ゆずれないモノ

優ちいた

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12話

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ゆずれないモノ 12話 (校正済)



「い~い?絶対に明日からしばらくはここに来ないでね」



リズムよくブルーマウンテンの豆を挽いていた亜月の手が止まった。


「え~・・・・・・なんでよっ」

 昨夜は散々苛められて、
 少し掠れた声で亜月が抗議の声を上げる。



 明日から、ビッグサイトのイベントに参加するメンバーたちが
泊りにくるのだ。



イベントというのは、 恋人と共有するものなのだろう!と喚いていたが、
こればかりはいくら恋人でもダメだ。



 趣味を理解していない人がその場にいると、
みんな気を使って本音で話せないし、心底楽しめない。




 「亜月くんだって、
 一人だけ話題についていけないの、いやでしょ?内容が内容だもの」



 
 山野含め、明日ここに集まってくるメンバーは、
 山野と同レベルのマニアックな連中だ。


話す内容や作業の中身は、亜月にとっては未知の世界だ。





 「亜月くんは絶対に不愉快になるよ。それに・・・僕は君に嫌われたくないかな・・・」

 一般人にはそれなりに気を使ってきたが、
 同じ人種と話す時には、山野は類を見ないくらいにテンションが上がる。


それを見られるもの恥ずかしいし、 気遣い無用の仲間と、
 思う存分オタク談議に花を咲かせようという時に、
 非オタクの亜月がいたら、思いきり弾けることができない。

それになにより、
オタクにいいイメージを持っていない亜月に、これ以上嫌われたくない。



 「嫌いになんて・・・」

 「なるよ、きっと」




 亜月は知らないのだ。
 真の姿を曝した、テンションMAXのオタク達のカオスな状態を。










ちなみに、泊りに来るのは、男女含めて4人。


 横尾と、その彼女のミキ。
そして、イベントで知り合った、鹿児島からくる尾辻夫婦。


 4人は全員マンガを描いていて、
 横尾と尾辻はオリジナルのエロ同人誌、


そして例に漏れず、ミキと尾辻夫人は共に、
いわゆる「腐女子」というやつで、
 二次創作の男性同士の恋愛ものなどを描いている。



 実は、亜月に来てほしくない理由の一つにはそれもある。


まさに、自分と亜月の関係は、 彼女たちにとっては恰好の餌食だ。



 彼女たちの腐女子センサーをあなどってはいけない。



 腐女子の二人に、自分たちの関係がバレた日には・・・・!
そう考えると、絶対に亜月には来てもらっては困るのだ。


 「ほら、イブからマンションに帰ってないでしょ?今日中には帰らないと・・・・ね?」


むっつりと膨れて拗ねている亜月を諭し、
なんとか帰ってもらったが、全然納得はしていないようだ。












 翌日、お昼が過ぎた頃に尾辻夫妻がやってきた。

 鹿児島土産の焼酎を、山野は毎回楽しみにしている。





 「幻の焼酎」といった、洒落たものではなく、
 鹿児島県の大隅地方でよく飲まれている、
 「黒若潮」という銘柄が山野の大のお気に入りだ。


 独特の臭みが、関東人の山野には最初はキツかったが、 深みのある味わいと相まって、
 飲んでいくうちに、だんだんその匂いが病みつきなり、
この香りあっての黒若潮だ!と今なら思える。


ロックもいいが、山野はこれのお湯割りが大好きだ。

 絶妙な配合で割ったときに醸し出す、
 独特の何とも言えない仄かな甘みが堪らない。


そしてその焼酎が2本括られたものを山野に手渡す。


 「え?今回は2本もくれるんですか?」

 「おお。こん前、わぁっぜぇよろくちょったどが。
もう一本な、よかで山野くんの父ちゃんせぇ持っいかんや。
ほいで今日きゅはよ、地鶏ん刺身さしんの持っきたで、こいばもっが!」


 尾辻がそう言って、
 保冷剤に埋もれた鹿児島地鶏の刺身と、
 鹿児島からわざわざ持ってきた醤油を山野に差し出した。

この、鹿児島地鶏も、山野の大好物だ。

この刺身を、尾辻が持参した、鹿児島独特の甘みのある刺身醤油に、
すりおろした生姜とニンニクを加え、
スライスした玉ねぎをツマにして食べるのが、これまた堪らないのだ。


 鹿児島のものは旨い。
 山野の口には南の味付けが合っているらしい。

そしてその尾辻は、29歳という若さで、
 今時の若者には珍しいくらいに、
なかなかに濃い鹿児島弁を使う。


 薩摩隼人にしては、おしゃべり好きで、
ジェスチャーが豊富なので、
 彼の話す鹿児島弁は不思議と、ニュアンスで
 なんとなくではあるが意味が通じてしまうのだ。


 分からない単語は、その場で聞いて、
 実は覚えてしまった方言もあるほどだ。


この夫妻と話す度に、鹿児島へ行きたい衝動に駆られる。


 (今度、亜月くんを誘って行ってみようかな・・・)


 今頃、拗ねているだろう彼を思い出すと、 思わず笑みがこぼれる。


うん、そうだ。
 旅行に行こう。

そして南の地で、うんと御奉仕してやらなくちゃね。


それで、今回除け物にしてしまった埋め合わせをしよう。


 思い出し笑いを尾辻に指摘され、
お前はスケベだと言われてみんなで大笑いしているところに
横尾が彼女のミキとやってきて、全員が揃った。



 作業は明日からにするとして、
 今日は、遠い鹿児島から出てきてくれた尾辻夫妻の歓迎会をすることにした。



ミキが手伝ってくれたお陰で、
 夜の準備はさくさく進んだ。




やはり最初はビールで乾杯し、地鶏の刺身に舌鼓を打つ。

 旨みの濃い味に、この歯ごたえ。
 焼き目のついた鶏皮が堪らない。

やっぱりこれだと思う。

そしてあとは、焼酎のお湯割りを、まったり、ちびちび飲む。
 至福の一時だ。


 夫妻の鹿児島の土産話も楽しい。
 桜島の灰との格闘には、驚かされるばかりだ。


 写真を見せられて、真黒なはずの車が真っ白になったものと、
その後、中途半端に雨が降ったらしく
 ヒョウ柄になってしまったもの見て、腹を抱えて笑った。

これがまた、尾辻の鹿児島独特の表現や言い回しで説明するので、
 本当に面白い。
ほろ酔いも相まって、笑いすぎて涙が出る。



 標準語では表現しきれない、地方独特の言い回しが
生まれも育ちも東京の山野には、とても羨ましい。




 「すごく」と表すより、尾辻がよく使う、
 「わっぜぇ」という言葉の方が、より凄さを実感できるから不思議だ。



そして、盛り上がっている中、突然横尾が、
 明日から頑張るぞ!!と音頭をとり、また皆で勢いよく乾杯をした。









そして翌日からは、みんな集中して作業にかかる。

 今回はみんな、優秀だったらしく、この二日間は順当に進み、
いつものような修羅場にはならなかった。



そして本番を明日に控えた12月30日、
フィギュアも同人誌もほぼ完成し、みんな気持ちに余裕もあって、
リビングでコーヒーを飲みながら、コスプレの話で盛り上がっていた。





カツラ派か地毛派かで、笑いを交えて論議しているときに、
ドアベルが鳴った。


 笑いすぎて涙目になったまま、
 山野は、はーいと返事をしてドアスコープを覘く。



 「あれ!?亜月くんっ・・・」

ドアを開けると、亜月がぺロリと舌を出す。



 「来ちゃった・・・☆」
 「来ちゃった・・・☆じゃないよ・・・、あれほどダメって言ったのに・・・」


 「すげぇ盛り上がってんじゃん」

 咎める山野を押しのけて、
 不機嫌丸出しで亜月はズカズカと上がり込んだ。


 「・・・・女の声、するけど・・・・」

ゆらりと嫉妬のオーラが見える。

こういうときの亜月は絶対に引かない。

 絶対に引かない。

 (二回言う)



むっとしながら山野を睨む亜月に、 山野は諦めの溜め息をついた。


 亜月はぷうっと頬を膨らませて、 思い切り不機嫌な表情を見せる。


 (ああ、そんな顔しても、可愛いだけなのに・・・)


