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一瞬本気にしたものの、ハロルドが自分を好きなわけがない。そうとしか思えず、あいなは何事もなかったように笑った。
「そうやってからかうの禁止だよ?ハロルドがどんなにシャルのことを好きなのか知ってるもん。さっきの話聞いてても思ったし」
「あいな……」
信じてもらえないもどかしさで唇を引き結んだものの、あいながそういう反応を見せるのは至極(しごく)当然という気もして、ハロルドはそれ以上想いを伝えようとはしなかった。
「そうだよね。僕はつい最近までシャルのことが好きだったんだもんね。なのにこんなこと言っても、ね。節操なかったかな」
「そんな風に思わないけど、いきなり真面目な顔してそんなこと言うからビックリしたよ」
「ごめんね。今日はわりと強いお酒ばかり注文してしまったしね。今後はこうやって絡まないよう、気を付けるよ」
心なしか安堵(あんど)の表情を浮かべるあいなに気付きハロルドは悟(さと)った。自分の恋が実る可能性はゼロなのだと。
「あいなは将来いいお母さんになりそうだから、つい言いたくなっちゃった。いつか誰かにプロポーズする時の練習とでも思って?」
「練習する必要ないよ、上手だった!そのまま本番いってもきっと大丈夫!
でも、安心したよ。将来の結婚を考えられるってことは、シャルのこと、だいぶ吹っ切れたってことかなって。シャルと婚約破棄した私が言うのもなんだけど……」
「うん、吹っ切れたかもしれない。今もシャルのことは大好きだけど、ようやく恋愛感情抜きで見られるようになってきたかな。それより、婚約破棄ってどういうこと!?」
あいなの右手を見やり、ハロルドは険しい顔で尋ねる。
「あいな、城を出てからシャル達のこと何も言わないから……。話したくないんだろうし、今回のことには僕も深く触れないようにしようと思ってたんだけど、やっぱり訊(き)かずにはいられない。エトリアの指輪、どうしたの?」
「なくしちゃった」
「それはさすがにウソって分かるよ?あの指輪はなくそうと思ってなくせるものじゃないもの」
「だよね……」
バツが悪いと言うように苦笑し、あいなは黙りこくった。
(ハロルドはシャルとルイスの友達だもん。だから話せない。)
「話したら、シャル達と君の間で僕が板挟みになるとでも思ってる?」
「それはっ…!」
「そうなんだね。君は相変わらず清々しいくらい分かりやすいんだから」
うろたえるあいなを、ハロルドはジッと見つめる。
「君が城を出た日から、僕はすでに板挟み状態なんだよ。黙っておこうと思ってたんだけど、あの日、シャルとルイスが僕の元に訪ねてきたんだ。君の居場所を教えてほしいと頼まれたよ。もちろん言わなかったけど」
「……そうだったんだ……。迷惑かけてごめんね」
(ハロルドの顔パスでカスティタ城を出た後すぐ、ハロルドともバイバイするべきだった!)
大切な友達に迷惑をかけるのは心苦しい。あいなは後悔した。
「僕は自分の意思でここにいる。嫌々あいなの秘密に付き合ってるわけじゃない。黙っていなくなってもムダだからね?」
「えっ?」
「明日君があの店を辞めてはるか遠くの見知らぬ街に逃げ隠れたとしても、僕は君を探してしまうってこと。僕には君の気配を辿(たど)る能力があるってこと、忘れないでね?」
「そうだった…!」
「やっぱり、こっそり逃げる気だったんだ」
ハロルドはいじけ、目を細める。
「だって……。もう、誰にも甘えたくないから。私は私のしでかしたことにケジメをつけるために城を出た。それなのに今また誰かに頼ったら意味ない。それに、こうしてハロルドと会って楽しく過ごすだけで幸せなんだ。これ以上は望まない!」
涙をこらえ、あいなは両手を強く握る。
「本当に、あいなは幸せなの?」
「幸せだよ。働ける場所があって、衣食住にも困らない。こうやって気兼(きが)ねなく話せる友達がいてくれるんだから」
「だったらどうして、そんな泣きそうな顔をするの?幸せだって言うのなら満面の笑みを見せてくれないと信じられないよ」
ハロルドの言う通りだった。あいなは、抑え込んだ涙が頬に伝うのをごまかせないでいる。
(本当は寂しいよ……。シャルとルイスがいない今は、心がカサカサになっていく感じがするの。いつもいつも、ただ、寂しい……。色んなことを気にせず自由に会いたいし、贅沢(ぜいたく)だって罵(ののし)られるくらい甘えたい。)
「こうなったのは自業自得なの。だから、泣く資格ない……」
ハロルドは眉を下げ、あいなの背中を撫(な)でる。
「責めるような言い方をしたね。……分かってほしかったんだ。君はもっと周りに甘えるべきだよ」
「……」
「黙っていたら状況が変わるリスクは減るかもしれないけど、あいなが苦しいままだよ?何にせよ、そんな気持ちで前に進めるとは思えない」
「ハロルド……」
「シャル達には絶対言わないから、話してほしい。あいながつらそうにしてるの、つらいよ」
「……!!」
あいなは、秋葉のことを思い出した。
(秋葉に龍河(りゅうが)のこと打ち明けられた時、すごく寂しかった。私は今、ハロルドにそんな思いをさせてるってこと?)
それは不本意だ。
誰にも言うなとカロスに念を押されたがそれを無視してでも、友達に頼られたいというハロルドの想いに、あいなは全力で応えたかった。全てを話したら軽蔑されるかもしれないという不安もあったが、そうなってもいいと覚悟し、口を開く。
「シャルとの結婚を、カロス国王に反対されたの」
「エトリアの指輪をしていないのも、もしかしてそのせい?」
「うん。カロス国王には指輪を外す力があるんだって。シャルやルイスもそのことは知らないみたいだけど」
「僕も知らなかったよ。極秘事項なんだろうね……」
カロスとの間に起きたこと。シャルとルイスの間で揺れる自分の気持ちを、あいなは隠さず話した。
「この手から指輪が外れたことにはじめは戸惑ったし、カロス国王にも『カスティタ城に居たい』ってワガママ言っちゃったけど、よく考えたら自分が恥ずかしくなった。間違ってる私が、カスティタ城に居座るなんてできない。カロス国王は正しいよ」
「正しいとか正しくないとか、誰が決めるんだろうね?」
「この場合、カロス国王…?」
「そうかな?僕は違うと思う。だって、国王とはいえカロス様も人の子だよ?常に正しい思考で動くとは限らない。むしろ、間違うことも当たり前にあるんじゃないかな。逆に訊(き)くけど、あいなが自分のことを間違ってると思うのはなんで?」
「それは、シャルだけを見れなかったから…!ルイスと二股(ふたまた)したんだよ?一途じゃないんだよ?最低なんだよ……。ハロルドもそう思うでしょ?」
緊張した面持ちで語気を強めるあいなに対し、ハロルドは穏やかな顔をしている。
「最低?あいなが?全然思わないよ」
「そう、なの?こんな話したら嫌われると思ってたのに……」
「今さらだよ。君とルイスの距離感が近くなってることも察してるし、それに、君達が僕の所へ泊まった夜、君は二人への想いを語っていたじゃない」
シュークリームを使った告白ゲームの話である。
「シャルとルイス、幸せの極みって顔をしていたよね。あの時、僕は人知れず仲間外れ気分を味わったんだよ?感動したのも本当だけど」
「あの話、まだ覚えてたの!?」
あいなは顔を紅潮させた。自分の語ったことが一字一句脳内で再生され、全身が熱くなる。夜ゆえナチュラルハイになっていたのかもしれない。とはいえ、何てことを言ってしまったんだ!
「たくさんワイン飲んで酔ってるから私が何言っても次の日には忘れるーって言ってなかったっけ!?」
「あんなの、あいなに罰ゲームさせるためのウソだよ。シャルとルイスはお酒に強いだなんて本当のことを言ったら、君は絶対口ごもってたでしょ?」
「そっ、そんなぁ!ハロルドのウソつきっ!」
「今さら気付いたの?僕はウソつきだよ?特技と言ってもいいかな」
「そんなの特技じゃないっ!あの時本当に恥ずかしかったんだからね!?」
「いいじゃない。君のおかげで皆が楽しめたんだから」
イタズラで陽気なハロルドの声音にやられた感を覚えつつ、あいなは今自分が泣きやんでいることに気付いた。苦しみに溢れた涙で濡れていた頬は、優しい夜風に吹かれサラリと乾く。心まで軽くなったと同時に、これまで見る余裕のなかった夜空に視線を引き付けられる。綺麗に瞬く無数の星が、温かく二人を見守っているようだ。
「綺麗だね、星。あいなの明るい未来が見えるよ」
「星読みの力使ってる?」
「軽くね」
晴れた夜空を見上げたまま、ハロルドはつぶやく。
「やっぱり君に涙は似合わないね。でも、僕の前では泣いてもいいんだよ」
「ハロルド……」
「シャルとルイスも好きだけど、僕はあいなのことも好きなんだ。そしてやっぱり、君達に幸せになってほしいと思ってる」
手のひらで天を示し、ハロルドはあいなを見つめた。
「星は正直なんだ。でも、人は違う。弱さゆえにウソをつく。他人にはもちろん、自分自身に対しても」
「そうだね」
「シャルの星もルイスの星も、永遠に君を求める。僕の見立てだから、アテにはならないかもしれないけど」
「そんなことない!ハロルドは頑張って修行してるんだもん、信じるよ!」
自分の気持ちをを差し置いて、あいなは強くそう言った。ハロルドに自信を持ってほしかったのだ。それなのに、いざそう口にしたら、そこに、隠していた自分の本音が重なっているような気がした。
「ありがとう。励まされついでにもうひとついい?」
「うん…?」
「城を出た君の気持ちには共感するし、僕にはそれをとやかく言うつもりはない。ただ、シャルの気持ちは忘れないでいてあげて?」
「……シャルの気持ち…?」
「カロス様にもカロス様の考えがあるのは分かる。ただ、僕は、そんなことでダメになる二人だとは思いたくないんだ。これでもシャルに初恋を捧げた身だから」
「うん……」
「君がカスティタ城を後にした日の夜、僕を訪ねてきたシャルは言ったんだ。バロニクス帝国が欲しがるロールシャイン王国の領土や秘密の魔法技術を教えるから、それと引き換えにあいなの居場所を教えてほしいって。床に頭がつくほどの土下座をして」
「えっ!?」
それがどんなに無謀なことか、王子の仕事や立場を知らないあいなもさすがに理解した。
(何考えてるの!?シャルは王子でしょ!?)
無鉄砲なシャルの言動に驚いてしまう。それと同時に、そこまでしてくれるシャルの気持ちが嬉しくて、恋しいとすら思ってしまった。おさまっていた涙が再びこぼれてしまう。
「僕にはそんな権限ないから、諦めて帰ってもらったけど。公の場であんなことをされなくて良かったと思ってる。シャルの立場が危うくなるどころじゃ済まない発言だからね」
「私なんかのために、そんなこと……。バカだよ」
「バカになってしまうくらい、あいなのことが好きなんだよ、シャルは」
ハロルドに言われるまでもなく、あいなはシャルの気持ちを感じた。痛く優しく心に染み渡る愛情。それと同時に胸を巣食う灰色の恐怖。愛されることが嬉しいのに、なぜだか同時に怖いと感じてしまう。
「色々教えてくれてありがとう。今後のこと、じっくり考えてみるね」
泣き止むまでハロルドを待たせるのも悪い。あいなは言うなり歩きだし、トボトボとした足取りで店に帰ろうとした。
「遅いし、送るよ」
「ありがとう。でも大丈夫。すぐそこだし、もしもの時は護身術があるから」
「空手だっけ?」
「うんっ」
空手のポーズを取り、あいなは勇ましく笑ってみせる。その目にもう涙は浮かんでいなかった。ハロルドはクスリと笑い、
「ゆっくり寝るんだよ。おやすみ!」
名残惜(なごりお)しげに彼女の背中を見送った。
「ハロルドもね!おやすみっ」
遠ざかるあいなの姿を噴水の前で見つめていると、一瞬、何者かの気配を感じた。
「誰?」
答えはない。
嫌な予感がして、ハロルドはあいなの働く店の前まで駆けた。
「ハロルド様。こちらは異常ありません」
夜の闇に隠れ、バロニクス帝国専属の騎士が告げた。いつでも剣を抜けるよう警戒体勢を取っている。
「引き続き彼女の警護をいたします」
「よろしく頼むよ。何があっても彼女を護ってね」
執事だけでは不安なので、夜間は護衛専門の騎士にも見張りを頼むことにした。
カロスの心情は解(わか)らないが、彼はなぜか、いまだにシャルとあいなの婚約解消を世に発表していない。それはすなわち、あいなの命の危険が増したということでもあった。
(シャルと結婚したがっていたお姫様はたくさんいる。カスティタ城の内情を知らない彼女達の関係者があいなを見付けたらどうなるか……。)
婚礼パーティーの日まであいなの姿を公に伏せていたのもそういう事情だった。正式な妻になるその日まで、ロールシャイン王国の関係者はあいなを護る義務があった。カロスの気が変わった今ではそれも望めないので、ハロルドは自国の騎士達にあいなを護るよう指示していた。
(王族の人間として生まれて良かったと、今初めて思ったよ。あいな。)
自分の立場や周囲の状況を知るよしもないあいなは、ハロルドと別れた足で店の二階にある居住スペースに戻った。まだ見慣れない狭い室内は、圧迫感をもってあいなの孤独を深めるようである。
(頭の中、グチャグチャだ……。)
長年放置されていたせいで埃(ほこり)っぽい部屋を軽く掃除することで気持ちを落ち着けようとした。床が綺麗になった頃、高ぶっていた感情が心なしかスッキリするのを感じた。
今なら少しは冷静に考えられるかもしれない……。カスティタ城を出た理由を、改めて深く考えた。
(カロス国王に指輪を外されたから?ううん。このままじゃいけないと思ったから、私は自分の意思で城を出てきたんだ。でも、それだけじゃない気がする。強く何かを思って、こうして外に飛び出したはず。でも、思い出せない。どうしてだっけ…?)
つい先日のことなのに、自分の過去の感情を思い出せない。人並みの記憶力はあるつもりだったので、妙な感じがしてしまう。
(ま、いっか!ハロルドには今後のこと考えるって言っちゃったけど、やっぱり深く考えたくない。)
現実逃避。あいなは、入浴も忘れてベッドにもぐる。
これまで、強い意思を以(もっ)て物事の選択をしてきたあいなに珍しい、消極的な心情だった。
その夜、シャルが眠ったのを見計らい、ルイスは足音静かに宿を出た。万が一の時に備え、シャルを護るための魔法防御陣を展開してから外へ出る。
あいなの居場所はおおよそ見当がついているが、確証もない。
城下町は広い。昼間の巡業中には回れない地域を中心に、ルイスは城下町の飲食店と店員の居住地をしらみ潰(つぶ)しに探し回った。魔法陣で魔法使いの空間転移を防いでいる店もけっこうあるが、そうしている店は案外少ない。平和な町ゆえか、防犯意識は高くないようだ。鍵を使わず屋内に侵入できるのはスムーズなのでありがたい。
ただ、空間転移の魔法は便利な分、魔力消耗も激しい。魔力は睡眠と食事で回復するということは重々承知だが、睡眠を削ってでもあいなを見つけたかった。
(あいな様が城を出た理由は、きっと――――。だからこそ、このまま放っておくなんて出来ない。)
直接話したいが、それが無理なら、せめて彼女の無事を確かめたい。
今すぐこの両腕であいなを力いっぱい抱きしめたいが、こうなった今、そんなことは言っていられない。彼女を見つけられればそれでいいと思った。切実に。たとえあいながシャルを求めても、シャルを求めながら自分を求めてきても、最終的には彼女の希望を叶えてあげたいと考えている。どのような形であれ、彼女が望むもので満たしてあげたいとルイスは思った。
何軒かの飲食店を見回ったが、残念ながらあいなを見つけ出すことは出来なかった。あいなはもっと別の場所にいる。それが分かっただけで良しとするべきか。
さきほどから気になっているのだが、夜にも関わらず、城下町にはカスティタ城の兵士や執事達が点々としていた。彼らと鉢(はち)合わせてしまわないよう、ルイスは神経を配る。
(カロス様の命令が下ったのでしょう、シャル様の捜索が始まってしまったようですね……。国民の方々にシャル様の不在を知られないよう、こうして夜に動いているんでしょう。明日からは、シャル様共々さらに大人しく動くことにしましょうか。)
もうすぐ夜が明ける。
捜索続行したいのをグッとこらえ、ルイスは宿に戻った。
「そうやってからかうの禁止だよ?ハロルドがどんなにシャルのことを好きなのか知ってるもん。さっきの話聞いてても思ったし」
「あいな……」
信じてもらえないもどかしさで唇を引き結んだものの、あいながそういう反応を見せるのは至極(しごく)当然という気もして、ハロルドはそれ以上想いを伝えようとはしなかった。
「そうだよね。僕はつい最近までシャルのことが好きだったんだもんね。なのにこんなこと言っても、ね。節操なかったかな」
「そんな風に思わないけど、いきなり真面目な顔してそんなこと言うからビックリしたよ」
「ごめんね。今日はわりと強いお酒ばかり注文してしまったしね。今後はこうやって絡まないよう、気を付けるよ」
心なしか安堵(あんど)の表情を浮かべるあいなに気付きハロルドは悟(さと)った。自分の恋が実る可能性はゼロなのだと。
「あいなは将来いいお母さんになりそうだから、つい言いたくなっちゃった。いつか誰かにプロポーズする時の練習とでも思って?」
「練習する必要ないよ、上手だった!そのまま本番いってもきっと大丈夫!
でも、安心したよ。将来の結婚を考えられるってことは、シャルのこと、だいぶ吹っ切れたってことかなって。シャルと婚約破棄した私が言うのもなんだけど……」
「うん、吹っ切れたかもしれない。今もシャルのことは大好きだけど、ようやく恋愛感情抜きで見られるようになってきたかな。それより、婚約破棄ってどういうこと!?」
あいなの右手を見やり、ハロルドは険しい顔で尋ねる。
「あいな、城を出てからシャル達のこと何も言わないから……。話したくないんだろうし、今回のことには僕も深く触れないようにしようと思ってたんだけど、やっぱり訊(き)かずにはいられない。エトリアの指輪、どうしたの?」
「なくしちゃった」
「それはさすがにウソって分かるよ?あの指輪はなくそうと思ってなくせるものじゃないもの」
「だよね……」
バツが悪いと言うように苦笑し、あいなは黙りこくった。
(ハロルドはシャルとルイスの友達だもん。だから話せない。)
「話したら、シャル達と君の間で僕が板挟みになるとでも思ってる?」
「それはっ…!」
「そうなんだね。君は相変わらず清々しいくらい分かりやすいんだから」
うろたえるあいなを、ハロルドはジッと見つめる。
「君が城を出た日から、僕はすでに板挟み状態なんだよ。黙っておこうと思ってたんだけど、あの日、シャルとルイスが僕の元に訪ねてきたんだ。君の居場所を教えてほしいと頼まれたよ。もちろん言わなかったけど」
「……そうだったんだ……。迷惑かけてごめんね」
(ハロルドの顔パスでカスティタ城を出た後すぐ、ハロルドともバイバイするべきだった!)
大切な友達に迷惑をかけるのは心苦しい。あいなは後悔した。
「僕は自分の意思でここにいる。嫌々あいなの秘密に付き合ってるわけじゃない。黙っていなくなってもムダだからね?」
「えっ?」
「明日君があの店を辞めてはるか遠くの見知らぬ街に逃げ隠れたとしても、僕は君を探してしまうってこと。僕には君の気配を辿(たど)る能力があるってこと、忘れないでね?」
「そうだった…!」
「やっぱり、こっそり逃げる気だったんだ」
ハロルドはいじけ、目を細める。
「だって……。もう、誰にも甘えたくないから。私は私のしでかしたことにケジメをつけるために城を出た。それなのに今また誰かに頼ったら意味ない。それに、こうしてハロルドと会って楽しく過ごすだけで幸せなんだ。これ以上は望まない!」
涙をこらえ、あいなは両手を強く握る。
「本当に、あいなは幸せなの?」
「幸せだよ。働ける場所があって、衣食住にも困らない。こうやって気兼(きが)ねなく話せる友達がいてくれるんだから」
「だったらどうして、そんな泣きそうな顔をするの?幸せだって言うのなら満面の笑みを見せてくれないと信じられないよ」
ハロルドの言う通りだった。あいなは、抑え込んだ涙が頬に伝うのをごまかせないでいる。
(本当は寂しいよ……。シャルとルイスがいない今は、心がカサカサになっていく感じがするの。いつもいつも、ただ、寂しい……。色んなことを気にせず自由に会いたいし、贅沢(ぜいたく)だって罵(ののし)られるくらい甘えたい。)
「こうなったのは自業自得なの。だから、泣く資格ない……」
ハロルドは眉を下げ、あいなの背中を撫(な)でる。
「責めるような言い方をしたね。……分かってほしかったんだ。君はもっと周りに甘えるべきだよ」
「……」
「黙っていたら状況が変わるリスクは減るかもしれないけど、あいなが苦しいままだよ?何にせよ、そんな気持ちで前に進めるとは思えない」
「ハロルド……」
「シャル達には絶対言わないから、話してほしい。あいながつらそうにしてるの、つらいよ」
「……!!」
あいなは、秋葉のことを思い出した。
(秋葉に龍河(りゅうが)のこと打ち明けられた時、すごく寂しかった。私は今、ハロルドにそんな思いをさせてるってこと?)
