36 / 81
2章
別の世界の話2-2
しおりを挟む
『……シン、チーク、サイラ。あなたちにお願いが、あります』
そう言って切り出したメラニーに聞かされた言葉にサイラは驚くことになる。彼女はキメラの存在を知っていたのだ。
どうして知っていたのかサイラたちにはわからなかったが、メラニーはラクトフェル家がキメラ製造という非人道的な行為をしていることが許せないと語った。そして、それを止めるためにもサイラたちに協力してほしいと、懇願した。
しかし、サイラたちには呪術がかかっているから何も考えずに行動すれば、メラニーの願いを叶える前に死んでしまう。
サイラはメラニーのために死ぬのは怖くはなかった。それは他の二人も同じだった。しかし、彼女の願いを叶えられないまま死ぬのは許せなかった。
『それなら……こうしませんか?』
メラニーの提案にサイラたちは喜んで従ったが、それからすぐのことだった。
──サタリアに、サイラたちの裏切りが知られることになる。
サイラたちはサタリアに別宅へ呼び出され、そこの地下室に閉じ込められた。
その地下室は本宅と比べると狭いが、ここの本来の用途は監禁や拷問をするために使われる地下牢だった。
分厚い鉄扉の先にあるため、ここで叫んでも外に聞こえることはないだろう。
「……シン、チーク、サイラ。お前たちはラクトフェル家を裏切った」
サイラたちは冷たい石床に座り込みながら、呆然とサタリアを見上げる。
サタリアの桔梗色の瞳は、まるで氷で削りだされた刃のように冷たく、鋭い。わずかに細められた眼差しはサイラたちを値踏みするかのように冷徹な光を帯びていた。
「さ、サタリア兄様。ちが、違うの。誤解してるよ」
「そ、そうだぜ。俺たちは、ただ」
シンとチークは声を震わせながら、引き攣った笑顔をサタリアに向ける。しかし、彼は眉一つ動かさなかった。
「──黙りなさい、二人とも」
この場を凍り付かせるには十分な、冷たく感情のないサタリアの声にサイラたち全員の体が震える。まるで赤の他人に命じているように怒りも哀れみも感じさせない。
──誰よりも美しくて、そして誰よりも恐ろしいサタリア兄様。
そして、サタリアは自分に逆らうものを決して許しはしない。
──ああ、僕らはどうして……そんなことすら忘れてしまっていたのだろう。
「サイラ。お前は何も言わないのか」
唯一、何も弁解しなかったサイラが気になったのか、サタリアはその目をこちらに向けた。しかし、やはりそこには何の感情も見えない。
だからこそ、わかる。サイラたちはここで死ぬことになるだろう。三つ子を愛していないサタリアが、許す訳がない。
何よりも残酷な方法で、苦しめて苦しめて、サイラたちを殺してしまうのだろう。
それなのに、どうしてなのか。サイラに怒りは一切出てこず、今あるのはサタリアに名前を呼んでもらえた嬉しさで胸が埋め尽くされていた。
「そうか」
何も言わないサイラに興味を無くしたのか、目を逸らす。それが無性に悲しくなって、床に視線を落とした。
「お前たちも知っているとは思うが、私は裏切り者が嫌いだ。どうしようか考えた結果、一つ良い答えを考えついたんだ」
サタリアの形の良い唇が弧を描く。それがサイラにはとても嬉しそうに見えて、胸の奥へ突き刺さる。
きっと、これから告げる言葉はサイラたちに対する処刑宣告なのだろう。サイラたちがいなくなることがサタリアは嬉しいのだ。
──どうして、こうなったのだろう。
初めのころはサイラたちにはサタリアさえいれば、よかったのに。なんで、こうなったのだろう。サイラは現実を受け入れたくなくて、両耳を押さえて蹲った。
そして、小さな声でサタリアに伝えたい言葉を口にした。
「──おかしくなった僕らを……助けて……」
懇願に近い独り言は誰に届いたのか。耳も目も閉じてしまったサイラには、わからなかった。
そう言って切り出したメラニーに聞かされた言葉にサイラは驚くことになる。彼女はキメラの存在を知っていたのだ。
どうして知っていたのかサイラたちにはわからなかったが、メラニーはラクトフェル家がキメラ製造という非人道的な行為をしていることが許せないと語った。そして、それを止めるためにもサイラたちに協力してほしいと、懇願した。
しかし、サイラたちには呪術がかかっているから何も考えずに行動すれば、メラニーの願いを叶える前に死んでしまう。
サイラはメラニーのために死ぬのは怖くはなかった。それは他の二人も同じだった。しかし、彼女の願いを叶えられないまま死ぬのは許せなかった。
『それなら……こうしませんか?』
メラニーの提案にサイラたちは喜んで従ったが、それからすぐのことだった。
──サタリアに、サイラたちの裏切りが知られることになる。
サイラたちはサタリアに別宅へ呼び出され、そこの地下室に閉じ込められた。
その地下室は本宅と比べると狭いが、ここの本来の用途は監禁や拷問をするために使われる地下牢だった。
分厚い鉄扉の先にあるため、ここで叫んでも外に聞こえることはないだろう。
「……シン、チーク、サイラ。お前たちはラクトフェル家を裏切った」
サイラたちは冷たい石床に座り込みながら、呆然とサタリアを見上げる。
サタリアの桔梗色の瞳は、まるで氷で削りだされた刃のように冷たく、鋭い。わずかに細められた眼差しはサイラたちを値踏みするかのように冷徹な光を帯びていた。
「さ、サタリア兄様。ちが、違うの。誤解してるよ」
「そ、そうだぜ。俺たちは、ただ」
シンとチークは声を震わせながら、引き攣った笑顔をサタリアに向ける。しかし、彼は眉一つ動かさなかった。
「──黙りなさい、二人とも」
この場を凍り付かせるには十分な、冷たく感情のないサタリアの声にサイラたち全員の体が震える。まるで赤の他人に命じているように怒りも哀れみも感じさせない。
──誰よりも美しくて、そして誰よりも恐ろしいサタリア兄様。
そして、サタリアは自分に逆らうものを決して許しはしない。
──ああ、僕らはどうして……そんなことすら忘れてしまっていたのだろう。
「サイラ。お前は何も言わないのか」
唯一、何も弁解しなかったサイラが気になったのか、サタリアはその目をこちらに向けた。しかし、やはりそこには何の感情も見えない。
だからこそ、わかる。サイラたちはここで死ぬことになるだろう。三つ子を愛していないサタリアが、許す訳がない。
何よりも残酷な方法で、苦しめて苦しめて、サイラたちを殺してしまうのだろう。
それなのに、どうしてなのか。サイラに怒りは一切出てこず、今あるのはサタリアに名前を呼んでもらえた嬉しさで胸が埋め尽くされていた。
「そうか」
何も言わないサイラに興味を無くしたのか、目を逸らす。それが無性に悲しくなって、床に視線を落とした。
「お前たちも知っているとは思うが、私は裏切り者が嫌いだ。どうしようか考えた結果、一つ良い答えを考えついたんだ」
サタリアの形の良い唇が弧を描く。それがサイラにはとても嬉しそうに見えて、胸の奥へ突き刺さる。
きっと、これから告げる言葉はサイラたちに対する処刑宣告なのだろう。サイラたちがいなくなることがサタリアは嬉しいのだ。
──どうして、こうなったのだろう。
初めのころはサイラたちにはサタリアさえいれば、よかったのに。なんで、こうなったのだろう。サイラは現実を受け入れたくなくて、両耳を押さえて蹲った。
そして、小さな声でサタリアに伝えたい言葉を口にした。
「──おかしくなった僕らを……助けて……」
懇願に近い独り言は誰に届いたのか。耳も目も閉じてしまったサイラには、わからなかった。
349
あなたにおすすめの小説
転生悪役弟、元恋人の冷然騎士に激重執着されています
柚吉猫
BL
生前の記憶は彼にとって悪夢のようだった。
酷い別れ方を引きずったまま転生した先は悪役令嬢がヒロインの乙女ゲームの世界だった。
性悪聖ヒロインの弟に生まれ変わって、過去の呪縛から逃れようと必死に生きてきた。
そんな彼の前に現れた竜王の化身である騎士団長。
離れたいのに、皆に愛されている騎士様は離してくれない。
姿形が違っても、魂でお互いは繋がっている。
冷然竜王騎士団長×過去の呪縛を背負う悪役弟
今度こそ、本当の恋をしよう。
拝啓、目が覚めたらBLゲームの主人公だった件
碧月 晶
BL
さっきまでコンビニに向かっていたはずだったのに、何故か目が覚めたら病院にいた『俺』。
状況が分からず戸惑う『俺』は窓に映った自分の顔を見て驚いた。
「これ…俺、なのか?」
何故ならそこには、恐ろしく整った顔立ちの男が映っていたのだから。
《これは、現代魔法社会系BLゲームの主人公『石留 椿【いしどめ つばき】(16)』に転生しちゃった元平凡男子(享年18)が攻略対象たちと出会い、様々なイベントを経て『運命の相手』を見つけるまでの物語である──。》
────────────
~お知らせ~
※第3話を少し修正しました。
※第5話を少し修正しました。
※第6話を少し修正しました。
※第11話を少し修正しました。
※第19話を少し修正しました。
※第22話を少し修正しました。
※第24話を少し修正しました。
※第25話を少し修正しました。
※第26話を少し修正しました。
※第31話を少し修正しました。
※第32話を少し修正しました。
────────────
※感想(一言だけでも構いません!)、いいね、お気に入り、近況ボードへのコメント、大歓迎です!!
※表紙絵は作者が生成AIで試しに作ってみたものです。
魔王の息子を育てることになった俺の話
お鮫
BL
俺が18歳の時森で少年を拾った。その子が将来魔王になることを知りながら俺は今日も息子としてこの子を育てる。そう決意してはや数年。
「今なんつった?よっぽど死にたいんだね。そんなに俺と離れたい?」
現在俺はかわいい息子に殺害予告を受けている。あれ、魔王は?旅に出なくていいの?とりあえず放してくれません?
魔王になる予定の男と育て親のヤンデレBL
BLは初めて書きます。見ずらい点多々あるかと思いますが、もしありましたら指摘くださるとありがたいです。
BL大賞エントリー中です。
【1部完・2部準備中】人質5歳の生存戦略! ―悪役王子はなんとか死ぬ気で生き延びたい!冤罪処刑はほんとムリぃ!―
ほしみ
ファンタジー
「え! ぼく、死ぬの!?」
前世、15歳で人生を終えたぼく。
目が覚めたら異世界の、5歳の王子様!
けど、人質として大国に送られた危ない身分。
そして、夢で思い出してしまった最悪な事実。
「ぼく、このお話知ってる!!」
生まれ変わった先は、小説の中の悪役王子様!?
このままだと、10年後に無実の罪であっさり処刑されちゃう!!
「むりむりむりむり、ぜったいにムリ!!」
生き延びるには、なんとか好感度を稼ぐしかない。
とにかく周りに気を使いまくって!
王子様たちは全力尊重!
侍女さんたちには迷惑かけない!
ひたすら頑張れ、ぼく!
――猶予は後10年。
原作のお話は知ってる――でも、5歳の頭と体じゃうまくいかない!
お菓子に惑わされて、勘違いで空回りして、毎回ドタバタのアタフタのアワアワ。
それでも、ぼくは諦めない。
だって、絶対の絶対に死にたくないからっ!
原作とはちょっと違う王子様たち、なんかびっくりな王様。
健気に奮闘する(ポンコツ)王子と、見守る人たち。
どうにか生き延びたい5才の、ほのぼのコミカル可愛いふわふわ物語。
(全年齢/ほのぼの/男性キャラ中心/嫌なキャラなし/1エピソード完結型/ほぼ毎日更新中)
巻き戻った悪役令息のかぶってた猫
いいはな
BL
婚約者のアーノルドからある日突然断罪され、処刑されたルイ。目覚めるとなぜか処刑される一年前に時間が巻き戻っていた。
なんとか処刑を回避しようと奔走するルイだが、すでにその頃にはアーノルドが思いを寄せていたミカエルへと嫌がらせをしており、もはやアーノルドとの関係修復は不可能。断頭台は目の前。処刑へと秒読み。
全てがどうでも良くなったルイはそれまで被っていた猫を脱ぎ捨てて、せめてありのままの自分で生きていこうとする。
果たして、悪役令息であったルイは処刑までにありのままの自分を受け入れてくれる友人を作ることができるのか――!?
冷たく見えるが素は天然ポワポワな受けとそんな受けに振り回されがちな溺愛攻めのお話。
※キスくらいしかしませんが、一応性描写がある話は※をつけます。※話の都合上、主人公が一度死にます。※前半はほとんど溺愛要素は無いと思います。※ちょっとした悪役が出てきますが、ざまぁの予定はありません。※この世界は男同士での婚約が当たり前な世界になっております。
初投稿です。至らない点も多々あるとは思いますが、空よりも広く、海よりも深い心で読んでいただけると幸いです。
また、この作品は亀更新になると思われます。あらかじめご了承ください。
【完結保証】僕の異世界攻略〜神の修行でブラッシュアップ〜
リョウ
ファンタジー
僕は十年程闘病の末、あの世に。
そこで出会った神様に手違いで寿命が縮められたという説明をされ、地球で幸せな転生をする事になった…が何故か異世界転生してしまう。なんでだ?
幸い優しい両親と、兄と姉に囲まれ事なきを得たのだが、兄達が優秀で僕はいずれ家を出てかなきゃいけないみたい。そんな空気を読んだ僕は将来の為努力をしはじめるのだが……。
※画像はAI作成しました。
※現在毎日2話投稿。11時と19時にしております。
※2026年半ば過ぎ完結予定→七月に完結(決定)
悪役令息の花図鑑
蓮条緋月
BL
公爵令息シュヴァリエ・アクナイトはある日、毒にあたり生死を彷徨い、唐突に前世を思い出す。自分がゲームの悪役令息に生まれ変わったことに気づいたシュヴァリエは思った。
「公爵家の力を使えば世界中の花を集めて押し花が作れる!」
押し花作りが中毒レベルで趣味だったシュヴァリエはゲームのストーリーなどお構いなしに好き勝手動くことに決め行動が一変。その変化に周囲がドン引きする中、学園で奇妙な事件が発生!現場に一輪の花が置かれていたことを知ったシュヴァリエはこれがゲームのストーリーであることを思い出す。花が関わっているという理由で事件を追うことにしたシュヴァリエは、ゲームの登場人物であり主人公の右腕となる隣国の留学生アウル・オルニスと行動を共にするのだが……?
※☆はR描写になります
※他サイトにて重複掲載あり
【完結】流行りの悪役転生したけど、推しを甘やかして育てすぎた。
時々雨
BL
前世好きだったBL小説に流行りの悪役令息に転生した腐男子。今世、ルアネが周りの人間から好意を向けられて、僕は生で殿下とヒロインちゃん(男)のイチャイチャを見たいだけなのにどうしてこうなった!?
※表紙のイラストはたかだ。様
※エブリスタ、pixivにも掲載してます
◆この話のスピンオフ、兄達の話「偏屈な幼馴染み第二王子の愛が重すぎる!」もあります。そちらも気になったら覗いてみてください。
◆2部は色々落ち着いたら…書くと思います
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる