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ヤクザがプロポーズ(1)
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私は指先で、ロザリオの珠をかぞえていた。聖堂のステンドグラスに春の光が透けて、床に落ちている。美しい模様が、無機質な床に彩りを添えていた。
祈りを捧げるにふさわしい、いつも通りの穏やかな午後だ。しかし、それを妨げるように、耳をつんざくような車のブレーキ音が響いた。今の音は、なに?
私はロザリオから手を離し、礼拝堂の出口へと向かう。外に出ると、さくらの花びらが扉から吹き込んで来た。
門の方へ視線を向けたら、スモークガラスの大きな車が止まっているのが見えた。車のバンパーには、ダークスーツを来た男がもたれている。タバコを吸いながら、修道院の敷地に目を向けていた。なんだろう、あの男は。
他のシスターたちも不審に思ったようで、教会から出て来て、門に視線を向けている。私が門へと向かうと、シスターの一人が慌てて駆け寄ってきた。
「危険です、シスター・アンジェラ」
「大丈夫です、シスター・マリア」
私は不安そうな彼女にそう言い、車にもたれている男へと近づいていった。
「何かご用ですか」
こちらに視線を向けたのは、背の高い男だった。私より頭二つぶん上にある顔は端正だが、サングラスの向こうにある瞳は鋭くて、首筋がピリッとする。この人はもしかして――
くわえていたタバコを捨てた彼に、私は声をとがらせた。
「ここは禁煙区域です。タバコを捨てないでください」
彼は舌打ちし、タバコを足で踏み潰した。私は絶句して目を見開く。なんて人なの。
「ここ、開けろ」
男は門を指差して言う。低い声は、タバコのせいかすこし掠れていた。私は警戒しながら門を開ける。男は動かなかった。ただじっと私を見下ろしている。大きな手が伸びてきて、私の首筋に触れた。 びくりとした私を見て、男が目を細める。
「無粋な服だな。肌が全然見えねえ」
私はその手を押しのけ、身体をかばいながら男をにらんだ。修道院服が露出が少ないのは当たり前ではないか。
「どちら様ですか」
「阿久津龍二」
彼はそう言って、
「坂口杏樹って女がここにいるだろ。出せ」
「私ですが」
「ふうん、あんたか」
男は私をじろじろ見たのち、がし、と腕を掴んだ。遠巻きに見ていたシスターたちが、きゃあっ、と声を上げる。
「っ! なんですか!」
「話があんだよ。一緒に来い」
ものすごい力に、身体が震えた。
「離してください!」
必死にもがくが、阿久津の手は緩まない。車に連れ込まれそうになった私は、思わず彼の足を蹴りつけた。
「って!」
慌てて門の中に入ったら、彼がギロリとにらみつけてきた。その顔が恐ろしく、私はごく、と息を飲む。
「こ、ここで話します」
「このクソ尼……」
彼は舌打ち交じりに懐から何かを取り出し、私に投げた。私は手を伸ばし、慌ててそれをキャッチする。封筒に何かが入っているようだ。
「それ、読んどけ。また明日くる」
阿久津はそう言って、車に乗って去って行った。私は眉をしかめ、封筒を持って踵を返した。シスター・マリアが不安そうな顔でついてくる。
「なんだったのですか?」
「わからないのですが……私に用だったみたいで」
私はシスターたちが生活する寮へと足を進め、各自に与えられている個室へと向かう。こじんまりとした室内に入り、書き物机の椅子に腰掛けて、封筒の中に入っているものを取り出した。それは、思いもよらないものだった。少なくとも私の人生には、まるで必要のないものだった。
「婚姻届……?」
シスターは、見習い期間を終えると、三つの誓いを立てる。すなわち、貞潔、清貧、従順である。この誓いを「有期請願」といい、「最終請願」を立てるまで、何度も立てることになる。
私はまだ最終請願を立てていない。一人前のシスターになるには、見習い期間から十年はかかると言われている。
つまり、私はまだまだ未熟者なのだ。様々な誘惑に打ち勝ち、真の修道女となることが、私の務めなのである。その誘惑には、当然男性からのアプローチも含まれているのだが──。
「おい、クソ尼。サインしたか」
庭をはいていた私は、ぴく、と肩を揺らし、顔をあげた。昨日の男が、門のところに立っている。わざわざ門のところに「禁煙」という張り紙をしたのに、堂々とタバコを吸っている。
「あなた……」
「紙よこせ」
「少し待っていてください」
私は持っていた箒を木に立てかけ、修道院内に入っていった。自室から婚姻届を持ってきて、阿久津に差し出した。
「おお、書いたか、ご苦労」
阿久津は機嫌のいい声で婚姻届を受け取り、視線を向けて、眉をしかめた。
「あ? サインしてねえじゃん」
「私は神に仕える身。結婚などできません。大体、見知らぬ方に婚姻届を渡されて、サインする人なんていません」
「結婚できない? マジかよ」
「ええ。シスターは三つの誓いを」
「じゃあ、いますぐシスターやめろ」
阿久津の言葉に、今度は私が眉をしかめた。
「はい?」
「あんたには俺と結婚してもらわなきゃ困る。待っててやるから、今すぐ辞表でもなんでも書いてこいよ」
「辞表って、サラリーマンじゃないんですよ!」
私はそう叫んだあと、声を荒げたことを恥じた。咳払いをして、箒を掴み直す。
「とにかく、帰ってください」
阿久津は舌打ちし、サングラスを外した。切れ長の目に見据えられ、私は一瞬動けなくなった。瞳に込められた威圧感が、一般の人間とはまるで違う。この人はやっぱり、「普通の人」ではない。後ずさらないよう頑張っていたら、彼が口を開いた。
「あんた、端島(はしま)みきおって知ってるか」
「端島、みきお?」
「瑞長会の会長だよ。先日亡くなった。知ってるか」
そう言えば、新聞で見たような気がする。
「で、こんな遺言があった。『坂口杏樹が選んだ男に組を任せる』」
坂口杏樹……って。
「私?」
阿久津はうなずいて、自身を指差した。
「選んだ男、つまり、結婚相手だろ。だから俺と結婚しろ」
話についていけず、私は眉をしかめる。
「なぜその方は、そんな遺言を?」
「瑞島みきおはあんたのじいさんだからだ」
阿久津の言葉に、私は絶句した。ヤクザの会長が──私の祖父?
「そ、そんなことあるわけが」
「あんた、母方のじいさんに会ったことあんの」
私はハッとして、口もとに手をやった。
「……ないです。母は『死んだ』って言ってましたが」
「だろ。絶縁状態だったらしいぜ。会長はこっそりあんたに会いに行ってたみたいだけどな」
阿久津は懐から写真を取り出した。着物姿でりんご飴を食べる幼い私が写っている。彼は写真をしげしげとみて、
「昔は可愛かったんだな、おまえ」
昔は、とはどういう意味なのか。私が阿久津を睨みつけると、彼が目を細めた。
「あんた、両親を亡くしてるんだって?」
「……そうですが」
「たぶん、あんたの面倒を見る人間がいなくなった時を見越して、そういう遺言作ったんだろ。日付が十年前になってたからな」
「両親が亡くなった年です」
「だろ。で、他に遺言書が見つからないから、とりあえずこれに従って、おまえにプロポーズしにきた。結婚しろ」
言ってることがめちゃくちゃだ、この人。
「事情はわかりました。納得はしがたいけど」
私がそう言ったら、阿久津は偉そうに頷いた。
「おう、さすが尼さん、悟り開いてんな」
悟りを開くのは仏教徒だ。
「お断りします」
「は?」
「先ほども話しましたが、私は結婚できないんです。男性とお付き合いすらできません。シスターは神と結婚しているのですから」
阿久津はキョトンとしたあと、けらけら笑い始めた。
「神と結婚? 何言ってんだおまえ。ばっかじゃねーの」
私が無言で見つめていたら、笑いを引っ込める。
「え、マジ?」
「はい」
阿久津はしばらく黙り込んで、まじまじと私を見た。
「……じゃあおまえ、処女なの?」
私はかっと赤くなった。箒を振り上げて叫ぶ。
「帰ってください!」
「図星かよ。神様とセックスはできないもんなあ?」
彼は馬鹿にしたように鼻を鳴らす。なんて人なの! 私は熱くなった頭のまま、門を開いた。阿久津に向かって箒を振り上げる。阿久津はそれをひょい、と避けた。
「うわっ、あぶねえ」
「早く帰って」
「キョーボーな尼さんだな。生理かなんか?」
再び箒を振り上げたら、その手を掴まれた。
「!」
目を見開いた私の腕を掴んだまま、門に押しつける。からん、と箒が落下した。
「離しなさい」
私が睨みつけると、阿久津が目を細めた。
「なあ、さすがにキスくらいはしたことあるだろ?」
「……ありません」
「マジかよ」
阿久津は私の顎を掴み、唇を押しつけてきた。
「!」
私はもがいたが、力が強くてかなわない。阿久津の唇や髪から、タバコの匂いがする。この匂い、嫌いだわ。自分にも移ってしまいそうな気がする。だんだん苦しくなってきた。頭の奥がじんじんして、変になる。
阿久津は何度か口付けたあと、唇を離した。私が息をついていると、
「大丈夫か? 息しろよ」
ぽんぽん肩を叩いてくる。私はかあっとなって、思い切り箒を振った。
「この、不届きもの!」
それは阿久津の腕に見事ヒットした。
「って!」
私は、痛みに呻く阿久津を無視し、さっさと修道院に入った。
念入りに歯磨きをしたあと、聖堂へと向かい、祈りを捧げる。
「主よ、唇を奪われたことをお許しください。あれは事故です。あの不届きものにはきちんとお灸をすえましたし、もう二度と来ないと思います」
十字を切ったあと、ロザリオを手に取り、口付けた。
祈りを捧げるにふさわしい、いつも通りの穏やかな午後だ。しかし、それを妨げるように、耳をつんざくような車のブレーキ音が響いた。今の音は、なに?
私はロザリオから手を離し、礼拝堂の出口へと向かう。外に出ると、さくらの花びらが扉から吹き込んで来た。
門の方へ視線を向けたら、スモークガラスの大きな車が止まっているのが見えた。車のバンパーには、ダークスーツを来た男がもたれている。タバコを吸いながら、修道院の敷地に目を向けていた。なんだろう、あの男は。
他のシスターたちも不審に思ったようで、教会から出て来て、門に視線を向けている。私が門へと向かうと、シスターの一人が慌てて駆け寄ってきた。
「危険です、シスター・アンジェラ」
「大丈夫です、シスター・マリア」
私は不安そうな彼女にそう言い、車にもたれている男へと近づいていった。
「何かご用ですか」
こちらに視線を向けたのは、背の高い男だった。私より頭二つぶん上にある顔は端正だが、サングラスの向こうにある瞳は鋭くて、首筋がピリッとする。この人はもしかして――
くわえていたタバコを捨てた彼に、私は声をとがらせた。
「ここは禁煙区域です。タバコを捨てないでください」
彼は舌打ちし、タバコを足で踏み潰した。私は絶句して目を見開く。なんて人なの。
「ここ、開けろ」
男は門を指差して言う。低い声は、タバコのせいかすこし掠れていた。私は警戒しながら門を開ける。男は動かなかった。ただじっと私を見下ろしている。大きな手が伸びてきて、私の首筋に触れた。 びくりとした私を見て、男が目を細める。
「無粋な服だな。肌が全然見えねえ」
私はその手を押しのけ、身体をかばいながら男をにらんだ。修道院服が露出が少ないのは当たり前ではないか。
「どちら様ですか」
「阿久津龍二」
彼はそう言って、
「坂口杏樹って女がここにいるだろ。出せ」
「私ですが」
「ふうん、あんたか」
男は私をじろじろ見たのち、がし、と腕を掴んだ。遠巻きに見ていたシスターたちが、きゃあっ、と声を上げる。
「っ! なんですか!」
「話があんだよ。一緒に来い」
ものすごい力に、身体が震えた。
「離してください!」
必死にもがくが、阿久津の手は緩まない。車に連れ込まれそうになった私は、思わず彼の足を蹴りつけた。
「って!」
慌てて門の中に入ったら、彼がギロリとにらみつけてきた。その顔が恐ろしく、私はごく、と息を飲む。
「こ、ここで話します」
「このクソ尼……」
彼は舌打ち交じりに懐から何かを取り出し、私に投げた。私は手を伸ばし、慌ててそれをキャッチする。封筒に何かが入っているようだ。
「それ、読んどけ。また明日くる」
阿久津はそう言って、車に乗って去って行った。私は眉をしかめ、封筒を持って踵を返した。シスター・マリアが不安そうな顔でついてくる。
「なんだったのですか?」
「わからないのですが……私に用だったみたいで」
私はシスターたちが生活する寮へと足を進め、各自に与えられている個室へと向かう。こじんまりとした室内に入り、書き物机の椅子に腰掛けて、封筒の中に入っているものを取り出した。それは、思いもよらないものだった。少なくとも私の人生には、まるで必要のないものだった。
「婚姻届……?」
シスターは、見習い期間を終えると、三つの誓いを立てる。すなわち、貞潔、清貧、従順である。この誓いを「有期請願」といい、「最終請願」を立てるまで、何度も立てることになる。
私はまだ最終請願を立てていない。一人前のシスターになるには、見習い期間から十年はかかると言われている。
つまり、私はまだまだ未熟者なのだ。様々な誘惑に打ち勝ち、真の修道女となることが、私の務めなのである。その誘惑には、当然男性からのアプローチも含まれているのだが──。
「おい、クソ尼。サインしたか」
庭をはいていた私は、ぴく、と肩を揺らし、顔をあげた。昨日の男が、門のところに立っている。わざわざ門のところに「禁煙」という張り紙をしたのに、堂々とタバコを吸っている。
「あなた……」
「紙よこせ」
「少し待っていてください」
私は持っていた箒を木に立てかけ、修道院内に入っていった。自室から婚姻届を持ってきて、阿久津に差し出した。
「おお、書いたか、ご苦労」
阿久津は機嫌のいい声で婚姻届を受け取り、視線を向けて、眉をしかめた。
「あ? サインしてねえじゃん」
「私は神に仕える身。結婚などできません。大体、見知らぬ方に婚姻届を渡されて、サインする人なんていません」
「結婚できない? マジかよ」
「ええ。シスターは三つの誓いを」
「じゃあ、いますぐシスターやめろ」
阿久津の言葉に、今度は私が眉をしかめた。
「はい?」
「あんたには俺と結婚してもらわなきゃ困る。待っててやるから、今すぐ辞表でもなんでも書いてこいよ」
「辞表って、サラリーマンじゃないんですよ!」
私はそう叫んだあと、声を荒げたことを恥じた。咳払いをして、箒を掴み直す。
「とにかく、帰ってください」
阿久津は舌打ちし、サングラスを外した。切れ長の目に見据えられ、私は一瞬動けなくなった。瞳に込められた威圧感が、一般の人間とはまるで違う。この人はやっぱり、「普通の人」ではない。後ずさらないよう頑張っていたら、彼が口を開いた。
「あんた、端島(はしま)みきおって知ってるか」
「端島、みきお?」
「瑞長会の会長だよ。先日亡くなった。知ってるか」
そう言えば、新聞で見たような気がする。
「で、こんな遺言があった。『坂口杏樹が選んだ男に組を任せる』」
坂口杏樹……って。
「私?」
阿久津はうなずいて、自身を指差した。
「選んだ男、つまり、結婚相手だろ。だから俺と結婚しろ」
話についていけず、私は眉をしかめる。
「なぜその方は、そんな遺言を?」
「瑞島みきおはあんたのじいさんだからだ」
阿久津の言葉に、私は絶句した。ヤクザの会長が──私の祖父?
「そ、そんなことあるわけが」
「あんた、母方のじいさんに会ったことあんの」
私はハッとして、口もとに手をやった。
「……ないです。母は『死んだ』って言ってましたが」
「だろ。絶縁状態だったらしいぜ。会長はこっそりあんたに会いに行ってたみたいだけどな」
阿久津は懐から写真を取り出した。着物姿でりんご飴を食べる幼い私が写っている。彼は写真をしげしげとみて、
「昔は可愛かったんだな、おまえ」
昔は、とはどういう意味なのか。私が阿久津を睨みつけると、彼が目を細めた。
「あんた、両親を亡くしてるんだって?」
「……そうですが」
「たぶん、あんたの面倒を見る人間がいなくなった時を見越して、そういう遺言作ったんだろ。日付が十年前になってたからな」
「両親が亡くなった年です」
「だろ。で、他に遺言書が見つからないから、とりあえずこれに従って、おまえにプロポーズしにきた。結婚しろ」
言ってることがめちゃくちゃだ、この人。
「事情はわかりました。納得はしがたいけど」
私がそう言ったら、阿久津は偉そうに頷いた。
「おう、さすが尼さん、悟り開いてんな」
悟りを開くのは仏教徒だ。
「お断りします」
「は?」
「先ほども話しましたが、私は結婚できないんです。男性とお付き合いすらできません。シスターは神と結婚しているのですから」
阿久津はキョトンとしたあと、けらけら笑い始めた。
「神と結婚? 何言ってんだおまえ。ばっかじゃねーの」
私が無言で見つめていたら、笑いを引っ込める。
「え、マジ?」
「はい」
阿久津はしばらく黙り込んで、まじまじと私を見た。
「……じゃあおまえ、処女なの?」
私はかっと赤くなった。箒を振り上げて叫ぶ。
「帰ってください!」
「図星かよ。神様とセックスはできないもんなあ?」
彼は馬鹿にしたように鼻を鳴らす。なんて人なの! 私は熱くなった頭のまま、門を開いた。阿久津に向かって箒を振り上げる。阿久津はそれをひょい、と避けた。
「うわっ、あぶねえ」
「早く帰って」
「キョーボーな尼さんだな。生理かなんか?」
再び箒を振り上げたら、その手を掴まれた。
「!」
目を見開いた私の腕を掴んだまま、門に押しつける。からん、と箒が落下した。
「離しなさい」
私が睨みつけると、阿久津が目を細めた。
「なあ、さすがにキスくらいはしたことあるだろ?」
「……ありません」
「マジかよ」
阿久津は私の顎を掴み、唇を押しつけてきた。
「!」
私はもがいたが、力が強くてかなわない。阿久津の唇や髪から、タバコの匂いがする。この匂い、嫌いだわ。自分にも移ってしまいそうな気がする。だんだん苦しくなってきた。頭の奥がじんじんして、変になる。
阿久津は何度か口付けたあと、唇を離した。私が息をついていると、
「大丈夫か? 息しろよ」
ぽんぽん肩を叩いてくる。私はかあっとなって、思い切り箒を振った。
「この、不届きもの!」
それは阿久津の腕に見事ヒットした。
「って!」
私は、痛みに呻く阿久津を無視し、さっさと修道院に入った。
念入りに歯磨きをしたあと、聖堂へと向かい、祈りを捧げる。
「主よ、唇を奪われたことをお許しください。あれは事故です。あの不届きものにはきちんとお灸をすえましたし、もう二度と来ないと思います」
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