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シャルと龍河(りゅうが)がダイニングに行くと、あいなが駆け寄ってきた。シャルの口元を見て、ケガに気付く。
「シャル、それ…!」
「何でもない。久しぶりに家族水入らずなのに呼んでくれてありがとな」
穏やかに笑うシャルを見て、龍河がサラッと告げ口をする。
「それ、父さんが殴ったせい」
あいなは眉を寄せ、テーブルについている勲(いさむ)を見た。
「お父さん、本当?」
「そ、それはっ……」
「はっきり言って?」
「彼の顔を見たら頭にきて、つい……。あいなのためなんだ、怒らないでくれ」
シャルに対して怒ってばかりいたとは思えないほど、勲はおどおどし、おとなしくなる。
「怒るよ!何があっても暴力で解決するのは良くないって普段から言ってるのはお父さんだよ!?」
「そうだよ。見せられる方もドン引きだからマジカンベンして」
珍しく、龍河も姉に賛同する。
「お父さんの言いつけ守って、私は腹立つことあってもよほどのことじゃなきゃ空手使わないようにしてるんだからね!?なのにお父さんはっ…!」
「そうだよな、父さんが悪かったよ……。ごめんな、あいな」
「私じゃなくてシャルに謝って!」
「シャル君。さっきはすまなかった。殴ったりして……」
勲はタジタジである。シャルはその光景に目をしばたかせつつ、勲に近寄った。
「いえ、気にしていません……。悪いのは私ですから」
「良かったね、シャル王子。ウチの親厳しいけど、その分姉ちゃんには甘いとこもあるから、もう殴られることはないと思うよ」
龍河はシャルの耳元でそんなことをつぶやいた。いつの間にか敬語も取れて友人じみた話し方になっている。
「シャル王子、座ろうよ。姉ちゃんの隣に行けば?」
「そうだな。ありがとう。龍河もこっちに来たらどうだ?」
「うん、そうしよっかな」
二人の様子を見ていた麻子が、
「あなたたち、ずいぶん仲がいいのね」
シャルと龍河の関係に関心を寄せる。
「はい。実は先日、龍河さんにもこちらに来ていただいていて、それから良くしていただいています」
「秋葉さんと一緒にこっち来てたって話したでしょ?その時に、シャル王子とはちょっと話した」
「そう。さっきも、龍河はシャル君を庇(かば)ってたものね。お友達になったの?」
麻子の質問を受け、龍河とシャルは互いの顔を見合わせた。
「いちいち確認してないけど、友達ってことでいいんじゃない?シャル王子のこと、普通に好きだし」
「お友達……。そう思っていただけるのなら私も光栄です」
「まあ、姉ちゃんと結婚したら友達っていうより兄なんだけどね」
「そ、そっか!そうだよな。俺にも弟ができるのか!なんかくすぐったいが嬉しいな」
照れくさそうに笑い、シャルは言った。
「私は一人っ子なんです。それを不満に思うことは特になかったのですが、兄弟がいたらどんな生活になっていたのだろうと想像することは昔からよくあって……。龍河君のように頼もしいお方が私の身内になるかもしれないと考えただけで、幸せな気持ちになります」
ストレートで飾り気のないシャルの言葉に、龍河は顔を赤くして照れた。
「ちょ、君付けとかやめて?呼び捨てでいいよ、キモイから」
「キモイって何だ?」
「気持ち悪いって意味だよ」
「日本の言葉は難しいな。でも覚えておく。コミュニケーションを取るためには必要なことだからな」
「気を付ける観点が違うって」
その様子に、麻子だけでなく勲も、みるみる表情を和らげていった。ピリピリした空気が消えたことにあいなは内心ホッとし、両親に言った。
「シャルは誰とでもこんな感じ。何もせずにパッと相手の心を開かせる力があるの。すごいよね」
「そうね。見ていてよく分かるわ。あいなとシャル君はそういうところがよく似ているわね」
「そうかな?」
「あいなもそうでしょ?昔から誰とでもすぐお友達になっちゃうの」
麻子は微笑し、昔を懐かしむように語った。
「遠足や社会見学の集合写真を見ると、そこに映るあいなはいつも楽しそうに笑ってた。それを見るたび元気をもらってたのよ。お母さんはどちらかというと人見知りな方だったからママ友作りもうまく出来るか分からなくて、あいなを育ててる時も最初は不安でいっぱいだったんだけど、あいなが人を惹き付けてくれたおかげで気負わず人と付き合えたし、楽しい生活を送れたわ」
「お母さん、そんなこと考えてたんだ。知らなかったよ」
