【本編完結】ラスボス系悪役令息が望むのは、原作通りの没落ルート

司馬犬

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2章

別の世界の話2-2

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『……シン、チーク、サイラ。あなたちにお願いが、あります』
 
 そう言って切り出したメラニーに聞かされた言葉にサイラは驚くことになる。彼女はキメラの存在を知っていたのだ。
 どうして知っていたのかサイラたちにはわからなかったが、メラニーはラクトフェル家がキメラ製造という非人道的な行為をしていることが許せないと語った。そして、それを止めるためにもサイラたちに協力してほしいと、懇願した。
 しかし、サイラたちには呪術がかかっているから何も考えずに行動すれば、メラニーの願いを叶える前に死んでしまう。
 サイラはメラニーのために死ぬのは怖くはなかった。それは他の二人も同じだった。しかし、彼女の願いを叶えられないまま死ぬのは許せなかった。
 
『それなら……こうしませんか?』
 
 メラニーの提案にサイラたちは喜んで従ったが、それからすぐのことだった。
 ──サタリアに、サイラたちの裏切りが知られることになる。
 サイラたちはサタリアに別宅へ呼び出され、そこの地下室に閉じ込められた。
 その地下室は本宅と比べると狭いが、ここの本来の用途は監禁や拷問をするために使われる地下牢だった。
 分厚い鉄扉の先にあるため、ここで叫んでも外に聞こえることはないだろう。
 
「……シン、チーク、サイラ。お前たちはラクトフェル家を裏切った」
 
 サイラたちは冷たい石床に座り込みながら、呆然とサタリアを見上げる。
 サタリアの桔梗色の瞳は、まるで氷で削りだされた刃のように冷たく、鋭い。わずかに細められた眼差しはサイラたちを値踏みするかのように冷徹な光を帯びていた。
 
「さ、サタリア兄様。ちが、違うの。誤解してるよ」
「そ、そうだぜ。俺たちは、ただ」
 
 シンとチークは声を震わせながら、引き攣った笑顔をサタリアに向ける。しかし、彼は眉一つ動かさなかった。
 
「──黙りなさい、二人とも」
 
 この場を凍り付かせるには十分な、冷たく感情のないサタリアの声にサイラたち全員の体が震える。まるで赤の他人に命じているように怒りも哀れみも感じさせない。
 ──誰よりも美しくて、そして誰よりも恐ろしいサタリア兄様。
 そして、サタリアは自分に逆らうものを決して許しはしない。
 ──ああ、僕らはどうして……そんなことすら忘れてしまっていたのだろう。
 
「サイラ。お前は何も言わないのか」
 
 唯一、何も弁解しなかったサイラが気になったのか、サタリアはその目をこちらに向けた。しかし、やはりそこには何の感情も見えない。
 だからこそ、わかる。サイラたちはここで死ぬことになるだろう。三つ子を愛していないサタリアが、許す訳がない。
 何よりも残酷な方法で、苦しめて苦しめて、サイラたちを殺してしまうのだろう。
 それなのに、どうしてなのか。サイラに怒りは一切出てこず、今あるのはサタリアに名前を呼んでもらえた嬉しさで胸が埋め尽くされていた。
 
「そうか」
 
 何も言わないサイラに興味を無くしたのか、目を逸らす。それが無性に悲しくなって、床に視線を落とした。
 
「お前たちも知っているとは思うが、私は裏切り者が嫌いだ。どうしようか考えた結果、一つ良い答えを考えついたんだ」
 
 サタリアの形の良い唇が弧を描く。それがサイラにはとても嬉しそうに見えて、胸の奥へ突き刺さる。
 きっと、これから告げる言葉はサイラたちに対する処刑宣告なのだろう。サイラたちがいなくなることがサタリアは嬉しいのだ。
 ──どうして、こうなったのだろう。
 初めのころはサイラたちにはサタリアさえいれば、よかったのに。なんで、こうなったのだろう。サイラは現実を受け入れたくなくて、両耳を押さえて蹲った。
 そして、小さな声でサタリアに伝えたい言葉を口にした。
 
「──おかしくなった僕らを……助けて……」
 
 懇願に近い独り言は誰に届いたのか。耳も目も閉じてしまったサイラには、わからなかった。
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