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飛行
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バアルがレイチェルを連れて行ったのは、なんとバベルの塔だった。間近で見ると、より一層迫力がある。
「なんでここに?」
あまりの大きさに圧倒されるレイチェルに、バアルが答える。
「ここには色んな施設がある。役場とか、裁判所とか。店もいくつか入ってる」
「役場……」
悪魔にも、戸籍とかあるんだろうか。レイチェルはバアルを見上げ、
「ねえ、こんなところに人用の服なんかあるの?」
「人型の悪魔がいるからな」
悪魔なのに、人間みたいな容姿というのも妙だ。それとも、人間に化けていると何かと都合がいいのだろうか。
「あなたって、元々その姿なの?」
「質問が多いな」
レイチェルは赤くなった。仕方ないじゃないか、初めて見るものばかりなのだから。悪魔はちら、とこちらを見て、
「混沌から生まれた時はこの姿だった。他の姿にもなれる。例えばこれとか」
ボン、と音を立てて、バアルの姿が変わった。
その姿に、レイチェルは思わず息を飲む。蜘蛛のような足に、かえると人が混じったような顔がついている。頭には王冠がついていた。思わず背中が総毛立つような姿。
「この姿のほうがいい?」
レイチェルはぶんぶん首を振った。なんとも不気味な姿なのに、聞こえてくるのは変わらず美声というのが奇妙だ。
バアルは元の姿に戻り、バベルの塔の下にたたずむ、狐の顔の悪魔に近づいていく。懐から貨幣を出して渡し、
「婦人服売り場は?」
「五十二階」
どうやら、狐は案内係のようだった。
レイチェルはバベルの塔を見上げた。雲のせいでここからは天辺が見えないが、五十二階っていったいどこなんだろう。
「五十二階ぶんの階段を登れる? ちなみに四千五百段あるらしい」
バアルの問いに、真顔で首を振る。
「無理」
「僕が運んで行けば早いけど。触らないで運ぶのは無理だな」
どうする? という目で見られ、レイチェルはぐ、と顎を引く。触らないで、と言った手前、こんなことを頼むのは気まずいけど。
「お願いします」
バアルが身をかがめて、レイチェルを抱き上げた。固まっているレイチェルを見て、「息してる?」と尋ねる。
緊張しているのだと悟られたくなくて、慌てて答える。
「してるわ」
バアルが翼を広げた。
そのまま浮き上がった拍子に、レイチェルの金髪がなびく。空を飛んでいる。夢じゃない。すごい。レイチェルは恐怖を忘れ、浮いた自分の足を見下ろした。バベルの塔を階段で上るのは悪魔でも大変なのか、飛んでいるのはバアルだけではない。
鋭いかぎ爪を立て、壁をよじ登る猿のような悪魔を見ていると、バアルが口を開いた。
「ルイスって男と、何かあったのか」
レイチェルはぎくりとした。
「ど、どうしてその名前を」
「寝言で言ってた」
寝言まで聞かれていたなんて。レイチェルは赤くなる。
「……従兄弟なの。ここに来る直前、彼に怪我させてしまって、警察に訴えると言われたわ」
うなだれるレイチェルに、バアルはふうん、と呟く。
「恋人じゃないんだな」
「違うわ。なんで?」
「結婚がどうとかって言っていたから」
「英国には、限嗣相続制度《げんしそうぞくせいど》っていうものがあるの。男の人しか財産を継げない決まりなのよ。ルイスと結婚したら、私は家を取り戻せる。だから……」
レイチェルはそう言って、悪魔にこんな話をしてなんになるんだ、と思う。
「家が欲しいのか」
「家というより、思い出かしら」
「思い出……」
バアルは腑に落ちない、という顔をしている。
「わからないわよね、悪魔のあなたには」
バアルは答えずに、赤い瞳を上に向けている。
きっと人間の感傷などバカバカしいと思っているんだろう。レイチェルだって、自分が愚かだと思う。家を取り戻したいというレイチェルの心を見透かして、ルイスは求婚してきたのだ。
ルイスは悪くない。レイチェルが馬鹿なのだ。
何かを捨てずに、何かを手に入れるなんてできないのに。
☆☆☆
バアルは、巻貝のようになっている壁の、出っ張りの一つに降り立った。出窓のようになったそこに手をかけ、レイチェルを降ろす。
「ありがとう」
レイチェルは礼を言い、あたりを見回した。塔の中はドーナツのような足場があり、中央に柱がそびえ立っていた。あれが塔を支えているのだろうか。よくみたら、その表面には細かい文字が刻まれている。
見上げてみても、先がどうなっているのか見通せない。これほど巨大な建造物は、ロンドンにもない。
「すごいわ」
「昨日も言ったけど、君たちの先祖が作ったんだ。人間たちは、悪魔には理解できない探究心に満ちていた」
信じられない。違う世界に、人間の遺跡があるなんて。レイチェルは柱をよく見ようと、足場の周りを囲んでいる手すりに近寄って行った。
「一番上はどうなってるの?」
「さあ、行ったことがない。悪魔は基本的に、上より下にいるものだし」
「この先に、神様がいるのかしら」
バアルが肩をすくめる。
「悪魔に聞かないでくれ」
確かにそうだ。
「あんまり身を乗り出すと落ちる」
「大丈夫よ」
レイチェルは手すりに手をかけて、上の方をよく見ようとした。ふと、背後に熱を感じた。
「レイチェル」
耳元に声が降る。
「あぶない」
間近で聞いた美しい声に、目眩がした。
ぐらついたレイチェルの腕に、バアルの手が伸びてくる。ぐん、と引っ張られ、下の景色がぶれた。二重の意味で、心臓が鳴っている。
「何してるんだ」
「み、耳元で喋らないで。あなたの声は心臓に悪いわ」
バアルは怪訝な顔でレイチェルを見て、「神様探しをやめて、服を買いにいかないか」と言う。
「ええ」
レイチェルが歩き出そうとすると、また腕を引かれた。
「自殺する気か」
ふと見ると、レイチェルの視線の先には足場がなかった。足場には時々切れ間があった。悪魔たちは飛んで移動するからだろう。落ちていたらどうなっていたか想像し、レイチェルはのどを引きつらせる。
「ひっ」
ため息をついたバアルが、手を差し出す。
「ほら」
「一人で歩けるわ」
「そうは見えない。手間を増やすなよ」
不服げに手を出すと、バアルがレイチェルの手を握った。冷たい手だ。これが、悪魔の手。
「行こう」
バアルがそう言って歩き出す。
不思議だ。悪魔と手をつないで歩いているなんて。
というか、男の人と手をつないで歩くなんて初めてだ。本当は、結婚するまでそういうことはしてはいけない。そう教えられてきた。
ルイスと散歩した時だって、手なんかつながなかった。
ふと、キスされそうになったことを思い出し、ぞっとする。好きでもない人とあんなことをするなんて、とても無理だ。
バアルと手をつないでいても、意外に嫌悪感はなかった。人間じゃないからだろうか。――というか、悪魔に性別ってあるのかしら。
「レイチェル」
いきなり間近で美声が聞こえてきて、レイチェルはびくりとした。
あきれた顔のバアルがこちらを見ている。
「ロンドンとやらはよほど安全なところみたいだな。君みたいにぼんやり歩いてたら、バビロンではまず生き残れない」
「耳元で喋らないでって言ってるじゃない」
「呼んでも返事をしないから。どの店にする?」
そう言ってバアルが指さした先には、婦人服の店が三店舗並んでいた。まるで喪服のような洋服を置いている店「ダーク」に、ほとんど布切れに近い洋服を売っている「ビターズ」という店。一番まともそうなのは、真ん中にある「ドルチェ」という店だった。
「あの、『ドルチェ』っていう店にするわ」
「じゃあどうぞ選んで。僕は本屋に行ってる」
「待ってて。すぐに選ぶから」
バアルはどうだか、という顔をした。
「買い物の早い女を見たことがないけど」
「人間みたいなこと言うのね」
ルイスも似たようなことを言っていた。女の子は時間があって目的がないから買い物が長いんだ──ああ、思い出したら腹が立ってきた。
