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第七章 姉妹契誓
155.ブローチの輝き(1)
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その場に同席したものは、ルーファの大首長セミール、その息子首長シャヒン、孫太子マリク、孫娘にして大隊商家に嫁いだヨルダナ、また、テノリア王国側では老練の旗衛騎士ジリコ、黒髪の剣士右衛騎士クロエ、仏頂面の美少年左衛騎士ヤニス、クールビューティな侍女クレイア、儀典官イリアス、審神者メラニア、北の無頼元締シモンの娘アイラ、そして、無頼姫の狼少女アイカ……。
とにかく、壮壮たる面々であった。
その全員の心が、寸分たがわず同じことを思った。
――あっ……、そーいう感じなんだ――、
話は少し、遡る。
*
第3王女リティアが威厳をたたえた言を宣し、厳かに着座すると、曽祖父大首長セミールに深々と頭を下げた。
「大お祖父様、せっかくお招きいただきましたルーファの宴でありますのに、テノリアの事情にてお騒がせしてしまい申し訳ございません。どうぞ、ほんの座興とご笑許くださいませ」
「いや……、あ、うむ……」
場には、いまだリティアが放った裂帛の気迫が漂う。
気圧されてしまっていた自分を払いのけるように、セミールは小さく咳払いをした。
「リティア殿下の見事なお覚悟に触れ、殿下がルーファの血族に連なられておることを誇りに思う……」
「恐れ多いことにございます」
「うむ……」
「大お祖父様!」
と、リティアは《天衣無縫》の笑みを満開に開かせて、曽祖父を呼んだ。
「ん? なんですかな?」
「私が感情に流されてしまい、大お祖父様の話を遮ってしまいました! 申し訳ありません。どうか続きをお聞かせいただけませんか?」
「ん……、いや、それは……」
「大お祖父様が『儂はまた同じ過ちを犯そうと……』と、仰られたところで、私が余計な話を差し込んでしまいました!」
「うむ……、その話は、日を改めて……」
と、セミールが言ったところで、孫娘ヨルダナが立ち上がった。
リティアの母エメーウの妹、リティアの叔母にあたるヨルダナは、いつもの美しい人形のような無表情の水色の瞳を、リティアに向けた。
「お祖父様。私からお話しさせていただきます」
「ヨルダナ……」
「大切なお話です。先延ばしすることは、余計な摩擦や行き違いを生む元ともなりかねません。我らルーファ首長家は、すでにその過ちを犯して参りました……」
「うむ……、分かった」
セミールは、この場をヨルダナに任せることを決め、大きく頷いてみせた。
ヨルダナは改めて、リティアに顔を向けた。
「……リティア殿下」
「はい! ヨルダナ叔母様!」
「ルーファ首長家は、殿下を全面的にお支えしたいと考えております」
「ありがとうございます!」
「殿下がテノリア王国の動乱に対して、どのように臨まれるか。ご決意がどのように定まりましても、それを全面的に支持し、持てる限りの力を提供させていただく覚悟」
「叔母上……」
「しかし、ルーファとて必ずしも一枚岩ではございません。様々な豪族を従えており、それらにはそれぞれ思惑も利害もございます。ルーファの力は、首長家だけのものとは言えません……」
ヨルダナは、ほんの少しだけ眉をピクリと動かした。
「さりとて、首長家に逆らえる豪族がおらぬのも、また事実。首長家のためならば助力を惜しむような豪族もおりません。……マリクお兄様」
ヨルダナが呼んだマリクは、エメーウの弟にあたり、首長家の正統を継ぐ予定の太子の座にある。
マリクは静かに頷き、隣室に控えていた息子フェティを部屋に招き入れた。
「リティア殿下」
ヨルダナの声に、哀切な響きが乗った。
「ルーファ首長家は、また同じ過ちを犯そうとしているのかもしれません。ですが、殿下にルーファのすべてをお捧げするため、兄マリクの息子と結婚――、いえ、せめて婚約をしていただけませぬでしょうか……」
その場に居並ぶ、リティアの配下たちが息を呑む。
アイカの目に映るマリクの息子フェティは、まだ幼い。ヒョコヒョコ歩いてきて、父が座る椅子の背もたれに身を隠して、恥ずかしそうに赤らめた顔だけ出している。
明らかな政略結婚である。
リティアは微笑みを浮かべたまま、叔母ヨルダナの話の続きを待った――。
とにかく、壮壮たる面々であった。
その全員の心が、寸分たがわず同じことを思った。
――あっ……、そーいう感じなんだ――、
話は少し、遡る。
*
第3王女リティアが威厳をたたえた言を宣し、厳かに着座すると、曽祖父大首長セミールに深々と頭を下げた。
「大お祖父様、せっかくお招きいただきましたルーファの宴でありますのに、テノリアの事情にてお騒がせしてしまい申し訳ございません。どうぞ、ほんの座興とご笑許くださいませ」
「いや……、あ、うむ……」
場には、いまだリティアが放った裂帛の気迫が漂う。
気圧されてしまっていた自分を払いのけるように、セミールは小さく咳払いをした。
「リティア殿下の見事なお覚悟に触れ、殿下がルーファの血族に連なられておることを誇りに思う……」
「恐れ多いことにございます」
「うむ……」
「大お祖父様!」
と、リティアは《天衣無縫》の笑みを満開に開かせて、曽祖父を呼んだ。
「ん? なんですかな?」
「私が感情に流されてしまい、大お祖父様の話を遮ってしまいました! 申し訳ありません。どうか続きをお聞かせいただけませんか?」
「ん……、いや、それは……」
「大お祖父様が『儂はまた同じ過ちを犯そうと……』と、仰られたところで、私が余計な話を差し込んでしまいました!」
「うむ……、その話は、日を改めて……」
と、セミールが言ったところで、孫娘ヨルダナが立ち上がった。
リティアの母エメーウの妹、リティアの叔母にあたるヨルダナは、いつもの美しい人形のような無表情の水色の瞳を、リティアに向けた。
「お祖父様。私からお話しさせていただきます」
「ヨルダナ……」
「大切なお話です。先延ばしすることは、余計な摩擦や行き違いを生む元ともなりかねません。我らルーファ首長家は、すでにその過ちを犯して参りました……」
「うむ……、分かった」
セミールは、この場をヨルダナに任せることを決め、大きく頷いてみせた。
ヨルダナは改めて、リティアに顔を向けた。
「……リティア殿下」
「はい! ヨルダナ叔母様!」
「ルーファ首長家は、殿下を全面的にお支えしたいと考えております」
「ありがとうございます!」
「殿下がテノリア王国の動乱に対して、どのように臨まれるか。ご決意がどのように定まりましても、それを全面的に支持し、持てる限りの力を提供させていただく覚悟」
「叔母上……」
「しかし、ルーファとて必ずしも一枚岩ではございません。様々な豪族を従えており、それらにはそれぞれ思惑も利害もございます。ルーファの力は、首長家だけのものとは言えません……」
ヨルダナは、ほんの少しだけ眉をピクリと動かした。
「さりとて、首長家に逆らえる豪族がおらぬのも、また事実。首長家のためならば助力を惜しむような豪族もおりません。……マリクお兄様」
ヨルダナが呼んだマリクは、エメーウの弟にあたり、首長家の正統を継ぐ予定の太子の座にある。
マリクは静かに頷き、隣室に控えていた息子フェティを部屋に招き入れた。
「リティア殿下」
ヨルダナの声に、哀切な響きが乗った。
「ルーファ首長家は、また同じ過ちを犯そうとしているのかもしれません。ですが、殿下にルーファのすべてをお捧げするため、兄マリクの息子と結婚――、いえ、せめて婚約をしていただけませぬでしょうか……」
その場に居並ぶ、リティアの配下たちが息を呑む。
アイカの目に映るマリクの息子フェティは、まだ幼い。ヒョコヒョコ歩いてきて、父が座る椅子の背もたれに身を隠して、恥ずかしそうに赤らめた顔だけ出している。
明らかな政略結婚である。
リティアは微笑みを浮かべたまま、叔母ヨルダナの話の続きを待った――。
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