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パン屋のクロとコルネの精霊
~人外、擬人化、ファンタジー~
夢であった小さなパン屋を、クロは営んでいた。
その日も朝の光を浴びながら、新商品であるコルネの生地をせっせと仕込んでいたのである。
しかしその胸のうちには、言いようのない不安と倦怠感がじっとりと根を張っていた。
このところ人気が爆発したこの焼きたてコルネは、彼の手を連日しびれさせるほど働かせていたのであった。
生地を巻き、型に乗せ、焼きあがった後にクリームを絞る。
ただそれだけのことを、延々と。
客の笑顔も、賑やかな声も、嬉しいはずであるというのに、どこか胸の奥が虚しくもあった。
夜になっても、その仕込みは終わらなかった。
極端な睡眠不足のせいであろうか、生地を並べていたクロの耳に、ふと誰かの声が響く。
「……おはよう、クロ!」
思わずクロは、手を止めてしまう。
誰もいないはずの厨房には、白い粉と甘い香りが満ちているだけであったのだ。
「いつもありがとう。もっと、早く焼いてくれよな?」
しかし確かに、声がしたのだ。
それは、手にした生地そのものから響いているかのようでもあった。
「ここまで疲れてるんなら、もうおしまいだ……」
そのように苦い笑みを浮かべながら、クロはオーブンに向けて生地を入れた。
その熱の揺らぎが、ふと近づいてくるように感じてしまう。
焼きあがったコルネを取り出した瞬間、驚くべきことに白い蒸気の向こうからひとりの青年が姿を現したのであった。
しかも青年は、全裸であった。
くるりと巻いた、茶色の髪。その肌からは焼きたてのパンのように温かい香りが漂い、砂糖をまぶしたような白い瞳、その唇は甘い艶を帯びていた。
その素肌を隠そうともせずに、男はクロの目を見て微笑んだ。
クロは、声を出すことができなかった。
「……焼いてくれて、ありがとな!」
男は無邪気に笑っていた。少年の面影をわずかに残したかのような、しかし少しだけ拗ねたような、妙に愛らしい笑みでもあった。
「クロ、俺だよ、俺!コルネ」
男は胸に手を当てて、軽く頭を下げてみせる。
その動作に合わせて、ふわりとバターの甘い匂いが漂う。
クロは、笑うほかなかった。
「幻覚、だよな?やばい、俺……疲れすぎだ」
「幻覚かどうかなんて、どっちだっていいだろ?ほら、」
そう男はクロに近づき、あたたかな指でその頬に触れていた。
それは焼きあがったばかりの表面のように、ふわりと柔らかな感触でもあった。
「いま、触ったのか……。……お前、ほんとに……」
思わずクロはその手を掴み、しげしげと眺めていた。
「そうだよ。俺、クロに焼かれて生まれたんだ!」
冗談めかした言葉であるというのに、なぜだかクロの胸に落ちたその響きは、妙にあたたかく染み渡る。
疲れ切った心が、柔らかく抱きしめられるような温もりでもあったのだ。
「それで……、頼みがあるんだ」
男は一歩後ろに下がると、まっすぐな瞳をクロへと向ける。
「クリーム、入れてくれよ」
その声は、かすかに震えていた。
その頬は焼きたてのコルネと同じ薄い飴色で、肩も指先もわずかに熱を帯びていた。
「クリーム?」
しかしクロは、言葉の意味を理解することができないでいた。
いつものように絞り器に手を伸ばそうとするものの、違うと強く言われてしまう。
「だから、クロのクリームがほしいんだ!俺のナカに、注いでほしい」
そして男は、あろうことかクロに向けて臀部を突き出していた。
手のひらによって広げられた中央に見えるのは、確かにコルネの穴であったのだ。
「……入れてよ、ここに」
そのような熱い眼差しと、甘く香る吐息に思わずクロの指は吸い寄せられるかのように腰元をなぞる。
次の瞬間、視界は大きく揺らぎ気づけばクロはズボンを下ろしていた。
すでにそこは硬く張り詰めており、ひくひくとその熱を求めて震える箇所にクロは静かに埋め込んだ。
「……っ、これこれっ!」
男のその身は焼きたてのコルネそのものであるかのように熱を帯び、その内部もさることながらとても柔らかなものであった。