「私は早いわ。いいから待ってて!」
一瞬で選んでやる。面食らった顔のバアルを残し、レイチェルは服屋に入った。
「なんでここに?」
あまりの大きさに圧倒されるレイチェルに、バアルが答える。
「ここには色んな施設がある。役場とか、裁判所とか。店もいくつか入ってる」
「役場……」
悪魔にも、戸籍とかあるんだろうか。レイチェルはバアルを見上げ、
「ねえ、こんなところに人用の服なんかあるの?」
「人型の悪魔がいるからな」
悪魔なのに、人間みたいな容姿というのも妙だ。それとも、人間に化けていると何かと都合がいいのだろうか。
「あなたって、元々その姿なの?」
「質問が多いな」
レイチェルは赤くなった。仕方ないじゃないか、初めて見るものばかりなのだから。悪魔はちら、とこちらを見て、
「混沌から生まれた時はこの姿だった。他の姿にもなれる。例えばこれとか」
ボン、と音を立てて、バアルの姿が変わった。
その姿に、レイチェルは思わず息を飲む。蜘蛛のような足に、かえると人が混じったような顔がついている。頭には王冠がついていた。思わず背中が総毛立つような姿。
「この姿のほうがいい?」
レイチェルはぶんぶん首を振った。なんとも不気味な姿なのに、聞こえてくるのは変わらず美声というのが奇妙だ。
バアルは元の姿に戻り、バベルの塔の下にたたずむ、狐の顔の悪魔に近づいていく。懐から貨幣を出して渡し、
「婦人服売り場は?」
「五十二階」
どうやら、狐は案内係のようだった。
レイチェルはバベルの塔を見上げた。雲のせいでここからは天辺が見えないが、五十二階っていったいどこなんだろう。
「五十二階ぶんの階段を登れる? ちなみに四千五百段あるらしい」
バアルの問いに、真顔で首を振る。
「無理」
「僕が運んで行けば早いけど。触らないで運ぶのは無理だな」
どうする? という目で見られ、レイチェルはぐ、と顎を引く。触らないで、と言った手前、こんなことを頼むのは気まずいけど。
「お願いします」
バアルが身をかがめて、レイチェルを抱き上げた。固まっているレイチェルを見て、「息してる?」と尋ねる。
緊張しているのだと悟られたくなくて、慌てて答える。
「してるわ」
バアルが翼を広げた。
そのまま浮き上がった拍子に、レイチェルの金髪がなびく。空を飛んでいる。夢じゃない。すごい。レイチェルは恐怖を忘れ、浮いた自分の足を見下ろした。バベルの塔を階段で上るのは悪魔でも大変なのか、飛んでいるのはバアルだけではない。
鋭いかぎ爪を立て、壁をよじ登る猿のような悪魔を見ていると、バアルが口を開いた。
「ルイスって男と、何かあったのか」
レイチェルはぎくりとした。
「ど、どうしてその名前を」
「寝言で言ってた」
寝言まで聞かれていたなんて。レイチェルは赤くなる。
「……従兄弟なの。ここに来る直前、彼に怪我させてしまって、警察に訴えると言われたわ」
うなだれるレイチェルに、バアルはふうん、と呟く。
「恋人じゃないんだな」
「違うわ。なんで?」
「結婚がどうとかって言っていたから」
「英国には、限嗣相続制度《げんしそうぞくせいど》っていうものがあるの。男の人しか財産を継げない決まりなのよ。ルイスと結婚したら、私は家を取り戻せる。だから……」
レイチェルはそう言って、悪魔にこんな話をしてなんになるんだ、と思う。
「家が欲しいのか」
「家というより、思い出かしら」
「思い出……」
バアルは腑に落ちない、という顔をしている。
「わからないわよね、悪魔のあなたには」
バアルは答えずに、赤い瞳を上に向けている。
きっと人間の感傷などバカバカしいと思っているんだろう。レイチェルだって、自分が愚かだと思う。家を取り戻したいというレイチェルの心を見透かして、ルイスは求婚してきたのだ。
ルイスは悪くない。レイチェルが馬鹿なのだ。
何かを捨てずに、何かを手に入れるなんてできないのに。
☆☆☆
バアルは、巻貝のようになっている壁の、出っ張りの一つに降り立った。出窓のようになったそこに手をかけ、レイチェルを降ろす。
「ありがとう」
レイチェルは礼を言い、あたりを見回した。塔の中はドーナツのような足場があり、中央に柱がそびえ立っていた。あれが塔を支えているのだろうか。よくみたら、その表面には細かい文字が刻まれている。
見上げてみても、先がどうなっているのか見通せない。これほど巨大な建造物は、ロンドンにもない。
「すごいわ」
「昨日も言ったけど、君たちの先祖が作ったんだ。人間たちは、悪魔には理解できない探究心に満ちていた」
信じられない。違う世界に、人間の遺跡があるなんて。レイチェルは柱をよく見ようと、足場の周りを囲んでいる手すりに近寄って行った。
「一番上はどうなってるの?」
「さあ、行ったことがない。悪魔は基本的に、上より下にいるものだし」
「この先に、神様がいるのかしら」
バアルが肩をすくめる。
「悪魔に聞かないでくれ」
確かにそうだ。
「あんまり身を乗り出すと落ちる」
「大丈夫よ」
レイチェルは手すりに手をかけて、上の方をよく見ようとした。ふと、背後に熱を感じた。
「レイチェル」
耳元に声が降る。
「あぶない」
間近で聞いた美しい声に、目眩がした。
ぐらついたレイチェルの腕に、バアルの手が伸びてくる。ぐん、と引っ張られ、下の景色がぶれた。二重の意味で、心臓が鳴っている。
「何してるんだ」
「み、耳元で喋らないで。あなたの声は心臓に悪いわ」
バアルは怪訝な顔でレイチェルを見て、「神様探しをやめて、服を買いにいかないか」と言う。
「ええ」
レイチェルが歩き出そうとすると、また腕を引かれた。
「自殺する気か」
ふと見ると、レイチェルの視線の先には足場がなかった。足場には時々切れ間があった。悪魔たちは飛んで移動するからだろう。落ちていたらどうなっていたか想像し、レイチェルはのどを引きつらせる。
「ひっ」
ため息をついたバアルが、手を差し出す。
「ほら」
「一人で歩けるわ」
「そうは見えない。手間を増やすなよ」
不服げに手を出すと、バアルがレイチェルの手を握った。冷たい手だ。これが、悪魔の手。
「行こう」
バアルがそう言って歩き出す。
不思議だ。悪魔と手をつないで歩いているなんて。
というか、男の人と手をつないで歩くなんて初めてだ。本当は、結婚するまでそういうことはしてはいけない。そう教えられてきた。
ルイスと散歩した時だって、手なんかつながなかった。
ふと、キスされそうになったことを思い出し、ぞっとする。好きでもない人とあんなことをするなんて、とても無理だ。
バアルと手をつないでいても、意外に嫌悪感はなかった。人間じゃないからだろうか。――というか、悪魔に性別ってあるのかしら。
「レイチェル」
いきなり間近で美声が聞こえてきて、レイチェルはびくりとした。
あきれた顔のバアルがこちらを見ている。
「ロンドンとやらはよほど安全なところみたいだな。君みたいにぼんやり歩いてたら、バビロンではまず生き残れない」
「耳元で喋らないでって言ってるじゃない」
「呼んでも返事をしないから。どの店にする?」
そう言ってバアルが指さした先には、婦人服の店が三店舗並んでいた。まるで喪服のような洋服を置いている店「ダーク」に、ほとんど布切れに近い洋服を売っている「ビターズ」という店。一番まともそうなのは、真ん中にある「ドルチェ」という店だった。
「あの、『ドルチェ』っていう店にするわ」
「じゃあどうぞ選んで。僕は本屋に行ってる」
「待ってて。すぐに選ぶから」
バアルはどうだか、という顔をした。
「買い物の早い女を見たことがないけど」
「人間みたいなこと言うのね」
ルイスも似たようなことを言っていた。女の子は時間があって目的がないから買い物が長いんだ──ああ、思い出したら腹が立ってきた。
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