 「二人とも、友達の彼女と奥さんだよ」

そう告げて、亜月の頬を手で挟み、軽くキスをする。




それで機嫌が治ったようで
亜月はご機嫌でリビングのドアを自ら開けた。

 非常にお手軽だ。
 亜月を手に入れるために、日々の努力を惜しまない女子たちに、
なんとなく申し訳ない気持ちになってきた。




 「ちわ~~っす」



 「うわっ!三条くん!?」


 「やっぱ横尾じゃん」


 亜月の方は、やっぱりお前、いると思ったんだ~と言っているが、
 横尾は、なんでここに三条亜月がいるのかが
不思議でしょうがないといった感じで驚いている。



 来てしまったものはしょうがないので、
 腐女子に悟られないように、大学の友達だと紹介した。


 亜月を初めて見るミキや尾辻夫妻は、口々にカッコいいと呟き、
 見惚れている。



 「ねぇ、君はヨカニセやね~!もしかして売り子をするの?」


そう言い出したのは尾辻夫人だ。

 「よかにせ・・・?う、・・・うりこ・・・?・・・って・・・」

 「おお、そぁよか!こんヨカニセがおれば、おなごんしがどっさいくっどらい!」


 「も~日本語しゃべってよ~尾辻さん~~」

 横尾のツッコミに笑いがおこる。


 「このカッコいい人がいたら、女の人がたくさん寄ってくるってことよ」

すかさず奥さんが訳してくれる。
この小気味好いコンビプレイがいつも気持ちいい。






 「紅ちゃん・・・・」

 聞き慣れない言葉と訛りに、亜月が山野の服を引っぱり、
あの人は?といった表情で見つめてきた。


 「ああ、尾辻さんね、鹿児島の人なんだよ。
ほら、僕の溶岩焼の食器あるでしょ?
あれを集めだしたのも尾辻さんの影響なんだ。
 話を聞いてたら、どうしても欲しくなって、ついつい取り寄せちゃって・・・」


 「へ~・・・」

 関心したように、尾辻の話に耳を傾けている。

 尾辻の話す内容に、今の何?それどういう意味?と、
 初めて目の前で聞く、生の鹿児島の言葉に興味津々のようで、
すっかり打ち解けている。




 亜月のコーヒーを準備しようとキッチンに立つと、
 横尾が側にやってきた。



 「ね、ねぇ、山野くん・・・なんで三条くんが・・・?」


 「え~と・・・ちょっと色々あって・・・。ま、まぁ、害はないとは思うから・・・」




 横尾自身も、亜月とは色々確執があったので、
 複雑な顔で、自分の彼女や夫妻と盛り上がっている亜月を見ている。



 本当に楽しそうだ。

あんな風に楽しそうに、キャッキャとはしゃぐ亜月も珍しい。


 「亜月くんのお守は尾辻さんたちに任せて、 僕はそろそろ晩御飯の仕込みをしようかな」




 「・・・・・・・・・・・・・・・」



 「な・・・何?」




 横尾が驚いた顔で、山野を凝視している。




そしてしばらく見つめて、

 「そうか・・・・そうか・・・・。うん・・・・そうか・・・!」

 腕組みしながら、一人何かを納得したように頷いた。



 「うん、山野くん。ミキと奥さんには、絶対にバレないようにしなよ?」


 「え!?な、何が!?なんのコトカナー」

・・・ととぼけてみるも、


 「あと、ハザちゃんにも。
・・・ハザちゃん、すごくブラコンだから、バレらた色々大変だよ~。気をつけてね!」



・・・やはり横尾にはバレているようだ。

ただ、葉桜に感づかれていることを知らない山野は、
 分かったよ・・・と、うろたえながら小さく答えた。



 「ね・・・ねぇ横尾くん・・・・」

 「・・・学校では、互いを呼ぶ時、気をつけなね」


なんでわかったのかを聞く前に、 山野にそう告げて盛り上がる輪に戻っていった。

 「・・・あ。」




そりゃ、これまで敵?同士だった者が、
 亜月くん、紅ちゃん、などと、急に呼び出したら不自然だろう。


これが普通なら、ただ単に「仲良くなったんだな」くらいで済むところが、
どうやら横尾は、腐女子な彼女を持つお陰で、
 同じようなセンサーがついていたらしい。


 「も~・・・余計なアビリティだよ・・・横尾くん・・・」



でも、一番仲のいい友達が、二人の関係に気づいてもドン引きすることなく
そのままでいてくれたのが嬉しかった。


 横尾は亜月から、
お前こんな可愛い彼女がいたのかと小突かれている。



 彼を・・・横尾を大事にしていこう。

 亜月が聞いたら、嫉妬で怒り狂いそうなことを思いながら、
そんな彼の後ろ姿を見つめた。




 「・・・よし、今日は唐揚げ作るか・・・・」


たった二日ほど、亜月の顔を見なかっただけなのに、
 長い間会っていなかったような気がする。



なんで来たんだと咎めた反面、来てくれて嬉しいのも本音だ。


 山野の中で、亜月はどんどん特別になっていく。


 山野は亜月の為に、冷凍してあったチキンを、大量に取り出し、
 晩御飯の仕込みにとりかかった。









そして結局、いろいろ話をしているうちに、
 尾辻夫人とミキの希望通り、
 亜月は売り子として参加することになったらしい。




 流石にコスプレはさせられないが、
せっかく男前なのに、ただの私服もどうかということになり、
 執事っぽい格好をさせよう!と盛り上がった女子に負けて、
 亜月のマンションに、山野も一緒にスーツを取りに行くことになった。