母親のそんな胸の内を、あいなはこの時初めて知った。
「あいなの母親でいられて良かった。そう思ってる」
「お母さん……」
「あいなならきっと、どこへ行っても素敵なお嫁さんになれる。周りの人を大切にしているあいなのこと、お母さんは誇りに思ってるから」
心なしか寂しそうな顔で笑い食事をする麻子に、シャルは言った。
「私達が結婚しても親子の縁は一生です。決して切れることはありません。もしお母様達さえよろしければ、いつか一緒にこの城に住んでいただけませんか?もちろん、お望みとあらば結婚後すぐにでも!」
シャルの気持ちを嬉しく思いつつ、麻子は首を横に振った。
「ありがとう。でも、その気持ちだけで充分よ。あいなが結婚したら、そこからはシャル君とあいなで新しい家族、新しい道を作っていくべき。私達が居たらよけいな口出しをしちゃうかもしれないしね。そんなの嫌でしょ?」
「私は大丈夫です」
「ありがとう、シャル君。娘への気持ちがウソではないことは分かったわ。失礼なことを言うけど、あなたは見た目で損するタイプね」
「はい。父にもよく言われます」
気分を害することなく、むしろ素直な心持ちでシャルはうなずく。
「シャル君に対する第一印象はあまり良くなかったのよ。人を見た目で判断するのは良くないと分かってるんだけど、どうしても、娘を持つとそういうのに敏感になってしまうものなの。あなたは派手な身なりをしているし、王子様だっていうし、流暢(りゅうちょう)に話すし、女性に不自由しなさそうな、その……。軽薄な青年にしか見えなかったのよね」
「母さん、わりと毒舌だね」
苦笑し、龍河がボソッとつっこむ。
「シャル王子が遊び人とか、あり得なさすぎ。ウケる…!」
ワインを一口飲み、麻子は言った。
「ひどいことばかり言ってごめんなさいね」
「いえ。遠慮なく言っていただけて嬉しいくらいです。そういうことを言ってくれる人はなかなかいないので」
「今すぐ結婚させてあげるわけにはいかないけど、あなたの誠実さは伝わってきたわ。あいなのこと、よろしくお願いします」
麻子の目には涙がにじんでいた。勲もワインを飲んで悲しみをごまかしている。娘の結婚。いつかこんな日が来ると覚悟はしていたが、いざその時が来ると、祝福するより先にひどく寂しい気持ちになった。
「シャル王子、良かったね。もうこれ、結婚認められたようなもんだよ」
龍河もどこか寂しそうな顔で明るくそう言った。
「皆……」
いつもそばに居た家族の知らなかった一面に、あいなは胸がしめつけられた。まっさらな気持ちでシャルとの結婚を宣言できないのがつらい。
(私の心には、シャルとルイスが居る……)
シャルとの結婚を受け入れた両親を前に、そんなことは言っていられなくなってしまった。
その日の夜。両親や龍河と同じ豪華な客室に泊まることになったものの、あいなだけは寝付けずにいた。家族を起こしてしまわないようそっと扉を閉め、静かな足取りで廊下を歩き中庭に向かう。
いつかシャルに連れてきてもらったエトリアの泉。その水面に自分の姿を映すと最良の伴侶に出会えるという言い伝えがある。
「私の運命の人は誰……?」
泉に向かって問いかけた。
「シャルのことも好き。ルイスのことも好き。胸の中で想うだけなら許されるのかもしれないけど、結婚となれば話は別だよね?」
先祖エトリアの魔力が宿っていると言われるエトリアの指輪は、今はこの指にない。
「エトリア様。私に、最良の伴侶を決める勇気を下さい。お願いします……」
両手を胸の前で組み、祈った。静かな夜闇。緑豊かな庭の木々が風に揺れる。泉の水面に反射した月の光が体に当たり、まるで海の中にいるかのような錯覚をした。その現象が、まるでここに居るはずのないエトリアの返事に思え、あいなの気持ちは少しだけ浮上する。
「きれい……。エトリア様は、どんな人と結ばれたんですか?」
眠れずにいるのはあいなだけではなかった。シャルとルイスも、それぞれの自室で夜空を見上げて色の無い時間を過ごしていた。別々の場所に居ながら、彼らは同じようにあいなに想いを寄せていた。
何をしていてもやはり眠れそうにない。
気分を切り替えるため、二人は思い立ったように同じ場所へ足を向けた。
中庭へ出るための出入口に向かう途中、二人はかち合った。互いに目を見開く。
「シャル様……。まだお休みになられていなかったのですか?」
「お前こそ。もしかして眠れないのか?」
「はい。シャル様も?」
「ああ……」
二人の間には目に見えない距離があるかのようだった。すぐ近くにいるのに遠い。
「あいな様のご両親と和解されたようですね。良かったです」
「家族って、やっぱりいいものだな。俺も早くに母親を亡くしたし、ずっとああいう雰囲気に憧れていたのかもしれない」
「あいな様のご両親です。あたたかい人達なのでしょうね」
「ああ。あいなは愛されて育ったんだ。良かった、本当に……」
シャルは改めて礼を言う。
「今日こんな気持ちになれたのはお前がいてくれたおかげだ。あいなのこと、守ってくれてありがとう。お前が黒装束を仕留めてくれたおかげでガストン家とは手を切ることができた」
「シャル様との巡業中、私はすでにあいな様の居場所を知っていました」
「そうだったのか……」
シャルは窓の外に目をやり、ルイスに背を向ける。
「俺はあいなの居場所を知らなかった。お前があいなを見つけ守ってくれたおかげで、アイツは今も生きている。本当に感謝している。それに、お前はここへ戻ってきてくれた。それ以上俺から望むものはない」
「このタイミングで私が城を離れれば、彼女は自分のせいで私が居なくなったと考えてしまうでしょう。そうならないためです。シャル様への忠誠心を口先だけでしか誓えない人間です。そんな者を傍に置いておくのは、何かと問題ですよ?」
「お前はあいなを愛してる。それだけだろう?王子とはいえ、執事の恋愛事情にまで口出しすることは出来ない」
シャルの変化を察し、ルイスは中庭へ出た。シャルもそれについていく。エトリアの泉までやや距離がある。泉に向かって歩き、ルイスは言った。
「あのお店でお世話になっていた時、私はあいな様と同衾(どうきん)しました。それでもあなたは、揺るがない気持ちであいな様を想えますか?」
前を歩くルイスの顔は見えない。ルイスがどんな意図を持ってそんなことを訊(き)いてくるのか、シャルには分からなかった。
「同衾?紛らわしい言葉を使うな。寝具が一人分しか無かっただけだろ?お前達が一線を越えたようには見えない」
「なぜそう言い切れるのですか?言わなければ分からないことなのに」
「口にされなくても分かる。特に女はな……」
シャルは、自分に片想いをしていたクロエが何人もの男性と関係を持っていたことを雰囲気で察していた。
「あいなには相変わらず色気がない」
「そうでしょうか?私はそうは思いませんが」
「さっきから何が言いたいんだ?」
「それとなく察していただきたかったのですが、無理がありましたね」
振り返り、ルイスはシャルを見つめた。穏やかな口調に反して鋭利(えいり)なその視線に、シャルはドキリとする。
「それでは言わせていただきます。たとえあいな様が現在進行形で他の男性に抱かれていたとしても私は彼女を愛し抱くことができます。シャル様はどうですか?」
「なっ、何を言ってるんだ!いきなりっ!」
顔を紅潮させ声を裏返らせるシャルに、ルイスは平然と言葉をかぶせる。
「結婚をお考えなのですから、当然そういったことも頭にございますよね?」
「それはそうかもしれないが、結婚はそういうことばかりじゃないだろ?それに、他の男とどうなるとか、あいなはそんな軽い女じゃない」
「軽いかどうかの話をしているのではありません」
「どういうことだ?」
シャルは怪訝(けげん)な顔をした。
「あいな様を次期王妃としてお迎えするまでに彼女のお心が決まらなかった場合、一妻多夫制度を設けていただくよう、先ほどカロス様に交渉しました。もしそうなった場合、あいな様はシャル様と私を夫として受け入れることになります。シャル様にそのお覚悟はあるのかと尋ねています」
「一妻多夫!?」
シャルは取り乱した。
「それは本当なのか!?国王様は何て!?」
「カロス様は快諾(かいだく)できないといったご様子でしたが、検討はして下さるそうです」
「……そんな」
あいなを妻に迎えての一妻多夫制。シャルには想像もしたくない話だった。
「そんな話、勝手に進めていいはずがないだろ!あいながまず嫌がるはずだ!それに、俺だって…!」
「あなた達親子はよく似ている」
ルイスは侮蔑(ぶべつ)の笑みを見せた。
「シャル様はあいな様に純潔を求めていらっしゃるのですね。それではあいな様を城から追い出したカロス様と同じではありませんか」
「違う!」
「そうでしょうか?あいな様の居場所を知りながら隠していた私を、あなたは責めなかった。それがいい証拠ではありませんか。そのままあいな様と別れなければならない可能性もあったというのに、なぜ私を責めないのですか?あなたのあいな様に対するお気持ちはその程度なのですか?」
「責めてどうにかなるのか!?」
頭に血がのぼり、シャルはルイスに掴(つか)みかかった。
「何とも思わないわけがないだろ!?今までにないくらい腹が立ったよ!あのまま別の女と結婚してたらお前を一生恨んだかもしれない。でも、お前がそうしたくなった気持ちも理解できる。だから何も言わなかったんだ!過ぎたことをいつまでもネチネチ責めたって全然面白くないだろ!?あいなと会えた。それでいい。全て水に流す!」
シャルに突き飛ばされたルイスは、乱れた服もそのままにスッと体勢を整え、動じることなく冷静に言い放った。
「では、その広いお心で一妻多夫制度を受け入れてください。最終的にシャル様の許可がなければこの件は可決されませんから」
「まだそんなことを……。冗談はたいがいにしろ。そんなこと、俺は一切認めない!」
「あいな様のためだと申し上げても、ですか?」
夜の静けさが二人を包む。冷えた静寂とは真逆に、二人の気持ちは昂(たかぶ)っていた。
「あいなのため?単に、お前があいなを手放したくないだけだろ?」
「本気でおっしゃっているのですか?ご両親に挨拶までした男の言うことだとは思えない。あいな様のどこを見ていらっしゃるのですか?彼女は今も、あなたと私に想いを注いだまま最終的な決断を下せずお心を痛めてみえるというのに」
「それは分かっている……」
少し落ち着きを取り戻し、シャルは主張した。
「あいなは人との繋がりが切れることを極端に恐れてるし、だからこそ今になっても宙ぶらりんな状態でいるんだろう。俺と会えない間にお前だけを選ぶこともできたはずなのにそうすることもなく……。だからといって、一妻多夫制度を設けて全てが解決するとも思えない」
「…………」
「閨(ねや)のことは脇に置いて、俺はあいなと向き合う。お前に好意を抱いたままのアイツでもいい、一生添い遂(と)げるつもりだ」
「それではあいな様のお立場が悪くなってしまいます。かつてのカロス様がそうだったように、『不純な女性だ』と、そういう目で周囲から見られてしまうのですよ。妃となればなおさらです。そういった事態を避け彼女に憂(うれ)いなき結婚生活を送っていただきたいのです」
「ルイス……。そこまであいなのことを。お前は嫌じゃないのか?」
悲しみの表情でシャルは言った。
「お前の言うように一妻多夫制度が制定されたら、あいなはお前だけの女じゃなくなる。俺とも夜を共にするんだぞ?」
「カロス様と全く同じ心配をなさるのですね。私はそれでも平気だと先に申し上げたはずです」
「そんなの、頭で考えてるのと実際そうなった場合じゃ違うだろ!俺は耐えられない……。あいなには俺だけを見てほしいし、俺もあいな以外の女と関係を持つ気はない」
シャルの言葉は、ルイスの本音そのものだった。しかしルイスは、シャルに気持ちを寄せるあいなを不純とも思えなかったし、一妻多夫制度の制定が最良の選択肢という思考も捨てられずにいる。
まっすぐに自分の感情だけであいなにぶつかれるシャルを心底羨ましく思い、同時に憎らしくもなった。かといって彼を嫌いにもなれない。一言では語れない行き場のないルイスの気持ちは、かすれた声に乗ってシャルに向けられる。
「でしたら、一刻も早くあいな様のお心を捕らえ、離さないで下さい。あいな様が私のことを残酷(ざんこく)なまでに冷たく突き放してしまえるくらいに…!そうでないと私は……」
片手で胸を押さえ、ルイスは一筋の涙を流した。
「口に出せないほどの汚いやり方であなたを裏切ってしまいそうです」
「お前はそんなやつじゃない。俺は知ってる。前にも言っただろ?」
「何の根拠もないその信頼も、今はただただ重いです……」
「……っ!」
「私もシャル様と同じなのです。一生あいな様のそばにいたい…!別れを考えただけで胸が焼けそうに痛むのです」
「――――!」
ルイスがこんなにも感情をあらわにしたのは初めてだった。鈍器で頭を殴られたような気持ちになる。シャルは今、自分の鈍感さと無責任さを痛感した。
(『恋心に向き合え――』俺がしつこくそんなことを言わなければ、ルイスはこんなに苦しまなかったかもしれない。あいなが城を出ていったのも、ルイスがこんな風に苦しんでいるのも、全部、俺のせいなのか……?)
そこへ、驚きを含んだ陽気な声が飛んできた。
「ビックリした!二人ともどうしたの?」
あいなだった。
「シャル、それ…!」
「何でもない。久しぶりに家族水入らずなのに呼んでくれてありがとな」
穏やかに笑うシャルを見て、龍河がサラッと告げ口をする。
「それ、父さんが殴ったせい」
あいなは眉を寄せ、テーブルについている勲(いさむ)を見た。
「お父さん、本当?」
「そ、それはっ……」
「はっきり言って?」
「彼の顔を見たら頭にきて、つい……。あいなのためなんだ、怒らないでくれ」
シャルに対して怒ってばかりいたとは思えないほど、勲はおどおどし、おとなしくなる。
「怒るよ!何があっても暴力で解決するのは良くないって普段から言ってるのはお父さんだよ!?」
「そうだよ。見せられる方もドン引きだからマジカンベンして」
珍しく、龍河も姉に賛同する。
「お父さんの言いつけ守って、私は腹立つことあってもよほどのことじゃなきゃ空手使わないようにしてるんだからね!?なのにお父さんはっ…!」
「そうだよな、父さんが悪かったよ……。ごめんな、あいな」
「私じゃなくてシャルに謝って!」
「シャル君。さっきはすまなかった。殴ったりして……」
勲はタジタジである。シャルはその光景に目をしばたかせつつ、勲に近寄った。
「いえ、気にしていません……。悪いのは私ですから」
「良かったね、シャル王子。ウチの親厳しいけど、その分姉ちゃんには甘いとこもあるから、もう殴られることはないと思うよ」
龍河はシャルの耳元でそんなことをつぶやいた。いつの間にか敬語も取れて友人じみた話し方になっている。
「シャル王子、座ろうよ。姉ちゃんの隣に行けば?」
「そうだな。ありがとう。龍河もこっちに来たらどうだ?」
「うん、そうしよっかな」
二人の様子を見ていた麻子が、
「あなたたち、ずいぶん仲がいいのね」
シャルと龍河の関係に関心を寄せる。
「はい。実は先日、龍河さんにもこちらに来ていただいていて、それから良くしていただいています」
「秋葉さんと一緒にこっち来てたって話したでしょ?その時に、シャル王子とはちょっと話した」
「そう。さっきも、龍河はシャル君を庇(かば)ってたものね。お友達になったの?」
麻子の質問を受け、龍河とシャルは互いの顔を見合わせた。
「いちいち確認してないけど、友達ってことでいいんじゃない?シャル王子のこと、普通に好きだし」
「お友達……。そう思っていただけるのなら私も光栄です」
「まあ、姉ちゃんと結婚したら友達っていうより兄なんだけどね」
「そ、そっか!そうだよな。俺にも弟ができるのか!なんかくすぐったいが嬉しいな」
照れくさそうに笑い、シャルは言った。
「私は一人っ子なんです。それを不満に思うことは特になかったのですが、兄弟がいたらどんな生活になっていたのだろうと想像することは昔からよくあって……。龍河君のように頼もしいお方が私の身内になるかもしれないと考えただけで、幸せな気持ちになります」
ストレートで飾り気のないシャルの言葉に、龍河は顔を赤くして照れた。
「ちょ、君付けとかやめて?呼び捨てでいいよ、キモイから」
「キモイって何だ?」
「気持ち悪いって意味だよ」
「日本の言葉は難しいな。でも覚えておく。コミュニケーションを取るためには必要なことだからな」
「気を付ける観点が違うって」
その様子に、麻子だけでなく勲も、みるみる表情を和らげていった。ピリピリした空気が消えたことにあいなは内心ホッとし、両親に言った。
「シャルは誰とでもこんな感じ。何もせずにパッと相手の心を開かせる力があるの。すごいよね」
「そうね。見ていてよく分かるわ。あいなとシャル君はそういうところがよく似ているわね」
「そうかな?」
「あいなもそうでしょ?昔から誰とでもすぐお友達になっちゃうの」
麻子は微笑し、昔を懐かしむように語った。
「遠足や社会見学の集合写真を見ると、そこに映るあいなはいつも楽しそうに笑ってた。それを見るたび元気をもらってたのよ。お母さんはどちらかというと人見知りな方だったからママ友作りもうまく出来るか分からなくて、あいなを育ててる時も最初は不安でいっぱいだったんだけど、あいなが人を惹き付けてくれたおかげで気負わず人と付き合えたし、楽しい生活を送れたわ」
「お母さん、そんなこと考えてたんだ。知らなかったよ」
母親のそんな胸の内を、あいなはこの時初めて知った。
「あいなの母親でいられて良かった。そう思ってる」
「お母さん……」
「あいなならきっと、どこへ行っても素敵なお嫁さんになれる。周りの人を大切にしているあいなのこと、お母さんは誇りに思ってるから」
心なしか寂しそうな顔で笑い食事をする麻子に、シャルは言った。
「私達が結婚しても親子の縁は一生です。決して切れることはありません。もしお母様達さえよろしければ、いつか一緒にこの城に住んでいただけませんか?もちろん、お望みとあらば結婚後すぐにでも!」
シャルの気持ちを嬉しく思いつつ、麻子は首を横に振った。
「ありがとう。でも、その気持ちだけで充分よ。あいなが結婚したら、そこからはシャル君とあいなで新しい家族、新しい道を作っていくべき。私達が居たらよけいな口出しをしちゃうかもしれないしね。そんなの嫌でしょ?」
「私は大丈夫です」
「ありがとう、シャル君。娘への気持ちがウソではないことは分かったわ。失礼なことを言うけど、あなたは見た目で損するタイプね」
「はい。父にもよく言われます」
気分を害することなく、むしろ素直な心持ちでシャルはうなずく。
「シャル君に対する第一印象はあまり良くなかったのよ。人を見た目で判断するのは良くないと分かってるんだけど、どうしても、娘を持つとそういうのに敏感になってしまうものなの。あなたは派手な身なりをしているし、王子様だっていうし、流暢(りゅうちょう)に話すし、女性に不自由しなさそうな、その……。軽薄な青年にしか見えなかったのよね」
「母さん、わりと毒舌だね」
苦笑し、龍河がボソッとつっこむ。
「シャル王子が遊び人とか、あり得なさすぎ。ウケる…!」
ワインを一口飲み、麻子は言った。
「ひどいことばかり言ってごめんなさいね」
「いえ。遠慮なく言っていただけて嬉しいくらいです。そういうことを言ってくれる人はなかなかいないので」
「今すぐ結婚させてあげるわけにはいかないけど、あなたの誠実さは伝わってきたわ。あいなのこと、よろしくお願いします」
麻子の目には涙がにじんでいた。勲もワインを飲んで悲しみをごまかしている。娘の結婚。いつかこんな日が来ると覚悟はしていたが、いざその時が来ると、祝福するより先にひどく寂しい気持ちになった。
「シャル王子、良かったね。もうこれ、結婚認められたようなもんだよ」
龍河もどこか寂しそうな顔で明るくそう言った。
「皆……」
いつもそばに居た家族の知らなかった一面に、あいなは胸がしめつけられた。まっさらな気持ちでシャルとの結婚を宣言できないのがつらい。
(私の心には、シャルとルイスが居る……)
シャルとの結婚を受け入れた両親を前に、そんなことは言っていられなくなってしまった。
その日の夜。両親や龍河と同じ豪華な客室に泊まることになったものの、あいなだけは寝付けずにいた。家族を起こしてしまわないようそっと扉を閉め、静かな足取りで廊下を歩き中庭に向かう。
いつかシャルに連れてきてもらったエトリアの泉。その水面に自分の姿を映すと最良の伴侶に出会えるという言い伝えがある。
「私の運命の人は誰……?」
泉に向かって問いかけた。
「シャルのことも好き。ルイスのことも好き。胸の中で想うだけなら許されるのかもしれないけど、結婚となれば話は別だよね?」
先祖エトリアの魔力が宿っていると言われるエトリアの指輪は、今はこの指にない。
「エトリア様。私に、最良の伴侶を決める勇気を下さい。お願いします……」
両手を胸の前で組み、祈った。静かな夜闇。緑豊かな庭の木々が風に揺れる。泉の水面に反射した月の光が体に当たり、まるで海の中にいるかのような錯覚をした。その現象が、まるでここに居るはずのないエトリアの返事に思え、あいなの気持ちは少しだけ浮上する。
「きれい……。エトリア様は、どんな人と結ばれたんですか?」
眠れずにいるのはあいなだけではなかった。シャルとルイスも、それぞれの自室で夜空を見上げて色の無い時間を過ごしていた。別々の場所に居ながら、彼らは同じようにあいなに想いを寄せていた。
何をしていてもやはり眠れそうにない。
気分を切り替えるため、二人は思い立ったように同じ場所へ足を向けた。
中庭へ出るための出入口に向かう途中、二人はかち合った。互いに目を見開く。
「シャル様……。まだお休みになられていなかったのですか?」
「お前こそ。もしかして眠れないのか?」
「はい。シャル様も?」
「ああ……」
二人の間には目に見えない距離があるかのようだった。すぐ近くにいるのに遠い。
「あいな様のご両親と和解されたようですね。良かったです」