腰を揺らすたびに、甘い蒸気がふわりと立ちのぼる。
「あっ……、あっ……」
男の喘ぎ声も次第に甘さを増していき、クロは無意識のうちにその背に覆いかぶさるようにして胸元の飾りを摘まんでいた。
「ああっ!」
するとたちまち内部が激しく収縮を繰り返し、クロはあまりのその刺激に思わず我を忘れてしまいそうになる。
「クロのクリーム、ぜんぶっ……ちょうだい……?」
その声に応えるかのように、クロは勢いよく白く甘いその想いを注ぎ込む。
確かにその身を満たす感覚があり、わずかな笑みを浮かべてしまう。
「クロ、まだ足りないよ。もっと、もっと……!」
クロがその全てを吐き出すまで、男は容赦しなかった。
時には台の上に上がり、互いに抱き合うような姿勢でクリームを放つ。
時には男が黒の上に跨り、余すことなくクリームを絞り上げていたのだ。
全てを終えた時、クロは身も心も枯れ尽きていた。
そのようなクロの姿を目にして、男は目を細めながらクロの髪を撫でていた。
「ごめん、すっごく美味しかったからさ……。つい、」
そして額に、小さな口づけを落としていた。
それはまるで、恋人であるかのような口づけでもあったのだ。
クロは息を整えることすらできず、ただその甘い熱に抱かれていた。
「これからも……、よろしくな?」
しん、とその音は消えてしまう。
気づけば、クロは店の厨房で一人、床に座っていた。
「夢、だったのか?」
しかし肌寒い感触に、思わず下を見る。
むき出しの下半身はそのままに、しかしその手はまだじわりと温かく甘い香りが残っていた。
クロは静かに息をつき、立ち上がる。
コルネの生地を手に取ると、あの笑みが蘇るような気がした。
「……焼くよ、これからも」
そう、優しい声で呟いてみせた。
今日も、小さなパン屋に朝がくる。
クロはコルネを作りながら、時折その胸を押さえてしまう。
あの男の唇、胸に感じた鼓動、抱きしめた時の柔らかさ。その全てを思い返し、密かに笑う。
オーブンの奥でふくらみはじめたコルネが、かすかに揺れたような気がしていた。
END
夢であった小さなパン屋を、クロは営んでいた。
その日も朝の光を浴びながら、新商品であるコルネの生地をせっせと仕込んでいたのである。
しかしその胸のうちには、言いようのない不安と倦怠感がじっとりと根を張っていた。
このところ人気が爆発したこの焼きたてコルネは、彼の手を連日しびれさせるほど働かせていたのであった。
生地を巻き、型に乗せ、焼きあがった後にクリームを絞る。
ただそれだけのことを、延々と。
客の笑顔も、賑やかな声も、嬉しいはずであるというのに、どこか胸の奥が虚しくもあった。
夜になっても、その仕込みは終わらなかった。
極端な睡眠不足のせいであろうか、生地を並べていたクロの耳に、ふと誰かの声が響く。
「……おはよう、クロ!」
思わずクロは、手を止めてしまう。
誰もいないはずの厨房には、白い粉と甘い香りが満ちているだけであったのだ。
「いつもありがとう。もっと、早く焼いてくれよな?」
しかし確かに、声がしたのだ。
それは、手にした生地そのものから響いているかのようでもあった。
「ここまで疲れてるんなら、もうおしまいだ……」
そのように苦い笑みを浮かべながら、クロはオーブンに向けて生地を入れた。
その熱の揺らぎが、ふと近づいてくるように感じてしまう。
焼きあがったコルネを取り出した瞬間、驚くべきことに白い蒸気の向こうからひとりの青年が姿を現したのであった。
しかも青年は、全裸であった。
くるりと巻いた、茶色の髪。その肌からは焼きたてのパンのように温かい香りが漂い、砂糖をまぶしたような白い瞳、その唇は甘い艶を帯びていた。
その素肌を隠そうともせずに、男はクロの目を見て微笑んだ。
クロは、声を出すことができなかった。
「……焼いてくれて、ありがとな!」
男は無邪気に笑っていた。少年の面影をわずかに残したかのような、しかし少しだけ拗ねたような、妙に愛らしい笑みでもあった。
「クロ、俺だよ、俺!コルネ」
男は胸に手を当てて、軽く頭を下げてみせる。
