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凱旋
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外から、小鳥のさえずりが聞こえる。どうやら朝になったようだ。
部屋を見回すと、俺以外の皆はまだ夢の中だ。起こさないようにそっと身を起こし、静かに宿舎の外へ向かった。
「あっ、桃太郎さん。おはようございます!」
「おはようございます、アテナさん。随分早いですね」
「はい。今朝も、みさなんの朝食をご用意しようと思いまして」
「なるほど。それなら俺も手伝いますよ」
「助かります。では、これを切ってもらえますか——」
朝の澄んだ空気の中、二人で手際よく調理を進めていく。
あらからの準備が整い終わるころには、焼きたてのパンの香ばしい匂いに誘われたのか、皆が広場に集まり始めていた。
「みなさん、おはようございます! 今朝はパンを焼いてみました。木いちごのジャムとハチミツもご用意してますので、お好みでどうぞ!」
「いっただきまーす」
焼き立てのパンに、木いちごのジャムを付けて一口頬張った。
「うん、美味い! これも売り物として出しても問題なさそうな品ですよ」
「お褒めにあずかり光栄です。でも、本当に人間たちはすごいですね。教えてもらわなかったら、こんな美味しい食べ物、一生作れませんでした」
「教えてもらってすぐに、これだけの物が作れるアテナさんもすごいと思いますよ」
「いえいえ。チャットさんの教え方が上手だっただけです」
「そうですね! あの人は本当に尊敬に値します」
そんな話の最中に、突然アテナがしおらしく頭を下げ始めた。
「……ありがとうございます」
「何がです?」
「私たちに……明るい未来を照らしてくれて」
「俺たちの未来は、まだ始まったばかりの朝ですよ。これからもっと楽しい昼も、にぎやかな夜も、たくさん迎えていきましょう!」
「……はいっ!」
朝食を終えると、俺たちはテソーロへと凱旋することになった。クエストに参加した全員で、だ。
帰り道も、魔含の効果か、何事もなく穏やかな旅路となった。
西門が見えてきた頃、先頭に立っていたガストンが立ち止まり、こちらを振り返った。
「みんな、ご苦労さん。これから街へと入っていくんだが……、やはり街の連中は、コボルトたちを見て驚くだろう。怯える者もいるかもしれん。でも心配するな。俺がきっちり説明してやる。ここにいる全員が——この街のヒーローだってことをな!」
「うぉぉぉぉぉっ‼」
冒険者たちが、ガストンの言葉に応えるように力強く雄叫びを上げた。
「んじゃ、胸張って行こうか!」
西門の前にて、予想していた通りの事態が起きた。
「ガストン様、お帰りなさいま——っ⁉ ま、魔獣じゃないか!」
「見張りご苦労さん。事情はあとで説明する。通してくれ」
門番たちは一瞬たじろいだが、槍を交差させて通行を遮る。
「申し訳ありません! いくらガストン様の命令でも……魔獣を街の中に入れるわけにはいきません!」
頑なな拒絶だ。それも無理はない。門番としての責務を果たしているに過ぎないのだから。
とはいえ、このまま立ち往生するわけにもいかず、俺はどうするべきか考えを巡らせた——その時だった。
「門番たちよ……下がりなさい」
「は……ははぁっ!」
門番たちは声の主を目にした瞬間、即座に膝をついた。
どうやら、ただ者ではない。相当な地位にある人物のようだ。
「お、親父⁉」
「だから、皆の前ではそう呼ぶなと何度言ったら分かるんだ、ガストン」
「も、申し訳ございません……領主様」
まさかの、ガストンさんの親父さん——じゃなくて、テソーロの領主様のご登場だった。
「ガストン。ギルドからの報告は受けている。大儀であったな」
「ははっ。お褒めにあずかり、恐悦至極であります」
「それで……彼が桃太郎くんか?」
領主様の視線が俺に向けられる。
「は、初めまして。桃太郎と申します!」
「私はこの街の領主、カイル・テソーロ・マートンだ。君たちのおかげで、この街の平和は守られた。民を代表して礼を言おう。ありがとう」
重みのある感謝の言葉に、俺はどう返していいのか分からず、しどろもどろになる。
そんな俺の代わりに、ララが前に出て声を上げた。
「ねぇ、領主様。クエストに協力してくれたコボルトのお仲間さんたちも、街に入れてもらえませんですか?」
「ふむ……そうだなぁ」
マートンはあごに手を当て、少しの間、思案する。
「……彼らもまた、我らの領地に安寧をもたらした功労者——。快く迎え入れよう!」
「やったーです、大将!」
「ありがとう、ララ!」
「おいらたち……本当に街に入っていいんっすか⁉」
「領主様が許可してくれたんだ。ガストンさんの言ってた通り、胸を張って行こうじゃないか!」
「そ、そうっすね! いや~、なんか緊張してきたっす……」
「んじゃ、親父——じゃなかった、領主様の許可も下りたところで、テソーロのヒーロー達の凱旋行進と行こうか!」
「イエェェェェイ‼」
部屋を見回すと、俺以外の皆はまだ夢の中だ。起こさないようにそっと身を起こし、静かに宿舎の外へ向かった。
「あっ、桃太郎さん。おはようございます!」
「おはようございます、アテナさん。随分早いですね」
「はい。今朝も、みさなんの朝食をご用意しようと思いまして」
「なるほど。それなら俺も手伝いますよ」
「助かります。では、これを切ってもらえますか——」
朝の澄んだ空気の中、二人で手際よく調理を進めていく。
あらからの準備が整い終わるころには、焼きたてのパンの香ばしい匂いに誘われたのか、皆が広場に集まり始めていた。
「みなさん、おはようございます! 今朝はパンを焼いてみました。木いちごのジャムとハチミツもご用意してますので、お好みでどうぞ!」
「いっただきまーす」
焼き立てのパンに、木いちごのジャムを付けて一口頬張った。
「うん、美味い! これも売り物として出しても問題なさそうな品ですよ」
「お褒めにあずかり光栄です。でも、本当に人間たちはすごいですね。教えてもらわなかったら、こんな美味しい食べ物、一生作れませんでした」
「教えてもらってすぐに、これだけの物が作れるアテナさんもすごいと思いますよ」
「いえいえ。チャットさんの教え方が上手だっただけです」
「そうですね! あの人は本当に尊敬に値します」
そんな話の最中に、突然アテナがしおらしく頭を下げ始めた。
「……ありがとうございます」
「何がです?」
「私たちに……明るい未来を照らしてくれて」
「俺たちの未来は、まだ始まったばかりの朝ですよ。これからもっと楽しい昼も、にぎやかな夜も、たくさん迎えていきましょう!」
「……はいっ!」
朝食を終えると、俺たちはテソーロへと凱旋することになった。クエストに参加した全員で、だ。
帰り道も、魔含の効果か、何事もなく穏やかな旅路となった。
西門が見えてきた頃、先頭に立っていたガストンが立ち止まり、こちらを振り返った。
「みんな、ご苦労さん。これから街へと入っていくんだが……、やはり街の連中は、コボルトたちを見て驚くだろう。怯える者もいるかもしれん。でも心配するな。俺がきっちり説明してやる。ここにいる全員が——この街のヒーローだってことをな!」
「うぉぉぉぉぉっ‼」
冒険者たちが、ガストンの言葉に応えるように力強く雄叫びを上げた。
「んじゃ、胸張って行こうか!」
西門の前にて、予想していた通りの事態が起きた。
「ガストン様、お帰りなさいま——っ⁉ ま、魔獣じゃないか!」
「見張りご苦労さん。事情はあとで説明する。通してくれ」
門番たちは一瞬たじろいだが、槍を交差させて通行を遮る。
「申し訳ありません! いくらガストン様の命令でも……魔獣を街の中に入れるわけにはいきません!」
頑なな拒絶だ。それも無理はない。門番としての責務を果たしているに過ぎないのだから。
とはいえ、このまま立ち往生するわけにもいかず、俺はどうするべきか考えを巡らせた——その時だった。
「門番たちよ……下がりなさい」
「は……ははぁっ!」
門番たちは声の主を目にした瞬間、即座に膝をついた。
どうやら、ただ者ではない。相当な地位にある人物のようだ。
「お、親父⁉」
「だから、皆の前ではそう呼ぶなと何度言ったら分かるんだ、ガストン」
「も、申し訳ございません……領主様」
まさかの、ガストンさんの親父さん——じゃなくて、テソーロの領主様のご登場だった。
「ガストン。ギルドからの報告は受けている。大儀であったな」
「ははっ。お褒めにあずかり、恐悦至極であります」
「それで……彼が桃太郎くんか?」
領主様の視線が俺に向けられる。
「は、初めまして。桃太郎と申します!」
「私はこの街の領主、カイル・テソーロ・マートンだ。君たちのおかげで、この街の平和は守られた。民を代表して礼を言おう。ありがとう」
重みのある感謝の言葉に、俺はどう返していいのか分からず、しどろもどろになる。
そんな俺の代わりに、ララが前に出て声を上げた。
「ねぇ、領主様。クエストに協力してくれたコボルトのお仲間さんたちも、街に入れてもらえませんですか?」
「ふむ……そうだなぁ」
マートンはあごに手を当て、少しの間、思案する。
「……彼らもまた、我らの領地に安寧をもたらした功労者——。快く迎え入れよう!」
「やったーです、大将!」
「ありがとう、ララ!」
「おいらたち……本当に街に入っていいんっすか⁉」
「領主様が許可してくれたんだ。ガストンさんの言ってた通り、胸を張って行こうじゃないか!」
「そ、そうっすね! いや~、なんか緊張してきたっす……」
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「イエェェェェイ‼」
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