「家族って、やっぱりいいものだな。俺も早くに母親を亡くしたし、ずっとああいう雰囲気に憧れていたのかもしれない」
「あいな様のご両親です。あたたかい人達なのでしょうね」
「ああ。あいなは愛されて育ったんだ。良かった、本当に……」
シャルは改めて礼を言う。
「今日こんな気持ちになれたのはお前がいてくれたおかげだ。あいなのこと、守ってくれてありがとう。お前が黒装束を仕留めてくれたおかげでガストン家とは手を切ることができた」
「シャル様との巡業中、私はすでにあいな様の居場所を知っていました」
「そうだったのか……」
シャルは窓の外に目をやり、ルイスに背を向ける。
「俺はあいなの居場所を知らなかった。お前があいなを見つけ守ってくれたおかげで、アイツは今も生きている。本当に感謝している。それに、お前はここへ戻ってきてくれた。それ以上俺から望むものはない」
「このタイミングで私が城を離れれば、彼女は自分のせいで私が居なくなったと考えてしまうでしょう。そうならないためです。シャル様への忠誠心を口先だけでしか誓えない人間です。そんな者を傍に置いておくのは、何かと問題ですよ?」
「お前はあいなを愛してる。それだけだろう?王子とはいえ、執事の恋愛事情にまで口出しすることは出来ない」
シャルの変化を察し、ルイスは中庭へ出た。シャルもそれについていく。エトリアの泉までやや距離がある。泉に向かって歩き、ルイスは言った。
「あのお店でお世話になっていた時、私はあいな様と同衾(どうきん)しました。それでもあなたは、揺るがない気持ちであいな様を想えますか?」
前を歩くルイスの顔は見えない。ルイスがどんな意図を持ってそんなことを訊(き)いてくるのか、シャルには分からなかった。
「同衾?紛らわしい言葉を使うな。寝具が一人分しか無かっただけだろ?お前達が一線を越えたようには見えない」
「なぜそう言い切れるのですか?言わなければ分からないことなのに」
「口にされなくても分かる。特に女はな……」
シャルは、自分に片想いをしていたクロエが何人もの男性と関係を持っていたことを雰囲気で察していた。
「あいなには相変わらず色気がない」
「そうでしょうか?私はそうは思いませんが」
「さっきから何が言いたいんだ?」
「それとなく察していただきたかったのですが、無理がありましたね」
振り返り、ルイスはシャルを見つめた。穏やかな口調に反して鋭利(えいり)なその視線に、シャルはドキリとする。
「それでは言わせていただきます。たとえあいな様が現在進行形で他の男性に抱かれていたとしても私は彼女を愛し抱くことができます。シャル様はどうですか?」
「なっ、何を言ってるんだ!いきなりっ!」
顔を紅潮させ声を裏返らせるシャルに、ルイスは平然と言葉をかぶせる。
「結婚をお考えなのですから、当然そういったことも頭にございますよね?」
「それはそうかもしれないが、結婚はそういうことばかりじゃないだろ?それに、他の男とどうなるとか、あいなはそんな軽い女じゃない」
「軽いかどうかの話をしているのではありません」
「どういうことだ?」
シャルは怪訝(けげん)な顔をした。
「あいな様を次期王妃としてお迎えするまでに彼女のお心が決まらなかった場合、一妻多夫制度を設けていただくよう、先ほどカロス様に交渉しました。もしそうなった場合、あいな様はシャル様と私を夫として受け入れることになります。シャル様にそのお覚悟はあるのかと尋ねています」
「一妻多夫!?」
シャルは取り乱した。
「それは本当なのか!?国王様は何て!?」
「カロス様は快諾(かいだく)できないといったご様子でしたが、検討はして下さるそうです」
「……そんな」
あいなを妻に迎えての一妻多夫制。シャルには想像もしたくない話だった。
「そんな話、勝手に進めていいはずがないだろ!あいながまず嫌がるはずだ!それに、俺だって…!」
「あなた達親子はよく似ている」
ルイスは侮蔑(ぶべつ)の笑みを見せた。
「シャル様はあいな様に純潔を求めていらっしゃるのですね。それではあいな様を城から追い出したカロス様と同じではありませんか」
「違う!」
「そうでしょうか?あいな様の居場所を知りながら隠していた私を、あなたは責めなかった。それがいい証拠ではありませんか。そのままあいな様と別れなければならない可能性もあったというのに、なぜ私を責めないのですか?あなたのあいな様に対するお気持ちはその程度なのですか?」
「責めてどうにかなるのか!?」
頭に血がのぼり、シャルはルイスに掴(つか)みかかった。
「何とも思わないわけがないだろ!?今までにないくらい腹が立ったよ!あのまま別の女と結婚してたらお前を一生恨んだかもしれない。でも、お前がそうしたくなった気持ちも理解できる。だから何も言わなかったんだ!過ぎたことをいつまでもネチネチ責めたって全然面白くないだろ!?あいなと会えた。それでいい。全て水に流す!」
シャルに突き飛ばされたルイスは、乱れた服もそのままにスッと体勢を整え、動じることなく冷静に言い放った。
「では、その広いお心で一妻多夫制度を受け入れてください。最終的にシャル様の許可がなければこの件は可決されませんから」
「まだそんなことを……。冗談はたいがいにしろ。そんなこと、俺は一切認めない!」
「あいな様のためだと申し上げても、ですか?」
夜の静けさが二人を包む。冷えた静寂とは真逆に、二人の気持ちは昂(たかぶ)っていた。
「あいなのため?単に、お前があいなを手放したくないだけだろ?」
「本気でおっしゃっているのですか?ご両親に挨拶までした男の言うことだとは思えない。あいな様のどこを見ていらっしゃるのですか?彼女は今も、あなたと私に想いを注いだまま最終的な決断を下せずお心を痛めてみえるというのに」
「それは分かっている……」
少し落ち着きを取り戻し、シャルは主張した。
「あいなは人との繋がりが切れることを極端に恐れてるし、だからこそ今になっても宙ぶらりんな状態でいるんだろう。俺と会えない間にお前だけを選ぶこともできたはずなのにそうすることもなく……。だからといって、一妻多夫制度を設けて全てが解決するとも思えない」
「…………」
「閨(ねや)のことは脇に置いて、俺はあいなと向き合う。お前に好意を抱いたままのアイツでもいい、一生添い遂(と)げるつもりだ」
「それではあいな様のお立場が悪くなってしまいます。かつてのカロス様がそうだったように、『不純な女性だ』と、そういう目で周囲から見られてしまうのですよ。妃となればなおさらです。そういった事態を避け彼女に憂(うれ)いなき結婚生活を送っていただきたいのです」
「ルイス……。そこまであいなのことを。お前は嫌じゃないのか?」
悲しみの表情でシャルは言った。
「お前の言うように一妻多夫制度が制定されたら、あいなはお前だけの女じゃなくなる。俺とも夜を共にするんだぞ?」
「カロス様と全く同じ心配をなさるのですね。私はそれでも平気だと先に申し上げたはずです」
「そんなの、頭で考えてるのと実際そうなった場合じゃ違うだろ!俺は耐えられない……。あいなには俺だけを見てほしいし、俺もあいな以外の女と関係を持つ気はない」
シャルの言葉は、ルイスの本音そのものだった。しかしルイスは、シャルに気持ちを寄せるあいなを不純とも思えなかったし、一妻多夫制度の制定が最良の選択肢という思考も捨てられずにいる。
まっすぐに自分の感情だけであいなにぶつかれるシャルを心底羨ましく思い、同時に憎らしくもなった。かといって彼を嫌いにもなれない。一言では語れない行き場のないルイスの気持ちは、かすれた声に乗ってシャルに向けられる。
「でしたら、一刻も早くあいな様のお心を捕らえ、離さないで下さい。あいな様が私のことを残酷(ざんこく)なまでに冷たく突き放してしまえるくらいに…!そうでないと私は……」
片手で胸を押さえ、ルイスは一筋の涙を流した。
「口に出せないほどの汚いやり方であなたを裏切ってしまいそうです」
「お前はそんなやつじゃない。俺は知ってる。前にも言っただろ?」
「何の根拠もないその信頼も、今はただただ重いです……」
「……っ!」
「私もシャル様と同じなのです。一生あいな様のそばにいたい…!別れを考えただけで胸が焼けそうに痛むのです」
「――――!」
ルイスがこんなにも感情をあらわにしたのは初めてだった。鈍器で頭を殴られたような気持ちになる。シャルは今、自分の鈍感さと無責任さを痛感した。
(『恋心に向き合え――』俺がしつこくそんなことを言わなければ、ルイスはこんなに苦しまなかったかもしれない。あいなが城を出ていったのも、ルイスがこんな風に苦しんでいるのも、全部、俺のせいなのか……?)
そこへ、驚きを含んだ陽気な声が飛んできた。
「ビックリした!二人ともどうしたの?」
あいなだった。
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