9 / 307
第一章 王都絢爛
7.国王の裁可 *アイカ視点
しおりを挟む「国王ファウロスの名において、白狼タロウと黒狼ジロウの第六騎士団への所属、王宮への滞在を許す」
と、王様の言葉で、心がパアッと明るくなった。一緒に生活できる……、ってことだよね?
目鼻立ちしっかり美人の姐さんが、王様に声をかけた。
「よろしいのですか?」
「うむ。ただし滞在は南宮8階、リティア宮殿内に限れ。出入りはリティア宮殿への直通路のみとして、各種回廊への出入りはさせるな。あまり自由気ままに歩き回られて、皆を驚かせ過ぎるのも良くあるまい」
「ありがとうございます! 父上」
と、リティアさんが弾けるような笑顔だ。いいなぁ美少女。美少女はいいよ。見てるだけで満たされるよ。王様とは目線で通じ合ってる感じがするし、なんかいいな。この親子。
不意にクレイアさんが私の耳元に顔を寄せた。
――近っ!
お、お、お、おっぱいが、当たりそ……。
「お礼を……」
あっ! おっぱいじゃねぇ!!!
「ありがとうございます!」
歳の離れた美形父娘に見とれてる場合でもなかった。隙があれば愛でてしまう。あぶない……。
「ちちうえ……」
側妃様に手を引かれた男の子が声を出した。かわいい声だな。第5王子様かな? 王様もにこやかに応えた。
「なんだ? エディン」
「エディンも、狼さんに触りたい」
側妃様が「エディン」と、眉間に皺を寄せた。
プラチナブロンドの髪がサラサラで、お花のオーナメントがあしらわれたドレスに隠されてるけど、たぶんおっぱいも大きい美人さん。
「危ないことは……」
分かる。普通のお母さんはそうです。でも、そのくらいの歳の男の子は動物大好きな子もいますから。
「よし」
と、王様が手を伸ばした。
「私が抱いておいてやるから、触ってみれば良い」
側妃様は若干心配そうだけど、駆け寄った王子様が王様に抱かれてタロウとジロウに手を伸ばした。そういえば王様。「朕」とか「余」とか言わないんですね。なんだか親しみが持てます。
「ねえさまっ」
ぱあっと場を明るくするような笑顔の王子様が、リティアさん顔を向けた。
なんですか!? このカワイイ物体は。
「触った」
「そうかそうか、どうだった?」
リティアさんも腰を降ろして王子様に目線を合わせる。
「んーっとね」
もう一度、王子様がタロウとジロウに触れる。もうちょっと大人しくしといてね。
「やわらかい! どっちの狼さんも毛がやわらかいよ!」
「そうか。父上にお礼を言わないとな」
と、リティアさんが王子様の頭を撫でた。
王子様は王様の腕から飛び出て、なぜか照れ臭そうな笑顔でリティアさんに抱き着いた。
ショタ? おねショタってヤツですか、これ? 鼻血出さないといけないヤツだ。すごく画になる。弟、いいなぁ。カワイイ弟、いいよなぁ。
「ちちうえ、ありがとうございました」
「うむ、良かったな」
王様は立ち上がって濃い青色をした空に目を向けた。
晩夏の空と王宮の尖塔を背景に、足元に伏せる二頭の狼を従えるような姿。一国に君臨する王者の風格が漂ってる。
「リティア。かつて王宮が竣工したとき、お前の外曾祖父にあたるルーファの大首長殿から、生きた虎を贈られたという先例がある。あれはテノリクア暦578年のことだから、もう47年前になるか」
「へぇー! そうなんですか? 大おじい様から?」
「立派な虎でな。皆で恐る恐る可愛がったのだが、早死にさせてしまった。……おっと、今の『恐る恐る』のところは内緒だぞ。みんな若くて血気盛んで、聖山戦争真っ最中の血の気の多い時期だったから表向きは強がっていたからな。ジリコは覚えているか?」
「はっ。私の初陣の年でしたから、よく覚えております」
「お前、そんなに若いのか?」
「はっ。今年で64になります」
「私も歳をとるわけだ。私は今年で81だ」
王様、そんなに筋肉ムキムキで81歳ですか。ていうか、リティアさんとエディン王子様は何歳のときのお子さんですか?
「つまりだ。虎が良くて狼がダメということはあるまいということだ。ましてや守護聖霊があるとは不思議な狼だ。末永く大切にしてやれ」
「かしこまりました、父上」
リティアさん、いい笑顔だなぁ。映画かドラマの中にしかこんな親子関係ないって思ってたよ。ここ異世界だけど。
「よく運動させてやれ。虎を早死にさせてしまったのは、王宮の中に閉じ込めていたからではないかと思う。街区を離れた森や草原が好みなら、王宮の者や街の者にも早めに見慣れさせよ。それからなリティア」
「はっ」
「旧都テノリクアに『総侯参朝』前の正殿参詣を命じる」
「それは……?」
「アイカとタロウ、ジロウの守護聖霊を母上に、王太后陛下に審神けてもらえ」
王様は一拍あけてリティアさんに顔を寄せた。
「……さすがに気になる」
王様が投げかけた悪戯っぽい笑みは、リティアさんにそっくりだった。
歳は随分離れてるけど、ほんとに親子なんだなぁ。
「かしこまりました! ただ、今年は『万騎兵長議定』の主宰を仰せつかっておりますので、終わり次第、旧都に向かいます」
専門用語が飛び交い始めて、会話についていけなくなってきたけど、リティアさんと王様の気持ちが通じてるのは分かる。側妃様も王子様も姐さんも、にこにこと寄り添ってる。
人間社会に7年もブランクあるし、異世界だし、色々と心配もあるけどこんな人たちに囲まれるならやっていけそうな気がする。タロウとジロウも一緒にいられる。
なにより、どっちを向いても愛でたい美人さん、美形さん、美少年さん、美少女さんばかりなのがいい!
――最高の職場です!
222
あなたにおすすめの小説
魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します
怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。
本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。
彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。
世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。
喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。
没落貴族と拾われ娘の成り上がり生活
アイアイ式パイルドライバー
ファンタジー
名家の生まれなうえに将来を有望視され、若くして領主となったカイエン・ガリエンド。彼は飢饉の際に王侯貴族よりも民衆を優先したために田舎の開拓村へ左遷されてしまう。
妻は彼の元を去り、一族からは勘当も同然の扱いを受け、王からは見捨てられ、生きる希望を失ったカイエンはある日、浅黒い肌の赤ん坊を拾った。
貴族の彼は赤子など育てた事などなく、しかも左遷された彼に乳母を雇う余裕もない。
しかし、心優しい村人たちの協力で何とか子育てと領主仕事をこなす事にカイエンは成功し、おまけにカイエンは開拓村にて子育てを手伝ってくれた村娘のリーリルと結婚までしてしまう。
小さな開拓村で幸せな生活を手に入れたカイエンであるが、この幸せはカイエンに迫る困難と成り上がりの始まりに過ぎなかった。
知識スキルで異世界らいふ
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
他の異世界の神様のやらかしで死んだ俺は、その神様の紹介で別の異世界に転生する事になった。地球の神様からもらった知識スキルを駆使して、異世界ライフ
神の加護を受けて異世界に
モンド
ファンタジー
親に言われるまま学校や塾に通い、卒業後は親の進める親族の会社に入り、上司や親の進める相手と見合いし、結婚。
その後馬車馬のように働き、特別好きな事をした覚えもないまま定年を迎えようとしている主人公、あとわずか数日の会社員生活でふと、何かに誘われるように会社を無断で休み、海の見える高台にある、神社に立ち寄った。
そこで野良犬に噛み殺されそうになっていた狐を助けたがその際、野良犬に喉笛を噛み切られその命を終えてしまうがその時、神社から不思議な光が放たれ新たな世界に生まれ変わる、そこでは自分の意思で何もかもしなければ生きてはいけない厳しい世界しかし、生きているという実感に震える主人公が、力強く生きるながら信仰と奇跡にに導かれて神に至る物語。
ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語
Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。
チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。
その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。
さぁ、どん底から這い上がろうか
そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。
少年は英雄への道を歩き始めるのだった。
※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。
異世界でのんびり暮らしてみることにしました
松石 愛弓
ファンタジー
アラサーの社畜OL 湊 瑠香(みなと るか)は、過労で倒れている時に、露店で買った怪しげな花に導かれ異世界に。忙しく辛かった過去を忘れ、異世界でのんびり楽しく暮らしてみることに。優しい人々や可愛い生物との出会い、不思議な植物、コメディ風に突っ込んだり突っ込まれたり。徐々にコメディ路線になっていく予定です。お話の展開など納得のいかないところがあるかもしれませんが、書くことが未熟者の作者ゆえ見逃していただけると助かります。他サイトにも投稿しています。
https://www.alphapolis.co.jp/novel/793391534/466596284/episode/5320962
https://www.alphapolis.co.jp/novel/793391534/84576624/episode/5093144
https://www.alphapolis.co.jp/novel/793391534/786307039/episode/2285646
【完結】憧れの異世界転移が現実になったのですが何か思ってたのと違います
Debby
ファンタジー
【全話投稿済み】
私、山下星良(せいら)はファンタジー系の小説を読むのが大好きなお姉さん。
好きが高じて真剣に考えて作ったのが『異世界でやってみたい50のこと』のリストなのだけど、やっぱり人生はじめからやり直す転生より、転移。転移先の条件として『★剣と魔法の世界に転移してみたい』は絶対に外せない。
そして今の身体じゃ体力的に異世界攻略は難しいのでちょっと若返りもお願いしたい。
更にもうひとつの条件が『★出来れば日本の乙女ゲームか物語の世界に転移してみたい(モブで)』だ。
これにはちゃんとした理由があって、必要なのは乙女ゲームの世界観のみで攻略対象とかヒロインは必要ないし、もちろんゲームに巻き込まれると面倒くさいので、ちゃんと「(モブで)」と注釈を入れることも忘れていない。
──そして本当に転移してしまった私は、頼もしい仲間と共に、自身の作ったやりたいことリストを消化していくことになる。
いい年の大人が本気で考え、万全を期したハズの『異世界でやりたいことリスト』。
なんで私が転移することになったのか。謎はいっぱいあるし、理想通りだったり、思っていたのと違ったりもするけれど、折角の異世界を楽しみたいと思います。
----------
覗いて下さり、ありがとうございます!
2025.4.26
女性向けHOTランキングに入りました!ありがとうございます(๑•̀ㅂ•́)و✧
7時、13時、19時更新。
全48話、予約投稿しています。
★このお話は旧『憧れの異世界転移が現実になったのでやりたいことリストを消化したいと思います~異世界でやってみたい50のこと』を大幅に加筆修正したものです(かなり内容も変わってます)。
余命半年のはずが?異世界生活始めます
ゆぃ♫
ファンタジー
静波杏花、本日病院で健康診断の結果を聞きに行き半年の余命と判明…
不運が重なり、途方に暮れていると…
確認はしていますが、拙い文章で誤字脱字もありますが読んでいただけると嬉しいです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる