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第1章
死の寸前は続いて
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「は……?」
キーリの目の前には見慣れたロード画面が浮いている。咄嗟に周りにいる人へ視線を向けるも、誰一人先程と表情が変わっていない。
そこに驚愕の様子がないのを確認すると、キーリはこれが自分しか見えていないのだと理解した。
──ロード画面だよな、これ。
キーリが思うに、これは『災厄の王と歌う聖女』のロード画面だと気付く。丸みを帯びた文字と枠内に飾られた無駄に可愛い花、それらがキーリに間違いないと思わせる。
キーリがそっと指を振ると、選択肢が『はい』『いいえ』と変わっていく。
──ロードするって……待て。どこにロードするんだよ。
セーブがなければロードはできない。元ゲーマーのキーリとしては当然の疑問だった。当たり前だがキーリは今までセーブなどした事はない。なら、ロードを選べばどうなるのかという恐怖が増す。
「早くしろ。私も暇ではない」
フードを被った貴族が、苛立った様子で声を投げかける。イルジムはそれに答えるようにフードの貴族へ向かって、一度頭を下げた。
そして、イルジムはキーリへ改めて向き直り、剣を構え直した。
そこでキーリは自分に時間がないことを悟る。震えた足では逃げられず、今すぐ助けてくれる勇敢な人間はここにはいない。唯一の知り合いである店主は顔を青くしたまま固まったままだ。
なら、キーリが選ぶのは一つだけだった。
──ここにかけるしかない。
キーリは死にたくなかった。ストーリーを知らないキーリだが、ラスボスであるサラディがどういう最後を迎えるかは知っていた。そこはスキップ出来ない仕様だったからだ。
サラディは、主人公の聖女とその攻略相手たちに殺されるのだ。しかも、死ぬ寸前まで世界を呪いながら恨みながら。
聖女の説得にも一切耳を貸さず、壮絶に最後まで悪である事を貫き通した最後だった。
──サラディをあんな目に合わせてたまるか!
どこへいくのかという恐怖はある。これ以上酷くなる可能性も考える。しかし、臆病者はその指を動かす。
選ぶのは『はい』だ。
その時、ここでロードしたらキーリ自身はここから消えるのだろうか、という些細な疑問がふっと浮かぶ。
その思考をすぐに振り払うため、キーリは頭を左右に振った。
「最後に言い残す言葉だけは聞いておこう」
そう言ったイルジムをキーリは睨み付けた。睨み付けてはいるが全身は震えて、恐怖で潤んだ瞳には迫力はない。
しかし、無理矢理に口角を吊り上げてキーリは叫んだ。
「────ロードする!」
声を上げて選択した瞬間、キーリの視界は真っ暗になり意識は消えた。
▲▶▼◀▲
「……い」
キーリの視界は真っ白だ。何も見えない中で誰かの声がキーリに届く。しかし、その言葉は耳鳴りと混ざって聞こえ辛い。キーリは応えるために口を開こうとするが、指先一つ動かす事が出来なかった。
徐々と耳鳴りが消えていく。すると、視界には色が戻り白の世界も消えていく。
瞬きを一度すると、そこにあるのは赤い瞳だった。
「キーリ? 大丈夫か?」
間近にはサラディの顔があり、心配そうにこちらを窺っていた。
「さ、さら、サラディ……?」
この場にいるはずのないサラディがここにいる。動揺から声は半音程上がり、裏返った。
もしかして、助けにきてくれたのかとキーリは瞳を輝かせる。しかし、辺りの光景が視界に入って動きを止めた。
何故なら、ここは貧民窟にあったキーリの家だったからだ。
罅だらけの壁に、穴の空いた天井。それは間違いなく出て行ったはずの家だった。
「……な、なんで、まさか」
「ちゃんと俺の話を聞いていたか?」
「へ? は、話?」
未だ現状に理解が追い付かず、混乱しているキーリにトドメを刺すようにサラディは言った。
「───そうだ。助けてくれたお礼の話だよ。俺の力が及ぶ範囲ならなんでも叶える、何かないか?」
それは、間違いなくキーリには聞いた事のある言葉だった。
キーリの目の前には見慣れたロード画面が浮いている。咄嗟に周りにいる人へ視線を向けるも、誰一人先程と表情が変わっていない。
そこに驚愕の様子がないのを確認すると、キーリはこれが自分しか見えていないのだと理解した。
──ロード画面だよな、これ。
キーリが思うに、これは『災厄の王と歌う聖女』のロード画面だと気付く。丸みを帯びた文字と枠内に飾られた無駄に可愛い花、それらがキーリに間違いないと思わせる。
キーリがそっと指を振ると、選択肢が『はい』『いいえ』と変わっていく。
──ロードするって……待て。どこにロードするんだよ。
セーブがなければロードはできない。元ゲーマーのキーリとしては当然の疑問だった。当たり前だがキーリは今までセーブなどした事はない。なら、ロードを選べばどうなるのかという恐怖が増す。
「早くしろ。私も暇ではない」
フードを被った貴族が、苛立った様子で声を投げかける。イルジムはそれに答えるようにフードの貴族へ向かって、一度頭を下げた。
そして、イルジムはキーリへ改めて向き直り、剣を構え直した。
そこでキーリは自分に時間がないことを悟る。震えた足では逃げられず、今すぐ助けてくれる勇敢な人間はここにはいない。唯一の知り合いである店主は顔を青くしたまま固まったままだ。
なら、キーリが選ぶのは一つだけだった。
──ここにかけるしかない。
キーリは死にたくなかった。ストーリーを知らないキーリだが、ラスボスであるサラディがどういう最後を迎えるかは知っていた。そこはスキップ出来ない仕様だったからだ。
サラディは、主人公の聖女とその攻略相手たちに殺されるのだ。しかも、死ぬ寸前まで世界を呪いながら恨みながら。
聖女の説得にも一切耳を貸さず、壮絶に最後まで悪である事を貫き通した最後だった。
──サラディをあんな目に合わせてたまるか!
どこへいくのかという恐怖はある。これ以上酷くなる可能性も考える。しかし、臆病者はその指を動かす。
選ぶのは『はい』だ。
その時、ここでロードしたらキーリ自身はここから消えるのだろうか、という些細な疑問がふっと浮かぶ。
その思考をすぐに振り払うため、キーリは頭を左右に振った。
「最後に言い残す言葉だけは聞いておこう」
そう言ったイルジムをキーリは睨み付けた。睨み付けてはいるが全身は震えて、恐怖で潤んだ瞳には迫力はない。
しかし、無理矢理に口角を吊り上げてキーリは叫んだ。
「────ロードする!」
声を上げて選択した瞬間、キーリの視界は真っ暗になり意識は消えた。
▲▶▼◀▲
「……い」
キーリの視界は真っ白だ。何も見えない中で誰かの声がキーリに届く。しかし、その言葉は耳鳴りと混ざって聞こえ辛い。キーリは応えるために口を開こうとするが、指先一つ動かす事が出来なかった。
徐々と耳鳴りが消えていく。すると、視界には色が戻り白の世界も消えていく。
瞬きを一度すると、そこにあるのは赤い瞳だった。
「キーリ? 大丈夫か?」
間近にはサラディの顔があり、心配そうにこちらを窺っていた。
「さ、さら、サラディ……?」
この場にいるはずのないサラディがここにいる。動揺から声は半音程上がり、裏返った。
もしかして、助けにきてくれたのかとキーリは瞳を輝かせる。しかし、辺りの光景が視界に入って動きを止めた。
何故なら、ここは貧民窟にあったキーリの家だったからだ。
罅だらけの壁に、穴の空いた天井。それは間違いなく出て行ったはずの家だった。
「……な、なんで、まさか」
「ちゃんと俺の話を聞いていたか?」
「へ? は、話?」
未だ現状に理解が追い付かず、混乱しているキーリにトドメを刺すようにサラディは言った。
「───そうだ。助けてくれたお礼の話だよ。俺の力が及ぶ範囲ならなんでも叶える、何かないか?」
それは、間違いなくキーリには聞いた事のある言葉だった。
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