35 / 297
35.初指名(2)
しおりを挟む
「建築が担当ってことは、道具を作ったりするのもミンリンさんが担当ですか?」
「そうですね。はっきり決まっている訳ではありませんが、そう考えていただいて差し支えないと思います」
「篝火に屋根を付けたいんです」
「篝火に、屋根……」
イメージしてるのは灯籠だ。風で消えないだけの火勢が必要なことを考えると、結構な高さが要るかもしれない。
「そうです。雨で火が消えたり、弱まったりするのを防ぎたいんです」
「なるほど……」
「それに、やってみないと分からないんですけど、磨いた鍋を組み合わせてみたいんです」
「鍋、ですか……」
この短い間に、俺なりに必死で考えた対策がこれだ。
スイランさんに案内された倉庫には、中華鍋も備蓄されてた。あれを磨いて反射させたら、サーチライトのように使えないか? 上手くいけば、城壁上じゃなくて、宮城から照らせる。
でも、そんなこと、やったことがない。出来ればプロの社会人に作ってもらいたい。社会人……。そんな概念は異世界にあるんだろうか……?
まあいいや。職人さんだ、職人さん。職人さんにやってもらえるなら、それに越したことはないんだけど。
ミンリンさんは少し考えてから、口を開いた。考えてる間に四つん這いから、腰を降ろしてくれて、ちょっと気持ちが落ち着いた。下を向いてた迫力が、前に突き出たってだけではあるのだけど……。
「それなら、シーシですね。シーシ?」
と、ミンリンさんが呼びかけると、キャッキャしてる女子たちの中から、真紅の髪色をしたショートボブのツルペタ娘が立ち上がった。……四つん這いもアレでしたけど、立ち上がられるのも、ちょっと。
「なんスか!?」
と、元気よく答えたショートボブツルペタ娘は、湯を掻き分けてミンリンさんの側に来て隣に座った。
「マレビト様。シーシは腕の立つ大工で、ものづくりも得意にしております。私が設計する建築が思い通りに建つのは、シーシの力量に依るものが大きいのです」
と、ミンリンさんが紹介すると、シーシは、へへっと、照れ臭そうに笑った。
スイランさんよりは身長高そうだけど、全体的には小柄。パッと見、ツルペタって思ったけどシアユンさんよりは少しある……。違う違う。今、そんな場合じゃないから。
「だって、ミンリン様の設計ってスゴイんだよ!?」
と、シーシが満面の笑みで声を上げた。
「なんて言うか、一筋縄じゃいかないって言うか。毎回、こっちはこっちで新しい技法を考え出さないと、ちゃんと建たないんだ! でも、建ったら誰の設計したものより、頑丈だし立派で綺麗! 挑みがいがあるっていうか、最高に楽しいんだ!」
うーん。元気印ショートボブ貧乳娘……。ミンリンさんは照れ臭そうに頬を赤らめて俯いた。なんとなく、俺的にキャラの立つコンビだなぁ。
「シーシは鍛冶や冶金にも精通しております」
「だって、ミンリン様の設計のために金具もいっぱい新しく作ったからね!」
「……で、ですので。マレビト様もシーシに相談してみてはいかがでしょうか……?」
ミンリンさんは褒められ慣れてないように、消え入りそうな声で俺にシーシのことを勧めてきた。
うん。大工さんで木工が得意で、金属の扱いにも慣れてる。俺の求めてた職人さんにピッタリ当てはまりますです。しかも、鍛冶で金具も自作できるなんて、言うことないです。
俺がミンリンさんにした説明と同じ話をすると、シーシは、ふんふんと考えて口を開いた。
「分かった! とりあえず、やってみるよ。マレビト様がひと眠りしたら『司空府』に来てくれる? 失敗するかもだけど、試しに作ってみとくよ」
仕事も速いなんて、最高じゃないですか。でも……。
「シーシは寝なくて大丈夫なのか?」
「ボクは神経が太いから、夜の間にグッスリ寝れてるから。ニシシ」
ボ、ボクっ娘かぁ……。ニシシと笑う、元気印ショートボブ貧乳ボクっ娘。……なんか、一発で覚えました! ものづくりが得意ってところも、なんかピッタリです!
「シーシは若いのにミンリンさんからも信頼されてて、すごいなぁ」
と、俺が漏らすと、シーシとミンリンさんがキョトンとした顔をした。あれ?
「ボク、マレビト様より年上だよ。……21歳」
シーシ……、さん。じゃないですか。え? シアユンさんと同い年? 3つも年上?
「あ、あの……、なんか、すみません……。シーシさん……」
「いいよ、いいよ! 幼く見られるのは慣れてるし! それと、シーシでいいよ!」
キャッキャしてる女子たちに、スーッと視線を滑らせた。年齢のことで迂闊なことを言うのはやめよう。
そう言えば、昔、里佳にも言われたことあったなぁ……。
「そうですね。はっきり決まっている訳ではありませんが、そう考えていただいて差し支えないと思います」
「篝火に屋根を付けたいんです」
「篝火に、屋根……」
イメージしてるのは灯籠だ。風で消えないだけの火勢が必要なことを考えると、結構な高さが要るかもしれない。
「そうです。雨で火が消えたり、弱まったりするのを防ぎたいんです」
「なるほど……」
「それに、やってみないと分からないんですけど、磨いた鍋を組み合わせてみたいんです」
「鍋、ですか……」
この短い間に、俺なりに必死で考えた対策がこれだ。
スイランさんに案内された倉庫には、中華鍋も備蓄されてた。あれを磨いて反射させたら、サーチライトのように使えないか? 上手くいけば、城壁上じゃなくて、宮城から照らせる。
でも、そんなこと、やったことがない。出来ればプロの社会人に作ってもらいたい。社会人……。そんな概念は異世界にあるんだろうか……?
まあいいや。職人さんだ、職人さん。職人さんにやってもらえるなら、それに越したことはないんだけど。
ミンリンさんは少し考えてから、口を開いた。考えてる間に四つん這いから、腰を降ろしてくれて、ちょっと気持ちが落ち着いた。下を向いてた迫力が、前に突き出たってだけではあるのだけど……。
「それなら、シーシですね。シーシ?」
と、ミンリンさんが呼びかけると、キャッキャしてる女子たちの中から、真紅の髪色をしたショートボブのツルペタ娘が立ち上がった。……四つん這いもアレでしたけど、立ち上がられるのも、ちょっと。
「なんスか!?」
と、元気よく答えたショートボブツルペタ娘は、湯を掻き分けてミンリンさんの側に来て隣に座った。
「マレビト様。シーシは腕の立つ大工で、ものづくりも得意にしております。私が設計する建築が思い通りに建つのは、シーシの力量に依るものが大きいのです」
と、ミンリンさんが紹介すると、シーシは、へへっと、照れ臭そうに笑った。
スイランさんよりは身長高そうだけど、全体的には小柄。パッと見、ツルペタって思ったけどシアユンさんよりは少しある……。違う違う。今、そんな場合じゃないから。
「だって、ミンリン様の設計ってスゴイんだよ!?」
と、シーシが満面の笑みで声を上げた。
「なんて言うか、一筋縄じゃいかないって言うか。毎回、こっちはこっちで新しい技法を考え出さないと、ちゃんと建たないんだ! でも、建ったら誰の設計したものより、頑丈だし立派で綺麗! 挑みがいがあるっていうか、最高に楽しいんだ!」
うーん。元気印ショートボブ貧乳娘……。ミンリンさんは照れ臭そうに頬を赤らめて俯いた。なんとなく、俺的にキャラの立つコンビだなぁ。
「シーシは鍛冶や冶金にも精通しております」
「だって、ミンリン様の設計のために金具もいっぱい新しく作ったからね!」
「……で、ですので。マレビト様もシーシに相談してみてはいかがでしょうか……?」
ミンリンさんは褒められ慣れてないように、消え入りそうな声で俺にシーシのことを勧めてきた。
うん。大工さんで木工が得意で、金属の扱いにも慣れてる。俺の求めてた職人さんにピッタリ当てはまりますです。しかも、鍛冶で金具も自作できるなんて、言うことないです。
俺がミンリンさんにした説明と同じ話をすると、シーシは、ふんふんと考えて口を開いた。
「分かった! とりあえず、やってみるよ。マレビト様がひと眠りしたら『司空府』に来てくれる? 失敗するかもだけど、試しに作ってみとくよ」
仕事も速いなんて、最高じゃないですか。でも……。
「シーシは寝なくて大丈夫なのか?」
「ボクは神経が太いから、夜の間にグッスリ寝れてるから。ニシシ」
ボ、ボクっ娘かぁ……。ニシシと笑う、元気印ショートボブ貧乳ボクっ娘。……なんか、一発で覚えました! ものづくりが得意ってところも、なんかピッタリです!
「シーシは若いのにミンリンさんからも信頼されてて、すごいなぁ」
と、俺が漏らすと、シーシとミンリンさんがキョトンとした顔をした。あれ?
「ボク、マレビト様より年上だよ。……21歳」
シーシ……、さん。じゃないですか。え? シアユンさんと同い年? 3つも年上?
「あ、あの……、なんか、すみません……。シーシさん……」
「いいよ、いいよ! 幼く見られるのは慣れてるし! それと、シーシでいいよ!」
キャッキャしてる女子たちに、スーッと視線を滑らせた。年齢のことで迂闊なことを言うのはやめよう。
そう言えば、昔、里佳にも言われたことあったなぁ……。
150
あなたにおすすめの小説
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった
ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます!
僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか?
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない
宍戸亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。
不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。
そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。
帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。
そして邂逅する謎の組織。
萌の物語が始まる。
クラスのマドンナがなぜか俺のメイドになっていた件について
沢田美
恋愛
名家の御曹司として何不自由ない生活を送りながらも、内気で陰気な性格のせいで孤独に生きてきた裕貴真一郎(ゆうき しんいちろう)。
かつてのいじめが原因で、彼は1年間も学校から遠ざかっていた。
しかし、久しぶりに登校したその日――彼は運命の出会いを果たす。
現れたのは、まるで絵から飛び出してきたかのような美少女。
その瞳にはどこかミステリアスな輝きが宿り、真一郎の心をかき乱していく。
「今日から私、あなたのメイドになります!」
なんと彼女は、突然メイドとして彼の家で働くことに!?
謎めいた美少女と陰キャ御曹司の、予測不能な主従ラブコメが幕を開ける!
カクヨム、小説家になろうの方でも連載しています!
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる