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苦悩
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気付けば、私は自室に戻ってきた。
(どのように戻って来たのか…記憶がない…)
私は、溜め息をつくとその場にしゃがみ込んだ。
「サビィ?そんな所に座ってどうなさいましたの?」
クルックが怪訝そうに声を掛けてきた。
「いや…何でもない…」
どうにか立ち上がりソファに座る。
(ブランカの悩みを増やしてしまった…)
私は、告白した事を後悔していた。
本当は、ラフィとブランカを見守るつもりだった。
ブランカが幸せならそれでいい…
そう思っていた。
しかし、ブランカの辛そうな顔を見て自制できなくなってしまった。
「早まったか…」
私は、思わず頭を抱えた。
「サビィ、何を早まりましたの?」
(やはり、自分の気持ちを抑えるべきだったか…)
「サビィ…何かありましたわね?)
(自制できない事など今まで皆無であったが…)
「サビィ?私の声が聞こえませんの?」
(ブランカの事となると、私は自分を見失ってしまう…)
「サビィ!サビィ!サービィーーー!」
クルックが、ガタガタと体を揺らしながら大声を上げている。
「クルック…先程から何を騒いでいる?」
私は、一旦思考を止めクルックを見た。
「何って…私が声を掛けていますのに無視するからですわ」
「無視はしていない。聞こえないふりをしただけだ」
「それを無視と言うのですわ!」
「あ~分かった、分かった」
私は、クルックをあしらうと指を鳴らした。
ティーポットとカップが現れ、マレンジュリテイーを注いでいく。
(ブランカ…悩んでいないと良いが…いや、悩んでいるに違いない…やはり早まったか…)
「サビィ!マレンジュリテイーが溢れてますわ!」
クルックの声で我に返ると、マレンジュリテイーが溢れ、テーブルだけではなく床までこぼれていた。
私は、慌てて再び指を鳴らしティーポットとカップを消した。
「私とした事が…」
あまりの惨状にがっくりと肩を落とした。
私は深い溜め息をつくと、ノロノロとテーブルと床を拭き始める。
今の私は、まさに心ここに在らずである。
「サビィ…大丈夫ですか?」
クルックが遠慮がちに声を掛けてきた。
「問題ない」
私は平静を装い床を拭いた。
「やっぱり何かありましたわね?ブランカ…ですか?」
クルックの指摘に動揺した私は、テーブルに頭を打ち付けた。
「………」
あまりの痛みに、頭を抱えうずくまる。
「やはり、ブランカの事でしたのね…暫く、忙しいようでしたので、その事には触れずにきましたが…何か進展がありましたのでしょう?素敵ですわ…」
「進展などしていない。その逆だ」
「逆…とは…どういう事ですの?」
触れて欲しくない事に触れられ、私は口をつぐむ。
「ブランカと喧嘩でもしましたの?」
「いや…していない」
「それなら…分かりましたわ!ブランカに振られましたのね?」
クルックの言葉が、私の胸に突き刺さる。
「いや…振られたわけではないが…」
「振られたわけではない…もしかして…サビィはブランカに告白されたのですわね?まぁ…素敵ですわ…」
クルックは、うっとりとあらぬ方向を見ている。
「素敵な事などない…かえってブランカを悩ませてしまった…」
私は絞り出すような声で呟いた。
「彼女は…ラフィのことが好きなのだ…」
私の胸が張り裂けそうに痛む。
「そうでしたの…でも。大丈夫ですわ!サビィの良さは私が一番理解したます!例え、ブランカに振られたとしましても大丈夫です」
「クルック…だから、まだ振られていないと言っているだろう」
「大丈夫です!サビィ。落ち込む必要はありません!私がいますわ。大丈夫!」
クルックは、私の言葉など全く耳に入っていないようだ。
「大丈夫ですわ!大丈夫…」
胸を張り、ずっと同じ言葉を繰り返している。
彼女なりの励ましなのだろう。
「大丈夫…私がいます」
呪文のように、同じ言葉を繰り返すクルックを見ていると、胸の痛みがほんの少しだけ引いたような気がしたのだった。
「全く…君はは失礼な奴だ」
「あら?何を仰いますの?私はサビィを思って言っておりますのよ」
「それに、お節介でもある」
私は溜め息混じりに呟いた。
「私は、サビィのお世話係ですのよ」
