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晴れ渡る青空を余(あま)すことなく映し出し、泉はキラキラと輝いている。
怒っていたことも忘れ、あいなは引き寄せられるような足取りで泉に近付いた。近くで見ると、透明の美しい水が涼しげな音を立てているのが分かる。中央が噴水になっていた。
「エトリアの泉だ」
シャルがあいなの頭をなでた。
偉そうで威圧的だったこれまでの言動とは裏腹に、シャルの手の動きは優しく包み込むような触り方で、あいなは息をのんだ。……と同時に、耳が熱くなるのを感じる。
「なっ!誰に許可取って人の頭なでてんの!?」
恥ずかしさのあまり、ぶっきらぼうな言い方になる。
一方、シャルは落ち着きを取り戻したようで、余裕の笑みを浮かべ「未来のお前が許してくれた」と、つぶやいた。
その声音が思いの外(ほか)優しくて、シャルらしくない。頭のなで方がソフトなのも相俟(あいま)って、あいなは反発心を削(そ)がれてしまった。
「未来の私に許可をもらった?なにそれ。ホント、シャルってテキトー……」
「本気なんだが、このニュアンス、お前にはまだ伝わらないか」
すっかりしおらしくなってしまったあいなにホッとしたのか、シャルはようやく、あいなをここへ連れてきた理由を話した。
「さっきも言ったが、これは、エトリアの泉だ」
指輪に込められた魔力のことを、あいなは思い出す。
「じゃあ、この泉にも何かの魔力があるの?」
「さあな、それは分からない」
「なんだ。つまんないの……」
相手がシャルということもあり、あいなは遠慮なく言いたいことを言う。これが恋の相手だったら、もう少し優しい物言い、柔らかな表情になったのであろうが。
しかし、あいなの露骨(ろこつ)さに気分を害することもなく、むしろ安心したような顔でシャルは、
「お前はそう言うと思った」
「私のことよく知りもしないクセに」
「そうだな」
あいなのため息まじりな返しに、シャルは鼻で笑うだけである。珍しく言い返してこないシャルに対し、これはこれで何か良くないことの前触れに思え、あいなは眉をひそめた。
「真実は分からないが、この泉にはある伝承(でんしょう)が残されている」
「え!?」
渋い顔を明るくし、あいなは話に食いついた。
「『泉の水面に己(おのれ)の姿を映した者に、最良(さいりょう)の伴侶(はんりょ)との出会いをもたらす』とな。俺は、物心つくかつかないかという頃からこの泉を見つめ、水面に自分の姿を映していた。伝承は本当だったんだな」
「ちょ、ちょっと待って!?その伝承が本当かどうかは置いとくとして……。シャルは私のことを、自分にとって最良の妻だと思ってるわけ?」
「ああ」
シャルの目には、嘘や迷いなど微塵(みじん)もない。初対面であいなにプロポーズした時から、彼はこうだった。良くも悪くもブレていない。あいなは大きくため息をついた。この世界へ来て何度目のため息か分からない。
これも泉の追加効果なのか、さきほどのようにガミガミ怒る気にはならない。しかし、やはり、あいなはシャルの考えを理解するのに苦しんだ。
「どうして、自信持ってそんなこと言えるの?私達、お互いに知らない者同士なのに……。私は、好きな人と両想いになって、お互いのことをよく知って、普通の恋人同士みたいに愛を育んで、それから結婚したかったよ。……その相手はシャルじゃない。好きになった人じゃなきゃ、意味ないの」
シャルに対して、初めてこんなに落ち着いて話せた気がする。ケンカ越しでも反発的でもない、大人な対応。あいなは、今の自分を自分でほめてやりたい気持ちになった。
意外にも真剣にあいなの話を聞いていたシャルは、「お前の考えは分かった」とうなずきつつも、次の瞬間には「でも」と、反対意見を述べた。
「順番って、そんなに大事か?」
「えっ?」
「お前としては、好きなやつを作る、交際、その末に結婚って流れが理想みたいだが、逆でもいいだろ?」
「『いいだろ』って、簡単に言うけど、結婚して好きになれなかったらどうするの!?」
「お前はポジティブな性格だろ?なのに、変なところで後ろ向きだな」
「私のこと全部知った風に言うのやめてよねっ」
「……とにかく、お前は近々俺の妻になる。それはくつがえせないことだ」
「むぅ……。いいもんね。アンタに嫌われてやるから」
それ以上言い返しようがなく、あいなはついに、ふてくされるという手段に出た。子供っぽくて情けないことこの上ないが、考え方が真逆な王子としゃべっていても、言いくるめられるのがオチである。
だが、あいなの不満を帳消しにするように爽やかな笑顔で、シャルは宣言した。
「俺はお前を、世界一、いや、宇宙一幸せな女にしてやる」
「どうやって?」
「さあな。これから考える。どういった対応策を取るかはシチュエーションにもよるだろうし」
「そんなんで本当にアンタを好きになれるの?私」
「努力はする。何もせずに諦めるというのは性(しょう)に合わないし、結婚して幸せになりたいのは男の俺も同じだ。――まぁ、俺はまともに女と付き合ったことがないから、さっきみたいにお前を怒らせることもあるかもしれないがな」
「女の人の扱い方が分からないって言いたいの?」
「……ああ……」
バツが悪そうに、シャルはあいなから顔をそむけた。
「そのわりに、『初夜は優しくする』とか、耳がただれそうなキザなセリフ吐いてなかった?」
「それはその……。フェイクだ」
フェイク。にせ物。模造(もぞう)品。
「どうにかしてお前を安心させたかったんだよっ、悪いかっ!」
「逆に、今スゴイ不安になってきたんだけど……」
まさかの形勢逆転である。これまではあいなをリード(?)し強気を貫いてきたシャルの弱点が、ついにさらけ出された。
この時あいなは、初めてシャルに好感を覚えたのである。それまでは何でも余裕でかわすナマイキで調子のイイ軽い男としか思えなかったのだが、シャルも、奥手ゆえに虚勢(きょせい)を張(は)っていただけ……。恋愛経験値数はあいなと変わらないのだった。
(恋に慣れずうまくやれないのは、私だけじゃ、なかった??)
シャルがどの程度結婚に熱心なのかは分からない。けれど、シャルなりに一生懸命あいなを説得しようとしていたことが分かった。
まだ、シャルとの結婚に納得はしていないものの、彼のことを少しは優しい目で見てもいいかもしれない、と、あいなは心持ちを改めた。
「……じゃあ、モテるって言ってたのもウソ?」
「それはホントだ!色んな国の姫と交流しなきゃならないからな、告白されることも数え切れないほどあった。でも」
シャルは、再びじっとあいなを見つめる。
「心から好きだと思ったのは、お前が初めてなんだ。あいな」
「……シャル……」
時が止まったと錯覚してしまうほど長い間、二人はそうして見つめ合っていたのだった。
「お前、最近明るくなったよな」
「そうでしょうか?シャル様の方こそ、近頃楽しげなご様子ではありませんか」
「……ふん。相変わらず腹の立つかわし方だ」
「おお、それは失礼しました」
言うほど腹を立てているわけではないらしく、シャルは真顔で国の情報書類を眺めた。これは、この後仕事で必要な資料である。さきほどルイスが持ってきたのだ。
物音ひとつ立たない静かな執務室。二人は、お互いの腹の中を探りあうかのように、どちらかともなく視線を交わす。
シャルがエトリアの泉であいなと会話した、数時間後のことであった。
「シャル様。お言葉ですが、私の恋模様を探るより先に、あなたには考えなければならないことがありますよ」
「……ハロルドのことか……」
「ええ。彼について、あまり良い噂を聞きません。ハロルド様は昔からシャル様を敵対視しておられます」
「あいつ、まだあのことを根に持っているのか?時間が解決すると気楽に考えていたが、そういうわけにもいかないか……。ったく、頭の痛くなる存在だ……」
「私もできる限りこれ以上問題が起きないよう対処いたしますが、恐らくあの方の目的はシャル様の王位|失脚(しっきゃく)……。隙あらばシャル様の失態を追及(ついきゅう)しようとするでしょう。あなたの立ち回り方ひとつでこの国の命運が分かれます。どうか、そのことを……」
「分かっている」
ルイスの言葉を最後まで聞かず、シャルは席を立った。
「今までは適当に無視してきたが、これからはそうもいかないだろう。俺の結婚話を知ったら、ハロルドは何かしらアクションを起こすはずだ。でもな、いくら相手がハロルドだろうと、あいなとの結婚を邪魔させはしない」
「ええ、その意気ですよ」
「あいなの所に行ってくる」
「まだ執務の途中ですよ」
軽くたしなめたが、ここでルイスの言葉をすんなり聞き入れるほどシャルは素直ではない。
「アイツの夫になるのならなおさら仕事も大事だ。でもな、今はアイツのことを気にかけてやりたい。今、ここでアイツを支えてやれるのは俺しかいないから」
「そうですね。分かりました。出来るだけ早く戻って下さいね。ただでさえ、最近シャル様は仕事を放置し過ぎて、こちらにまでしわ寄せが来ているのですから。尻拭いをしたくないという意味ではありません。シャル様の今後のためにも、仕事はしっかりやりとげて頂きたいと私は……」
「分かった分かった。何回目だよそのセリフ。ったく。それだけ同じこと言えるなんて、逆に感心するよ。あいなが来る前はもっと従順(じゅうじゅん)だったのに……。最近のお前は口うるさいお袋(ふくろ)みたいな執事に進化したな」
「男なのに母親ですか?矛盾していますね、その例え方は」
「細かいことうるさいぞっ。そこは会話の流れから何となく理解してくれ。俺も、あいなの顔を見たら出来るだけ早く戻る!」
シャルが出ていった後の執務室で、ルイスは一人つぶやくのだった。
「あなたは以前、王子であることに嫌気がさすとおっしゃっていましたが、私からしたら、あなたのお立場が羨(うらや)ましいですよ、シャル様……。それに、あいな様のことで私に嫉妬心を抱くなど、無意味なこと。私など、あなたのライバルになる権利すらないのですから。なりたくても、ね……」
午後の静かな時間が流れるエトリアの泉。
急な呼び出しを受けたシャルが執務室に戻ったことで、あいなはひとり、庭園をぶらついていた。
「まさか、シャルがあんなにロマンチックな恋愛初心者だったなんてなぁ……」
エトリアの泉に自分の姿を映した者は、最良の伴侶(はんりょ)と出会えるという言い伝え。確証などないのに、シャルはあいなと出会えたことによってその伝承を信じていた。これまでの彼の行いを見るとそれがとても意外なことに思え、あいなは非常に驚いていた。
(占いとかおまじないの類(たぐい)に興味関心がある私ならともかく、あいつが言い伝え……しかもそういう系の伝承を真に受けるなんて……。こっちは、何でああも熱心に結婚を迫られてるのかイマイチ分かってないのに)
時折庭仕事をしているメイド達に不審がられないよう、極力ひとりごとを我慢し心の中でつぶやいていると、強い風が吹き、庭に咲いていた無数の花の花びらがいくつか空に舞った。反射的に目をつむると、
「強い風だね、大丈夫?」
背後から男の人の声がした。それは、聞き慣れたシャルやルイスのものではない、しかし、彼らと同年代の男性と思われる若い声だった。
あいなが振り向くと、そこには、青を基調とした正装に身を包んだ銀髪の美青年が立っていた。彼の青い瞳はどこか陰があるのに、そんなものをかき消すくらい、纏(まと)う雰囲気は柔らかい。
「あなたは……!」
その青年の姿を見て、あいなは衝撃を受ける。目を、これでもかというほど見開いて――。
「僕は、ハロルド=バンクス。バロニクス帝国の者で、シャルとは幼なじみなんだ」
「ハロルドさん、ですか……。シャルなら、さっき執務室に戻りましたけど……」
ハロルドがシャルを探しているのだと思いあいなはそう告げたのだが、ハロルドの目的はシャルに会うことではないらしかった。
「教えてくれてありがとう。でも、今日はシャルに会いにきたわけじゃないんだ」
「そうなんですか、すいません、余計なこと言って」
「いいんだよ。今日はね、ただなんとなく、ここへ来てみただけだから」
怒るでもなく、困るでもなく、穏やかな口調のハロルドに、あいなはすっかり目を奪われていた。
なぜなら、彼が、初恋の相手にそっくりだったからである。髪色や目の色などは全く違うが、声や顔のつくりがそっくりそのまま初恋相手と同じなのである。
(まさか、これも、エトリアの泉の力……?なわけないか……。シャルも、そんなこと言ってなかったしな。)
あいなの初恋は小学生の時。相手は、年上のイトコの友達だった人だ。当時、相手は大学生で、小学校に通うあいなの宿題をよく見てくれた面倒見のいい男性だった。
しかし、その恋は実らなかった。
彼は、大学を中退し、当時付き合っていた恋人と結婚をしたのだ。
自分が彼女になれるだなんて小学生の自分には考えられなかったが、それでもやはり、大好きな人が他の女性を選んだという事実は悲しかった。けれど、不思議と喜びもあった。
あいなにとって、初恋の思い出は複雑かつあたたかいものだった。この記憶があったからこそ、恋で幸せになるという目標に向かって積極的になれたのかもしれない。
近頃では忘れかけていた記憶の欠片(かけら)。年上の初恋相手。遠い過去の恋。――ハロルドの顔を見たら瞬間的に思い出し、あいなはしばし、銀髪美青年の顔を見ていた。
「驚かせてごめんね。よかったら、君の名前を訊(き)いてもいい?」
「あ、はい。こっちこそボーッとしてすみません。神蔵(かみくら)あいなといいます」
「カミクラアイナさん。……君なんだね、シャルの婚約者というのは……」
「……ははは……」
そうですと素直に認める気になれず、目をそらし、あいなはごまかし笑いをする。
「おい!」
そこへ、さきほど庭園を出ていったはずのシャルが小走りであいなの元にやってきた。
「シャル、どうしたの?仕事の件でルイスさんに呼び出されたんじゃなかった?」
あいなの問いには答えず、その代わりというようにシャルは銀髪青年の腕を強く引いた。
「何しにきた、ハロルド……!」
「散歩、かな?」
興奮気味なシャルとは反対に、ハロルドは極めて落ち着いていた。その整った顔に微笑まで浮かべ、
「久しぶりだね。君に会えて嬉しいよ、シャル。元気だった?」
「ふざけるな。自分の国に帰れ。ったく、アイツらも何でこんなヤツを城に入れたんだ」
メイド達の方を見やりながらブツブツ言うシャルを、あいなはピシャリと止める。
「せっかく訪ねてきてくれた幼なじみに対してそんな言い方ないんじゃない?」
「お前はコイツの本性を知らないからそんなことが……!」
「ひどいよ、シャル。そんな、まるで僕が猫かぶりの性悪みたいな言い方」
ちっとも落ち込んだ様子ではないハロルドが、笑顔で口をはさむ。
「ありがとう、あいなさん。そんな風に言ってくれて」
「いっ、いえっ」
ルイスとはまた別の優しい系男子登場!と、あいなは心の片隅(かたすみ)で思った。
「あいなさん、シャルは不器用だけどとても優しい人なんだ。僕にきつく当たるのも悪気があってのことじゃない。大目(おおめ)に見てあげて?じっくり付き合うと、そのうちシャルの良さがわかってくると思うから」
ウィンクまでしてそんなことを言われたら、あいなはハロルドの言葉にウンと返さざるを得ない。
「お前……」
シャルは苦虫を噛(か)み潰(つぶ)したような表情でハロルドをにらむ。
「腹黒いな、相変わらず。とにかく、あいなに気安く話しかけるな。俺の婚約者だぞ」
「君はそんなに狭量(きょうりょう)な男だったかな?シャル」
「何とでも言え。行くゾ!」
あいなの手を引き、シャルは早足で庭園を抜けた。
珍しく、シャルが言いくるめられていた。しかも、物腰の柔らかい紳士的な美青年に。
「ぷっ」
思い出しただけで、あいなは笑いがもれた。
その後、あいなの部屋に戻った二人はソファーに向かい合って座った。
「アンタがあんなにやり込められるトコ、初めて見た!」
「初めて見たってほど、知り合って長くないだろ」
「言葉のアヤだよ。けど、ハロルドさんいい人だね。あの人もどっかの国の王子様なの?それっぽい衣装着てたし」
「アイツは、バロニクス帝国の第三皇子だ。王位継承権はほぼないに等しい。そのせいかノホホンとして見えるけど、何考えてんのか分からないヤツでな。俺は苦手だ」
「そう?すごい優しそうな人じゃん。アンタのこともさりげなくフォローしてたし。少なくとも、アンタよりは紳士的だし『王子!』って感じがした」
シャルのことを見直したものの、すぐさま態度を変えるのは難しかった。今までの仕返しとばかりに、あいなはハロルドを褒(ほ)めた。
「……面白くない」
「何が?」
「他の男ばっか褒めて、お前、楽しんでないか?」
「楽しんでるけど、それが何か?」
「お前っ!くぅぅ……」
「あいな様もようやく、シャル様の扱いに慣れたようで安心しました。お茶にしましょう」
執務室で仕事をしているはずのルイスがティーポットを乗せたワゴンを引いてあいな達の元に現れる。シャルはますますムッとした顔になり、「仕事を放り出して盗み聞きか?お前もたいがいだな、ルイス……」と、肩を落とす。
「おや、そのような不躾(ぶしつけ)な真似いたしませんよ。あいな様にお茶をお出しするのも私の仕事。ちなみに、執務室での仕事は、シャル様の分も合わせて全て片付けさせて頂きました。シャル様がどこぞで油を売っているものですから、仕方がありません」
「悪かったよっ。たく……」
一人、庭園に残されたハロルドは、シャルとあいなが出ていった城への入口を見つめ、つぶやく。
「……シャル。君は本当に鈍感だよ。罪深いくらいにね……」
今、ハロルドの瞳には影が差していた。それは、空に広がり始めた雲のせいではない。
「僕が君の恋の伏兵になっても、怒らないでね?って、それは無理な話かな。君はきっと、慌てふためくのだろうね。いや、激昂(げきこう)するのかな?」
怒っていたことも忘れ、あいなは引き寄せられるような足取りで泉に近付いた。近くで見ると、透明の美しい水が涼しげな音を立てているのが分かる。中央が噴水になっていた。
「エトリアの泉だ」
シャルがあいなの頭をなでた。
偉そうで威圧的だったこれまでの言動とは裏腹に、シャルの手の動きは優しく包み込むような触り方で、あいなは息をのんだ。……と同時に、耳が熱くなるのを感じる。
「なっ!誰に許可取って人の頭なでてんの!?」
恥ずかしさのあまり、ぶっきらぼうな言い方になる。
一方、シャルは落ち着きを取り戻したようで、余裕の笑みを浮かべ「未来のお前が許してくれた」と、つぶやいた。
その声音が思いの外(ほか)優しくて、シャルらしくない。頭のなで方がソフトなのも相俟(あいま)って、あいなは反発心を削(そ)がれてしまった。
「未来の私に許可をもらった?なにそれ。ホント、シャルってテキトー……」
「本気なんだが、このニュアンス、お前にはまだ伝わらないか」
すっかりしおらしくなってしまったあいなにホッとしたのか、シャルはようやく、あいなをここへ連れてきた理由を話した。
「さっきも言ったが、これは、エトリアの泉だ」
指輪に込められた魔力のことを、あいなは思い出す。
「じゃあ、この泉にも何かの魔力があるの?」
「さあな、それは分からない」
「なんだ。つまんないの……」
相手がシャルということもあり、あいなは遠慮なく言いたいことを言う。これが恋の相手だったら、もう少し優しい物言い、柔らかな表情になったのであろうが。
しかし、あいなの露骨(ろこつ)さに気分を害することもなく、むしろ安心したような顔でシャルは、
「お前はそう言うと思った」
「私のことよく知りもしないクセに」
「そうだな」
あいなのため息まじりな返しに、シャルは鼻で笑うだけである。珍しく言い返してこないシャルに対し、これはこれで何か良くないことの前触れに思え、あいなは眉をひそめた。
「真実は分からないが、この泉にはある伝承(でんしょう)が残されている」
「え!?」
渋い顔を明るくし、あいなは話に食いついた。
「『泉の水面に己(おのれ)の姿を映した者に、最良(さいりょう)の伴侶(はんりょ)との出会いをもたらす』とな。俺は、物心つくかつかないかという頃からこの泉を見つめ、水面に自分の姿を映していた。伝承は本当だったんだな」
「ちょ、ちょっと待って!?その伝承が本当かどうかは置いとくとして……。シャルは私のことを、自分にとって最良の妻だと思ってるわけ?」
「ああ」
シャルの目には、嘘や迷いなど微塵(みじん)もない。初対面であいなにプロポーズした時から、彼はこうだった。良くも悪くもブレていない。あいなは大きくため息をついた。この世界へ来て何度目のため息か分からない。
これも泉の追加効果なのか、さきほどのようにガミガミ怒る気にはならない。しかし、やはり、あいなはシャルの考えを理解するのに苦しんだ。
「どうして、自信持ってそんなこと言えるの?私達、お互いに知らない者同士なのに……。私は、好きな人と両想いになって、お互いのことをよく知って、普通の恋人同士みたいに愛を育んで、それから結婚したかったよ。……その相手はシャルじゃない。好きになった人じゃなきゃ、意味ないの」
シャルに対して、初めてこんなに落ち着いて話せた気がする。ケンカ越しでも反発的でもない、大人な対応。あいなは、今の自分を自分でほめてやりたい気持ちになった。
意外にも真剣にあいなの話を聞いていたシャルは、「お前の考えは分かった」とうなずきつつも、次の瞬間には「でも」と、反対意見を述べた。
「順番って、そんなに大事か?」
「えっ?」
「お前としては、好きなやつを作る、交際、その末に結婚って流れが理想みたいだが、逆でもいいだろ?」
「『いいだろ』って、簡単に言うけど、結婚して好きになれなかったらどうするの!?」
「お前はポジティブな性格だろ?なのに、変なところで後ろ向きだな」
「私のこと全部知った風に言うのやめてよねっ」
「……とにかく、お前は近々俺の妻になる。それはくつがえせないことだ」
「むぅ……。いいもんね。アンタに嫌われてやるから」
それ以上言い返しようがなく、あいなはついに、ふてくされるという手段に出た。子供っぽくて情けないことこの上ないが、考え方が真逆な王子としゃべっていても、言いくるめられるのがオチである。
だが、あいなの不満を帳消しにするように爽やかな笑顔で、シャルは宣言した。
