132 / 307
第五章 王国動乱
123.王都の片隅(2)
しおりを挟む「リーヤボルクの兵士どもは、実際、品がなさ過ぎるな」
ピュリサスは、ガラの肩を抱いたまま話を続けた。
かつてアイカが不逞騎士に襲われた土間に置かれた作業用のテーブル。普段はガラが食材を刻んでいる。王都でも名の知れた若手の親分2人に挟まれ、ガラは妙に照れくさく居心地が悪い。
「ノクシアス。お前が娼館の手配に駆け回り出したときは、なにを大袈裟なって思ってたが……、お前が正解だった」
「おう。俺は間違わねえ」
「ふふ。へらず口は相変わらずだが、ウチのシモンも、東の元締チリッサも、お前のことは見直してる」
「そうかよ」
「……揉めごとや小競り合いは増えたが、なんとか街は治ってる」
ガラも小さく頷いた。
街路には品のないリーヤボルク兵が増えた。我が物顔に振る舞おうとするのを阻んだのは、無頼たちだ。
そこかしこで喧嘩が起きたが、無頼は一歩も引かなかった。
――でも、ワル同士って、いつの間にか仲良くなるよね。
無頼と兵士が、酔っぱらって肩を抱き合い街路を闊歩する姿も珍しくなくなった。
「交易を保護するっていうのが、摂政様の方針だからな」
ノクシアスが吐く「様」という言葉に皮肉がこもる。
「王が討たれようと、王太子と第3王子が戦をしようと、王都の交易は止まらなかった……」
「そんなことしても、誰も得しないからな」
「摂政正妃様はすっかり向こう側で、摂政様を支えてる。どうなんだ? 摂政様自身が即位するなんて展開はないのか?」
ノクシアスがマエルを通じてリーヤボルク兵――摂政サミュエルに繋がっているということは、周知の事実になっている。
「ムリだな」
「ほう……。王位に就けば、王都の富は総取りに出来そうだが」
「聖山の民がまとまれば、5万のリーヤボルク兵なぞ、ひとたまりもない。さすがに、そのくらいは分かっている」
「マエルの旦那が……、か?」
「いや、摂政様もさ。考えてもみろ。ヴィアナ騎士団と激突して3万も兵を失ったんだぜ、あいつら。数は侮れねえが、強くはない。スピロが裏切らなければ、勝敗は分からなかった。そのくらいは弁えているさ」
「ふむ……」
「ただ…………」
「なんだ?」
「……当分、帰らねえだろうな」
「なるほどな……。そういや、西南伯が王都に向かってるらしいが」
「らしいな」
「摂政様はどうするかな?」
「ふふっ。敵には回すまいよ」
街の裏側を仕切る無頼の大物2人の話は、まだ14のガラにも興味深い。
――西南伯……さま……。
ガラには雲の上の存在だが、
「内緒なんだけどね」
と、アイカが教えてくれたのは、自分たちを救けてくれたリティアが、密かに西南伯の公女と親友だという話。
仲良しを隠さないといけないとは、偉い人たちは難しい。
王都から遠く離れた西南伯領について、ガラの知識はそのくらいしかない。けど、ピュリサスとノクシアスは、大ごとのように話をしているから、大ごとなのだろう。肩を抱かれたままで落ち着かないが、耳はそば立てる。
「ま。リーヤボルクは、ちまちまと富を吸い上げるつもりでいるってことだな」
「そうか……」
「あいつらとの付き合いは長くなる。ピュリサス、お前も身の振り方を考えておくんだな」
「どういうことだ?」
「いいかげん、俺の下に付けよ」
と、ノクシアスは身を乗り出した。
「遠慮しとこう」
「そんなにシモンがいいかよ?」
「ああ。シモンの親分は、アレクの大親分の正統を継いでる」
「それだよ、ピュリサス」
「なんだ?」
「聖山の民は、正統を重んじ過ぎる。西域じゃあ、農民から成り上がった領主までいるって聞く。だが、テノリアで平民が列侯になるなんてことは考えられねえ。良くて騎士止まりだ」
「……それは、そうだが」
「俺は、それを変えたい」
ノクシアスの言葉が熱を帯びた――。
56
あなたにおすすめの小説
魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します
怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。
本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。
彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。
世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。
喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。
没落貴族と拾われ娘の成り上がり生活
アイアイ式パイルドライバー
ファンタジー
名家の生まれなうえに将来を有望視され、若くして領主となったカイエン・ガリエンド。彼は飢饉の際に王侯貴族よりも民衆を優先したために田舎の開拓村へ左遷されてしまう。
妻は彼の元を去り、一族からは勘当も同然の扱いを受け、王からは見捨てられ、生きる希望を失ったカイエンはある日、浅黒い肌の赤ん坊を拾った。
貴族の彼は赤子など育てた事などなく、しかも左遷された彼に乳母を雇う余裕もない。
しかし、心優しい村人たちの協力で何とか子育てと領主仕事をこなす事にカイエンは成功し、おまけにカイエンは開拓村にて子育てを手伝ってくれた村娘のリーリルと結婚までしてしまう。
小さな開拓村で幸せな生活を手に入れたカイエンであるが、この幸せはカイエンに迫る困難と成り上がりの始まりに過ぎなかった。
ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語
Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。
チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。
その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。
さぁ、どん底から這い上がろうか
そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。
少年は英雄への道を歩き始めるのだった。
※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。
[完結]前世引きこもりの私が異世界転生して異世界で新しく人生やり直します
mikadozero
ファンタジー
私は、鈴木凛21歳。自分で言うのはなんだが可愛い名前をしている。だがこんなに可愛い名前をしていても現実は甘くなかった。
中高と私はクラスの隅で一人ぼっちで生きてきた。だから、コミュニケーション家族以外とは話せない。
私は社会では生きていけないほどダメ人間になっていた。
そんな私はもう人生が嫌だと思い…私は命を絶った。
自分はこんな世界で良かったのだろうかと少し後悔したが遅かった。次に目が覚めた時は暗闇の世界だった。私は死後の世界かと思ったが違かった。
目の前に女神が現れて言う。
「あなたは命を絶ってしまった。まだ若いもう一度チャンスを与えましょう」
そう言われて私は首を傾げる。
「神様…私もう一回人生やり直してもまた同じですよ?」
そう言うが神は聞く耳を持たない。私は神に対して呆れた。
神は書類を提示させてきて言う。
「これに書いてくれ」と言われて私は書く。
「鈴木凛」と署名する。そして、神は書いた紙を見て言う。
「鈴木凛…次の名前はソフィとかどう?」
私は頷くと神は笑顔で言う。
「次の人生頑張ってください」とそう言われて私の視界は白い世界に包まれた。
ーーーーーーーーー
毎話1500文字程度目安に書きます。
たまに2000文字が出るかもです。
巻き込まれて異世界召喚? よくわからないけど頑張ります。 〜JKヒロインにおばさん呼ばわりされたけど、28才はお姉さんです〜
トイダノリコ
ファンタジー
会社帰りにJKと一緒に異世界へ――!?
婚活のために「料理の基本」本を買った帰り道、28歳の篠原亜子は、通りすがりの女子高生・星野美咲とともに突然まぶしい光に包まれる。
気がつけばそこは、海と神殿の国〈アズーリア王国〉。
美咲は「聖乙女」として大歓迎される一方、亜子は「予定外に混ざった人」として放置されてしまう。
けれど世界意識(※神?)からのお詫びとして特殊能力を授かった。
食材や魔物の食用可否、毒の有無、調理法までわかるスキル――〈料理眼〉!
「よし、こうなったら食堂でも開いて生きていくしかない!」
港町の小さな店〈潮風亭〉を拠点に、亜子は料理修行と新生活をスタート。
気のいい夫婦、誠実な騎士、皮肉屋の魔法使い、王子様や留学生、眼帯の怪しい男……そして、彼女を慕う男爵令嬢など個性豊かな仲間たちに囲まれて、"聖乙女イベントの裏側”で、静かに、そしてたくましく人生を切り拓く異世界スローライフ開幕。
――はい。静かに、ひっそり生きていこうと思っていたんです。私も.....(アコ談)
*AIと一緒に書いています*
【完結】憧れの異世界転移が現実になったのですが何か思ってたのと違います
Debby
ファンタジー
【全話投稿済み】
私、山下星良(せいら)はファンタジー系の小説を読むのが大好きなお姉さん。
好きが高じて真剣に考えて作ったのが『異世界でやってみたい50のこと』のリストなのだけど、やっぱり人生はじめからやり直す転生より、転移。転移先の条件として『★剣と魔法の世界に転移してみたい』は絶対に外せない。
そして今の身体じゃ体力的に異世界攻略は難しいのでちょっと若返りもお願いしたい。
更にもうひとつの条件が『★出来れば日本の乙女ゲームか物語の世界に転移してみたい(モブで)』だ。
これにはちゃんとした理由があって、必要なのは乙女ゲームの世界観のみで攻略対象とかヒロインは必要ないし、もちろんゲームに巻き込まれると面倒くさいので、ちゃんと「(モブで)」と注釈を入れることも忘れていない。
──そして本当に転移してしまった私は、頼もしい仲間と共に、自身の作ったやりたいことリストを消化していくことになる。
いい年の大人が本気で考え、万全を期したハズの『異世界でやりたいことリスト』。
なんで私が転移することになったのか。謎はいっぱいあるし、理想通りだったり、思っていたのと違ったりもするけれど、折角の異世界を楽しみたいと思います。
----------
覗いて下さり、ありがとうございます!
2025.4.26
女性向けHOTランキングに入りました!ありがとうございます(๑•̀ㅂ•́)و✧
7時、13時、19時更新。
全48話、予約投稿しています。
★このお話は旧『憧れの異世界転移が現実になったのでやりたいことリストを消化したいと思います~異世界でやってみたい50のこと』を大幅に加筆修正したものです(かなり内容も変わってます)。
知識スキルで異世界らいふ
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
他の異世界の神様のやらかしで死んだ俺は、その神様の紹介で別の異世界に転生する事になった。地球の神様からもらった知識スキルを駆使して、異世界ライフ
神の加護を受けて異世界に
モンド
ファンタジー
親に言われるまま学校や塾に通い、卒業後は親の進める親族の会社に入り、上司や親の進める相手と見合いし、結婚。
その後馬車馬のように働き、特別好きな事をした覚えもないまま定年を迎えようとしている主人公、あとわずか数日の会社員生活でふと、何かに誘われるように会社を無断で休み、海の見える高台にある、神社に立ち寄った。
そこで野良犬に噛み殺されそうになっていた狐を助けたがその際、野良犬に喉笛を噛み切られその命を終えてしまうがその時、神社から不思議な光が放たれ新たな世界に生まれ変わる、そこでは自分の意思で何もかもしなければ生きてはいけない厳しい世界しかし、生きているという実感に震える主人公が、力強く生きるながら信仰と奇跡にに導かれて神に至る物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる