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終わりの始まり 4
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お化け屋敷、怖かった。私はお化けの顔を思い出し、身ぶるいした。レイは平気な顔で喫茶店の予約表に名前を書いている。マイペースだから、お化けくらいじゃ怖がらないんだろうな。彼は疲弊した顔の私に尋ねてくる。
「セーレ、疲れた?」
「いえ、そんなことありません」
レイと私は喫茶店に入った。メイド姿の女生徒が出迎えてくれる。
「いらっしゃいませ……」
彼女はレイを見るなり、持っていたお盆を落とした。ガラーンという音が響く。
「ああっ、レイさまっ!」
レイは首をかしげる。
「きみ、だれ?」
「ただの一般人ですっ! わああ、生レイさまっ、感動!」
女の子は目を輝かせている。忘れがちだけど、レイはアーカードと同じくらい人気があるのだ。さすが乙女ゲームのヒーロー。他の女の子がレイに色めき立つと、なんだか複雑な気分になる。彼の魅力がみんなに伝わっているという嬉しさと、他の子と仲良くしてほしくないという独占欲。
「あのっ、サインください!」
「サインって……」
彼女はハンカチを取り出し、レイに渡した。
「なんで俺のサインなんか欲しいんだろ」
レイは不思議がりながらもサインをする。女生徒はありがとうございます! と言って、メニューを渡してきた。
「おすすめはいちごパフェです!」
「いちごパフェだって。セーレ、これにする?」
私は頷いた。運ばれてきたパフェを、レイと二人で食べる。レイが私を見て笑った。
「パフェ、ついてるよ」
レイが私の唇を優しく撫でる。サインをもらった女生徒がきゃあと黄色い悲鳴をあげた。
「自分でとりますよ」
それから私たちは、舞台を観に向かった。会場は混んでいて、私たちは立ち見をすることになった。
舞台の内容は、目つきが悪く、無口なせいですぐ誤解されてしまうご令嬢の話。まるで私のことみたい。
舞台は面白いはずなのに、時間が経つにつれて視界がぐらつくのを感じていた。ひどいめまいがして、世界がまだらに見える。レイは私の異変に気づいたらしく、声をかけてきた。
「セーレ?」
「すいません、ちょっと」
私は会場を出て、階段を降り始める。
階段でバランスを崩した私を、追いかけてきたレイが抱きとめた。
「大丈夫?」
「は、い」
彼は私の顔色を見て、
「保健室にいこう」
「でも、まだ見始めてから、一時間も経ってません」
「だめだよ。セーレの身体が一番大事なんだから」
レイは私の手を引いて歩き出した。私は彼の背中をぼんやり見つめながら、手のひらの温度に安堵していた。
保健室はひんやりとしていて、居心地が良かった。
「先生はいないみたいだね」
「あの先生、いつもサボってるんだ」
レイは私をベッドに寝かせ、そっと髪を撫でた。
「具合が悪いなら、休めば良かったのに」
「だって、レイさまと一緒に、文化祭、見て回りたくて」
文化祭ってものを、楽しんだことがなかった。私には友人が少なかったし、派手なことは苦手だから、表舞台に立つこともなかった。
「俺は、セーレといられればいいよ」
優しく微笑んで、レイが手を握りしめてくる。心がじん、と暖かくなった。同時に、切なくて熱い気持ちが込み上げてくる。これが恋。この世界に来なければ、わからなかったかもしれない気持ち。私の心を見てくれる、優しいひと。
「レイ、さま」
私はレイを見つめた。
「レイさま、ぎゅって、してください」
甘えるように言ったら、レイが優しく腕を回してきた。暖かくて、心地いい。私はレイから身を離し、じっと彼を見つめた。小さな声で言う。
「私を、すきにして」
レイが喉を鳴らす。
「……いいの?」
「はい」
「誰か、来ちゃうかも」
恥じらうように言ったレイがかわいくて、私は彼のほほに口付けた。微笑みかけたら、レイが瞳を揺らす。
「セーレ、疲れた?」
「いえ、そんなことありません」
レイと私は喫茶店に入った。メイド姿の女生徒が出迎えてくれる。
「いらっしゃいませ……」
彼女はレイを見るなり、持っていたお盆を落とした。ガラーンという音が響く。
「ああっ、レイさまっ!」
レイは首をかしげる。
「きみ、だれ?」
「ただの一般人ですっ! わああ、生レイさまっ、感動!」
女の子は目を輝かせている。忘れがちだけど、レイはアーカードと同じくらい人気があるのだ。さすが乙女ゲームのヒーロー。他の女の子がレイに色めき立つと、なんだか複雑な気分になる。彼の魅力がみんなに伝わっているという嬉しさと、他の子と仲良くしてほしくないという独占欲。
「あのっ、サインください!」
「サインって……」
彼女はハンカチを取り出し、レイに渡した。
「なんで俺のサインなんか欲しいんだろ」
レイは不思議がりながらもサインをする。女生徒はありがとうございます! と言って、メニューを渡してきた。
「おすすめはいちごパフェです!」
「いちごパフェだって。セーレ、これにする?」
私は頷いた。運ばれてきたパフェを、レイと二人で食べる。レイが私を見て笑った。
「パフェ、ついてるよ」
レイが私の唇を優しく撫でる。サインをもらった女生徒がきゃあと黄色い悲鳴をあげた。
「自分でとりますよ」
それから私たちは、舞台を観に向かった。会場は混んでいて、私たちは立ち見をすることになった。
舞台の内容は、目つきが悪く、無口なせいですぐ誤解されてしまうご令嬢の話。まるで私のことみたい。
舞台は面白いはずなのに、時間が経つにつれて視界がぐらつくのを感じていた。ひどいめまいがして、世界がまだらに見える。レイは私の異変に気づいたらしく、声をかけてきた。
「セーレ?」
「すいません、ちょっと」
私は会場を出て、階段を降り始める。
階段でバランスを崩した私を、追いかけてきたレイが抱きとめた。
「大丈夫?」
「は、い」
彼は私の顔色を見て、
「保健室にいこう」
「でも、まだ見始めてから、一時間も経ってません」
「だめだよ。セーレの身体が一番大事なんだから」
レイは私の手を引いて歩き出した。私は彼の背中をぼんやり見つめながら、手のひらの温度に安堵していた。
保健室はひんやりとしていて、居心地が良かった。
「先生はいないみたいだね」
「あの先生、いつもサボってるんだ」
レイは私をベッドに寝かせ、そっと髪を撫でた。
「具合が悪いなら、休めば良かったのに」
「だって、レイさまと一緒に、文化祭、見て回りたくて」
文化祭ってものを、楽しんだことがなかった。私には友人が少なかったし、派手なことは苦手だから、表舞台に立つこともなかった。
「俺は、セーレといられればいいよ」
優しく微笑んで、レイが手を握りしめてくる。心がじん、と暖かくなった。同時に、切なくて熱い気持ちが込み上げてくる。これが恋。この世界に来なければ、わからなかったかもしれない気持ち。私の心を見てくれる、優しいひと。
「レイ、さま」
私はレイを見つめた。
「レイさま、ぎゅって、してください」
甘えるように言ったら、レイが優しく腕を回してきた。暖かくて、心地いい。私はレイから身を離し、じっと彼を見つめた。小さな声で言う。
「私を、すきにして」
レイが喉を鳴らす。
「……いいの?」
「はい」
「誰か、来ちゃうかも」
恥じらうように言ったレイがかわいくて、私は彼のほほに口付けた。微笑みかけたら、レイが瞳を揺らす。
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