それは不本意だ。
誰にも言うなとカロスに念を押されたがそれを無視してでも、友達に頼られたいというハロルドの想いに、あいなは全力で応えたかった。全てを話したら軽蔑されるかもしれないという不安もあったが、そうなってもいいと覚悟し、口を開く。
「シャルとの結婚を、カロス国王に反対されたの」
「エトリアの指輪をしていないのも、もしかしてそのせい?」
「うん。カロス国王には指輪を外す力があるんだって。シャルやルイスもそのことは知らないみたいだけど」
「僕も知らなかったよ。極秘事項なんだろうね……」
カロスとの間に起きたこと。シャルとルイスの間で揺れる自分の気持ちを、あいなは隠さず話した。
「この手から指輪が外れたことにはじめは戸惑ったし、カロス国王にも『カスティタ城に居たい』ってワガママ言っちゃったけど、よく考えたら自分が恥ずかしくなった。間違ってる私が、カスティタ城に居座るなんてできない。カロス国王は正しいよ」
「正しいとか正しくないとか、誰が決めるんだろうね?」
「この場合、カロス国王…?」
「そうかな?僕は違うと思う。だって、国王とはいえカロス様も人の子だよ?常に正しい思考で動くとは限らない。むしろ、間違うことも当たり前にあるんじゃないかな。逆に訊(き)くけど、あいなが自分のことを間違ってると思うのはなんで?」
「それは、シャルだけを見れなかったから…!ルイスと二股(ふたまた)したんだよ?一途じゃないんだよ?最低なんだよ……。ハロルドもそう思うでしょ?」
緊張した面持ちで語気を強めるあいなに対し、ハロルドは穏やかな顔をしている。
「最低?あいなが?全然思わないよ」
「そう、なの?こんな話したら嫌われると思ってたのに……」
「今さらだよ。君とルイスの距離感が近くなってることも察してるし、それに、君達が僕の所へ泊まった夜、君は二人への想いを語っていたじゃない」
シュークリームを使った告白ゲームの話である。
「シャルとルイス、幸せの極みって顔をしていたよね。あの時、僕は人知れず仲間外れ気分を味わったんだよ?感動したのも本当だけど」
「あの話、まだ覚えてたの!?」
あいなは顔を紅潮させた。自分の語ったことが一字一句脳内で再生され、全身が熱くなる。夜ゆえナチュラルハイになっていたのかもしれない。とはいえ、何てことを言ってしまったんだ!
「たくさんワイン飲んで酔ってるから私が何言っても次の日には忘れるーって言ってなかったっけ!?」
「あんなの、あいなに罰ゲームさせるためのウソだよ。シャルとルイスはお酒に強いだなんて本当のことを言ったら、君は絶対口ごもってたでしょ?」
「そっ、そんなぁ!ハロルドのウソつきっ!」
「今さら気付いたの?僕はウソつきだよ?特技と言ってもいいかな」
「そんなの特技じゃないっ!あの時本当に恥ずかしかったんだからね!?」
「いいじゃない。君のおかげで皆が楽しめたんだから」
イタズラで陽気なハロルドの声音にやられた感を覚えつつ、あいなは今自分が泣きやんでいることに気付いた。苦しみに溢れた涙で濡れていた頬は、優しい夜風に吹かれサラリと乾く。心まで軽くなったと同時に、これまで見る余裕のなかった夜空に視線を引き付けられる。綺麗に瞬く無数の星が、温かく二人を見守っているようだ。
「綺麗だね、星。あいなの明るい未来が見えるよ」
「星読みの力使ってる?」
「軽くね」
晴れた夜空を見上げたまま、ハロルドはつぶやく。
「やっぱり君に涙は似合わないね。でも、僕の前では泣いてもいいんだよ」
「ハロルド……」
「シャルとルイスも好きだけど、僕はあいなのことも好きなんだ。そしてやっぱり、君達に幸せになってほしいと思ってる」
手のひらで天を示し、ハロルドはあいなを見つめた。
「星は正直なんだ。でも、人は違う。弱さゆえにウソをつく。他人にはもちろん、自分自身に対しても」
「そうだね」
「シャルの星もルイスの星も、永遠に君を求める。僕の見立てだから、アテにはならないかもしれないけど」
「そんなことない!ハロルドは頑張って修行してるんだもん、信じるよ!」
自分の気持ちをを差し置いて、あいなは強くそう言った。ハロルドに自信を持ってほしかったのだ。それなのに、いざそう口にしたら、そこに、隠していた自分の本音が重なっているような気がした。
「ありがとう。励まされついでにもうひとついい?」
「うん…?」
「城を出た君の気持ちには共感するし、僕にはそれをとやかく言うつもりはない。ただ、シャルの気持ちは忘れないでいてあげて?」
「……シャルの気持ち…?」
「カロス様にもカロス様の考えがあるのは分かる。ただ、僕は、そんなことでダメになる二人だとは思いたくないんだ。これでもシャルに初恋を捧げた身だから」
「うん……」
「君がカスティタ城を後にした日の夜、僕を訪ねてきたシャルは言ったんだ。バロニクス帝国が欲しがるロールシャイン王国の領土や秘密の魔法技術を教えるから、それと引き換えにあいなの居場所を教えてほしいって。床に頭がつくほどの土下座をして」
「えっ!?」
それがどんなに無謀なことか、王子の仕事や立場を知らないあいなもさすがに理解した。
(何考えてるの!?シャルは王子でしょ!?)
無鉄砲なシャルの言動に驚いてしまう。それと同時に、そこまでしてくれるシャルの気持ちが嬉しくて、恋しいとすら思ってしまった。おさまっていた涙が再びこぼれてしまう。
「僕にはそんな権限ないから、諦めて帰ってもらったけど。公の場であんなことをされなくて良かったと思ってる。シャルの立場が危うくなるどころじゃ済まない発言だからね」
「私なんかのために、そんなこと……。バカだよ」
「バカになってしまうくらい、あいなのことが好きなんだよ、シャルは」
ハロルドに言われるまでもなく、あいなはシャルの気持ちを感じた。痛く優しく心に染み渡る愛情。それと同時に胸を巣食う灰色の恐怖。愛されることが嬉しいのに、なぜだか同時に怖いと感じてしまう。
「色々教えてくれてありがとう。今後のこと、じっくり考えてみるね」
泣き止むまでハロルドを待たせるのも悪い。あいなは言うなり歩きだし、トボトボとした足取りで店に帰ろうとした。
「遅いし、送るよ」
「ありがとう。でも大丈夫。すぐそこだし、もしもの時は護身術があるから」
「空手だっけ?」
「うんっ」
空手のポーズを取り、あいなは勇ましく笑ってみせる。その目にもう涙は浮かんでいなかった。ハロルドはクスリと笑い、
「ゆっくり寝るんだよ。おやすみ!」
名残惜(なごりお)しげに彼女の背中を見送った。
「ハロルドもね!おやすみっ」
遠ざかるあいなの姿を噴水の前で見つめていると、一瞬、何者かの気配を感じた。
「誰?」
答えはない。
嫌な予感がして、ハロルドはあいなの働く店の前まで駆けた。
「ハロルド様。こちらは異常ありません」
