紹介制のとある秘密の屋敷にて

陽花紫

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男児を求めて

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 とある夫婦は、ある屋敷の力によって一人の娘を授かっていた。
 娘は天使のように愛らしく、シエリにとっては世界の宝そのものであった。

 だが夫は、娘のほほ笑みに目を細めることはあっても、どこか物足りなさを滲ませていた。
「本当は、男児が欲しかったのだがな」
 ついにその本音がこぼれたとき、シエリは夫を鋭く睨んだ。
 それでも夫は聞く耳を持たず、懐から袋を取り出す。
 じゃらりと、金貨が音をたてた。
「もう一人、頼んでこい」
 命令、期待、重圧そこには多くの思惑が潜んでいた。
 しかし娘の未来のため、シエリは静かに金を受け取らざるをえなかった。
 夫では守れないものを、自らが守るのだと。

***

 屋敷の門をくぐった瞬間、胸の奥でなにかがざわめいた。
 一度目は恐怖であったが、今は違う。迷いと、覚悟と、かすかな希望であったのだ。

「おかえりなさいませ。奥様」

 前回とは異なる容姿の青年が、シエリを迎えた。
 白い肌に黒髪の青年は、微笑むと夜の静寂がほどけるような柔らかさを纏っていた。

 案内された離れには、今回も仮面の男たちがずらりと並んでいた。
 沈黙の視線にさらされると、いつもより胸がざわつく。

「今回は、どのようなお悩みで?」

 青年の声は穏やかで、耳に落ちると心が緩んだ。
 シエリは深く息を吸い、すべてを告げていた。

「どうしても、男児が必要なのです」

 青年は一瞬だけ眉を寄せ、嗜めるように口を開いた。
「申し訳ございませんが、性別だけは……。我々の力では、どうすることもできません。どうかそのことを、ご理解ください」
「そうよね……。わかっているわ。でも、もしもの時は……何度でもここへ来ますので」
 自らの未来のためではない。
 娘のため。生まれてくるかもしれない子のため。家が彼らを縛ることがないようにと。
 シエリの覚悟の言葉に、青年は目を細めた。
「では、この中からお選びください。気に入らないようでしたら、貴女の好みに合わせて整えることも可能です」

 シエリは静かに、並ぶ男たちを見つめた。
 だが、前回の男の姿はどこにもなかった。
「この屋敷は流動的でして、人の出入りも多いのです」
 その青年の言葉に、シエリは小さくため息をついた。
 だがその瞬間、ふと一人の視線とぶつかった。
 その男は落ち着きがないかのように、何度もシエリの目を追っていた。体格は他の男と変わらぬものの、シエリはある場所へと目を向ける。
 金色の髪。それは、愛する娘と同じ色であった。

 シエリは無意識のうちに、その男を指していた。

「この方を、お願いするわ」


 手を引かれ移動をした先の小部屋は、初めて訪れたときと全く同じものであった。
 寝台と水差しだけの、目的が明確な静かな空間。

 男は仮面を外し、柔らかな笑みを浮かべて頭を下げていた。
「イレネオと申します。シエリ様、よろしくお願いいたします!」
「どうぞよろしく」
 年はシエリと同じくらいであるというのに、イレネオの笑みは太陽のように明るく、どこか少年らしさが残っていた。
 だがその瞳は、強い期待と希望に満ちていた。
「ずっと、綺麗な人だなと思っていたんです!まさか指名していただけるなんて、ふふっ……。夢のようです」
 穏やかで、人懐っこい声。
 その真っすぐさに、シエリの胸は揺れていた。

 イレネオは迷いなく、その身を強く抱き寄せた。
 包まれる腕の強さに、シエリの心の奥で固く閉ざされていた扉が開いていくような気がした。
「俺の家系は男児ばかりですからね、任せてください。絶対に、男の子を授かりましょうね!」
 その自信は、根拠のないものかもしれない。
 それでもなお、その温かい声は不思議とシエリの不安を溶かしていた。

 寝台へと横たわるその時、シエリは途端に羞恥に襲われていた。
 シエリの今の体型は、出産を経て変わっていたのだ。イレネオにならって静かに衣服を脱ぎ落とすものの、小さな手で隠すようにその身を覆った。
 夫には指摘こそされないが、視線で責められることも多々あった。
 しかしイレネオは、そのようなことを気にすることなく、むしろシエリの手を取ってその身を褒めたたえていた。
「シエリ様のそのお体は、どこも美しいのですね」
 その言葉だけで、心の奥に隠していた傷がゆっくりとほどけていく。
「ふふっ、恥ずかしがらないでくださいよ。もっと、見せてください」
 そのような笑みを浮かべられてしまっては、シエリはその言葉に従わざるをえなかった。
 イレネオは白い手を滑らかに滑らせて、ある部分を静かに包み込んだ。
 わずかに垂れ下がりながらも、そこは大きくイレネオの手の動きによって形を変えていた。
「胸は、まだ……出るんですか?」
 イレネオは目を輝かせながら、シエリの顔を見上げた。
「ええ、少しだけなら……」
「それなら、産まれてくる子のために……。もっと出るようにしなくてはいけませんね」
 そう形のいい唇を舐め上げてから、イレネオは静かにその部分に吸い付いた。
 赤子よりも強く、確かな欲望を持って動くその舌はシエリの奥からにじみ出たわずかな甘さを深く味わう。
 これまでその部分は娘のためだけのものであった。しかし、それは今この場で変わろうとしていたのである。
 イレネオは反対の膨らみも同じように吸い上げると、満足気に微笑んだ。
「とっても、おいしいですよ」
 その言葉に、シエリはつられて笑みを浮かべていた。
 そしてお返しにとばかりに、下半身に擦り付けられたイレネオの熱へと手を伸ばす。
 軽く握っただけであるというのに、その雄の象徴はわずかに質量を増していく。
「ありがとうございます。俺も、たくさん気持ちよくしてあげますからね?」

 いつしかシエリの喉奥からは甘い声が溢れ、イレネオのその熱も硬さを増していく。

 ほとばしる粘液がシエリの細い指を伝う頃、イレネオは熱い息を吐いていた。
 時折口づけを交わしながら、しかし確かな思いを持ってイレネオはシエリの秘所へと指を伸ばす。
 そこはすでにイレネオを迎え入れる準備が整っているかのように、熱く柔らかであった。しかし念には念を入れて、その指でシエリの良い場所を探していく。
「ああっ……!」
 一際大きくその声が響き渡るとき、イレネオはにっこりと目を細めていた。
「ここですね、わかりましたよ」
 執拗に、イレネオはその場所を攻め立てた。やがてシエリの腰は揺れ、小刻みに透明な液体を噴き出すようになってしまう。
「……こんな……、恥ずかしいわ……」
 そのような言葉に、イレネオは手を止めることなく返事をする。
「何も恥ずかしいことなんて、ありませんよ?その証拠に、ほら。ここはこんなに喜んでいるじゃありませんか」
 シエリは顔を赤くしながら、その快楽に耐えていた。
 身体中の水分が抜けてしまうのではないかというほど、シエリが放った液体は辺り一面を濡らしていた。
「シエリ様、よく頑張りましたね。ここからが、本番ですよ?」
 肩で息をするシエリに対し、イレネオは涼しい顔をしてその熱く憤る熱を勢いよく埋め込んだ。
「んんっ……!」
 何年か振りに味わうその熱の感触に、シエリはきつく目を閉じた。
 暗闇の中、燃え滾る熱はまるでその身を貫くかのように激しく動いていた。
 ただ一つの目標に向けて、時に良い部分を擦り当てながら、さらに奥へと進んでいく。
「ここ、わかりますか?」
 イレネオは、シエリの最奥を先端で押し潰す。
 その衝撃に、思わずシエリの身は跳ねてしまう。
 がくがくと脚は震え、遥か昔のあの時以上の快感がその身を襲っていたのだ。
「ここに、たっぷりと注いであげますからね」
 強く唇に吸い付いた後、イレネオはシエリの身を抱きしめながら勢いよく種を放った。
 一度目、二度目、三度目とその回数が増えていく中で、シエリは息をすることも忘れてその熱の甘さに酔いしれていた。
「シエリ様、まだですよ?」
 横向きになりながら、イレネオはなおもその奥を目指す。
「んうううっ!」
 いつしかシエリは獣のような呻き声しかあげられないでいた。言葉にする暇もないほどに、イレネオの動きは俊敏であったのだ。
 何度も強く腰を打ち付けたかと思いきや、内部を掻き混ぜる。そして奥へと擦り付けるように再び動き出してはその種を放つ。
 胸を鷲掴みにされれば、内部の熱に押し出されるかのようにその液体は勢いよく噴き出した。
「ああっ!……もう、だめぇ……!」
 再び秘部から、そして胸から、シエリは溢れんばかりの思いを解放していた。
 いつしかその身を汗が伝い、イレネオは静かにそれを舐め上げた。ざらりとしたその感触でさえも刺激となり、シエリの身はさらに種を求めようと締め上げる。
「シエリ様、いいですよ。すごく、いいです。もっとあげますからね?」

 何度、その種は放たれたことであろうか。
 シエリの腹部はわずかに膨らみ、まるですでに子を宿しているかのようでもあった。
 イレネオは腹部に手を這わせながら、ゆっくりと撫でさすった。
「んあああっ!」
 しかしその手さえも、シエリにとっては刺激でしかなかった。
「……この調子なら、すぐに……。どうか、俺に似た子を……産んでくださいね?」
 イレネオは最後とでもいうように、シエリの腰を掴んで勢いよくその種を植え付けた。

 しばらくふたりはそのままの姿勢で、ただ互いの呼吸だけを感じていた。
 少しでも身じろぎしてしまえば、せっかくの種が全て溢れてしまいそうでもあったのだ。
「イレネオ……」
 シエリがその名を呼べば、イレネオは静かに頬に唇を寄せた。
 ゆっくりと、その身は抜け出ていく。
 ごぼりと音をたてて、その液体はこぼれ落ちる。
「……もったいないわ」
 シエリはそう言いながら、腿を伝う種を指ですくい静かに口に含んでいた。
 若々しい雄の香りと、甘い欲望の味がした。
 イレネオはその様子を、笑みを深めながら見つめていた。
「やはり、シエリ様はお美しい……」


 事後、シエリはにこやかな笑みを浮かべながら、その金を渡していた。
 イレネオはそれを受け取ると、そっとその頬に向けて唇を押しあてた。
「きっと、大丈夫ですよ。でも、もし女の子だった時はまたすぐに来てくださいね?俺、頑張りますから!」
 そのような言葉がシエリの胸に深く刺さり、温もりとして広がった。

***

 その後、シエリは待望の男児を出産していた。
 その髪色もやはり金色で、イレネオの言葉通りその顔立ちはシエリには似ていなかった。
 しかし夫は上機嫌で褒め、娘は弟を抱いて大いにはしゃいでいた。家の中は、大いなる幸せで満たされていた。

 シエリはそっと、息子の髪を撫でる。
 陽の光を浴びて輝くその色は、あの笑みを思い出させるようでもあった。
「……ありがとう」
 胸の奥で、静かにそう呟いた。
 もはや、後悔はなかった。
 シエリは自らの家族を守るというただひとつの願いを、ようやく叶えることができたのだから。

END
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