「俺はお前を、世界一、いや、宇宙一幸せな女にしてやる」
「どうやって?」
「さあな。これから考える。どういった対応策を取るかはシチュエーションにもよるだろうし」
「そんなんで本当にアンタを好きになれるの?私」
「努力はする。何もせずに諦めるというのは性(しょう)に合わないし、結婚して幸せになりたいのは男の俺も同じだ。――まぁ、俺はまともに女と付き合ったことがないから、さっきみたいにお前を怒らせることもあるかもしれないがな」
「女の人の扱い方が分からないって言いたいの?」
「……ああ……」
バツが悪そうに、シャルはあいなから顔をそむけた。
「そのわりに、『初夜は優しくする』とか、耳がただれそうなキザなセリフ吐いてなかった?」
「それはその……。フェイクだ」
フェイク。にせ物。模造(もぞう)品。
「どうにかしてお前を安心させたかったんだよっ、悪いかっ!」
「逆に、今スゴイ不安になってきたんだけど……」
まさかの形勢逆転である。これまではあいなをリード(?)し強気を貫いてきたシャルの弱点が、ついにさらけ出された。
この時あいなは、初めてシャルに好感を覚えたのである。それまでは何でも余裕でかわすナマイキで調子のイイ軽い男としか思えなかったのだが、シャルも、奥手ゆえに虚勢(きょせい)を張(は)っていただけ……。恋愛経験値数はあいなと変わらないのだった。
(恋に慣れずうまくやれないのは、私だけじゃ、なかった??)
シャルがどの程度結婚に熱心なのかは分からない。けれど、シャルなりに一生懸命あいなを説得しようとしていたことが分かった。
まだ、シャルとの結婚に納得はしていないものの、彼のことを少しは優しい目で見てもいいかもしれない、と、あいなは心持ちを改めた。
「……じゃあ、モテるって言ってたのもウソ?」
「それはホントだ!色んな国の姫と交流しなきゃならないからな、告白されることも数え切れないほどあった。でも」
シャルは、再びじっとあいなを見つめる。
「心から好きだと思ったのは、お前が初めてなんだ。あいな」
「……シャル……」
時が止まったと錯覚してしまうほど長い間、二人はそうして見つめ合っていたのだった。
「お前、最近明るくなったよな」
「そうでしょうか?シャル様の方こそ、近頃楽しげなご様子ではありませんか」
「……ふん。相変わらず腹の立つかわし方だ」
「おお、それは失礼しました」
言うほど腹を立てているわけではないらしく、シャルは真顔で国の情報書類を眺めた。これは、この後仕事で必要な資料である。さきほどルイスが持ってきたのだ。
物音ひとつ立たない静かな執務室。二人は、お互いの腹の中を探りあうかのように、どちらかともなく視線を交わす。
シャルがエトリアの泉であいなと会話した、数時間後のことであった。
「シャル様。お言葉ですが、私の恋模様を探るより先に、あなたには考えなければならないことがありますよ」
「……ハロルドのことか……」
「ええ。彼について、あまり良い噂を聞きません。ハロルド様は昔からシャル様を敵対視しておられます」
「あいつ、まだあのことを根に持っているのか?時間が解決すると気楽に考えていたが、そういうわけにもいかないか……。ったく、頭の痛くなる存在だ……」
「私もできる限りこれ以上問題が起きないよう対処いたしますが、恐らくあの方の目的はシャル様の王位|失脚(しっきゃく)……。隙あらばシャル様の失態を追及(ついきゅう)しようとするでしょう。あなたの立ち回り方ひとつでこの国の命運が分かれます。どうか、そのことを……」
「分かっている」
ルイスの言葉を最後まで聞かず、シャルは席を立った。
「今までは適当に無視してきたが、これからはそうもいかないだろう。俺の結婚話を知ったら、ハロルドは何かしらアクションを起こすはずだ。でもな、いくら相手がハロルドだろうと、あいなとの結婚を邪魔させはしない」
「ええ、その意気ですよ」
「あいなの所に行ってくる」
「まだ執務の途中ですよ」
軽くたしなめたが、ここでルイスの言葉をすんなり聞き入れるほどシャルは素直ではない。
「アイツの夫になるのならなおさら仕事も大事だ。でもな、今はアイツのことを気にかけてやりたい。今、ここでアイツを支えてやれるのは俺しかいないから」
「そうですね。分かりました。出来るだけ早く戻って下さいね。ただでさえ、最近シャル様は仕事を放置し過ぎて、こちらにまでしわ寄せが来ているのですから。尻拭いをしたくないという意味ではありません。シャル様の今後のためにも、仕事はしっかりやりとげて頂きたいと私は……」
「分かった分かった。何回目だよそのセリフ。ったく。それだけ同じこと言えるなんて、逆に感心するよ。あいなが来る前はもっと従順(じゅうじゅん)だったのに……。最近のお前は口うるさいお袋(ふくろ)みたいな執事に進化したな」
「男なのに母親ですか?矛盾していますね、その例え方は」
「細かいことうるさいぞっ。そこは会話の流れから何となく理解してくれ。俺も、あいなの顔を見たら出来るだけ早く戻る!」
シャルが出ていった後の執務室で、ルイスは一人つぶやくのだった。
「あなたは以前、王子であることに嫌気がさすとおっしゃっていましたが、私からしたら、あなたのお立場が羨(うらや)ましいですよ、シャル様……。それに、あいな様のことで私に嫉妬心を抱くなど、無意味なこと。私など、あなたのライバルになる権利すらないのですから。なりたくても、ね……」
午後の静かな時間が流れるエトリアの泉。
急な呼び出しを受けたシャルが執務室に戻ったことで、あいなはひとり、庭園をぶらついていた。
「まさか、シャルがあんなにロマンチックな恋愛初心者だったなんてなぁ……」
エトリアの泉に自分の姿を映した者は、最良の伴侶(はんりょ)と出会えるという言い伝え。確証などないのに、シャルはあいなと出会えたことによってその伝承を信じていた。これまでの彼の行いを見るとそれがとても意外なことに思え、あいなは非常に驚いていた。
(占いとかおまじないの類(たぐい)に興味関心がある私ならともかく、あいつが言い伝え……しかもそういう系の伝承を真に受けるなんて……。こっちは、何でああも熱心に結婚を迫られてるのかイマイチ分かってないのに)
時折庭仕事をしているメイド達に不審がられないよう、極力ひとりごとを我慢し心の中でつぶやいていると、強い風が吹き、庭に咲いていた無数の花の花びらがいくつか空に舞った。反射的に目をつむると、
「強い風だね、大丈夫?」
背後から男の人の声がした。それは、聞き慣れたシャルやルイスのものではない、しかし、彼らと同年代の男性と思われる若い声だった。
あいなが振り向くと、そこには、青を基調とした正装に身を包んだ銀髪の美青年が立っていた。彼の青い瞳はどこか陰があるのに、そんなものをかき消すくらい、纏(まと)う雰囲気は柔らかい。
「あなたは……!」
その青年の姿を見て、あいなは衝撃を受ける。目を、これでもかというほど見開いて――。
「僕は、ハロルド=バンクス。バロニクス帝国の者で、シャルとは幼なじみなんだ」
「ハロルドさん、ですか……。シャルなら、さっき執務室に戻りましたけど……」
ハロルドがシャルを探しているのだと思いあいなはそう告げたのだが、ハロルドの目的はシャルに会うことではないらしかった。
「教えてくれてありがとう。でも、今日はシャルに会いにきたわけじゃないんだ」
「そうなんですか、すいません、余計なこと言って」
「いいんだよ。今日はね、ただなんとなく、ここへ来てみただけだから」
怒るでもなく、困るでもなく、穏やかな口調のハロルドに、あいなはすっかり目を奪われていた。
なぜなら、彼が、初恋の相手にそっくりだったからである。髪色や目の色などは全く違うが、声や顔のつくりがそっくりそのまま初恋相手と同じなのである。
(まさか、これも、エトリアの泉の力……?なわけないか……。シャルも、そんなこと言ってなかったしな。)
あいなの初恋は小学生の時。相手は、年上のイトコの友達だった人だ。当時、相手は大学生で、小学校に通うあいなの宿題をよく見てくれた面倒見のいい男性だった。
しかし、その恋は実らなかった。
彼は、大学を中退し、当時付き合っていた恋人と結婚をしたのだ。
自分が彼女になれるだなんて小学生の自分には考えられなかったが、それでもやはり、大好きな人が他の女性を選んだという事実は悲しかった。けれど、不思議と喜びもあった。
あいなにとって、初恋の思い出は複雑かつあたたかいものだった。この記憶があったからこそ、恋で幸せになるという目標に向かって積極的になれたのかもしれない。
近頃では忘れかけていた記憶の欠片(かけら)。年上の初恋相手。遠い過去の恋。――ハロルドの顔を見たら瞬間的に思い出し、あいなはしばし、銀髪美青年の顔を見ていた。
「驚かせてごめんね。よかったら、君の名前を訊(き)いてもいい?」
「あ、はい。こっちこそボーッとしてすみません。神蔵(かみくら)あいなといいます」