夜の闇に隠れ、バロニクス帝国専属の騎士が告げた。いつでも剣を抜けるよう警戒体勢を取っている。
「引き続き彼女の警護をいたします」
「よろしく頼むよ。何があっても彼女を護ってね」
執事だけでは不安なので、夜間は護衛専門の騎士にも見張りを頼むことにした。
カロスの心情は解(わか)らないが、彼はなぜか、いまだにシャルとあいなの婚約解消を世に発表していない。それはすなわち、あいなの命の危険が増したということでもあった。
(シャルと結婚したがっていたお姫様はたくさんいる。カスティタ城の内情を知らない彼女達の関係者があいなを見付けたらどうなるか……。)
婚礼パーティーの日まであいなの姿を公に伏せていたのもそういう事情だった。正式な妻になるその日まで、ロールシャイン王国の関係者はあいなを護る義務があった。カロスの気が変わった今ではそれも望めないので、ハロルドは自国の騎士達にあいなを護るよう指示していた。
(王族の人間として生まれて良かったと、今初めて思ったよ。あいな。)
自分の立場や周囲の状況を知るよしもないあいなは、ハロルドと別れた足で店の二階にある居住スペースに戻った。まだ見慣れない狭い室内は、圧迫感をもってあいなの孤独を深めるようである。
(頭の中、グチャグチャだ……。)
長年放置されていたせいで埃(ほこり)っぽい部屋を軽く掃除することで気持ちを落ち着けようとした。床が綺麗になった頃、高ぶっていた感情が心なしかスッキリするのを感じた。
今なら少しは冷静に考えられるかもしれない……。カスティタ城を出た理由を、改めて深く考えた。
(カロス国王に指輪を外されたから?ううん。このままじゃいけないと思ったから、私は自分の意思で城を出てきたんだ。でも、それだけじゃない気がする。強く何かを思って、こうして外に飛び出したはず。でも、思い出せない。どうしてだっけ…?)
つい先日のことなのに、自分の過去の感情を思い出せない。人並みの記憶力はあるつもりだったので、妙な感じがしてしまう。
(ま、いっか!ハロルドには今後のこと考えるって言っちゃったけど、やっぱり深く考えたくない。)
現実逃避。あいなは、入浴も忘れてベッドにもぐる。
これまで、強い意思を以(もっ)て物事の選択をしてきたあいなに珍しい、消極的な心情だった。
その夜、シャルが眠ったのを見計らい、ルイスは足音静かに宿を出た。万が一の時に備え、シャルを護るための魔法防御陣を展開してから外へ出る。
あいなの居場所はおおよそ見当がついているが、確証もない。
城下町は広い。昼間の巡業中には回れない地域を中心に、ルイスは城下町の飲食店と店員の居住地をしらみ潰(つぶ)しに探し回った。魔法陣で魔法使いの空間転移を防いでいる店もけっこうあるが、そうしている店は案外少ない。平和な町ゆえか、防犯意識は高くないようだ。鍵を使わず屋内に侵入できるのはスムーズなのでありがたい。
ただ、空間転移の魔法は便利な分、魔力消耗も激しい。魔力は睡眠と食事で回復するということは重々承知だが、睡眠を削ってでもあいなを見つけたかった。
(あいな様が城を出た理由は、きっと――――。だからこそ、このまま放っておくなんて出来ない。)
直接話したいが、それが無理なら、せめて彼女の無事を確かめたい。
今すぐこの両腕であいなを力いっぱい抱きしめたいが、こうなった今、そんなことは言っていられない。彼女を見つけられればそれでいいと思った。切実に。たとえあいながシャルを求めても、シャルを求めながら自分を求めてきても、最終的には彼女の希望を叶えてあげたいと考えている。どのような形であれ、彼女が望むもので満たしてあげたいとルイスは思った。
何軒かの飲食店を見回ったが、残念ながらあいなを見つけ出すことは出来なかった。あいなはもっと別の場所にいる。それが分かっただけで良しとするべきか。
さきほどから気になっているのだが、夜にも関わらず、城下町にはカスティタ城の兵士や執事達が点々としていた。彼らと鉢(はち)合わせてしまわないよう、ルイスは神経を配る。
(カロス様の命令が下ったのでしょう、シャル様の捜索が始まってしまったようですね……。国民の方々にシャル様の不在を知られないよう、こうして夜に動いているんでしょう。明日からは、シャル様共々さらに大人しく動くことにしましょうか。)
もうすぐ夜が明ける。
捜索続行したいのをグッとこらえ、ルイスは宿に戻った。
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