50 / 307
第二章 旧都郷愁
45.旧都の小宴(2) *アイカ視点
しおりを挟む
クレイアさんが、そっと近寄って耳打ちしてくれる。
「正王妃、アナスタシア陛下です」
告げられた内容もさることながら、慣れないなぁ、クレイアさんのこの距離。さっきも宴の前に、お風呂で旅の汚れを一緒に落としたばかりなのに。
礼容を呈ろうとする一堂を、アナスタシアさんが朗らかな調子で制した。
「非公式な場と心得ております。皆も楽にしてください」
嫋やかな雰囲気の別嬪さん。
68歳って聞いてたけど、40代くらいには見える。小さな丸顔に青の瞳と青の髪の毛が印象的な、チワワ系美人。
しずしずとステファノスさんとリティアさんの前に進んで行く歩き姿は、可憐の一言。
――ほげぇ。出来ることなら、こんな風に歳をとりたいなぁ。
愛でるを通り越して……、呆気に取られてしまう。
「リティア殿、旧都テノリクアにようこそ。歓迎させていただきます」
「ありがとうございます、お義母さま」
と、リティアさんが騎士服に似合わない、王女の拝礼を呈った。
「母と呼んでくださいますか」
「もちろんです」
この場にいる、王子と王女のお母さんは別々で、どちらも王妃様と血の繋がりがない。
王族っていうのは大変だ。
「折角開かれた宴を、父宰相が欠席の非礼。ステファノス殿、どうか許し給え」
「私的な場に非礼も何もございません。王妃陛下にお運びいただけるとは、恐悦至極」
なんか、すごいとこに居るよね。私。
どうしてこうなった? ってヤツだ。
「さあさ、堅苦しい挨拶はこれでいいわよね?」
と、アナスタシアさんの笑顔が『よそゆき』でなくなると、場の空気が一気に緩んだ。
「私にも葡萄酒をちょうだい。あ、火酒でもいいわ」
――嗚呼、こういう感じかぁ。
王妃様はウオッカを立て続けに呷って、すぐに出来上がると、リティアさんの背中をバシバシ叩いてる。いつ一升瓶片手に胡座をかきだすか分からないってノリだ。
「この娘が『無頼姫の狼少女』?」
後ろから抱きつかれた。
高貴な女性のいい香りと、強いお酒の匂いが一緒になると、こんな感じなのかぁ。
こちらから自己紹介する感じで大丈夫よね? この場合。『万騎兵長議定』では、やらかした。クレイアさんをチラ見したら頷き返してくれたので、間違いなさそう。
「あ、アイカです……」
「んまぁ! 愛らしい娘ねぇ!」
たぶん、容姿ではなく振る舞いを褒めるのはOKってことなんだろう。
王妃さまが小さなお顔で頬ずりしてくる。
酔っ払いだなぁ!
「ウチにも娘ちゃんが1人いたんだけど、お嫁に行っちゃったしなぁ」
アナスタシアさんの娘、第1王女のソフィアさんはバンコレア侯って方に嫁がれてるはず。
「男は汗臭いのばっかだし」
まだあまり『からみ』はないけど、王太子と第3王子のお姿を思い返す。
歴戦の偉丈夫も、酔っ払った母親にかかれば、汗臭いで片付けられるのかー。
側妃サフィナさんへの寵愛に憚って、旧都に退かれたって聞いてたけど、この王妃様がいる頃の王宮は、今より風通し良かったのかも、なんて思った。
「アイカちゃんは、ウラニアちゃんの若い頃みたいねっ」
と、頬ずりを止めないアナスタシアさんの言葉を、ステファノスさんが即座に真顔で訂正してきた。
「ウラニアは、もっと愛らしかったですな」
――シスコンか。第2王子はシスコンか。
お嫁に出た第2王子の妹さんがウラニアさんだったはず。お昼に会った、絵本から飛び出したお姫様みたいな、公女ロマナさんのお祖母さん。
ロマナさんのお祖母さんなら、そりゃ可愛かったですよねー。
「いえ!」
ステファノスさん。拳を握り締めちゃったよ。
「今も愛らしいのです!」
いや。可愛いな、兄貴。
奥さん、横でニコニコしてるし。
夫婦で妹推しなのか?
「怒られちゃった」
と、アナスタシアさんが、頬を付けたまま舌を出した。
なんだよ!
貴女様も可愛いでございますですわよ!
