【本編完結】ラスボス系悪役令息が望むのは、原作通りの没落ルート

司馬犬

文字の大きさ
38 / 81
3章

2.悩み

しおりを挟む
 アルヴェンとメラニーの出会いという原作内では最大の重要ポイントを破壊してしまったせいで、原作通りに進めるという俺の野望は崩れた。
 それでも、ラクトフェル家の没落を諦めた訳じゃない。ここで生き残っている俺だからこそ、この醜悪な家は滅びるべきだと思っている。
 そうなると、考えられる方法は二つ。
 一つ目は、メラニーがラクトフェル家を没落させてくれることを期待する。
 色々懸念点はいくつかあるが頑張れば彼女一人でも、どうにかラクトフェル家を没落させることはできるはずだ。
 ただ、原作でのメラニーの原動力はほぼアルヴェンだった。今回は、その原動力を奪ってしまった訳で、更に今や彼女の目的はラクトフェル家というより、俺個人に向いている。
 メラニーは、俺からアルヴェンを奪い取るということだけを考えているはずで、それがラクトフェル家の没落に向かうかは少々怪しい。
 二つ目は、俺がアルヴェンと手を組む。
 アルヴェンに、この家を潰したいと話した上でラクトフェル家の没落に手を貸して貰うという作戦だ。ただ、俺に掛かっている呪術がある限り、決定的な証拠を渡したり、証言は不可能だ。さすがに俺も死にたくない。つまり、これはアルヴェンにはだいぶ負担をかける方法だ。
 更にラクトフェル家を断罪するには、この家より高位の貴族か、皇族の力が必要だ。しかしそれも表向きには、人間として認められていないアルヴェンだけでは受け入れては貰えないだろう。
 ───もう少し、頭が良ければなあ。
 俺が賢ければ名案や、何かしらの隙を見つけられるのだろうが……ダメだ。
 無意識に溜息が零れて、ソファの背もたれに体を預ける。考え過ぎて頭痛さえ感じ始め、慰めるように掌で額を撫でる。
 
「サタリア、頭が痛いのか」
 
 そんな様子にすぐさま反応を示すのが、アルヴェンだ。頬を冷やして腫れがある程度引いた後に、自室に戻った。自室内には清掃を任せていたアルヴェンがおり、彼に対する挨拶も適当に考えに耽っていたのだ。
 
「……いや、違う。少し考え事していただけだ」
「そうか」
 
 いつもながらアルヴェンは俺のちょっとした変化にも敏感に反応する。キメラ襲撃の事件の時から感じていたが、まるで俺の考えでも読めるようだ。
 ──もしかして、白蛇の力か?
 原作でも結局アルヴェンと組み合わせたもう一つの魔法生物である白蛇が何という名前の魔法生物だったのか、明かされてはいない。しかし、ホワイトドラゴンの力を全て引き出せるアルヴェンだ。そちらの方の力を使えたとしても、不思議ではないだろう。
 これに関しては、リティに相談しておこう。彼であれば、アルヴェンに使われた白蛇が何の魔法生物か特定できるはずだ。
 ──どちらにせよ、これからのこともある。とりあえず、俺はアルヴェンに全部話すべきではあるよな。
 彼には俺が演技していることは既にバレており、俺の性根が平凡であることも察しているはずだ。いい加減、彼の前で演技はやめて、腹を割って話すべきだというのはわかっている。
 しかし、今更感も相まって、正直かなり恥ずかしい。
 それに、最近はアルヴェンに対して別の感情が浮かんできているから、なおさらだ。
 
「サタリア。褒美が欲しい」
 
 また考えに浸っていると、いつの間にか俺の側に来ていたアルヴェンがそう切り出した。どうやら、命令通り清掃を終わらせたことに関しての褒美を強請っているようだった。
 俺はその言葉に心臓が小さく高鳴るも、素知らぬ顔でいつものように手を差し出す。
 
「違う。今日はしっかり終わらせたから、もう一段階上の褒美がいい」
 
 アルヴェンが差し出した手を緩く掴んでから、俺に更に近づく。彼が言う一段階上の褒美が何か知っている俺は、少しだけ目を逸らして黙り込むしかない。
 しかし、何も言わないことを肯定として受け取ったアルヴェンはそっと俺に顔を近づけ、唇を重ねた。
 ──ああ、また食われる。
 俺が諦めるように目を閉じた瞬間、アルヴェンの厚い舌が唇を割って入ってくる。ぬるりと口内を弄る舌の動きは卑猥で、激しい。
 以前、馬車内で褒美として与えたせいで、最近のアルヴェンはこうしてキスを強請ってくる。一度褒美として認めた俺としては、それをなかったことにはできなかった。いや、本当になかったことにできなかったのは、俺の心に燻っている熱のせいかもしれない。
 
「っは……ふ、ぁっ……」
 
 呼吸さえも奪うように唇を重ねられ、逃げることを許さないとばかりに後頭部にはアルヴェンの掌が添えられる。
 アルヴェンの舌が熱い。その熱に口内を余すことなく貪られると、段々と熱が体にまで伝わっていく。
 
「っ……あッ」
 
 しかし、アルヴェンの舌先がある箇所に触れた瞬間、ぴりっとした痛みを感じて肩が小さく跳ねる。その時、そこが先ほどムルダムに叩かれて切れた場所だと気付く。
 俺は慌ててアルヴェンから離れようとするも、彼は気付いたのか、執拗にそこ舐め始める。舌先で丹念舐められる度に微かな痛みと同時に、ぞくぞくと背筋が震える。
 
「んっ! ん……っ!」
 
 アルヴェンを押しのけようと肩を叩くが、びくともしない。それでも幾度も繰り返せば、アルヴェンはようやく唇を離した。
 
「っは……あ、アルヴェン……ッ!」
 
 咎めるようにアルヴェンを睨みつけるが、彼は平然とした表情で薄く開いた口から小さく赤い舌を覗かせて、唇を舐める。どうやら、それは味を確かめているようで一瞬だけ眉を顰める。
 
「……血の味がする。サタリア、誰だ。誰にやられた」
 
 金の瞳が鋭く輝くのがわかる。そこに明確な怒りが込められているのは、誰の目にも明らかだった
しおりを挟む
感想 19

あなたにおすすめの小説

転生悪役弟、元恋人の冷然騎士に激重執着されています

柚吉猫
BL
生前の記憶は彼にとって悪夢のようだった。 酷い別れ方を引きずったまま転生した先は悪役令嬢がヒロインの乙女ゲームの世界だった。 性悪聖ヒロインの弟に生まれ変わって、過去の呪縛から逃れようと必死に生きてきた。 そんな彼の前に現れた竜王の化身である騎士団長。 離れたいのに、皆に愛されている騎士様は離してくれない。 姿形が違っても、魂でお互いは繋がっている。 冷然竜王騎士団長×過去の呪縛を背負う悪役弟 今度こそ、本当の恋をしよう。

拝啓、目が覚めたらBLゲームの主人公だった件

碧月 晶
BL
さっきまでコンビニに向かっていたはずだったのに、何故か目が覚めたら病院にいた『俺』。 状況が分からず戸惑う『俺』は窓に映った自分の顔を見て驚いた。 「これ…俺、なのか?」 何故ならそこには、恐ろしく整った顔立ちの男が映っていたのだから。 《これは、現代魔法社会系BLゲームの主人公『石留 椿【いしどめ つばき】(16)』に転生しちゃった元平凡男子(享年18)が攻略対象たちと出会い、様々なイベントを経て『運命の相手』を見つけるまでの物語である──。》 ──────────── ~お知らせ~ ※第3話を少し修正しました。 ※第5話を少し修正しました。 ※第6話を少し修正しました。 ※第11話を少し修正しました。 ※第19話を少し修正しました。 ※第22話を少し修正しました。 ※第24話を少し修正しました。 ※第25話を少し修正しました。 ※第26話を少し修正しました。 ※第31話を少し修正しました。 ※第32話を少し修正しました。 ──────────── ※感想(一言だけでも構いません!)、いいね、お気に入り、近況ボードへのコメント、大歓迎です!! ※表紙絵は作者が生成AIで試しに作ってみたものです。

魔王の息子を育てることになった俺の話

お鮫
BL
俺が18歳の時森で少年を拾った。その子が将来魔王になることを知りながら俺は今日も息子としてこの子を育てる。そう決意してはや数年。 「今なんつった?よっぽど死にたいんだね。そんなに俺と離れたい?」 現在俺はかわいい息子に殺害予告を受けている。あれ、魔王は?旅に出なくていいの?とりあえず放してくれません? 魔王になる予定の男と育て親のヤンデレBL BLは初めて書きます。見ずらい点多々あるかと思いますが、もしありましたら指摘くださるとありがたいです。 BL大賞エントリー中です。

【1部完・2部準備中】人質5歳の生存戦略! ―悪役王子はなんとか死ぬ気で生き延びたい!冤罪処刑はほんとムリぃ!―

ほしみ
ファンタジー
「え! ぼく、死ぬの!?」 前世、15歳で人生を終えたぼく。 目が覚めたら異世界の、5歳の王子様! けど、人質として大国に送られた危ない身分。 そして、夢で思い出してしまった最悪な事実。 「ぼく、このお話知ってる!!」 生まれ変わった先は、小説の中の悪役王子様!? このままだと、10年後に無実の罪であっさり処刑されちゃう!! 「むりむりむりむり、ぜったいにムリ!!」 生き延びるには、なんとか好感度を稼ぐしかない。 とにかく周りに気を使いまくって! 王子様たちは全力尊重! 侍女さんたちには迷惑かけない! ひたすら頑張れ、ぼく! ――猶予は後10年。 原作のお話は知ってる――でも、5歳の頭と体じゃうまくいかない! お菓子に惑わされて、勘違いで空回りして、毎回ドタバタのアタフタのアワアワ。 それでも、ぼくは諦めない。 だって、絶対の絶対に死にたくないからっ! 原作とはちょっと違う王子様たち、なんかびっくりな王様。 健気に奮闘する(ポンコツ)王子と、見守る人たち。 どうにか生き延びたい5才の、ほのぼのコミカル可愛いふわふわ物語。 (全年齢/ほのぼの/男性キャラ中心/嫌なキャラなし/1エピソード完結型/ほぼ毎日更新中)

巻き戻った悪役令息のかぶってた猫

いいはな
BL
婚約者のアーノルドからある日突然断罪され、処刑されたルイ。目覚めるとなぜか処刑される一年前に時間が巻き戻っていた。 なんとか処刑を回避しようと奔走するルイだが、すでにその頃にはアーノルドが思いを寄せていたミカエルへと嫌がらせをしており、もはやアーノルドとの関係修復は不可能。断頭台は目の前。処刑へと秒読み。 全てがどうでも良くなったルイはそれまで被っていた猫を脱ぎ捨てて、せめてありのままの自分で生きていこうとする。 果たして、悪役令息であったルイは処刑までにありのままの自分を受け入れてくれる友人を作ることができるのか――!? 冷たく見えるが素は天然ポワポワな受けとそんな受けに振り回されがちな溺愛攻めのお話。   ※キスくらいしかしませんが、一応性描写がある話は※をつけます。※話の都合上、主人公が一度死にます。※前半はほとんど溺愛要素は無いと思います。※ちょっとした悪役が出てきますが、ざまぁの予定はありません。※この世界は男同士での婚約が当たり前な世界になっております。 初投稿です。至らない点も多々あるとは思いますが、空よりも広く、海よりも深い心で読んでいただけると幸いです。 また、この作品は亀更新になると思われます。あらかじめご了承ください。

【完結保証】僕の異世界攻略〜神の修行でブラッシュアップ〜

リョウ
ファンタジー
 僕は十年程闘病の末、あの世に。  そこで出会った神様に手違いで寿命が縮められたという説明をされ、地球で幸せな転生をする事になった…が何故か異世界転生してしまう。なんでだ?  幸い優しい両親と、兄と姉に囲まれ事なきを得たのだが、兄達が優秀で僕はいずれ家を出てかなきゃいけないみたい。そんな空気を読んだ僕は将来の為努力をしはじめるのだが……。   ※画像はAI作成しました。 ※現在毎日2話投稿。11時と19時にしております。 ※2026年半ば過ぎ完結予定→七月に完結(決定)

悪役令息の花図鑑

蓮条緋月
BL
公爵令息シュヴァリエ・アクナイトはある日、毒にあたり生死を彷徨い、唐突に前世を思い出す。自分がゲームの悪役令息に生まれ変わったことに気づいたシュヴァリエは思った。 「公爵家の力を使えば世界中の花を集めて押し花が作れる!」  押し花作りが中毒レベルで趣味だったシュヴァリエはゲームのストーリーなどお構いなしに好き勝手動くことに決め行動が一変。その変化に周囲がドン引きする中、学園で奇妙な事件が発生!現場に一輪の花が置かれていたことを知ったシュヴァリエはこれがゲームのストーリーであることを思い出す。花が関わっているという理由で事件を追うことにしたシュヴァリエは、ゲームの登場人物であり主人公の右腕となる隣国の留学生アウル・オルニスと行動を共にするのだが……? ※☆はR描写になります ※他サイトにて重複掲載あり  

【完結】流行りの悪役転生したけど、推しを甘やかして育てすぎた。

時々雨
BL
前世好きだったBL小説に流行りの悪役令息に転生した腐男子。今世、ルアネが周りの人間から好意を向けられて、僕は生で殿下とヒロインちゃん(男)のイチャイチャを見たいだけなのにどうしてこうなった!? ※表紙のイラストはたかだ。様 ※エブリスタ、pixivにも掲載してます ◆この話のスピンオフ、兄達の話「偏屈な幼馴染み第二王子の愛が重すぎる!」もあります。そちらも気になったら覗いてみてください。 ◆2部は色々落ち着いたら…書くと思います

処理中です...