クルックは、胸を張りながら言った。
「いや、頼んでない」
「あら?照れなくても良いですのよ」
「照れていない。私は、世話係などいなくても問題ない」
「………」
突然、クルックが押し黙る。
いつもなら、猛烈な勢いで言い返してくるはずだ。
「クルック?突然、黙ってどうした?」
「私は、心配なのです…サビィは、確かに素晴らしい天使です。優秀ですし…天使の中でも際立って美しいです。でも、完璧であるが故に近寄り難いイメージがあります。そのせいか、サビィは1人でいる事が多くて…私はヤキモキしてましたのよ」
クルックは、そう言うと俯いた。
確かに私は1人でいる事が多かった。
他の天使から距離を置かれているとも感じていた。
しかし、それでも良いとも思っていた。
1人でいる方が楽だったからだ。
「でも…最近のサビィはラフィやブランカと一緒にいる事が多く、安心していましたの。やっと、サビィの事を理解してくれる天使が現れたと思っていましたのよ。なのに…」
俯いていたクルックは、そこまで言うと私を見た。
「なのに…振られてしまいましたら、これからブランカとギクシャしてしまうではありませんか!」
「いや…だから、まだ振られては…」
「ブランカがラフィの事が好きなのでしたら、振られたのも同然ですわ!」
ハッキリとクルックに指摘され、私は胸にナイフが刺さったような痛みが走る。
「クルック…そんなにハッキリと…」
あまりの痛みに胸を押さえた瞬間、クルックが声高らかに叫んだ。
「明日の学びに、私もお供しますわ!」
「…は?なぜ、そうなる?」
「サビィ…私がお供すれば、ブランカとギクシャクしても淋しくありませんわ!これは、名案です!いっそのこと、これから毎日お供しますわ!」
「クルック…それは断る。学びで騒がれたら子供達も集中できない」
「大丈夫です。私は温かく子供達を見守りますわ!決めました!サビィが何と言おうとお供しますわ!」
クルックは、鞭を体の前で組みあらぬ方向を見ている。
「クルック…自分に酔いしれるな」
「名案ですわ…私がサビィを支えますの…」
クルックは、私の声が聞こえないのかうっとりとしている。
こうなると、クルックに私の声は届かない。
明日は、クルックが寝ている間にこっそりと出掛けようと心に決めたのだった。
(どのように戻って来たのか…記憶がない…)
私は、溜め息をつくとその場にしゃがみ込んだ。
「サビィ?そんな所に座ってどうなさいましたの?」
クルックが怪訝そうに声を掛けてきた。
「いや…何でもない…」
どうにか立ち上がりソファに座る。
(ブランカの悩みを増やしてしまった…)
私は、告白した事を後悔していた。
本当は、ラフィとブランカを見守るつもりだった。
ブランカが幸せならそれでいい…
そう思っていた。
しかし、ブランカの辛そうな顔を見て自制できなくなってしまった。
「早まったか…」
私は、思わず頭を抱えた。
「サビィ、何を早まりましたの?」
(やはり、自分の気持ちを抑えるべきだったか…)
「サビィ…何かありましたわね?)
(自制できない事など今まで皆無であったが…)
「サビィ?私の声が聞こえませんの?」
(ブランカの事となると、私は自分を見失ってしまう…)
「サビィ!サビィ!サービィーーー!」
クルックが、ガタガタと体を揺らしながら大声を上げている。
「クルック…先程から何を騒いでいる?」
私は、一旦思考を止めクルックを見た。
「何って…私が声を掛けていますのに無視するからですわ」
「無視はしていない。聞こえないふりをしただけだ」
「それを無視と言うのですわ!」
「あ~分かった、分かった」
私は、クルックをあしらうと指を鳴らした。
ティーポットとカップが現れ、マレンジュリテイーを注いでいく。
(ブランカ…悩んでいないと良いが…いや、悩んでいるに違いない…やはり早まったか…)
「サビィ!マレンジュリテイーが溢れてますわ!」
クルックの声で我に返ると、マレンジュリテイーが溢れ、テーブルだけではなく床までこぼれていた。
私は、慌てて再び指を鳴らしティーポットとカップを消した。
「私とした事が…」
あまりの惨状にがっくりと肩を落とした。
私は深い溜め息をつくと、ノロノロとテーブルと床を拭き始める。
今の私は、まさに心ここに在らずである。
「サビィ…大丈夫ですか?」
クルックが遠慮がちに声を掛けてきた。
「問題ない」
私は平静を装い床を拭いた。
「やっぱり何かありましたわね?ブランカ…ですか?」
クルックの指摘に動揺した私は、テーブルに頭を打ち付けた。
「………」
あまりの痛みに、頭を抱えうずくまる。
「やはり、ブランカの事でしたのね…暫く、忙しいようでしたので、その事には触れずにきましたが…何か進展がありましたのでしょう?素敵ですわ…」
「進展などしていない。その逆だ」
「逆…とは…どういう事ですの?」
触れて欲しくない事に触れられ、私は口をつぐむ。
「ブランカと喧嘩でもしましたの?」
「いや…していない」
「それなら…分かりましたわ!ブランカに振られましたのね?」
クルックの言葉が、私の胸に突き刺さる。
「いや…振られたわけではないが…」
「振られたわけではない…もしかして…サビィはブランカに告白されたのですわね?まぁ…素敵ですわ…」
クルックは、うっとりとあらぬ方向を見ている。
「素敵な事などない…かえってブランカを悩ませてしまった…」
私は絞り出すような声で呟いた。
「彼女は…ラフィのことが好きなのだ…」
私の胸が張り裂けそうに痛む。
「そうでしたの…でも。大丈夫ですわ!サビィの良さは私が一番理解したます!例え、ブランカに振られたとしましても大丈夫です」
「クルック…だから、まだ振られていないと言っているだろう」
「大丈夫です!サビィ。落ち込む必要はありません!私がいますわ。大丈夫!」
クルックは、私の言葉など全く耳に入っていないようだ。
「大丈夫ですわ!大丈夫…」
胸を張り、ずっと同じ言葉を繰り返している。
彼女なりの励ましなのだろう。
「大丈夫…私がいます」
呪文のように、同じ言葉を繰り返すクルックを見ていると、胸の痛みがほんの少しだけ引いたような気がしたのだった。
「全く…君はは失礼な奴だ」
「あら?何を仰いますの?私はサビィを思って言っておりますのよ」
「それに、お節介でもある」
私は溜め息混じりに呟いた。
「私は、サビィのお世話係ですのよ」
クルックは、胸を張りながら言った。
「いや、頼んでない」
「あら?照れなくても良いですのよ」
「照れていない。私は、世話係などいなくても問題ない」
「………」
突然、クルックが押し黙る。
いつもなら、猛烈な勢いで言い返してくるはずだ。
「クルック?突然、黙ってどうした?」
「私は、心配なのです…サビィは、確かに素晴らしい天使です。優秀ですし…天使の中でも際立って美しいです。でも、完璧であるが故に近寄り難いイメージがあります。そのせいか、サビィは1人でいる事が多くて…私はヤキモキしてましたのよ」
クルックは、そう言うと俯いた。
確かに私は1人でいる事が多かった。
他の天使から距離を置かれているとも感じていた。
しかし、それでも良いとも思っていた。
1人でいる方が楽だったからだ。
「でも…最近のサビィはラフィやブランカと一緒にいる事が多く、安心していましたの。やっと、サビィの事を理解してくれる天使が現れたと思っていましたのよ。なのに…」
俯いていたクルックは、そこまで言うと私を見た。
「なのに…振られてしまいましたら、これからブランカとギクシャしてしまうではありませんか!」
「いや…だから、まだ振られては…」
「ブランカがラフィの事が好きなのでしたら、振られたのも同然ですわ!」
ハッキリとクルックに指摘され、私は胸にナイフが刺さったような痛みが走る。
「クルック…そんなにハッキリと…」
あまりの痛みに胸を押さえた瞬間、クルックが声高らかに叫んだ。
「明日の学びに、私もお供しますわ!」
「…は?なぜ、そうなる?」
「サビィ…私がお供すれば、ブランカとギクシャクしても淋しくありませんわ!これは、名案です!いっそのこと、これから毎日お供しますわ!」
「クルック…それは断る。学びで騒がれたら子供達も集中できない」
「大丈夫です。私は温かく子供達を見守りますわ!決めました!サビィが何と言おうとお供しますわ!」
クルックは、鞭を体の前で組みあらぬ方向を見ている。
「クルック…自分に酔いしれるな」
「名案ですわ…私がサビィを支えますの…」
クルックは、私の声が聞こえないのかうっとりとしている。
こうなると、クルックに私の声は届かない。
明日は、クルックが寝ている間にこっそりと出掛けようと心に決めたのだった。
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