嫌われ者の王子様

のぼる

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2話 無理な任務

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あれから少しずつ乳母と一緒に
自分の体力を取り戻していった。

「殿下。そろそろお庭においでになっては如何ですか?」

「そうだな。こうして籠りっきりなのも良くないしな。そなたの言う通りにしよう。準備をしてくれ。」

「畏まりました。」

スタスタと部屋を出ていったと思ったら
直ぐに戻ってきた。

ふむ。僕が出かけると言うことを分かっていて、事前に用意してたようだ。

寝巻きから私服に着替え、
部屋の外に出る。

勿論護衛は影に隠れてついている。

てくてくと歩いていくと庭園に着いた。

「うわぁ…」

何年ぶりだろうか。
まだこの時は扱いが酷すぎないときだから
庭園に薔薇が咲き誇っている。
懐かしくなって思わず涙目がでそうになるがグッと堪える。

「殿下、お茶と菓子をご用意させて頂きました。召し上がられますか?」

「あぁ、頂こう。」

パクっと小さなテーブルの上に置いてあるクッキーを1つ摘んで食べる。

「美味しい…」

やはりイールの菓子は絶品だ。
王宮の料理人としてでもやっていけそうだ。

それから黙々とお茶とクッキーを食べ進め、
少し読書をしてから僕は部屋に戻った。

自分のベッドの上に寝転ぶ。
仰向けになり今後のことを考えてみた。

乳母が死ぬまで大体あと2年。
それまでに何かあったような…

あっ河川氾濫はんらんだ!

僕が8歳の頃…つまり近々村の半分を壊滅させる氾濫が起きるのだ。
ここで僕が絡んで誤解は大きくなるのだが…

そうだ。今回は関わらなかったらいい。
そうしたらこれ以上誤解は酷くなることもない。
だが、今の僕は氾濫が起こることを知っている。
見て見ぬふりを出来るだろうか?
大きな罪悪感を背負って生きることは出来るだろうか?

…無理だ。

僕にはそんなことできない。
氾濫の被害を最小限に抑えることの方がいいに決まっている。
誤解はされても仕方がないよな。
義弟はどう動くのかも分からない、
しかし、僕にはやるべき事をやらねばならぬ。

明日、父上に視察の許可を頂こう。
僕がこの屋敷から離れるとなると喜んで承諾してくださることだろう。

___コンコンコンコン

「失礼します王太子殿下。国王からの使いの者がいらっしゃいました。」

「通せ。」

ガチャ。

ツカツカと僕の前まで来て、
スっと銀の皿に乗せた手紙を差し出す。

父上からだ。
レターナイフで口を破り
中身に目を通す。
そこには

「明日私の執務へ参れ。」

ただ一言それだけ書かれていた。

明日会う予定だったので丁度いい。
面談の許可を得なくて済む。

「承ったと伝えろ。もう下がれ。」

返事もなしに軽くお辞儀をしてから部屋を出る。

しかし何の用だろうか?

この日は気が気でなくて
一睡も出来なかった。



◇◇◇



朝目が覚めると朝食をとり、
正装に着替えて執務室へと向かう。

深呼吸をしてノックを4回ならす。

「国王陛下。ハイルド=ウォル=イカエラが参りました。」

「入れ。」

中に入ると椅子に腰かける父の姿があった。

1コーリルの距離をとり、跪く。
*1コーリル=3m

「今にも時間が惜しい。さっさと本題に入らせて貰おう。」

これは、僕の顔を見たくはないが緊急事態だから仕方なく会っていると訳せる。

「明日から国境の視察に行って村の様子を見てもらいたい。」

明日だと!?
国境までの視察となると1ヶ月は準備にとりかかるのに?
そして何故今日なのだ?

明日………あ…。

明日からここで緊急会議を行うのだったな。
国家機密だから内容は1部の者しか知らない。

まぁ、簡単に言うと。
「政治に関わるな」と言いたい。

そんなに僕のことが嫌いなんだね。
別に慣れたから良いけど。
ついでに僕も国境付近の村にある大河の堤防の様子を見に行く予定だったし、丁度良い。
というか、僕に断る権限なんてないんだけど。

「畏まりました。すぐに手配を致します。」

「あともう1つ。お前に専属の護衛騎士をつけることにした。」

…ふぇ?

危ない。変な声が出るところだった。
王の御前だ。
下手したら頭と身体が離れてしまう。

「第3機魔法騎士団副団長ファランと第2機魔法騎士団書記のフェイをつける。以上だ。下がれ。」

それだけを言うと、
僕を執務室から追い払った。
もっと詳しく教えて欲しかったのに…。
そう言えば…僕に専属護衛騎士なんて前いたっけ?
いないぞ?

疑問に思いながら僕は自分の部屋へと戻って行った。

しかし僕はこれよりももっと重大な事を忘れていた。
前世は、国王から視察を頼まれたことは1度も無かったということに。
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