「正王妃、アナスタシア陛下です」
告げられた内容もさることながら、慣れないなぁ、クレイアさんのこの距離。さっきも宴の前に、お風呂で旅の汚れを一緒に落としたばかりなのに。
礼容を呈ろうとする一堂を、アナスタシアさんが朗らかな調子で制した。
「非公式な場と心得ております。皆も楽にしてください」
嫋やかな雰囲気の別嬪さん。
68歳って聞いてたけど、40代くらいには見える。小さな丸顔に青の瞳と青の髪の毛が印象的な、チワワ系美人。
しずしずとステファノスさんとリティアさんの前に進んで行く歩き姿は、可憐の一言。
――ほげぇ。出来ることなら、こんな風に歳をとりたいなぁ。
愛でるを通り越して……、呆気に取られてしまう。
「リティア殿、旧都テノリクアにようこそ。歓迎させていただきます」
「ありがとうございます、お義母さま」
と、リティアさんが騎士服に似合わない、王女の拝礼を呈った。
「母と呼んでくださいますか」
「もちろんです」
この場にいる、王子と王女のお母さんは別々で、どちらも王妃様と血の繋がりがない。
王族っていうのは大変だ。
「折角開かれた宴を、父宰相が欠席の非礼。ステファノス殿、どうか許し給え」
「私的な場に非礼も何もございません。王妃陛下にお運びいただけるとは、恐悦至極」
なんか、すごいとこに居るよね。私。
どうしてこうなった? ってヤツだ。
「さあさ、堅苦しい挨拶はこれでいいわよね?」
と、アナスタシアさんの笑顔が『よそゆき』でなくなると、場の空気が一気に緩んだ。
「私にも葡萄酒をちょうだい。あ、火酒でもいいわ」
――嗚呼、こういう感じかぁ。
王妃様はウオッカを立て続けに呷って、すぐに出来上がると、リティアさんの背中をバシバシ叩いてる。いつ一升瓶片手に胡座をかきだすか分からないってノリだ。
「この娘が『無頼姫の狼少女』?」
後ろから抱きつかれた。
高貴な女性のいい香りと、強いお酒の匂いが一緒になると、こんな感じなのかぁ。
こちらから自己紹介する感じで大丈夫よね? この場合。『万騎兵長議定』では、やらかした。クレイアさんをチラ見したら頷き返してくれたので、間違いなさそう。
「あ、アイカです……」
「んまぁ! 愛らしい娘ねぇ!」
たぶん、容姿ではなく振る舞いを褒めるのはOKってことなんだろう。
王妃さまが小さなお顔で頬ずりしてくる。
酔っ払いだなぁ!
「ウチにも娘ちゃんが1人いたんだけど、お嫁に行っちゃったしなぁ」
アナスタシアさんの娘、第1王女のソフィアさんはバンコレア侯って方に嫁がれてるはず。
「男は汗臭いのばっかだし」
まだあまり『からみ』はないけど、王太子と第3王子のお姿を思い返す。
歴戦の偉丈夫も、酔っ払った母親にかかれば、汗臭いで片付けられるのかー。
側妃サフィナさんへの寵愛に憚って、旧都に退かれたって聞いてたけど、この王妃様がいる頃の王宮は、今より風通し良かったのかも、なんて思った。
「アイカちゃんは、ウラニアちゃんの若い頃みたいねっ」
と、頬ずりを止めないアナスタシアさんの言葉を、ステファノスさんが即座に真顔で訂正してきた。
「ウラニアは、もっと愛らしかったですな」
――シスコンか。第2王子はシスコンか。
お嫁に出た第2王子の妹さんがウラニアさんだったはず。お昼に会った、絵本から飛び出したお姫様みたいな、公女ロマナさんのお祖母さん。
ロマナさんのお祖母さんなら、そりゃ可愛かったですよねー。
「いえ!」
ステファノスさん。拳を握り締めちゃったよ。
「今も愛らしいのです!」
いや。可愛いな、兄貴。
奥さん、横でニコニコしてるし。
夫婦で妹推しなのか?
「怒られちゃった」
と、アナスタシアさんが、頬を付けたまま舌を出した。
なんだよ!
貴女様も可愛いでございますですわよ!
117
あなたにおすすめの小説
魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します
怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。
本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。
彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。
世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。
喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。
没落貴族と拾われ娘の成り上がり生活
アイアイ式パイルドライバー
ファンタジー
名家の生まれなうえに将来を有望視され、若くして領主となったカイエン・ガリエンド。彼は飢饉の際に王侯貴族よりも民衆を優先したために田舎の開拓村へ左遷されてしまう。
妻は彼の元を去り、一族からは勘当も同然の扱いを受け、王からは見捨てられ、生きる希望を失ったカイエンはある日、浅黒い肌の赤ん坊を拾った。
貴族の彼は赤子など育てた事などなく、しかも左遷された彼に乳母を雇う余裕もない。
しかし、心優しい村人たちの協力で何とか子育てと領主仕事をこなす事にカイエンは成功し、おまけにカイエンは開拓村にて子育てを手伝ってくれた村娘のリーリルと結婚までしてしまう。
小さな開拓村で幸せな生活を手に入れたカイエンであるが、この幸せはカイエンに迫る困難と成り上がりの始まりに過ぎなかった。
知識スキルで異世界らいふ
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
他の異世界の神様のやらかしで死んだ俺は、その神様の紹介で別の異世界に転生する事になった。地球の神様からもらった知識スキルを駆使して、異世界ライフ
神の加護を受けて異世界に
モンド
ファンタジー
親に言われるまま学校や塾に通い、卒業後は親の進める親族の会社に入り、上司や親の進める相手と見合いし、結婚。
その後馬車馬のように働き、特別好きな事をした覚えもないまま定年を迎えようとしている主人公、あとわずか数日の会社員生活でふと、何かに誘われるように会社を無断で休み、海の見える高台にある、神社に立ち寄った。
そこで野良犬に噛み殺されそうになっていた狐を助けたがその際、野良犬に喉笛を噛み切られその命を終えてしまうがその時、神社から不思議な光が放たれ新たな世界に生まれ変わる、そこでは自分の意思で何もかもしなければ生きてはいけない厳しい世界しかし、生きているという実感に震える主人公が、力強く生きるながら信仰と奇跡にに導かれて神に至る物語。
ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語
Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。
チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。
その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。
さぁ、どん底から這い上がろうか
そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。
少年は英雄への道を歩き始めるのだった。
※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。
異世界でのんびり暮らしてみることにしました
松石 愛弓
ファンタジー
アラサーの社畜OL 湊 瑠香(みなと るか)は、過労で倒れている時に、露店で買った怪しげな花に導かれ異世界に。忙しく辛かった過去を忘れ、異世界でのんびり楽しく暮らしてみることに。優しい人々や可愛い生物との出会い、不思議な植物、コメディ風に突っ込んだり突っ込まれたり。徐々にコメディ路線になっていく予定です。お話の展開など納得のいかないところがあるかもしれませんが、書くことが未熟者の作者ゆえ見逃していただけると助かります。他サイトにも投稿しています。
https://www.alphapolis.co.jp/novel/793391534/466596284/episode/5320962
https://www.alphapolis.co.jp/novel/793391534/84576624/episode/5093144
https://www.alphapolis.co.jp/novel/793391534/786307039/episode/2285646
【完結】憧れの異世界転移が現実になったのですが何か思ってたのと違います
Debby
ファンタジー
【全話投稿済み】
私、山下星良(せいら)はファンタジー系の小説を読むのが大好きなお姉さん。
好きが高じて真剣に考えて作ったのが『異世界でやってみたい50のこと』のリストなのだけど、やっぱり人生はじめからやり直す転生より、転移。転移先の条件として『★剣と魔法の世界に転移してみたい』は絶対に外せない。
そして今の身体じゃ体力的に異世界攻略は難しいのでちょっと若返りもお願いしたい。
更にもうひとつの条件が『★出来れば日本の乙女ゲームか物語の世界に転移してみたい(モブで)』だ。
これにはちゃんとした理由があって、必要なのは乙女ゲームの世界観のみで攻略対象とかヒロインは必要ないし、もちろんゲームに巻き込まれると面倒くさいので、ちゃんと「(モブで)」と注釈を入れることも忘れていない。
──そして本当に転移してしまった私は、頼もしい仲間と共に、自身の作ったやりたいことリストを消化していくことになる。
いい年の大人が本気で考え、万全を期したハズの『異世界でやりたいことリスト』。
なんで私が転移することになったのか。謎はいっぱいあるし、理想通りだったり、思っていたのと違ったりもするけれど、折角の異世界を楽しみたいと思います。
----------
覗いて下さり、ありがとうございます!
2025.4.26
女性向けHOTランキングに入りました!ありがとうございます(๑•̀ㅂ•́)و✧
7時、13時、19時更新。
全48話、予約投稿しています。
★このお話は旧『憧れの異世界転移が現実になったのでやりたいことリストを消化したいと思います~異世界でやってみたい50のこと』を大幅に加筆修正したものです(かなり内容も変わってます)。
余命半年のはずが?異世界生活始めます
ゆぃ♫
ファンタジー
静波杏花、本日病院で健康診断の結果を聞きに行き半年の余命と判明…
不運が重なり、途方に暮れていると…
確認はしていますが、拙い文章で誤字脱字もありますが読んでいただけると嬉しいです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる