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第零章:むかしばなし

ウソかホントかオトギバナシ

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「今日は、みんなに不思議なお話を
聞かせてあげる」

「えー!?」
「なになにー?」

「本当にあったお話よ」


昔々、まだ世界が妖怪しかいなかった頃、
妖怪の世をおさめていたのは、
妖狐という狐の妖怪の一族、
炎虎という虎の妖怪の一族、
青龍という竜の妖怪の一族。
この三つの妖族、三大妖族が、
バラバラの妖怪達をおさめていました。
妖怪だらけの世界に、
やがて人間が誕生します。
頭が良く力もあった三大妖族は
人間の生き方などを観察し、
人間になりすまして人間に近付きました。
しかしある日、人間の一人が
人間になりすましていた妖狐に
こう言いました。
「妖怪が出た。殺してくれ」

妖狐は悩んでしまいました。
仲間である妖怪を殺すわけには
いかないのです。

そこで妖狐は全ての妖怪に、
人間になることができる能力を与え、
「妖怪の姿を人間に見られないように。
見られると殺されてしまうよ」
と言って、
人間には、
「妖怪は殺した。
もうここには人間しかいないよ」
と嘘をつき、人間を安心させました。
こうして、人間と妖怪は、
仲良く暮らせました。


「……今も、実は妖怪って人、
いるかもしれないわね」

「えー??いるわけないよ!」
「そんな人、いないよ!」


―――こう言ってた時が、今は懐かしい。
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