嫌われ者の王子様

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1話 嫌われ者の王子様

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僕は「ハイルド=ウォル=イカエラ」
グエルド王国の第一王子…それと王太子でもある。

そして今は処刑の最中だ。

え?誰の処刑かって?

それは僕だ。

第二王女を毒殺してしまった罪を擦り付けられ
国家反逆罪として捉えられ今公開処刑となっている。

衰退した体を無理矢理おこして
処刑台に登る。

僕は死ぬ前に豪華な椅子に座る義弟を見た。
迷惑をかけてしまい、申し訳ない気持ちと
こんな姿を見せてしまう己の醜さ故………
重い頭をゆっくり持ち上げる。
きっと義弟は顰めっ面でもしているのだろう。
だが僕の予想に反して僕の義弟は嘲笑っていた。
なんとも不気味な笑顔だ。
その顔を見て僕は全てを悟った。

…今まで罪を被せ続けていたのはお前だったんだな。

僕は今まで民に尽くしてきた。
しかし、何故かそれが全て裏目に出てしまう。
あれこれと何か行動する度にだ。
訴えても信用してくれる側近や臣下はいなかった。
唯一の理解者であった村や、乳母は何故か病死となってしまった。
義弟はどんなに悪い噂がたとうと僕を慕ってくれていた。

___それはすべて演技だったのか…?

今まで裏切られていたのを最悪なタイミングで知り、僕の心は穴が空いたようだった。

処刑台の刃がゆっくりと上がっていく…

笑ってしまった。

あぁ、少し休んでもいいよな────


◇◇◇


目が覚めると、見慣れたベッドの上に寝転がっていた。
そして全身がもの凄く痛い…
今の僕には首を動かすことくらいしかできない。

痛みのあまり、唇を噛み締めながら誰かいないかを探す。

…誰もいないのか?

昔から僕は王家の者として扱われたことがなかった。
理由は2つある。
1つは僕の父………国王は側室である
「ミーロンク=ソフィアーナ」
という姫を溺愛している。
僕の母にあたる正妃の
「シャイノール=デーリーノ」
は政略結婚だ。
父とは仲が悪い。
勿論王妃と側室の座では圧倒的正妃の方が地位は高い。
しかし国王とは仲が悪いのだ…
正妃の味方をした人達は皆爵位を落とされた。
そんな父は影で愚王と呼ばれている。
母は政府の秩序を乱すようなことが大っ嫌いだ。
だから合わない。
僕も母が正しいと思うが、それを知られると軟禁………行動が制限されるので
中立の立場にいる。

ここで分かるだろう。
僕に優しく接して、味方だと思われるのが怖いのだ。
なので僕は普段から自分のことは自分でする。
子爵の者でも必ず1人は世話係がついていると言うのに………
平民に近い僕は権力目当てで近ずいても意味が無いし、逆に立場が危うくなる。

あともう1つの理由は
座学の差だ。
なんと義弟は2歳の頃から文学を理解したのだ。
僕は4歳の頃からだと言うのに。
義弟は天才だった。
さらに頭が良すぎるせいか、僕の知らない単語を生み出したり、言ってたりもした。
例えば…
「この王宮の人達ってどんだけ顔がハイスペックなんだ?イケメンと美人で溢れかえってる!しかし彼奴あいつが邪魔だな。意外とモテてるし…なんとかしないと…ここは日本の___」

ここまでしか聞こえなかったが
こんな感じの独り言を言っていた。

はいすぺっく?

いけめん?

もてる?

にほん?

しらない単語ばかりだった。
僕と義弟の差を痛感した。

僕は普通の人の4~5倍は勉強出来る。
しかし、義弟は100倍と言ってもいいほど
知識が豊富で、さらに考えもしないような食べ物も沢山開発した。

今の愚王に変わって義弟が王座につけば
この国がさらに良くなるのではないかと誰もが思っていた。

僕もそう思った。
それが正しいと。
だから義弟が王太子の称号を得やすいように手回しをしていたが、
貴族派が荒れるため、それは叶わなかった。

この国には貴族派と第二王子派にわかれている。
貴族派は秩序維持を重視している。
第二王子派は…
別名「義弟を王太子にしようの会」らしい。

いや、名前ね。
うん。
ね。

話は戻すが、
貴族派には王家と並ぶほどの権力を持っている公爵家…
「イリーベン家」がついている。
この家系の者たちと争うと
お互い潰れる可能性もあるのだ。
だから敵にまわしたくない。

そのため僕が7歳の時に王太子という飾りの称号を頂いた。
しかし、立場が少しあがるだけで
王妃の息子ということに変わりはない。

だから王太子となった今も扱いが変わることはない。

「ミーロンク」の息子、そして僕の義弟
「テリシス=ウォル=シーラ」
が次の国王候補である限りは。

けれども唯一僕を王家の者として扱ってくれた人がいた。

乳母である
「リーカ=イール」だ。

いつもつきっきりで一緒にいてくれて、
他のメイド達に罵られようと
いつも笑顔だった人だ。

この手の大きさから僕は8歳だと思われる。
つまり乳母が病死するまで
約2年後だということ。

何としてでもこの原因を突き止めなくてはならない。
2年以内に医学を学んだ方がいいのだろうか?
いや、乳母が倒れた時に
国家一の医官を呼んだが
原因不明だった。

つまり僕がどれだけ医学を学ぼうと意味が無い。
誰か意図的に仕組んだのだろうか?
それなら呪術あたりを学んだ方が良さそうだ。

___コンコンコンコン

ガチャという音と共に乳房がタオルとオケを持って入ってきた。

「………ハイルド………様………?」

_ガシャーーーン

ガラスでできたオケを落とし慌てて駆けつけてきた。

そんなに驚くことか?
怪我をしたらどうする?

「………ッ」

すぐに起き上がろうとしたが
痛さのあまりそれが叶わなかった。

「あぁ、殿下…御目覚めになられたのですね!私共がどれほど心配したか…」

泣きじゃくりながら僕の手を力強く握る。

「…落ち着け、そう泣かれると僕が困る。」

「申し訳ありません殿下…2ヶ月も御目覚めにならなかったのでつい…」

「2、2ヶ月だと!?…ッ」

「殿下!!!!」

2ヶ月もここで寝てたと知り大声をあげて、
飛び上がろうとしてしまった…
痛い………。

「…それで2ヶ月も寝込んでいたと?一体僕の身に何があった?」

「それが………」

イールはごもごもと歯切れをきらす。

「殿下のお食事にマムシが紛れ込んでいたようで………」
*蝮=毒薬

「そうか…僕も耐性がまだまだのようだ。今後、毒の量を増やしてくれ。」

「畏まりました。」

「それと犯人は分かったのか?」

「はい…毒味役のアンリとうい者でして…どうやらミーロンク様の手下だったようで…私が目を少し離した隙に………不甲斐ない私をどうぞ御処分いただきますよう。」

手から血が出るほど強く握り締めながら
身体を震わせる姿に心が痛くなった。
唯一、僕を慕ってくれているイールを失いたくない!

「イール…お前の気持ちはよく分かっているよ。だけどね、処分する訳にはいかない。唯一の味方である君を失う方が僕にとってどれだけ辛いことか。これ以上僕を悲しませないでくれ。今回のことは不問にする。」

「…殿下っ」

涙目で顔を上げ、
嬉しそうにはにかんだ。

僕はこの笑顔を失わないためには
どんな手段でも使うことを誓うのであった。
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