その動作に合わせて、ふわりとバターの甘い匂いが漂う。
クロは、笑うほかなかった。
「幻覚、だよな?やばい、俺……疲れすぎだ」
「幻覚かどうかなんて、どっちだっていいだろ?ほら、」
そう男はクロに近づき、あたたかな指でその頬に触れていた。
それは焼きあがったばかりの表面のように、ふわりと柔らかな感触でもあった。
「いま、触ったのか……。……お前、ほんとに……」
思わずクロはその手を掴み、しげしげと眺めていた。
「そうだよ。俺、クロに焼かれて生まれたんだ!」
冗談めかした言葉であるというのに、なぜだかクロの胸に落ちたその響きは、妙にあたたかく染み渡る。
疲れ切った心が、柔らかく抱きしめられるような温もりでもあったのだ。
「それで……、頼みがあるんだ」
男は一歩後ろに下がると、まっすぐな瞳をクロへと向ける。
「クリーム、入れてくれよ」
その声は、かすかに震えていた。
その頬は焼きたてのコルネと同じ薄い飴色で、肩も指先もわずかに熱を帯びていた。
「クリーム?」
しかしクロは、言葉の意味を理解することができないでいた。
いつものように絞り器に手を伸ばそうとするものの、違うと強く言われてしまう。
「だから、クロのクリームがほしいんだ!俺のナカに、注いでほしい」
そして男は、あろうことかクロに向けて臀部を突き出していた。
手のひらによって広げられた中央に見えるのは、確かにコルネの穴であったのだ。
「……入れてよ、ここに」
そのような熱い眼差しと、甘く香る吐息に思わずクロの指は吸い寄せられるかのように腰元をなぞる。
次の瞬間、視界は大きく揺らぎ気づけばクロはズボンを下ろしていた。
すでにそこは硬く張り詰めており、ひくひくとその熱を求めて震える箇所にクロは静かに埋め込んだ。
「……っ、これこれっ!」
男のその身は焼きたてのコルネそのものであるかのように熱を帯び、その内部もさることながらとても柔らかなものであった。
腰を揺らすたびに、甘い蒸気がふわりと立ちのぼる。
「あっ……、あっ……」
男の喘ぎ声も次第に甘さを増していき、クロは無意識のうちにその背に覆いかぶさるようにして胸元の飾りを摘まんでいた。
「ああっ!」
するとたちまち内部が激しく収縮を繰り返し、クロはあまりのその刺激に思わず我を忘れてしまいそうになる。
「クロのクリーム、ぜんぶっ……ちょうだい……?」
その声に応えるかのように、クロは勢いよく白く甘いその想いを注ぎ込む。
確かにその身を満たす感覚があり、わずかな笑みを浮かべてしまう。
「クロ、まだ足りないよ。もっと、もっと……!」
クロがその全てを吐き出すまで、男は容赦しなかった。
時には台の上に上がり、互いに抱き合うような姿勢でクリームを放つ。
時には男が黒の上に跨り、余すことなくクリームを絞り上げていたのだ。
全てを終えた時、クロは身も心も枯れ尽きていた。
そのようなクロの姿を目にして、男は目を細めながらクロの髪を撫でていた。
「ごめん、すっごく美味しかったからさ……。つい、」
そして額に、小さな口づけを落としていた。
それはまるで、恋人であるかのような口づけでもあったのだ。
クロは息を整えることすらできず、ただその甘い熱に抱かれていた。
「これからも……、よろしくな?」
しん、とその音は消えてしまう。
気づけば、クロは店の厨房で一人、床に座っていた。
「夢、だったのか?」
しかし肌寒い感触に、思わず下を見る。
むき出しの下半身はそのままに、しかしその手はまだじわりと温かく甘い香りが残っていた。
クロは静かに息をつき、立ち上がる。
コルネの生地を手に取ると、あの笑みが蘇るような気がした。
「……焼くよ、これからも」
そう、優しい声で呟いてみせた。
今日も、小さなパン屋に朝がくる。
クロはコルネを作りながら、時折その胸を押さえてしまう。
あの男の唇、胸に感じた鼓動、抱きしめた時の柔らかさ。その全てを思い返し、密かに笑う。
オーブンの奥でふくらみはじめたコルネが、かすかに揺れたような気がしていた。
END
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