【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら

文字の大きさ
201 / 297

198.祖霊の託宣(2)

しおりを挟む
シアユンさんがくずれるように、片手を床にいた。

「大丈夫ですか!?」

「少し緊張してしまいました……」

シアユンさんはひたいに汗を浮かべて、困ったような微笑ほほえみを俺に向けた。

汗をぬぐってあげて、シアユンさんが落ち着くのを待った。いつも氷の女王のように冷厳れいげんとしたシアユンさんのこんな姿を見るのは初めてだった。

なにか霊力れいりょくとか魔力まりょく的なものを持っていかれたというより、祖霊という存在が大きく、極度きょくどの緊張をいられてたんだろう。

祖霊から【託宣たくせん】をるという話は、シアユンさんの判断で、んなにはせてある。

確かに、シアユンさんをしてもこれだけの反応を示すのなら、【託宣たくせん】の内容に関わらず、どれだけ動揺どうようさせるか分からない。

「祖霊は、4代マレビト様が必ず道を開くと申されました」

落ち着いたシアユンさんが、口を開いた。

回廊かいろう決戦けっせんいどむことに、間違いはないかと存じます」

「なるほど。力強いことです」

「ただ、油断は禁物きんもつです。全力でことにあたり【託宣たくせん】を実現させねばなりません」

「そうですね。分かりました」

城内に叛意はんいいだく者はいないと示されたけど、ウンランさんたちの釈放しゃくほうは、シアユンさんが納得いくまで話をした後と確認した。

そして、リーファ姫だ……。

「満月の最初の晩って、明日の晩ですよね? 昼に回廊かいろう決戦けっせんを挑んで、第2城壁を奪還してやぐら呪符じゅふを回収して……。カツカツだなぁ……」

シアユンさんが、申し訳なさそうな顔をした。

「満月の最初の晩は、明後日あさってでございます……」

「あれ?」

「28日かけて満ちる月の、明日は28日目。29日目からが満月です……」

「そういうことか。……俺、回廊かいろう決戦けっせんの打ち合わせのとき、自信じしん満々まんまんに明日が満月って言いましたよね?」

訂正ていせいするほどでもないかと思い……。ほぼ、満月ですし……」

うわ。微妙びみょうに恥ずかしいやつ。

「じゃ、じゃあ、まあ……」

「はい……」

「今晩の戦闘後に判断しても、1日余裕があるんですね?」

「そういうことになります」

「そ、祖霊は、はっきり目覚めるとは言ってくれなかったけど、呪術師じゅじゅつしのリーファ姫が復帰ふっきしてくれたら、大きな戦力になりますもんねっ」

恥ずかしさをまぎらわそうと、早口になってしまう。

「はいっ」

と、シアユンさんは嬉しそうにうなずいた。目覚めるとは言われなかったけども、目覚めないとも言われなかった。しかも、具体的な方法も示された。

――リーファ姫のたましいは生きている。

かつて、この推論すいろんにシアユンさんはうれきに、泣きくずれてしまった。それほどにリーファ姫のことを敬愛けいあいしている。

第2城壁奪還。

ここに、全てがかかっている。

第2城壁が奪還できなければ、第3城壁も外城壁もない。眠り続けるリーファ姫のなぞも、第2城壁の奪還でけるかもしれない。

明後日の満月を逃せば、次のチャンスは満月が欠け始める28日後ということになる。そうなると食糧がきる直前だ。

明日。

明日、第2城壁を奪還して、一歩前に進みたい。

決意を固くしてシアユンさんを見ると、全身をにしてる……。

えっ?

なんか、エロな要素ようそありましたっけ? シアユンさんが感じになっちゃうのって……。

――時が満ちるまで、ご自身の純潔じゅんけつを守られよ。

あっ、あれか。

祖霊が俺に〈純潔じゅんけつを守れ〉って言ってたやつ。

いまいち意味が分からなかったけど、今のところも起きないし、シアユンさんが真っ赤になることないんだけど……。

「ところで、天帝てんていってなんですか?」

祖霊の【託宣たくせん】に出て来て意味の分からなかった単語を、シアユンさんにたずねた。真っ赤だったシアユンさんが、スゥッと抜けるような白い肌に戻っていく。

あ。こんな風に変化するんだ。と、マジマジと観察してしまった。

天帝てんていとは天にあって森羅万象しんらばんしょうめぐりを支配されている、至高しこうの存在でございます」

「簡単に言うと、神様ってことですか?」

「その通りです。されど我ら人間では天帝てんていの言葉をかいすることは出来ず、祖霊を通じてそのお力を分けていただきます。われらが呪力じゅりょくと呼ぶものも、祖霊をかいして天帝てんていよりいただくものなのです」

「へえ。そんな存在が」

「人間の中では天子てんしたる国王のみがはいせるものとされ、王都の王宮には天帝廟てんていびょうがございます」

「祖霊は、天帝てんていに会えって言ってましたよね……?」

「今は分からずとも、いずれ分かる日も来ようかと」

シアユンさんで分からないなら、今悩んでも仕方ない。

今晩の戦闘を見て、夜明けには回廊かいろう決戦けっせんいどむかどうかの判断をせまられる。準備不足で始めないといけないのはいつものことだ。

だけど、祖霊の言葉で覚悟かくごかためることが出来た。きっと勝つ。んなの力を合わせて、勝ち抜く――。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

貞操逆転世界に転生したのに…男女比一対一って…

美鈴
ファンタジー
俺は隼 豊和(はやぶさ とよかず)。年齢は15歳。今年から高校生になるんだけど、何を隠そう俺には前世の記憶があるんだ。前世の記憶があるということは亡くなって生まれ変わったという事なんだろうけど、生まれ変わった世界はなんと貞操逆転世界だった。これはモテると喜んだのも束の間…その世界の男女比の差は全く無く、男性が優遇される世界ではなかった…寧ろ…。とにかく他にも色々とおかしい、そんな世界で俺にどうしろと!?また誰とも付き合えないのかっ!?そんなお話です…。 ※カクヨム様にも投稿しております。内容は異なります。 ※イラストはAI生成です

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

大好きな幼なじみが超イケメンの彼女になったので諦めたって話

家紋武範
青春
大好きな幼なじみの奈都(なつ)。 高校に入ったら告白してラブラブカップルになる予定だったのに、超イケメンのサッカー部の柊斗(シュート)の彼女になっちまった。 全く勝ち目がないこの恋。 潔く諦めることにした。

処理中です...