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琴の両親の想い
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その日の夜、シャイニーはラフィとハーニーと共に琴の枕元に立っていた。
「良く寝てる…琴ちゃん、ちょっとごめんね。」
寝ている琴の額にシャイニーが手を当てると、白いモヤが現れた。
「ラフィ先生、ハーニー、行ってきます。」
「僕達も行かなくて大丈夫かい?」
「はい。大丈夫です。そこで見守っていて下さい。」
シャイニーの瞳には一切の迷いもなく、決意の色が表れていた。
「うん。分かったよ。僕達はここで見守っているから行っておいで。」
「シャイニー、行ってらっしゃい。」
シャイニーは力強く頷くと、白いモヤの中に入っていった。
「え~と…琴ちゃんはどこかな…?」
キョロキョロと辺りを見渡すと、花畑の中にいる琴を見つけた。
「いたいた…琴ちゃ~ん!」
呼びかけると、花々の中から琴が顔を出した。
「あ!シャイニー!見て見て、凄く綺麗な花畑なんだよ。小麦も喜んでるよ。」
シャイニーが花畑の中に入って行くと、琴の足元に頭に花冠を乗せられた小麦が、ちんまりと座っていた。
「お花で冠を作って乗せてあげたの。ね!小麦喜んでるでしょ?」
しかし、小麦に喜んでいる様子は見られず、明らかに不貞腐れている。
「小麦、どうしたの?琴ちゃんが冠作ってくれたんでしょ?」
小麦は両手を上げ、やれやれという表情でシャイニーを見た。
「あのね…僕は男の子!花冠は女の子が被るものでしょ?」
シャイニーは、小麦の仕草がおかしくてクスクス笑った。
「でも、凄く可愛いし似合ってるよ。琴ちゃんも喜んでるし。」
「そうなんだよ。琴ちゃんが喜んでるから、外す事ができなくてさ~僕を見てニコニコ笑う琴ちゃんが可愛いんだ…」
「小麦!今度はネックレス作ったよ。首にかけてあげるね。」
「え!ネックレスは、さすがに勘弁してほしいよ。シャイニー助けて~」
小麦は、慌ててシャイニーの後ろに隠れた。
「琴ちゃん、花冠だけで良いって小麦が言ってるよ。」
シャイニーがクスクス笑いながら言うと、隠れていた小麦が足の間から顔を出し激しくウンウンと頷いた。
「そっか~それじゃ、シャイニーにあげる!ちょっと小さいけど…」
「え!いいの?」
琴が頷きながら、小さなネックレスをシャイニーに渡した。
「ありがとう…あ!見て琴ちゃん。僕の手首にピッタリだよ。」
シャイニーは、ニッコリと笑いながら手首に付けたネックレスを見せた。
「本当だ!それじゃ、シャイニーのブレスレットにしてね。」
琴は嬉しそうにシャイニーを見た。
「うん。大切にするからね。あのね、琴ちゃん…実は、会わせたい人達がいるんだ。」
「琴に会わせたい人達?う~ん…誰だろう?」
琴は腕を組み首を傾げ考えていたが、全く思い付かなかった。
「小麦、僕の所においで。今から琴ちゃんは、大切な人達と会うからね。」
シャイニーが手を差し出すと、小麦はソッと手の平に乗った。
「琴…」
その時、シャイニーの後ろから懐かしい声が聞こえてきた。
「え…ママ…パパ…」
琴の目の前には、事故で亡くなったはずの両親が立っていた。
シャイニーは3人を見守る為に、その場から静かに離れた。
「嘘でしょ…?ママもパパも琴を残して死んじゃったよ…」
琴の瞳から涙が溢れ出し、頬を伝いハラハラと落ちていった。
「琴…」
「琴ちゃん…」
両親は琴に駆け寄り、ギュッと抱き締めた。
「琴ちゃん…1人にしちゃって本当にごめんね。」
「ママ…パパ…こ…琴…ヒック…寂し…かっ…たよ。」
琴は泣きじゃくりながら2人にしがみ付いた。
温かい両親の体温を琴は全身で感じていた。
(ママもパパも温かい…)
「琴…本当にごめんな…」
「ママ…パパ…これから、また琴と一緒にいてくれるの?」
琴は涙を拭いながら両親を見上げると、2人は顔を見合わせ頷いた。
そして、母親がしゃがみ琴の手を取ると、ジッと目を見つめながら言った。
「琴ちゃん…良く聞いて。ママもパパも、もう琴ちゃんと一緒に暮らす事はできないの…」
「ママもパパも死んじゃったから…?」
琴の瞳から再び涙が溢れ出すと、母親は目を伏せ頷いた。
「ママもパパも、琴ちゃんのそばにいたい…でも、それは無理なの…琴ちゃんが凄く悲しくて寂しかった事は分かってるわ…ずっと空から見ていたのよ。」
「空から見てたの…?」
「そうよ…琴ちゃん。ママとパパは空から見ているの。琴ちゃんが悲しみや寂しさから塞ぎ込んでいて、本当に心配だった…急にママとパパがいなくなって…凄く傷付いていて…でも、どうする事もできなかった…」
母親の瞳から涙が溢れ出し頬を伝っていくと、琴が手を伸ばし涙を優しく拭った。
「ママ…泣かないで…せっかくママと会えたんだよ。悲しい顔じゃなくて笑顔が見たいよ。」
「琴ちゃん…」
「ママ、パパ…ごめんね。もう一緒にいられないのは分かってるんだ…久し振りにママとパパの顔を見たらワガママ言いたくなっちゃった。」
琴は涙を滲ませながらニコッと笑い両親を見た。
「琴ちゃん…」
「琴…」
「琴なら大丈夫だよ。じぃじやばぁばもいるし、小麦もいる。それに、天使のシャイニーも来てくれたんだよ。ママやパパと一緒にいられないのは、やっぱり寂しいけど…空から琴を見てくれてるんでしょ?」
「ええ…ずっと琴ちゃんを見てるわ。」
「うん。パパも琴を空から見てるぞ。」
「たまに会いに来てくれる?」
両親は再び顔を見合わせると力強く頷き琴を見た。
「琴ちゃん、ママもパパも琴ちゃんに会いに来るわ。そうね…春は優しい春風になって、桜の花を降らせましょう。夏はツバメになって、あなたの周りをクルクル飛ぶわ。秋は赤く色付いたモミジになって、ハラハラと舞いながら琴ちゃんを包みましょう。冬は…」
「冬は雪の結晶になって、琴の服に舞い降りるぞ。」
父親が母親の言葉を引き継ぐと、琴の頭をワシャワシャと乱暴に撫でた。
「わっ!もう!パパは相変わらず雑なんだから。」
「ごめん、ごめん。琴にまた会えたから嬉しくて力が入っちゃったよ。」
父親はバツが悪そうに笑うと母親を見た。
母親は頷くと、再び琴をギュッと抱き締めた。
「琴ちゃん…ママとパパはもう戻らないといけないの。ずっと、一緒にいたいけど…ごめんね。」
「良いよ。琴なら大丈夫だから。ずっと空から見ててね。」
母親は、更に強く琴を抱き締めてからソッと体を離した。
「琴ちゃん、これを受け取ってほしいの。」
気付けば、母親の手には空色のリボンが握られていた。
「このリボンはね…天使が空を切り取って作ったリボンなの。」
「え!空って切り取れるの?」
琴が驚き目を見開くと、母親はクスクス笑った。
「あらあら、そんなに見開いたら目が落ちちゃいそうよ。そうなのよ、天使は空を切り取れるのよ。このリボンはね、とっても不思議なリボンなの。見ててね。」
母親が手の平に空色のリボン広げて置くと、白いフワフワしたものが現れゆっくりと動き出した。
「琴ちゃん、この白いものは雲なのよ。」
「え!雲なの?凄い!」
「それだけじゃないの。このリボンは夕方になると、夕焼け色に変わり、夜には星空が映し出されるの。」
「わ~!凄いリボンだね~」
琴が目をキラキラ輝かせると、母親は琴の頭を撫でながら優しい笑顔で言った。
「このリボンをママとパパだと思ってね。」
「うん…分かった。ありがとう…このリボン、大切にするね。」
琴は母親からリボンを受け取ると、折り畳み優しく握った。
「琴…パパとママは戻るからな…」
父親は名残惜しそうに、琴の頭を再びワシャワシャと撫でると最後に琴を抱き締めた。
「じぃじとばぁばと仲良くしてね…さよなら、琴ちゃん…」
「琴、元気でな…」
2人は、琴を見つめながらスーッと消えていった。
「ママ、パパ…バイバイ…」
琴は小さく呟くと、両親の温もりを確かめるように、空色のリボンを頬に当てるのだった。
「良く寝てる…琴ちゃん、ちょっとごめんね。」
寝ている琴の額にシャイニーが手を当てると、白いモヤが現れた。
「ラフィ先生、ハーニー、行ってきます。」
「僕達も行かなくて大丈夫かい?」
「はい。大丈夫です。そこで見守っていて下さい。」
シャイニーの瞳には一切の迷いもなく、決意の色が表れていた。
「うん。分かったよ。僕達はここで見守っているから行っておいで。」
「シャイニー、行ってらっしゃい。」
シャイニーは力強く頷くと、白いモヤの中に入っていった。
「え~と…琴ちゃんはどこかな…?」
キョロキョロと辺りを見渡すと、花畑の中にいる琴を見つけた。
「いたいた…琴ちゃ~ん!」
呼びかけると、花々の中から琴が顔を出した。
「あ!シャイニー!見て見て、凄く綺麗な花畑なんだよ。小麦も喜んでるよ。」
シャイニーが花畑の中に入って行くと、琴の足元に頭に花冠を乗せられた小麦が、ちんまりと座っていた。
「お花で冠を作って乗せてあげたの。ね!小麦喜んでるでしょ?」
しかし、小麦に喜んでいる様子は見られず、明らかに不貞腐れている。
「小麦、どうしたの?琴ちゃんが冠作ってくれたんでしょ?」
小麦は両手を上げ、やれやれという表情でシャイニーを見た。
「あのね…僕は男の子!花冠は女の子が被るものでしょ?」
シャイニーは、小麦の仕草がおかしくてクスクス笑った。
「でも、凄く可愛いし似合ってるよ。琴ちゃんも喜んでるし。」
「そうなんだよ。琴ちゃんが喜んでるから、外す事ができなくてさ~僕を見てニコニコ笑う琴ちゃんが可愛いんだ…」
「小麦!今度はネックレス作ったよ。首にかけてあげるね。」
「え!ネックレスは、さすがに勘弁してほしいよ。シャイニー助けて~」
小麦は、慌ててシャイニーの後ろに隠れた。
「琴ちゃん、花冠だけで良いって小麦が言ってるよ。」
シャイニーがクスクス笑いながら言うと、隠れていた小麦が足の間から顔を出し激しくウンウンと頷いた。
「そっか~それじゃ、シャイニーにあげる!ちょっと小さいけど…」
「え!いいの?」
琴が頷きながら、小さなネックレスをシャイニーに渡した。
「ありがとう…あ!見て琴ちゃん。僕の手首にピッタリだよ。」
シャイニーは、ニッコリと笑いながら手首に付けたネックレスを見せた。
「本当だ!それじゃ、シャイニーのブレスレットにしてね。」
琴は嬉しそうにシャイニーを見た。
「うん。大切にするからね。あのね、琴ちゃん…実は、会わせたい人達がいるんだ。」
「琴に会わせたい人達?う~ん…誰だろう?」
琴は腕を組み首を傾げ考えていたが、全く思い付かなかった。
「小麦、僕の所においで。今から琴ちゃんは、大切な人達と会うからね。」
シャイニーが手を差し出すと、小麦はソッと手の平に乗った。
「琴…」
その時、シャイニーの後ろから懐かしい声が聞こえてきた。
「え…ママ…パパ…」
琴の目の前には、事故で亡くなったはずの両親が立っていた。
シャイニーは3人を見守る為に、その場から静かに離れた。
「嘘でしょ…?ママもパパも琴を残して死んじゃったよ…」
琴の瞳から涙が溢れ出し、頬を伝いハラハラと落ちていった。
「琴…」
「琴ちゃん…」
両親は琴に駆け寄り、ギュッと抱き締めた。
「琴ちゃん…1人にしちゃって本当にごめんね。」
「ママ…パパ…こ…琴…ヒック…寂し…かっ…たよ。」
琴は泣きじゃくりながら2人にしがみ付いた。
温かい両親の体温を琴は全身で感じていた。
(ママもパパも温かい…)
「琴…本当にごめんな…」
「ママ…パパ…これから、また琴と一緒にいてくれるの?」
琴は涙を拭いながら両親を見上げると、2人は顔を見合わせ頷いた。
そして、母親がしゃがみ琴の手を取ると、ジッと目を見つめながら言った。
「琴ちゃん…良く聞いて。ママもパパも、もう琴ちゃんと一緒に暮らす事はできないの…」
「ママもパパも死んじゃったから…?」
琴の瞳から再び涙が溢れ出すと、母親は目を伏せ頷いた。
「ママもパパも、琴ちゃんのそばにいたい…でも、それは無理なの…琴ちゃんが凄く悲しくて寂しかった事は分かってるわ…ずっと空から見ていたのよ。」
「空から見てたの…?」
「そうよ…琴ちゃん。ママとパパは空から見ているの。琴ちゃんが悲しみや寂しさから塞ぎ込んでいて、本当に心配だった…急にママとパパがいなくなって…凄く傷付いていて…でも、どうする事もできなかった…」
母親の瞳から涙が溢れ出し頬を伝っていくと、琴が手を伸ばし涙を優しく拭った。
「ママ…泣かないで…せっかくママと会えたんだよ。悲しい顔じゃなくて笑顔が見たいよ。」
「琴ちゃん…」
「ママ、パパ…ごめんね。もう一緒にいられないのは分かってるんだ…久し振りにママとパパの顔を見たらワガママ言いたくなっちゃった。」
琴は涙を滲ませながらニコッと笑い両親を見た。
「琴ちゃん…」
「琴…」
「琴なら大丈夫だよ。じぃじやばぁばもいるし、小麦もいる。それに、天使のシャイニーも来てくれたんだよ。ママやパパと一緒にいられないのは、やっぱり寂しいけど…空から琴を見てくれてるんでしょ?」
「ええ…ずっと琴ちゃんを見てるわ。」
「うん。パパも琴を空から見てるぞ。」
「たまに会いに来てくれる?」
両親は再び顔を見合わせると力強く頷き琴を見た。
「琴ちゃん、ママもパパも琴ちゃんに会いに来るわ。そうね…春は優しい春風になって、桜の花を降らせましょう。夏はツバメになって、あなたの周りをクルクル飛ぶわ。秋は赤く色付いたモミジになって、ハラハラと舞いながら琴ちゃんを包みましょう。冬は…」
「冬は雪の結晶になって、琴の服に舞い降りるぞ。」
父親が母親の言葉を引き継ぐと、琴の頭をワシャワシャと乱暴に撫でた。
「わっ!もう!パパは相変わらず雑なんだから。」
「ごめん、ごめん。琴にまた会えたから嬉しくて力が入っちゃったよ。」
父親はバツが悪そうに笑うと母親を見た。
母親は頷くと、再び琴をギュッと抱き締めた。
「琴ちゃん…ママとパパはもう戻らないといけないの。ずっと、一緒にいたいけど…ごめんね。」
「良いよ。琴なら大丈夫だから。ずっと空から見ててね。」
母親は、更に強く琴を抱き締めてからソッと体を離した。
「琴ちゃん、これを受け取ってほしいの。」
気付けば、母親の手には空色のリボンが握られていた。
「このリボンはね…天使が空を切り取って作ったリボンなの。」
「え!空って切り取れるの?」
琴が驚き目を見開くと、母親はクスクス笑った。
「あらあら、そんなに見開いたら目が落ちちゃいそうよ。そうなのよ、天使は空を切り取れるのよ。このリボンはね、とっても不思議なリボンなの。見ててね。」
母親が手の平に空色のリボン広げて置くと、白いフワフワしたものが現れゆっくりと動き出した。
「琴ちゃん、この白いものは雲なのよ。」
「え!雲なの?凄い!」
「それだけじゃないの。このリボンは夕方になると、夕焼け色に変わり、夜には星空が映し出されるの。」
「わ~!凄いリボンだね~」
琴が目をキラキラ輝かせると、母親は琴の頭を撫でながら優しい笑顔で言った。
「このリボンをママとパパだと思ってね。」
「うん…分かった。ありがとう…このリボン、大切にするね。」
琴は母親からリボンを受け取ると、折り畳み優しく握った。
「琴…パパとママは戻るからな…」
父親は名残惜しそうに、琴の頭を再びワシャワシャと撫でると最後に琴を抱き締めた。
「じぃじとばぁばと仲良くしてね…さよなら、琴ちゃん…」
「琴、元気でな…」
2人は、琴を見つめながらスーッと消えていった。
「ママ、パパ…バイバイ…」
琴は小さく呟くと、両親の温もりを確かめるように、空色のリボンを頬に当てるのだった。
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