 歩いて10分ほどのそこは、外観の立派なマンションがあり、
 中は広めの1DKの部屋だ。



 以前、眠る亜月を送ってきたことがあるので、
ここに来るのは初めてではないが、
 家主が起きている状態で、どうぞ上がって、なんて言われると やはり新鮮だ。





ワードローブを開けると、やはりいいとこの坊ちゃんらしく、
 見ただけで仕立てがいいと分かる、
オーダーメイドのスーツがズラリと揃っている。


これでも実家から持ってきたものの一部だというから小憎たらしい。



 一番、執事っぽい雰囲気のスーツを選んだ。
あとは家に帰って簡単に小物を作れば、それらしく仕上がるだろう。




 「・・・ねぇ亜月くん、明日、ほんとに行くの?朝、すごい早いよ?
たぶん、君が想像している2~30倍は人が多いよ?」

いそいそと支度をする、亜月の横顔に声を掛ける。


 本当に、あのイベントは日本だけではなく、海外からのお客様も多い。


 「大丈夫、紅ちゃんが一緒だもん」


ふんわり笑う恋人の可愛い笑顔に流されそうになりつつも、念を押す。


 「ナ●シカの、王蟲の群れみたいだよ?人間津波だよ?オタク津波だよ!?」

 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・だ、だいじょうぶ・・・だよ・・・たぶん」



 小さい頃に見たことのある映画を思い出したのか、
 少しだけ戸惑ったようだが、それでも紅ちゃんの側にいたい!と言われると、
これ以上は「来るな」とは言えなくなってしまう。







 「ね・・・紅ちゃん・・・」


 亜月が甘えた声を出し、山野によりかかる。


 「あ、亜月くんダメ。みんな待っているから・・・・」


 「大丈夫。だって、ずっとしてない・・・」
 「ずっとって・・・二日じゃないか」



 「紅ちゃん・・・」


 (こ・・・こら・・・その顔は反則・・・!)




 時間がたったら、横尾あたりは気付いてしまう可能性がある。



 「なかなかスーツが見つかんなかったって言えばいいじゃん。
ここでしてくんなかったら、紅ちゃんとこのマンションで、
みんなが寝静まったあとに紅ちゃんを襲うよ、俺」


 「・・・・!!それは・・・だめ!!絶対に・・・ダメ!!」

 亜月なら、本当にやりかねない。
 我儘亜月の発動である。



もし、そんなことになれば
腐女子のセンサーが絶対にエロいオーラをキャッチしてしまうだろう。


 「わ・・・わかったよ・・・」

 甘い亜月の誘惑に負けてしまう。

 不承不承といった体を装ったが、 実は山野もまた、 亜月を抱きたくてしょうがなかった。



 「大丈夫。10分で終わらせよ♪俺らいつも長いから、たまにはいいんじゃね?」

 「あ、亜月!」


 「ふふ・・・紅ちゃん真っ赤・・・」



そのまま、亜月に唇を奪われて、 山野は押し倒される格好になる。



 「ここで・・・俺んちでするの・・・初めてだね・・・・」


 亜月はそう呟くと、嬉しそうに山野のジッパーを下ろしにかかる。




 「そうだね・・・あっ!亜月くん・・・・うっ・・・!」



 「ふふっ・・・紅ちゃん・・・・んっ・・・」



そうして、今年最後に、
 亜月の部屋でHする、というまた新しい思い出が追加された。








 結局、10分では済まずに、
 1時間後に自宅に戻った時の、横尾の視線が少し痛かったが、
なにはともあれ、明日の準備はほぼ完了だ。




 早い明日に備えて、今日は早めに眠りについた。











そうして迎えた当日。




 当の亜月は、朝が早いぶんには大丈夫であったが、 
想像を上回るとんでもない数の人間を目の当たりにして、
 流石に面食らって辟易している様子だ。


 参加者や関係者だけでもかなりの人数だ。
 更に、これ以上にまだまだ増えると伝えると、
 明らかに来てしまったことを後悔しているようだった。


 最初からスーツで来ていた亜月を、見張り番として自分たちのスペースに残し、
 山野たちはコスチュームに着替える為に更衣室へと向かった。




 「・・・はあぁ・・・」


 「どうしたの?」

 思わず溜め息をつく山野に横尾が声を掛ける。



 「なんかさ、亜月くんにこの恰好見せるのが、恥ずかしくって・・・。
ほら、こういうのって、僕たちはカッコイイって思ってるけど、非オタって引くじゃない?」



だから連れてきたくなかったんだ~、と項垂れる山野に、
 横尾から、このバカっプルが!と毒づかれてしまった。





 (・・・亜月くん・・・やっぱ引くよね・・・)


もう一度溜め息をつくと、
 山野は髪をヘアスプレーで真っ赤に染め、
 黄色のカラーコンタクトを装着し、コスプレを完成させた。












 「お、おまたせ・・・・」

スペースに戻ると、亜月は数人の女子に囲まれ、 写真を撮られていた。



やっぱり女好きなだけあって、悪い気はしないようで、
ノリノリでポーズを決めている。


 「亜月・・・」


 名を呼ぶと、こちらに気付いた亜月が振り向く。

 亜月の反応に、緊張で胸がドキドキしてきた。



 「こ・・・紅ちゃん・・・・!?」


まさかここまで本格的にやるとは思っていなかったようで、
 山野を見た亜月の目がギョッと見開かれる。



 「すげぇじゃん!なにこれ!?髪真っ赤!なにこれ、カラコン!?
つーかこれ、紅ちゃんが作ったんだよな!?」


そのまま視線は、山野のコスチュームに移り、
 細かいところまですげぇな、と感心している。



 「つーか・・・胸元・・・開き過ぎじゃね?」


 肌蹴た胸元に目を奪われた亜月が、 恋人の露出を少し咎める。




 「あはは・・・やっぱ・・・引く・・・よね?」

 「ううん・・・似合っててカッコいいよ・・・なんかエロいし」


 正直、この恰好を見られたときのリアクションが怖かったが、
まんざらでもないと言った感じで、 意外にも亜月が褒めてくれた。


 「ありがとう。ほら亜月もこれ・・・」


 小道具のメガネと蝶ネクタイ、手袋を渡し、
 昨夜作った燕尾部分を違和感なく取り付ける。


すると周囲から、きゃあ!とも、うおお!ともとれる感嘆のため息が聞こえた。


 亜月の仕上がりに、周囲の女子がざわめきたっているのかと思いきや、
どうやら、先程からの、山野と亜月のやりとりに、
 彼女らのセンサーが反応したらしく、
 怪しいだとか、生のBLだとか、そんな声が耳に入り、我に返り赤くなる。



ごほん、と咳払いした横尾が、軽く山野を睨みつけた。



その後、ミキと奥さんも合流し、
 二人の強調された胸の谷間にデレていたところを、
 亜月から思いっきり足を踏まれた。


 「痛ってっ・・・!」


 山野の悲鳴とほぼ同時に、
 開始のアナウンスが流れる。


 「走らないでください!!!」


 必死で叫ぶ係員の声もむなしく、
どどどっと押し寄せてる人間津波に、最初は亜月も怯えていたが、
 慣れてくると、きっちり売り子としての役割を果たしていて、
やはり目立つようで、女性がいつもより多く集まってきた。




そしていつもながら、完成された山野お手製のコスチュームは
 いつも好評で、コスプレ広場では大人気だ。



 山野に至っては、色んな人から名刺を貰っていて、
その人気の度合いに亜月が意外そうに驚いている。

そんな亜月に、横尾と尾辻が、
どれほど山野がこの世界で注目されているかを切々と語ったようだ。



 「へぇ・・・・」

 大学では絶対に見られない恋人の光景を、
 亜月は誇らしげに見つめている。

その後も山野は握手を求められたり、サインを求められたり、
 一緒に写真を撮ったりと多忙を極めた。


そして作品も、そこそこ名の知れている面子だけあって、
 全て完売し、盛況のうちにイベントは幕を閉じた。









 帰りは居酒屋で打ち上げをし、そのまま現地解散となった。


 尾辻夫妻は、2日程ホテルに滞在して、
 東京観光をしてから鹿児島へ帰るらしい。





 無事に山野のマンションに着いた時は、もうくたくただった。


 流石に今夜は何もしたくないと、
 風呂も入らずにベッドになだれこむ。



 「亜月く・・・御苦労さまだったね・・・」

 「いや・・・紅ちゃんこそ、大変だったね・・・お疲れ様・・・・」


 軽くキスを交わすと、
そのまま二人とも、手だけ繋いでぐっすりと眠り込んでしまった。




【12話 終わり】 2013/03/05 ホームページ掲載

(↓当時の後書き、またまた残してみました。)


 この辺の内容は、やっぱり一度、完結させて、
 番外編で書いた方が良かったような気が・・・。


ま、まぁ、こうなっちまったもんはしょうがないです(^^ゞ


本当にだらだらした文章ではありますが、もう少し続きそうです。


お付き合いいただければ嬉しいです(*^。^*)


そしてあえての鹿児島アピールです(笑)
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