164 / 307
第七章 姉妹契誓
153.掛け合い
しおりを挟む
リティアは微笑みつつ、話を続けた。
「今度は、どの国にも収まり切らなかった者たちを、この《天衣無縫の無頼姫》リティアが引き受ける。我らの国を打ち立て、慮外者たちの楽園を築こうぞ」
リティアは窓の外から見える、ルーファ首長家の豪壮な屋敷に視線を移した。
「それは、プシャン砂漠、そしてルーファの治安にも資することになるはずだ。大お祖父様にも『出資』を頼んでみよう。だが、その前に、あの者らがどこにどのくらいいるのか。どのように生活しているのか、つぶさに調べ上げる必要がある」
「「ははっ」」
「アイシェ、ゼルフィア、カリュ。しばらく骨を休めたら、済まないが再び砂漠を回ってほしい。私たちが旅したルーファの北側だけでなく南側も状況を知りたい」
「かしこまりました」
「ネビ、ハルム。そなたらはルーファ育ちで砂漠に慣れておる。アイシェたちの護衛を選抜してほしい」
「ははっ」
「クレイアは首長家との渉外にあたれ」
「はっ」
「こちらは世話になる身だが、引け目を感じる必要はない。そのためには、余計なしがらみのない、そなたが相応しいだろう」
「仰せのままに」
「アイラは、クレイアを援けつつ、ドーラと賊の受け入れ準備を始めよ」
「……私ですか?」
「無頼の娘として育った、そなたが過ごしやすい環境を整えれば、自然と彼らが溶け込みやすい居場所をつくることができよう」
「分かりました、やってみます」
「よし。そして力を蓄え《聖山の大地》に皆で帰還する。プシャンの砂漠に埋もれている民を掘り起し、聖山の大地で花開かせるのだ」
「「はは――っ!」」
と、皆が頭を下げるなか、ぴょこんと頭を上げたままキョロキョロしていたのはアイカだ。
「あの……、私は?」
「ん? ……あっ! うん、そうだな」
「忘れてました?」
「忘れてない。忘れてないぞ」
「いや、忘れてましたよね?」
「アイカは我が側にあって離れず、《陛下の狼》たちとともに私を援けよ! 弓矢の守護聖霊と、道案内の守護聖霊が、きっと我が道を照らしてくれるだろう」
「……なんか、いい感じにまとめようとしてますけど、忘れてましたよね?」
「忘れてない、忘れてないぞ。私がアイカを忘れるはずないではないか」
「『あっ!』って、言ってましたよ?」
「言ってない」
と、漫才のような掛け合いが始まったのを見て、皆は微笑ましく苦笑いを浮かべ、三々五々、解散となった。
「あーあ。タロウ、ジロウ。殿下に忘れられちゃってたんだぁ、私」
「だから、忘れてないってば……。タロウとジロウも、そんな目で見るなぁ。第3王女だぞ? 私」
砂漠を旅する間にも、2人の距離は相当縮んでいた。周囲の者たちも、それが当然のことと受け入れるほどに――。
◇
アイシェたちが砂漠に割拠する賊の調査に出発した頃、リティアは大首長のセミールから宴に招かれた。
「砂漠に散在する賊を糾合しようとは、さすがは《ファウロスの娘》、といったところですな」
「恐れ入ります」
「賊はそれぞれ小さな一派を構えております。そのひとつひとつを懐柔し、時には制圧していく必要がありましょう」
「心得ております。一筋縄にはいかないでしょうが、時間をかけても必ずやり遂げる覚悟です」
「まこと、頼もしい限り」
「なにせ、私の中には、父ファウロスに加えて、大首長セミールの血も流れておるのです! 聖山の大地も、プシャンの砂漠も、私に味方してくれるに違いないのです!」
「ふふふ。たしかに……」
宴にはアイカをはじめ、ルーファに残るリティアの家臣たちも招かれている。
快活な笑顔で未来を語る主君リティアを、誇らしげに見詰めた。
「しかし、殿下……。私は殿下に償わなくてはならない……」
と、セミールは瞳に柔和な光を宿して、リティアをしっかりと見据えた――。
「今度は、どの国にも収まり切らなかった者たちを、この《天衣無縫の無頼姫》リティアが引き受ける。我らの国を打ち立て、慮外者たちの楽園を築こうぞ」
リティアは窓の外から見える、ルーファ首長家の豪壮な屋敷に視線を移した。
「それは、プシャン砂漠、そしてルーファの治安にも資することになるはずだ。大お祖父様にも『出資』を頼んでみよう。だが、その前に、あの者らがどこにどのくらいいるのか。どのように生活しているのか、つぶさに調べ上げる必要がある」
「「ははっ」」
「アイシェ、ゼルフィア、カリュ。しばらく骨を休めたら、済まないが再び砂漠を回ってほしい。私たちが旅したルーファの北側だけでなく南側も状況を知りたい」
「かしこまりました」
「ネビ、ハルム。そなたらはルーファ育ちで砂漠に慣れておる。アイシェたちの護衛を選抜してほしい」
「ははっ」
「クレイアは首長家との渉外にあたれ」
「はっ」
「こちらは世話になる身だが、引け目を感じる必要はない。そのためには、余計なしがらみのない、そなたが相応しいだろう」
「仰せのままに」
「アイラは、クレイアを援けつつ、ドーラと賊の受け入れ準備を始めよ」
「……私ですか?」
「無頼の娘として育った、そなたが過ごしやすい環境を整えれば、自然と彼らが溶け込みやすい居場所をつくることができよう」
「分かりました、やってみます」
「よし。そして力を蓄え《聖山の大地》に皆で帰還する。プシャンの砂漠に埋もれている民を掘り起し、聖山の大地で花開かせるのだ」
「「はは――っ!」」
と、皆が頭を下げるなか、ぴょこんと頭を上げたままキョロキョロしていたのはアイカだ。
「あの……、私は?」
「ん? ……あっ! うん、そうだな」
「忘れてました?」
「忘れてない。忘れてないぞ」
「いや、忘れてましたよね?」
「アイカは我が側にあって離れず、《陛下の狼》たちとともに私を援けよ! 弓矢の守護聖霊と、道案内の守護聖霊が、きっと我が道を照らしてくれるだろう」
「……なんか、いい感じにまとめようとしてますけど、忘れてましたよね?」
「忘れてない、忘れてないぞ。私がアイカを忘れるはずないではないか」
「『あっ!』って、言ってましたよ?」
「言ってない」
と、漫才のような掛け合いが始まったのを見て、皆は微笑ましく苦笑いを浮かべ、三々五々、解散となった。
「あーあ。タロウ、ジロウ。殿下に忘れられちゃってたんだぁ、私」
「だから、忘れてないってば……。タロウとジロウも、そんな目で見るなぁ。第3王女だぞ? 私」
砂漠を旅する間にも、2人の距離は相当縮んでいた。周囲の者たちも、それが当然のことと受け入れるほどに――。
◇
アイシェたちが砂漠に割拠する賊の調査に出発した頃、リティアは大首長のセミールから宴に招かれた。
「砂漠に散在する賊を糾合しようとは、さすがは《ファウロスの娘》、といったところですな」
「恐れ入ります」
「賊はそれぞれ小さな一派を構えております。そのひとつひとつを懐柔し、時には制圧していく必要がありましょう」
「心得ております。一筋縄にはいかないでしょうが、時間をかけても必ずやり遂げる覚悟です」
「まこと、頼もしい限り」
「なにせ、私の中には、父ファウロスに加えて、大首長セミールの血も流れておるのです! 聖山の大地も、プシャンの砂漠も、私に味方してくれるに違いないのです!」
「ふふふ。たしかに……」
宴にはアイカをはじめ、ルーファに残るリティアの家臣たちも招かれている。
快活な笑顔で未来を語る主君リティアを、誇らしげに見詰めた。
「しかし、殿下……。私は殿下に償わなくてはならない……」
と、セミールは瞳に柔和な光を宿して、リティアをしっかりと見据えた――。
60
あなたにおすすめの小説
魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します
怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。
本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。
彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。
世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。
喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。
娘を返せ〜誘拐された娘を取り返すため、父は異世界に渡る
ほりとくち
ファンタジー
突然現れた魔法陣が、あの日娘を連れ去った。
異世界に誘拐されてしまったらしい娘を取り戻すため、父は自ら異世界へ渡ることを決意する。
一体誰が、何の目的で娘を連れ去ったのか。
娘とともに再び日本へ戻ることはできるのか。
そもそも父は、異世界へ足を運ぶことができるのか。
異世界召喚の秘密を知る謎多き少年。
娘を失ったショックで、精神が幼児化してしまった妻。
そして父にまったく懐かず、娘と母にだけ甘えるペットの黒猫。
3人と1匹の冒険が、今始まる。
※小説家になろうでも投稿しています
※フォロー・感想・いいね等頂けると歓喜します!
よろしくお願いします!
没落貴族と拾われ娘の成り上がり生活
アイアイ式パイルドライバー
ファンタジー
名家の生まれなうえに将来を有望視され、若くして領主となったカイエン・ガリエンド。彼は飢饉の際に王侯貴族よりも民衆を優先したために田舎の開拓村へ左遷されてしまう。
妻は彼の元を去り、一族からは勘当も同然の扱いを受け、王からは見捨てられ、生きる希望を失ったカイエンはある日、浅黒い肌の赤ん坊を拾った。
貴族の彼は赤子など育てた事などなく、しかも左遷された彼に乳母を雇う余裕もない。
しかし、心優しい村人たちの協力で何とか子育てと領主仕事をこなす事にカイエンは成功し、おまけにカイエンは開拓村にて子育てを手伝ってくれた村娘のリーリルと結婚までしてしまう。
小さな開拓村で幸せな生活を手に入れたカイエンであるが、この幸せはカイエンに迫る困難と成り上がりの始まりに過ぎなかった。
知識スキルで異世界らいふ
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
他の異世界の神様のやらかしで死んだ俺は、その神様の紹介で別の異世界に転生する事になった。地球の神様からもらった知識スキルを駆使して、異世界ライフ
巻き込まれて異世界召喚? よくわからないけど頑張ります。 〜JKヒロインにおばさん呼ばわりされたけど、28才はお姉さんです〜
トイダノリコ
ファンタジー
会社帰りにJKと一緒に異世界へ――!?
婚活のために「料理の基本」本を買った帰り道、28歳の篠原亜子は、通りすがりの女子高生・星野美咲とともに突然まぶしい光に包まれる。
気がつけばそこは、海と神殿の国〈アズーリア王国〉。
美咲は「聖乙女」として大歓迎される一方、亜子は「予定外に混ざった人」として放置されてしまう。
けれど世界意識(※神?)からのお詫びとして特殊能力を授かった。
食材や魔物の食用可否、毒の有無、調理法までわかるスキル――〈料理眼〉!
「よし、こうなったら食堂でも開いて生きていくしかない!」
港町の小さな店〈潮風亭〉を拠点に、亜子は料理修行と新生活をスタート。
気のいい夫婦、誠実な騎士、皮肉屋の魔法使い、王子様や留学生、眼帯の怪しい男……そして、彼女を慕う男爵令嬢など個性豊かな仲間たちに囲まれて、"聖乙女イベントの裏側”で、静かに、そしてたくましく人生を切り拓く異世界スローライフ開幕。
――はい。静かに、ひっそり生きていこうと思っていたんです。私も.....(アコ談)
*AIと一緒に書いています*
【完結】憧れの異世界転移が現実になったのですが何か思ってたのと違います
Debby
ファンタジー
【全話投稿済み】
私、山下星良(せいら)はファンタジー系の小説を読むのが大好きなお姉さん。
好きが高じて真剣に考えて作ったのが『異世界でやってみたい50のこと』のリストなのだけど、やっぱり人生はじめからやり直す転生より、転移。転移先の条件として『★剣と魔法の世界に転移してみたい』は絶対に外せない。
そして今の身体じゃ体力的に異世界攻略は難しいのでちょっと若返りもお願いしたい。
更にもうひとつの条件が『★出来れば日本の乙女ゲームか物語の世界に転移してみたい(モブで)』だ。
これにはちゃんとした理由があって、必要なのは乙女ゲームの世界観のみで攻略対象とかヒロインは必要ないし、もちろんゲームに巻き込まれると面倒くさいので、ちゃんと「(モブで)」と注釈を入れることも忘れていない。
──そして本当に転移してしまった私は、頼もしい仲間と共に、自身の作ったやりたいことリストを消化していくことになる。
いい年の大人が本気で考え、万全を期したハズの『異世界でやりたいことリスト』。
なんで私が転移することになったのか。謎はいっぱいあるし、理想通りだったり、思っていたのと違ったりもするけれど、折角の異世界を楽しみたいと思います。
----------
覗いて下さり、ありがとうございます!
2025.4.26
女性向けHOTランキングに入りました!ありがとうございます(๑•̀ㅂ•́)و✧
7時、13時、19時更新。
全48話、予約投稿しています。
★このお話は旧『憧れの異世界転移が現実になったのでやりたいことリストを消化したいと思います~異世界でやってみたい50のこと』を大幅に加筆修正したものです(かなり内容も変わってます)。
【完結】断罪された悪役令嬢は、本気で生きることにした
きゅちゃん
ファンタジー
帝国随一の名門、ロゼンクロイツ家の令嬢ベルティア・フォン・ロゼンクロイツは、突如として公の場で婚約者であるクレイン王太子から一方的に婚約破棄を宣告される。その理由は、彼女が平民出身の少女エリーゼをいじめていたという濡れ衣。真実はエリーゼこそが王太子の心を奪うために画策した罠だったにも関わらず、ベルティアは悪役令嬢として断罪され、社交界からの追放と学院退学の処分を受ける。
全てを失ったベルティアだが、彼女は諦めない。これまで家の期待に応えるため「完璧な令嬢」として生きてきた彼女だが、今度は自分自身のために生きると決意する。軍事貴族の嫡男ヴァルター・フォン・クリムゾンをはじめとする協力者たちと共に、彼女は自らの名誉回復と真実の解明に挑む。
その過程で、ベルティアは王太子の裏の顔や、エリーゼの正体、そして帝国に忍び寄る陰謀に気づいていく。かつては社交界のスキルだけを磨いてきた彼女だが、今度は魔法や剣術など実戦的な力も身につけながら、自らの道を切り開いていく。
失われた名誉、隠された真実、そして予期せぬ恋。断罪された「悪役令嬢」が、自分の物語を自らの手で紡いでいく、爽快復讐ファンタジー。
【本編完結】転生隠者の転生記録———怠惰?冒険?魔法?全ては、その心の赴くままに……
ひらえす
ファンタジー
後にリッカと名乗る者は、それなりに生きて、たぶん一度死んだ。そして、その人生の苦難の8割程度が、神の不手際による物だと告げられる。
そんな前世の反動なのか、本人的には怠惰でマイペースな異世界ライフを満喫するはず……が、しかし。自分に素直になって暮らしていこうとする主人公のズレっぷり故に引き起こされたり掘り起こされたり巻き込まれていったり、時には外から眺めてみたり…の物語になりつつあります。
※小説家になろう様、アルファポリス様、カクヨム様でほぼ同時投稿しています。
※残酷描写は保険です。
※誤字脱字多いと思います。教えてくださると助かります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる