キャロットケーキの季節に

秋乃みかづき

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(35)ずっと一緒

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 こうして自分の過去を語ってくれた礼央さんは、
ふうー
と息を吐き出した 

倉庫の小さな窓からは、オレンジ色の柔らかい光が差し込んでいる

もう夕方だ

「…ってことが、7、8年前にあったの。
聞いてくれてありがと。」

「だからその写真の言葉、自分らしく生きてって。
そういう意味だったんですね。」

「うん。
きっとばあちゃんは、いつか俺がこの本を開くと思って。
それでここに挟んでいたんだと思う。
直接話すよりも、何かの時にこの言葉を見て欲しいって。
ちなみに、この文字が歪んでるのは、倒れて腕を痛めた時の後遺症。
あのあと腕の痺れは死ぬまで取れなくてさ。
そんな中で、このメッセージを俺に残そうと書いてくれたんだなって…。」

僕は胸が痛かった

足立さんが言っていた臣さんって人とは、こんな過去があったんだ…

勝手に妄想して、嫉妬して

そんな軽いものじゃないのに

なんてバカだったんだろう

礼央さんに、おばあさんがいてくれて良かった

「礼央さん。」

「ん?」

「礼央さんは以前、僕の母親に会ってみたかったって言ってくれましたけど。
僕もおばあさんに会ってみたかったです。」

「笑。
ありがとう。
きっと会ってたら、絶対に歩夢のこと気に入ってたよ。
2人が話してるとこ、見てみたかった。」

礼央さんは少し頭を上げて、天井を眺めた

その顔を見て、僕はもう一言、喋らずにはいられなかった

「…すみません、あとこれだけ言わせてください。
和臣さんて人は、大馬鹿者のクズヤローです。
礼央さんみたいな良い人、こんなに傷つけて、さらには去り方までもが最悪で。
礼央さんが一度でも好きになった人に、ここまで言うのは心苦しいですけど。
地獄に落ちて、釜茹でされて、その後は針の上を100キロ走らせるくらいのことをしないと、僕は許せませんね!」

つい、興奮して口が悪くなった

すると

「プ…
あははははっ!」

礼央さんはこれまで見たことないくらいに大笑いしてる

お腹まで抱えて

「あーもう 涙。
歩夢の今の言葉で目が覚めた。
俺のためにそこまで言ってくれて、ありがとう。
確かに少し前までは引きずってたけど。
でも歩夢と出会ってからは、過去のことなんてどうでも良くなって。
大切な人がいるって、こんなにも強くなれるんだなって。
そう思わせてくれた歩夢と出会えて、本当に感謝してるよ。」

「僕は…。」

「うん?」

再び礼央さんの手を握り

「僕は、逃げないですから。
逃げないし、離れない。
これからもずっと一緒です。」

そう言うと、礼央さんはフッと力が抜けた表情になり、僕の肩へ頭を乗せた

「うん。
俺もずっと一緒がいいな。」

サラサラの髪の毛が、くすぐったかたった

「礼央さん。」

夕陽に染まる部屋を眺めながら僕は言った

「この部屋、夕陽が差し込むとこんなにノスタルジック。
おばあさんの帽子や絵画が、オレンジ色にふんわり包まれて。
なんだかタイムスリップしたみたい…。
無理に片付けなくても、このままでも良いんじゃ無いかな…。」

「…
そうかも。」

僕達は暗くなるまでこの空間に浸っていた

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