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「礼央さん、サングラス忘れてる!」
今夜出発のイギリス旅行に向けて、パッキングの最終段階
僕は礼央さんの家でそれを手伝っていた
「おー。
ありがとう。
確かにサングラスの存在忘れてた。」
そう言いながら隙間に荷物をつめていく
あ、手帳と僕がプレゼントしたボールペンも
「このボールペン、持って行ってくれるんですか?」
「当たり前だよ。
ボールペンはもうそれしか使ってないもん。」
そうなんだ、嬉しい 笑
「それにしても、あっという間にこの日が来たなー。
楽しみのような、不安なような。」
「楽しまなきゃダメですよ!
じゃないと、天国のおばあさんも喜べないし。
それに。」
「それに?」
「昔の嫌な思い出を、良いものに塗り替える。
それが1番の目的なんですから。
思いっきりエンジョイしてきてください!」
「ははっ。
歩夢の顔怖い。
分かってるよ。
心配かけてごめん。
ちゃんと、楽しんでくるから。」
そう言って、僕の頭をポンポンと
「じゃあ早いけど、もう出ようかな。
何かあって飛行機乗り遅れたらまずいし。」
「そうですね。
準備終わったなら出ちゃいましょう。
僕も久しぶりに空港見たいんで。」
「えっ?」
「えって。
何がですか。」
「いや、歩夢はここで見送ってくれればいよ。」
「ダメです。
僕が行きたいんだから、文句は言わせません。
もう会社のプレゼンも終わって時間もありますし。
ちゃんと空港で見送りたいので、一緒に行きます。」
「笑。
分かったよ。
じゃあお願いする。
ありがとな。」
大きなスーツケースを転がし、僕達はマンションを出た
空港行きの電車に揺られ、お茶を飲みながら話をする僕達
「もう一回確認するけど、帰国は10日後ね。
それと、毎日メールするから。」
と礼央さん
「了解です。
僕もメールします。」
「あと帰国のフライトなんだけど。
こっちに着くの結構遅いじゃん。
その後疲れて電車に乗るの、しんどくなりそうだから、空港近くのホテルに一泊して。
それから翌日に家に帰るわ。」
「えーっ。
僕、帰りも空港に迎えに行く予定だったのに。」
「え、いいよ本当に。
その日仕事でしょ?」
「…。
それは全く関係ないです。」
僕がむくれると
「あ、出たそのブータレ顔 笑。
久しぶりに見た 笑。」
「ちょっと!
しばらく会えないんだから、からかわないで下さい。
あーもう…。
…って、待って良いこと思いついた!
帰国の日、僕もそこ一緒に泊まります。」
「え?
ホテルに?」
「はい。
そしたら遅くても空港に迎えに行けるし。
翌日に有休取っておけば、朝もゆっくり。
空港周辺のホテルなら、窓から飛行機も見えそうだし、楽しそう。
イギリスは1人で行っちゃうんだから、そのくらいは一緒に遊んだっていいじゃないですか。」
「まぁ…。
それもありか。
じゃあこれから予約だから、ツインの部屋、取っておくよ。」
「わーい♩
宿泊代はあとでちゃんと払いますね。」
「いいよ 笑。
送り迎えしてくれてるんだから、そのお礼。」
やった
これで楽しみができた
そしたら会社のロッカーに、着替えのバッグだけ入れておけばいいか
お喋りしているうちに、空港へ着いた
空港久しぶり
最後に来たのは、大学の卒業旅行の時だったかな
礼央さんも
「おー久しぶりだー。
和臣さんの時以来だ…。」
あ
大丈夫かな…?
「ほら礼央さん。
出発前に余計なことは思い出さない。」
僕がそう言うと、礼央さんは笑ってた
そして
「礼央さん、当時、和臣さんと待ち合わせしてた場所。
どこですか?」
「え?
なんで?」
「いいから。」
僕に言われると、礼央さんは少し進んで
「このあたりだったかな。
でも、それ聞いて何するつも…。」
最後まで言い終わらないうちに、僕は礼央さんの顔に近づき、そして手のひらで目を隠した
「…歩夢、なんにも見えないんだけど。」
「いいんです。
そのまま、深呼吸して、ゆっくり5秒数えて下さい。」
戸惑いつつも、礼央さんは深呼吸を始めた
「いち、に、さん…」
僕も声を重ねる
「よん、ご。」
手を離した
「えっと…?」
不思議そうな顔の礼央さん
そして僕が
「ここはどこですか?」
「えっと…空港。」
「あなたはどこに行きますか?」
「イギリス…。」
「その状況で、ここにいるのは誰ですか?」
「俺と、歩夢。」
「そうです!
今この瞬間を、頭に焼き付けて。
これで過去は消え去って、上書きされました。」
自信満々に話す僕を見て、礼央さんは笑顔になった
「なんだよこれ 笑。
セラピー受けたみたい 笑。」
「そうですよ。
これは小井川家のセラピーです 笑。
これ、僕が小さい頃に母がやってくれて。
小学生の時、女の子みたいな顔立ちだった僕はよくいじめられてたんですけど。
ある日校庭で突き飛ばされた時があって。
で、泣きながらに家に帰ると母が僕の手を引いて家を飛び出したんです。
もしかして相手の家に乗り込むのかな?
なんて考えてたら、まさかの校庭に戻ってきて 笑。
そしてこれをやった訳です。
同じ場所で違うことしたら、上書きされて前のは消えちゃうよーって。
実際大人になった今、そのいじめっこの顔はもう思い出せなくて。
母と校庭にいた思い出だけが残りました。
今日は礼央さんにも、これをやりたかったんです 笑。」
ぎゅっ
僕は礼央さんに抱きしめられた
「歩夢、ありがとう…。」
いつもの香水の匂いだ
「うん…。」
人目を気にすることなく、僕達はしばらく抱き合っていた
チェックインの手続きを済ませた礼央さんは、搭乗口へ消えていく
最後にもう一度、手を振って
10日間かぁ…
短いようで長いな
空港を出ると、たくさんの飛行機が空を飛んでいた
今夜出発のイギリス旅行に向けて、パッキングの最終段階
僕は礼央さんの家でそれを手伝っていた
「おー。
ありがとう。
確かにサングラスの存在忘れてた。」
そう言いながら隙間に荷物をつめていく
あ、手帳と僕がプレゼントしたボールペンも
「このボールペン、持って行ってくれるんですか?」
「当たり前だよ。
ボールペンはもうそれしか使ってないもん。」
そうなんだ、嬉しい 笑
「それにしても、あっという間にこの日が来たなー。
楽しみのような、不安なような。」
「楽しまなきゃダメですよ!
じゃないと、天国のおばあさんも喜べないし。
それに。」
「それに?」
「昔の嫌な思い出を、良いものに塗り替える。
それが1番の目的なんですから。
思いっきりエンジョイしてきてください!」
「ははっ。
歩夢の顔怖い。
分かってるよ。
心配かけてごめん。
ちゃんと、楽しんでくるから。」
そう言って、僕の頭をポンポンと
「じゃあ早いけど、もう出ようかな。
何かあって飛行機乗り遅れたらまずいし。」
「そうですね。
準備終わったなら出ちゃいましょう。
僕も久しぶりに空港見たいんで。」
「えっ?」
「えって。
何がですか。」
「いや、歩夢はここで見送ってくれればいよ。」
「ダメです。
僕が行きたいんだから、文句は言わせません。
もう会社のプレゼンも終わって時間もありますし。
ちゃんと空港で見送りたいので、一緒に行きます。」
「笑。
分かったよ。
じゃあお願いする。
ありがとな。」
大きなスーツケースを転がし、僕達はマンションを出た
空港行きの電車に揺られ、お茶を飲みながら話をする僕達
「もう一回確認するけど、帰国は10日後ね。
それと、毎日メールするから。」
と礼央さん
「了解です。
僕もメールします。」
「あと帰国のフライトなんだけど。
こっちに着くの結構遅いじゃん。
その後疲れて電車に乗るの、しんどくなりそうだから、空港近くのホテルに一泊して。
それから翌日に家に帰るわ。」
「えーっ。
僕、帰りも空港に迎えに行く予定だったのに。」
「え、いいよ本当に。
その日仕事でしょ?」
「…。
それは全く関係ないです。」
僕がむくれると
「あ、出たそのブータレ顔 笑。
久しぶりに見た 笑。」
「ちょっと!
しばらく会えないんだから、からかわないで下さい。
あーもう…。
…って、待って良いこと思いついた!
帰国の日、僕もそこ一緒に泊まります。」
「え?
ホテルに?」
「はい。
そしたら遅くても空港に迎えに行けるし。
翌日に有休取っておけば、朝もゆっくり。
空港周辺のホテルなら、窓から飛行機も見えそうだし、楽しそう。
イギリスは1人で行っちゃうんだから、そのくらいは一緒に遊んだっていいじゃないですか。」
「まぁ…。
それもありか。
じゃあこれから予約だから、ツインの部屋、取っておくよ。」
「わーい♩
宿泊代はあとでちゃんと払いますね。」
「いいよ 笑。
送り迎えしてくれてるんだから、そのお礼。」
やった
これで楽しみができた
そしたら会社のロッカーに、着替えのバッグだけ入れておけばいいか
お喋りしているうちに、空港へ着いた
空港久しぶり
最後に来たのは、大学の卒業旅行の時だったかな
礼央さんも
「おー久しぶりだー。
和臣さんの時以来だ…。」
あ
大丈夫かな…?
「ほら礼央さん。
出発前に余計なことは思い出さない。」
僕がそう言うと、礼央さんは笑ってた
そして
「礼央さん、当時、和臣さんと待ち合わせしてた場所。
どこですか?」
「え?
なんで?」
「いいから。」
僕に言われると、礼央さんは少し進んで
「このあたりだったかな。
でも、それ聞いて何するつも…。」
最後まで言い終わらないうちに、僕は礼央さんの顔に近づき、そして手のひらで目を隠した
「…歩夢、なんにも見えないんだけど。」
「いいんです。
そのまま、深呼吸して、ゆっくり5秒数えて下さい。」
戸惑いつつも、礼央さんは深呼吸を始めた
「いち、に、さん…」
僕も声を重ねる
「よん、ご。」
手を離した
「えっと…?」
不思議そうな顔の礼央さん
そして僕が
「ここはどこですか?」
「えっと…空港。」
「あなたはどこに行きますか?」
「イギリス…。」
「その状況で、ここにいるのは誰ですか?」
「俺と、歩夢。」
「そうです!
今この瞬間を、頭に焼き付けて。
これで過去は消え去って、上書きされました。」
自信満々に話す僕を見て、礼央さんは笑顔になった
「なんだよこれ 笑。
セラピー受けたみたい 笑。」
「そうですよ。
これは小井川家のセラピーです 笑。
これ、僕が小さい頃に母がやってくれて。
小学生の時、女の子みたいな顔立ちだった僕はよくいじめられてたんですけど。
ある日校庭で突き飛ばされた時があって。
で、泣きながらに家に帰ると母が僕の手を引いて家を飛び出したんです。
もしかして相手の家に乗り込むのかな?
なんて考えてたら、まさかの校庭に戻ってきて 笑。
そしてこれをやった訳です。
同じ場所で違うことしたら、上書きされて前のは消えちゃうよーって。
実際大人になった今、そのいじめっこの顔はもう思い出せなくて。
母と校庭にいた思い出だけが残りました。
今日は礼央さんにも、これをやりたかったんです 笑。」
ぎゅっ
僕は礼央さんに抱きしめられた
「歩夢、ありがとう…。」
いつもの香水の匂いだ
「うん…。」
人目を気にすることなく、僕達はしばらく抱き合っていた
チェックインの手続きを済ませた礼央さんは、搭乗口へ消えていく
最後にもう一度、手を振って
10日間かぁ…
短いようで長いな
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