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3章
3.予想外
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「っ、お前が知る必要はない。いいか、余計なことは考えるな」
震えないように意識しながら出来る限り冷たい声を演じて、言い切る。すると、調教された猛獣のように瞳はぎらつかせたまま、アルヴェンは大人しくなる。それでも、こちらを窺う表情には心配の色が見えて、それが俺の心を波立たせる。
多分だが、言わずともアルヴェンであれば察しているだろう。なぜなら、バイス兄上がいないこの屋敷で俺を叩ける相手はただ一人だけだからだ。
「アルヴェン。いいから、飲み物を持ってきなさい。喉が渇いた」
「……わかった。すぐに戻る」
誤魔化すように目を逸らし、淡々と命じる。アルヴェンは俺の命令に少ししてから頷くと、ノエルが扉を開くと素直に外へと出ていった。変な行動をしないか、少々心配ではあるが大丈夫だろう。
「……ああもう、勘弁してくれー……」
扉が閉まって暫くしてから一人っきりになったと確信したあと、顔を両手で覆い、なんとも情けない声が自然と出た。
なにが褒美だ。褒美で男とキスする馬鹿がどこにいる。
「いや……ここにいるんだけど」
わかっている。本気で嫌ならアルヴェンを叱責すればいい。彼は、俺が強く言えば決して逆らわない。
それを、わかっているのに、それなのに止めることができないのは──。
「……ああ、顔が熱い」
そんな場合ではないと知りながらも、惹かれていく心は止められない。どうやら、俺はまたしても原作を粉々に壊そうとしているのだと理解した。
最後の敵であるサタリアと主人公のアルヴェンが恋をして、結ばれる。
そんなことは、絶対にあってはならないのだから。
◆◆◆
「は……? も、もう一度同じ言葉を伝えてくれ」
俺の手首に止まっている黒色の小鳥を見て、眉を顰める。すると小鳥は小さく頷くと、嘴を小さく開いた。
「メラニー第四皇女は公務にて、革新的な案を提示された。このことを皇帝陛下は高く評価し、褒め称えた」
すらすらと人の言葉を話しだす小鳥は、ただの鳥ではない。これは魔法生物の一つで、名前をフギンという。このフギンは、この世界でいう新聞のような役割を果たしている。
毎朝、貴族たちの家に飛んできて、昨日あった出来事を教えてくれるのだ。
実はフギンとは別にムニンという白い鳥がいて、それが言葉を記憶して、ムニンが言葉を伝達するという仕組みだ。こういう新聞のような役割や、手紙のような通信手段にもなっている。情報が必要な貴族たちが重宝している魔法生物の一つでもある。
ちなみに、フギンとムニンは俺が創ったわけではない。彼らは初代ラクトフェル家当主が生前に大量生産したもので、一つだけではなく多く存在している。
魔法生物は基本的に不老だ。ただ不死ではないため、死んでしまうこともある。実際初代が創ったもので残っているものは、今ではかなり少ない。
しかし、今俺が驚いているのはフギンが伝えた情報だ。なぜなら、俺はその話に聞き覚えがあったからだ。
「……おかしい、原作通りだ」
そう、それは原作で読んだことのあるシーンと似ている。これは世間のメラニーに対する評価が一変する出来事の一つだ。つまり、メラニーは立場を取り戻そうとしているということになる。
正直、俺からアルヴェンを取り上げるだけであれば、ここまでしなくていいはずだ。それだけの目的にしては、あまりにも意欲的なのだ。それこそ、復讐のために動いていた原作の流れに近い。
「アルヴェンは……側にいないのに」
本来ならメラニーが立派な皇族になろうとするのは、アルヴェンの復讐ため、ラクトフェル家に立ち向かえるような立場が欲しかったからだ。それなのに、今はどうして?
原作通りであれば、このまま彼女は才色兼備の第四皇女として認められ、ラクトフェル家に立ちふさがる。
「まさか……原作通りに進む、のか?」
今更ながら、メラニーはアルヴェンを見せる前からどこかおかしかった。魔法生物が嫌いではなくなっていたし、舞踏会にも積極的に出席していた。
もしかして……原作では明かされなかったがメラニーは個人的にも、ラクトフェル家を恨む理由があったとすれば?
他にも、疑問点がいくつか残る。メラニーの行動が、原作より早まった理由は? なぜ、魔法生物との接し方を変えた?
いや、この世界が本当に原作通り進むという保障はどこにもない……まず、アルヴェン自体がおかしい訳だし。
それでも、もしこのまま行くなら、メラニーただ一人でラクトフェル家を没落させてくれそうだ。
「マジか……」
弾んだ声が思わず零れる。もちろん、確定したことではないし、期待しすぎるのもよくない。
俺も俺なりに出来ることを考えなければ。
震えないように意識しながら出来る限り冷たい声を演じて、言い切る。すると、調教された猛獣のように瞳はぎらつかせたまま、アルヴェンは大人しくなる。それでも、こちらを窺う表情には心配の色が見えて、それが俺の心を波立たせる。
多分だが、言わずともアルヴェンであれば察しているだろう。なぜなら、バイス兄上がいないこの屋敷で俺を叩ける相手はただ一人だけだからだ。
「アルヴェン。いいから、飲み物を持ってきなさい。喉が渇いた」
「……わかった。すぐに戻る」
誤魔化すように目を逸らし、淡々と命じる。アルヴェンは俺の命令に少ししてから頷くと、ノエルが扉を開くと素直に外へと出ていった。変な行動をしないか、少々心配ではあるが大丈夫だろう。
「……ああもう、勘弁してくれー……」
扉が閉まって暫くしてから一人っきりになったと確信したあと、顔を両手で覆い、なんとも情けない声が自然と出た。
なにが褒美だ。褒美で男とキスする馬鹿がどこにいる。
「いや……ここにいるんだけど」
わかっている。本気で嫌ならアルヴェンを叱責すればいい。彼は、俺が強く言えば決して逆らわない。
それを、わかっているのに、それなのに止めることができないのは──。
「……ああ、顔が熱い」
そんな場合ではないと知りながらも、惹かれていく心は止められない。どうやら、俺はまたしても原作を粉々に壊そうとしているのだと理解した。
最後の敵であるサタリアと主人公のアルヴェンが恋をして、結ばれる。
そんなことは、絶対にあってはならないのだから。
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「は……? も、もう一度同じ言葉を伝えてくれ」
俺の手首に止まっている黒色の小鳥を見て、眉を顰める。すると小鳥は小さく頷くと、嘴を小さく開いた。
「メラニー第四皇女は公務にて、革新的な案を提示された。このことを皇帝陛下は高く評価し、褒め称えた」
すらすらと人の言葉を話しだす小鳥は、ただの鳥ではない。これは魔法生物の一つで、名前をフギンという。このフギンは、この世界でいう新聞のような役割を果たしている。
毎朝、貴族たちの家に飛んできて、昨日あった出来事を教えてくれるのだ。
実はフギンとは別にムニンという白い鳥がいて、それが言葉を記憶して、ムニンが言葉を伝達するという仕組みだ。こういう新聞のような役割や、手紙のような通信手段にもなっている。情報が必要な貴族たちが重宝している魔法生物の一つでもある。
ちなみに、フギンとムニンは俺が創ったわけではない。彼らは初代ラクトフェル家当主が生前に大量生産したもので、一つだけではなく多く存在している。
魔法生物は基本的に不老だ。ただ不死ではないため、死んでしまうこともある。実際初代が創ったもので残っているものは、今ではかなり少ない。
しかし、今俺が驚いているのはフギンが伝えた情報だ。なぜなら、俺はその話に聞き覚えがあったからだ。
「……おかしい、原作通りだ」
そう、それは原作で読んだことのあるシーンと似ている。これは世間のメラニーに対する評価が一変する出来事の一つだ。つまり、メラニーは立場を取り戻そうとしているということになる。
正直、俺からアルヴェンを取り上げるだけであれば、ここまでしなくていいはずだ。それだけの目的にしては、あまりにも意欲的なのだ。それこそ、復讐のために動いていた原作の流れに近い。
「アルヴェンは……側にいないのに」
本来ならメラニーが立派な皇族になろうとするのは、アルヴェンの復讐ため、ラクトフェル家に立ち向かえるような立場が欲しかったからだ。それなのに、今はどうして?
原作通りであれば、このまま彼女は才色兼備の第四皇女として認められ、ラクトフェル家に立ちふさがる。
「まさか……原作通りに進む、のか?」
今更ながら、メラニーはアルヴェンを見せる前からどこかおかしかった。魔法生物が嫌いではなくなっていたし、舞踏会にも積極的に出席していた。
もしかして……原作では明かされなかったがメラニーは個人的にも、ラクトフェル家を恨む理由があったとすれば?
他にも、疑問点がいくつか残る。メラニーの行動が、原作より早まった理由は? なぜ、魔法生物との接し方を変えた?
いや、この世界が本当に原作通り進むという保障はどこにもない……まず、アルヴェン自体がおかしい訳だし。
それでも、もしこのまま行くなら、メラニーただ一人でラクトフェル家を没落させてくれそうだ。
「マジか……」
弾んだ声が思わず零れる。もちろん、確定したことではないし、期待しすぎるのもよくない。
俺も俺なりに出来ることを考えなければ。
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