠月かな(ゆづきかな)

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ラフィが見せた5つの惑星

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(昨日は、あれから大変だったな…)

シャイニーは、慧眼けいがんの部屋で自分の席に着き、ぼんやりと考えていた。
昨日、かくれんぼ終了後にラフィと共に慧眼けいがんの部屋に戻ると、子供達に囲まれ矢継ぎ早に質問されたのだった。

「シャイニー、どこに隠れてたの?」
「あんなに長い時間、よく見つからなかったね。」
「隠れ場所を自分で作ったの?」

口々に質問され、シャイニーは答える暇もなかった。

「ねぇねぇ。黙ってないで教えてよ。」
「ブランカ城って、そんなに隠れる所ないよね?」
「教えてよ、シャイニー。」

シャイニーは皆に押され、もみくちゃにされたのだった。

「え!ちょっと待って。わ!押さないで~」

見かねたラフィがシャイニーを助け出した。

「はいはい。シャイニーが困ってるから、みんな離れて~」

子供達が離れると、ラフィはグッタリと床に座り込んでいるシャイニーに声を掛けた。

「シャイニー、大丈夫かい?」
「まぁ、何とか…」

そう答えたシャイニーの顔は引きつっていた。


(あの後、ラフィ先生が上手くごまかしてくれたから助かったよ。)

「シャイニー、ボーッとしてどうしたんだ?」

ぼんやりしているシャイニーの顔の前で、手をヒラヒラさせながらフレームが尋ねた。

「フレーム…昨日の事を思い出してたんだ。大変だったな~って。」
「まぁ…あれは大変だったな。もみくちゃにされてたし。」
フレームが、その時を思い出しウンウンと頷いている。
「でも、シャイニー上手く隠れたよな~。壁の中にどうやって隠れたんだ?」
「え?えっと…自分でも良く覚えてないんだ。何だか必死になってて…アハハ…」

昨日、子供達にラフィは壁の中にシャイニーは隠れていたと説明していた。

「フーン…」

(今の説明でフレーム絶対納得してない。でも、きっと"地球に続く扉"の事は話さない方が良いんだろうな…ラフィ先生、みんなに言わなかったし。う~ん…どうしよう…)

シャイニーがあれこれと考えていると、爽やかな風が吹き、ラフィが教壇に現れた。

「やぁ!みんな、おはよう。学びを始めるから、席に着いてね。」

(ラフィ先生!来てくれて良かった~)

フレームに、どう話そうかと困っていたシャイニーは、ラフィが現れてホッとしていた。

「今日の学びは、またこれを使うよ。」

子供達が席に着いた事を確認したラフィは、どこからともなく百科事典を出した。

「今日、君達に見てもらうのは…」

ラフィは、百科事典をパラパラとめくると、途中でピタリと手を止めた。

「え~と…まずはこれ。」

最初に出して見せたものは、緑色の球体だった。

「これは惑星だよ。この間、君達が見たいものを幾つか出したけど、その時に惑星に生息する生き物を出したりもしたよね。この惑星は、フレームに出したバウチーという虫が生息しているミルリー星だよ。惑星は、実際はとても大きいから、かなり小さくしているけどね。」

子供達の顔程の大きさのミルリー星は、キラキラと輝きながらクルクルと回っている。

「ミルリー星以外にも惑星はあるから、順番に出していくからね。」

ラフィは再び百科事典をめくると、次々に惑星を出していった。

「宇宙には、数えきれない程の惑星があるけど、今日は主な惑星だけ出していくよ…はい。この惑星で終わり。」

ラフィが最後に出した惑星は、青く美しい地球であった。

「あ!地球だ!」

地球を見た瞬間、シャイニーは思わず声を上げた。

「シャイニー、そうだよ地球だ。」

ラフィは、シャイニーを見てニッコリと笑った。

「それじゃ、順番に惑星の説明をしていくよ。」

ラフィがパチンと指を鳴らすと、惑星が横一列に並んだ。
緑色のミルリー星、赤い惑星、黄色の惑星、紫色の惑星、そして地球の5つの惑星がキラキラと輝きながらクルクルと回っている。

「こちら側からミルリー星、赤い惑星はレイニー星、黄色の惑星はリクエ星、紫色の惑星はラメール星。そして、この青と白のコントラストが美しい惑星が地球だよ。」

ラフィが再び指を鳴らすと、ミルリー星が回りながら子供達の頭上をユラユラと移動し始めた。

「今、君達の上をミルリー星がゆっくりと移動してるよ。自分の所に来たら良く見てごらん。このミルリー星は、緑豊かな惑星なんだ。植物が多いから雨も多く、様々な生き物が生息している。フレームに出した小さな虫バウチーは、ほんの一例だよ。そして、この惑星には僕達の姿に似た人類が住んでいる。人類は、人間や人とも呼ばれていて、この5つの惑星全てに存在しているよ。それぞれの惑星によって特徴も違いもあるけどね。ミルリー星には、比較的大型の人々が住んでいる。男性も女性も僕よりも大きいよ。」

子供達は、頭上を移動していくミルリー星を見ながら、ラフィの話しを聞いていた。

「ラフィ先生よりも大きいなんて凄いな~」
「僕達と似てる人って、どんな感じだろう?」

子供達が目を輝かせながら話していると、ラフィが更に説明を続けた。

「ミルリー星の人々は、おおらかな性格なんだ。植物や動物を大切にし上手く共存しているよ。」

ラフィが話し終えると、ミルリー星はちょうど子供達の頭上を一回りしラフィの元に帰って来た。
すると、入れ替わるように赤い惑星のレイニー星が移動し始めた。

「続いてはレイニー星だよ。この惑星は情熱の星と言っても良いかな。この惑星は、自然環境がとても厳しく、ほぼ砂漠なんだ。この赤色は砂漠の色だよ。砂漠は、砂や岩石が多く極端に雨が少ない。植物も少ないけど、ある一部の地域だけ緑や水辺もある。その地域に人間が住んでいるんだ。人々は、過酷な環境にもめげず懸命に生きている。彼らはレイニー星をとても愛している。情熱の惑星と言ったのは、人々は愛を大切にし常にお互いを思い合い愛を語り合うんだ。レイニー星の人々は小柄だよ。大人でも、君達子供も同じくらいの背丈しかない。」

子供達は、移動するレイニー星を眺めながら興味深そうに聞いている。

「次は、黄色の惑星リクエ星だよ。この黄色はガスの色で、このガスがリクエ星を守っているよ。この惑星にも様々な植物や生き物が生息している。生活する為に比較的いい環境が整っている。ちょっと変わっているのは、植物や生き物が黄色のものが多い。住んでいる人々の髪の色も黄色で、肌の色も少し黄色がかっているんだ。背丈は僕達大人の天使と同じくらいで、とても明るく、いつも笑顔で過ごしている人々だよ。」

リクエ星が戻り、次はラメール星が移動し始めた。
良く見ると、この惑星には輪がある。

「ラメール星の紫色もガスの色なんだ。やはり、このガスがラメール星を守っている。この惑星だけが輪があるのが分かるかい?ラメール星は、この5つの惑星の中では一番文明が発達していて、現時点ではラメール星が、宇宙に存在している全ての惑星の中心となっている…と言っても良いくらいなんだ。ラメール星に住む人々は、とても穏やかで未来を予想する力を持っている。その力で、文明を発達させてきたんだ。外見は美しい人々が多く、髪の色は銀色であったり薄い紫色で、背丈は僕達天使とほぼ同じだよ。」

ラメール星がラフィの元に戻ると、最後に地球が移動し始めた。
子供達は、地球の美しさに目を奪われ一斉に溜め息を吐いた。

「地球は綺麗だね~」
「どうして、こんな色をしているんだろう?」

子供達は、興味津々に地球を眺めウットリとしていた。

「最後は地球だよ。地球のこの美しい青と白のコントラストだけど…青い色は海なんだ。海は、塩分が含まれた水で地球の約7割を占めているよ。海にはたくさんの生物が生息している。また、白い色は雲の色なんだ。そして、陸地には植物や様々な生物が生息している。資源に恵まれ、たくさんの命が育まれている豊かな惑星だよ。地球の人々も僕達天使と同じくらいの背丈なんだ。この5つの惑星の中では一番人種が多くて、居住地域により文化や言葉が違ったり、肌や髪の色が違ったりする。地球には、様々な人々がたくさん住んでいるんだよ。そして、地球は大きな可能性を秘めた惑星でもあるんだ。」
「可能性?」
「どんな可能性があるんですか?」

子供達は、首を傾げながらラフィに尋ねた。

「実は、地球には乗り越えなくてはならない課題が幾つもあるんだ。それらを乗り越えたら、素晴らしい未来が待っているんだよ。」

ラフィが話し終えると、地球はラフィの元に戻った。

「さて、この5つの惑星をなぜ君達に見せたかと言うと…君達には、この5つの惑星の中から好きな惑星を選び、その惑星へ修業の旅に出てもらうからなんだ。」
「もう、修業に行くんだ…」
「不安だな…」
「ラフィ先生、修業は何人かのグループで行くんですか?」

修業は、まだ先の事だと思っていた子供達は驚いた。

「いや、修業は1人で行くんだ。」

ラフィの言葉に、皆ざわめいた。

「1人なんて無理だよ。」
「1人は怖いよ~」
「何か問題があった時はどうするの?」

子供達の顔には不安の色が滲んでいる。

「もちろん、僕やサビィが修業の間はサポートするよ。いつでも僕達に繋がるようになっているから、心配しなくて大丈夫だよ。どの惑星にするかは、自分で考えて決めるんだ。友達と相談しないで自分で考えて決めるんだよ。」

子供達は、ラフィの話しを聞いてもまだ不安そうに顔を見合わせいる。

「僕の説明だけでは決められないだろうから、図書室でそれぞれの惑星について調べると良いよ。詳しく書かれている本が何冊もあるからね。それに、僕やサビィに聞いても良いよ。いつでも相談に乗るからね。」

ラフィは、笑顔で、子供達の顔を1人1見ながら言葉を続けた。

「君達が不安なのは良く分かるよ。サビィや僕も修業の旅に出る時は不安だったからね。」
「え!サビィ様やラフィ先生も不安だったんですか?」
「信じられない…」
「サビィ様やラフィ先生は、完璧な天使なのに…」

子供達は、ラフィの言葉を聞いて驚きを隠せなかった。

「サビィも僕も子供だったからね。それはそれは不安で修業の旅に出る前日は眠れなかったよ。それから、サビィも僕も決して完璧ではないよ。まだまだ学ぶべき事もあるしね。もっと成長しなければならないとも思っているよ。」
「サビィ様やラフィ先生も不安で眠れなかったなんて…」
「ラフィ先生でも、まだ学ぶ事があるんだ…」
「僕達は、一体どれだけまなばないもいけないんだろう…」
「何だか今日は色々と驚いた。」

子供達は様々な感情を言葉にしていた。

「僕達天使は、ずっと学んでいくんだよ。その学びは様々な経験や気付きからもたらされる。君達が、この慧眼けいがんの部屋で学んでいる事も経験だし、僕が君達に教えている事も僕にとっては経験。そして、君達がこれから修業の旅に出る事も大きな経験となるんだよ。サビィが天使長に就いている事も経験なんだ。」

ラフィは、一旦言葉を切り子供達を見渡した。
皆、真剣な顔で聞き入っている。
ラフィは、笑顔を向けると更に言葉を続けた。

「修業に行く惑星で何をするのかは、君達が惑星を決めた後で話すからね。これから1週間で、どの惑星にするか決めるんだよ。1週間後、この慧眼けいがんの部屋でどの惑星に決めたのか、それから決めた理由を発表してもらうからね。図書室で調べたり、僕やサビィに相談したりして良く考えるんだ。図書室の利用の仕方は、以前教えた通りだよ。図書室の本は部屋で読む事もできるからね。」
「は~い。」

皆、まだ不安が残る表情で返事をした。
そんな子供達を見て頷くと、ラフィは百科事典を開き、惑星を元のページに戻した。

「僕もサビィも、しっかりサポートするからあまり心配しなくて大丈夫だよ。それじゃ、今日の学びは終わりにするね。早速、惑星について調べてごらん。遠慮せず僕やサビィに、いつでも相談するんだよ。」
「は~い。」

皆が再び返事をするとラフィは笑顔で頷き、慧眼けいがんの部屋からフッと姿を消した。
子供達は暫くザワザワしていたが、1人また1人と姿を消していった。

「さて、シャイニー。今からどうする?」

フレームが、期待と不安が入り混じった複雑な表情で話し掛けてきた。

「う~ん…図書室に行ってみようかな…惑星を決めるまで、あまり時間もないし。」
「そうだよな…俺も図書室に行ってみるか~」

2人は顔を見合わせると頷き、図書室へと向かって行った。

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