元悪役令息の僕は今世でたった一つの愛に揺れる

陽花紫

文字の大きさ
8 / 8

番外編 その後の僕たち

しおりを挟む
 あれから僕とユウトは、いわゆるラブラブバカップルというやつになっていた。

 今となっては堂々と手を繋いで学内を歩いて、顔を合わせて互いに笑う。
 メッセージアプリの履歴は、僕からの好きという文字で埋まっている。

 誰かに見せる予定もないのに、何かと記念日を作っては、どうでもいいことで写真を撮ったり、どうでもいいことで喧嘩をして、どうでもいいことで仲直りをしていたんだ。

 僕にはいつでもユウトがきらきらと輝いているように見えていたし、ユウトにも僕が可愛らしい存在であるかのように見えていた。

 でもそれは全て、僕とユウトの世界の中だけで。

 客観的に見れば、僕たちはどこからどう見ても、もさいゲイのままだった。
 
 街を歩いていても、誰も僕たちをカップルだとは思わないだろう。
 というか、ゲイだとも思わないのかもしれない。
 よくて、地味な男二人。悪くて、冴えない友達同士だ。
 だけど、それでも僕たちは幸せだ。

 そのようなことを呟いたら、ユウトは真面目な顔をしてこう言った。
 今、僕たちはベッドの上でキスを交わした後の幸せな余韻に浸っていたんだ。

「でもさ、派手なカップルって、別れるのも派手だと思うんだ……」
「……それ、どこ情報?」
「ただの偏見」

 僕は、少し笑ってしまった。
 ユウトの手が、僕の髪を撫でる。

「俺たちはさ……」
「うん」
「別れるときも、静かそうだな」
「そうかな……?僕、ぜったい泣いて叫んで暴れると思う」
「暴れないで」

 そう言いながら、ユウトは僕の手を強く握った。

「もちろん、別れないけど」

 そしてちゅっと音をたてて、僕の頬にキスをした。

「あー、もう……」

 ――ずるい。そういうところが、本当にずるい。

 僕は前世では、もっと派手だった。衣服も煌びやかで、住んでいた屋敷も豪華で。
 周りの男たちにも華があった。

 でも、今はどうだ。
 地味でもさくて、誰も僕たちのことを見もしない。

「好き」

 そして僕たちは、飽きもせずに唇を重ねていた。

「好き、ユウト」

***

 この世界では、ユウトだけが僕のことをずっと見ていてくれている。
 カメラのレンズ越しに、隣から。
 寝起きの顔を見て、ぼんやりと笑う。

「リオ。今日の写真、見たい?」
「どれ?」
「これ」

 画面の中の僕は、少しだけ間抜けな顔をして飲み物を飲んでいた。

「ちょっと、こんなの撮らないでよ」
「可愛い顔してたからさ」
「どこが……」

 だけど、なぜだか幸せそうな顔をしていた。

「全部、可愛い」

 ユウトは静かにそう言って、僕の肩に寄りかかる。
 周囲から見れば、それはただもさい男二人が近づいているだけ。
 でも、僕にはわかるんだ。
 これは、キスの代わりなんだって。

 今は学内で、周りにも大勢の人がいた。
 だから、こうやって人がいなくなるまで、ずっとくっついていたんだ。

「帰ろうか」
「うん」

 そして、静かにキスをした。

END
しおりを挟む

この作品は感想を受け付けておりません。

あなたにおすすめの小説

イケメンダブルセンターとアンチ>ファンな平凡な俺

スノウマン(ユッキー)
BL
アイドルグループ【オーバーウェルミング】は圧倒的な歌唱力の深山影月、圧倒的なパフォーマンス力の漣陽太、そして圧倒的な平凡力な俺間桐真緒の3人で結成されている。  大人気の二人と違いアンチしかいない俺だが、メンバーからもファンからも愛される日が果たしてくるのか!?

片思いの練習台にされていると思っていたら、自分が本命でした

みゅー
BL
オニキスは幼馴染みに思いを寄せていたが、相手には好きな人がいると知り、更に告白の練習台をお願いされ……と言うお話。 今後ハリーsideを書く予定 気がついたら自分は悪役令嬢だったのにヒロインざまぁしちゃいましたのスピンオフです。 サイデュームの宝石シリーズ番外編なので、今後そのキャラクターが少し関与してきます。 ハリーsideの最後の賭けの部分が変だったので少し改稿しました。

好きなあいつの嫉妬がすごい

カムカム
BL
新しいクラスで新しい友達ができることを楽しみにしていたが、特に気になる存在がいた。それは幼馴染のランだった。 ランはいつもクールで落ち着いていて、どこか遠くを見ているような眼差しが印象的だった。レンとは対照的に、内向的で多くの人と打ち解けることが少なかった。しかし、レンだけは違った。ランはレンに対してだけ心を開き、笑顔を見せることが多かった。 教室に入ると、運命的にレンとランは隣同士の席になった。レンは心の中でガッツポーズをしながら、ランに話しかけた。 「ラン、おはよう!今年も一緒のクラスだね。」 ランは少し驚いた表情を見せたが、すぐに微笑み返した。「おはよう、レン。そうだね、今年もよろしく。」

兄貴同士でキスしたら、何か問題でも?

perari
BL
挑戦として、イヤホンをつけたまま、相手の口の動きだけで会話を理解し、電話に答える――そんな遊びをしていた時のことだ。 その最中、俺の親友である理光が、なぜか俺の彼女に電話をかけた。 彼は俺のすぐそばに身を寄せ、薄い唇をわずかに結び、ひと言つぶやいた。 ……その瞬間、俺の頭は真っ白になった。 口の動きで読み取った言葉は、間違いなくこうだった。 ――「光希、俺はお前が好きだ。」 次の瞬間、電話の向こう側で彼女の怒りが炸裂したのだ。

バイト先に元カレがいるんだが、どうすりゃいい?

cheeery
BL
サークルに一人暮らしと、完璧なキャンパスライフが始まった俺……広瀬 陽(ひろせ あき) ひとつ問題があるとすれば金欠であるということだけ。 「そうだ、バイトをしよう!」 一人暮らしをしている近くのカフェでバイトをすることが決まり、初めてのバイトの日。 教育係として現れたのは……なんと高二の冬に俺を振った元カレ、三上 隼人(みかみ はやと)だった! なんで元カレがここにいるんだよ! 俺の気持ちを弄んでフッた最低な元カレだったのに……。 「あんまり隙見せない方がいいよ。遠慮なくつけこむから」 「ねぇ、今どっちにドキドキしてる?」 なんか、俺……ずっと心臓が落ち着かねぇ! もう一度期待したら、また傷つく? あの時、俺たちが別れた本当の理由は──? 「そろそろ我慢の限界かも」

殿堂入りした愛なのに

たっぷりチョコ
BL
全寮の中高一貫校に通う、鈴村駆(すずむらかける) 今日からはれて高等部に進学する。 入学式最中、眠い目をこすりながら壇上に上がる特待生を見るなり衝撃が走る。 一生想い続ける。自分に誓った小学校の頃の初恋が今、目の前にーーー。 両片思いの一途すぎる話。BLです。

君の恋人

risashy
BL
朝賀千尋(あさか ちひろ)は一番の親友である茅野怜(かやの れい)に片思いをしていた。 伝えるつもりもなかった気持ちを思い余って告げてしまった朝賀。 もう終わりだ、友達でさえいられない、と思っていたのに、茅野は「付き合おう」と答えてくれて——。 不器用な二人がすれ違いながら心を通わせていくお話。

【完結】期限付きの恋人契約〜あと一年で終わるはずだったのに〜

なの
BL
「俺と恋人になってくれ。期限は一年」 男子校に通う高校二年の白石悠真は、地味で真面目なクラスメイト。 ある日、学年一の人気者・神谷蓮に、いきなりそんな宣言をされる。 冗談だと思っていたのに、毎日放課後を一緒に過ごし、弁当を交換し、祭りにも行くうちに――蓮は悠真の中で、ただのクラスメイトじゃなくなっていた。 しかし、期限の日が近づく頃、蓮の笑顔の裏に隠された秘密が明らかになる。 「俺、後悔しないようにしてんだ」 その言葉の意味を知ったとき、悠真は――。 笑い合った日々も、すれ違った夜も、全部まとめて好きだ。 一年だけのはずだった契約は、運命を変える恋になる。 青春BL小説カップにエントリーしてます。応援よろしくお願いします。 本文は完結済みですが、番外編も投稿しますので、よければお読みください。

処理中です...