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まってて、トナカイくん
しおりを挟むこんやはクリスマス。
みんながすやすや、ねむるころ。
サンタさんはそりにのって、
こどもたちにプレゼントをとどけます。
そりをひくのはトナカイさんと、
きょうがはつしごとのトナカイくん。
まっしろなゆきのなか。
おおぞらをはしるサンタさんたちは、
プレゼントをとどける さいごのまちをめざして、まっくらなもりをはしっていました。
「うう~、それにしてもさむいのう。なんというひじゃ。わしのひげがこおってしまう」
あまりのさむさにふるえながら、サンタさんはいいます。
「もしかしたら、こんやはおおゆきになるかもしれん。
いそがんと、クリスマスにまにあわなくなってしまう」
なんだって、それはたいへんだ!
それをきいたトナカイくんは、いきおいよくそりをはしらせました。
いそがないと、クリスマスがおわっちゃう!
まっくらなもりのうえ、そりはどんどんスピードをあげます。
あともうすこしで まっくらなもりをぬけられる、そんなとき。
サンタさんたちのめのまえに、
おおきなもみのきがせまっていました。
「あぶない、ぶつかるっ!」
ガサガサッ ガサササッ
ドンガラガッシャ~ン!!
もみのきのはっぱにぶつかって、
そりもひともトナカイも、ひっくりかえってゆきのなか。
みんないっしょに、そらからおっこちてしまいました。
「おお、みんなだいじょうぶかい?」
サンタさんやトナカイさんたちにケガはないようですが、
みんなにとどけるはずのプレゼントが、あちこちにちらばってしまって、もうたいへん。
「ごめんなさいっ、ぼくのせいで」
「トナカイくん、あやまるのはあとだよ。
てわけしてひろおう!」
なかまのトナカイさんのいうとおり。
みんなであたりのプレゼントをひろって、ひろって、とにかくひろって。
ゆきをはらって、そりにのせていきます。
けれど、こまったことに なんどさがしても、なんどかぞえても、プレゼントのかずがたりません。
「あとひとつだけなんじゃがのう」
「もしかしたら、まちのほうまでとんでいってしまったのかも」
サンタさんとトナカイさんがこまったかおをしていると、トナカイくんはいいました。
「ぼくがさがしてきます!」
まっしろなゆきのなか。
トナカイくんはさいごのまちへいそぎます。
どうしよう、ぼくのせいだ。
どうしてあのとき、まえをよくみていなかったんだろう。
きょうがはつしごとのトナカイくん。
あわててしまったじぶんのせいで、そりがきにぶつかってしまう、だいしっぱい。
こうかいしてもしきれません。
でも、いまはそれよりもプレゼントです。
きょうはクリスマス。
たくさんのこどもたちがサンタさんのプレゼントをまっています。
いそがないと、クリスマスがおわっちゃう!
「どこだ、どこだ、どこなんだ」
まっしろなまちのなか。
トナカイくんはいっしょうけんめいプレゼントをさがしますが、なかなかみつけることができません。
どうしよう、ぼくのせいで。
みんなのクリスマスが、だいなしになってしまったら。
トナカイくんのあたまのなかを、
わるいことばかりがぐるぐるまわります。
そんなとき、まっしろなゆきのなかで。
チカッ
いま、なにかが。
かすかにひかったような。
「すみません。あなたのおうちのやねにプレゼントをおとしてしまって」
「あら、そうなの。まってて、いまはしごをもってきますからね」
かすかなひかりをおいかけて、
トナカイくんはようやくプレゼントをみつけることができました。
だけど、プレゼントはやねのうえ。
おうちのひとにはしごをかりることにしました。
「うう~、それにしてもさむい。なんてひだ。はなみずがこおってしまうくらい、さむいぞ」
トナカイくんはガタガタふるえながら、おばあさんをまちます。
これもプレゼントのため。がまんがまん。
「はい、はしごですよ。ゆきにきをつけてくださいね」
「はいっ!」
やねにふりつもったゆきにきをつけながら、
トナカイくんははしごをのぼります。
「よいしょ、よいしょ。ようし、とれた!」
かしてもらったはしごをつかって、プレゼントをぶじにすくいだすことができました。
「ありがとうございました。これでプレゼントをとどけることができます」
「いえいえ、どういたしまして。
ごめんなさいねえ、さむかったでしょう。
あたたかいのみものでもいかが?」
「あ、えと、ぼく、プレゼントをとどけないとっ」
トナカイくんはおさそいをあわててことわりますが、
おばあさんはなにやらいいことをおもいついたようです。
「そうだわ!まってて、トナカイくん」
おばあさんがいそいでもってきてくれたのは、
あかい、てあみのマフラーでした。
マフラーのサイズはトナカイくんにぴったり。
からだだけじゃなく、こころまであたためてくれるようです。
「まあ、よくにあうわ。まるであなたのためにあんでいたみたい」
「あの、このマフラー、ぼくがもらってもいいんでしょうか?」
「いいのよ。そとはさむいもの。
あなたのプレゼントをこどもたちがまっているんでしょう?
がんばってね、トナカイくん」
「はいっ!」
おばあさんからマフラーとげんきをもらって、トナカイくんはサンタさんたちのもとへかえります。
しかし、きづけばそとは。
とんでもないおおゆきになっていました。
さっきつけたあしあとがきえてしまうくらい、ゆきがひどくなっていたのです。
どうしよう。ぼくはどうすれば。
トナカイくんはおばあさんのことばをおもいだします。
『あなたのプレゼントをこどもたちがまっているんでしょう?』
トナカイくんはきめました。
このプレゼントは、ぼくがとどけよう。
ぜったい とどけるんだ!
あんなにひどかったゆきが、おとなしくなったころ。
トナカイくんは、おうちのまえにそうっとプレゼントをおきました。
プレゼント、よろこんでくれるといいな。
もうすぐクリスマスのよるが、おわろうとしています。
それなのにトナカイくんのかおは、ずっとしたをむいたまま。
「みんなのプレゼントはどうなっただろう。
サンタさんたちにあわせるかおがないよ」
すると、とおくからトナカイくんをよぶこえがします。
「お~い、トナカイく~ん!」
「あっ、サンタさんたち!」
トナカイくんは、サンタさんたちにききました。
「みんなのプレゼントは!?」
「だいじょうぶ。ちゃんととどけたよ」
そういってサンタさんがみせてくれた、
そりのなかみは、からっぽ。
トナカイくんがいないあいだ。
そりにのせたプレゼントは、サンタさんたちがすべてとどけてくれていました。
よかった。みんなのプレゼントはクリスマスにまにあったのです。
「よかったあ。ほんとうによかった」
トナカイくんのめから、ぽろぽろとなみだがこぼれおちます。
「なかないで、トナカイくん」
「ごめんなさいっ、ぼくのせいで」
「トナカイくんのせいじゃないよ」
ひとりにしてごめんね。
なかまのトナカイさんは、トナカイくんにそういってよりそいます。
サンタさんも、トナカイくんのせなかをそっとなでてあげました。
「よくがんばったのう、トナカイくん」
トナカイくんは、がんばった。
それは、トナカイくんのゆきまみれになったすがたをみればわかります。
だいじょうぶ、サンタさんはやさしくいいました。
「こんどのクリスマスはきっとうまくいくよ」
きのうがはつしごとだったトナカイくん。
ことしのクリスマスはしっぱいしてしまったけれど、こんどのクリスマスにはきっと。
りっぱになったトナカイくんがみられることでしょう。
おばあさんからもらった、あのマフラーをして。
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