「カミクラアイナさん。……君なんだね、シャルの婚約者というのは……」
「……ははは……」
そうですと素直に認める気になれず、目をそらし、あいなはごまかし笑いをする。
「おい!」
そこへ、さきほど庭園を出ていったはずのシャルが小走りであいなの元にやってきた。
「シャル、どうしたの?仕事の件でルイスさんに呼び出されたんじゃなかった?」
あいなの問いには答えず、その代わりというようにシャルは銀髪青年の腕を強く引いた。
「何しにきた、ハロルド……!」
「散歩、かな?」
興奮気味なシャルとは反対に、ハロルドは極めて落ち着いていた。その整った顔に微笑まで浮かべ、
「久しぶりだね。君に会えて嬉しいよ、シャル。元気だった?」
「ふざけるな。自分の国に帰れ。ったく、アイツらも何でこんなヤツを城に入れたんだ」
メイド達の方を見やりながらブツブツ言うシャルを、あいなはピシャリと止める。
「せっかく訪ねてきてくれた幼なじみに対してそんな言い方ないんじゃない?」
「お前はコイツの本性を知らないからそんなことが……!」
「ひどいよ、シャル。そんな、まるで僕が猫かぶりの性悪みたいな言い方」
ちっとも落ち込んだ様子ではないハロルドが、笑顔で口をはさむ。
「ありがとう、あいなさん。そんな風に言ってくれて」
「いっ、いえっ」
ルイスとはまた別の優しい系男子登場!と、あいなは心の片隅(かたすみ)で思った。
「あいなさん、シャルは不器用だけどとても優しい人なんだ。僕にきつく当たるのも悪気があってのことじゃない。大目(おおめ)に見てあげて?じっくり付き合うと、そのうちシャルの良さがわかってくると思うから」
ウィンクまでしてそんなことを言われたら、あいなはハロルドの言葉にウンと返さざるを得ない。
「お前……」
シャルは苦虫を噛(か)み潰(つぶ)したような表情でハロルドをにらむ。
「腹黒いな、相変わらず。とにかく、あいなに気安く話しかけるな。俺の婚約者だぞ」
「君はそんなに狭量(きょうりょう)な男だったかな?シャル」
「何とでも言え。行くゾ!」
あいなの手を引き、シャルは早足で庭園を抜けた。
珍しく、シャルが言いくるめられていた。しかも、物腰の柔らかい紳士的な美青年に。
「ぷっ」
思い出しただけで、あいなは笑いがもれた。
その後、あいなの部屋に戻った二人はソファーに向かい合って座った。
「アンタがあんなにやり込められるトコ、初めて見た!」
「初めて見たってほど、知り合って長くないだろ」
「言葉のアヤだよ。けど、ハロルドさんいい人だね。あの人もどっかの国の王子様なの?それっぽい衣装着てたし」
「アイツは、バロニクス帝国の第三皇子だ。王位継承権はほぼないに等しい。そのせいかノホホンとして見えるけど、何考えてんのか分からないヤツでな。俺は苦手だ」
「そう?すごい優しそうな人じゃん。アンタのこともさりげなくフォローしてたし。少なくとも、アンタよりは紳士的だし『王子!』って感じがした」
シャルのことを見直したものの、すぐさま態度を変えるのは難しかった。今までの仕返しとばかりに、あいなはハロルドを褒(ほ)めた。
「……面白くない」
「何が?」
「他の男ばっか褒めて、お前、楽しんでないか?」
「楽しんでるけど、それが何か?」
「お前っ!くぅぅ……」
「あいな様もようやく、シャル様の扱いに慣れたようで安心しました。お茶にしましょう」
執務室で仕事をしているはずのルイスがティーポットを乗せたワゴンを引いてあいな達の元に現れる。シャルはますますムッとした顔になり、「仕事を放り出して盗み聞きか?お前もたいがいだな、ルイス……」と、肩を落とす。
「おや、そのような不躾(ぶしつけ)な真似いたしませんよ。あいな様にお茶をお出しするのも私の仕事。ちなみに、執務室での仕事は、シャル様の分も合わせて全て片付けさせて頂きました。シャル様がどこぞで油を売っているものですから、仕方がありません」
「悪かったよっ。たく……」
一人、庭園に残されたハロルドは、シャルとあいなが出ていった城への入口を見つめ、つぶやく。
「……シャル。君は本当に鈍感だよ。罪深いくらいにね……」
今、ハロルドの瞳には影が差していた。それは、空に広がり始めた雲のせいではない。
「僕が君の恋の伏兵になっても、怒らないでね?って、それは無理な話かな。君はきっと、慌てふためくのだろうね。いや、激昂(げきこう)するのかな?」
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