静電気のライと俺

陽花紫

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 ふわふわとした意識のなかで、俺はベッドの上に移動してライに抱かれていた。

 ライの熱もまた大きくて、硬くて。
 これまでの刺激とは比べ物にならないくらい凶暴で。

 かすかな火花を纏いながら、俺の奥深くに何度も何度も埋められた。

 肉と肉がぶつかり合う音に加えて、ばちんばちんと電気が爆ぜる音だけが響いていた。

 俺はだらしなく口を開けて、ライに向けてこの想いを叫んでいたような気がする。

「ライっ、好きだっ……!大好きなんだ……!」

 ライは何も言わなかったけれど、それでも俺の腰を離しはしなかった。
 そして荒い息つぎの合間に、ふっと笑みを浮かべるような音があった。

「求めろ」

 そう低く呟かれた言葉に、俺は絶頂を迎えてしまう。
 吐き出した精はとても多く、それでもこの身はライを求めて震えていた。

 まるで満たされることのないように、何度も何度も俺はライのことを求めていた。

 やがて単調な刺激では満足できなくなってしまって、ライにあることを願い出ていた。

 四つん這いの姿勢になって、静かにライを振り返る。

「叩いて、……もっと、強く!」

 ぱん、と。乾いた音が響き渡る。
 俺のこの身は、電流だけでは飽き足らず直接的な刺激も求めるようになってしまっていたんだ。

 臀部を何度もその大きな手で叩かれながら、俺は歓喜の声をあげていた。

「ライ、……っ、いいっ!……いいんだ……!」

 ついには背中も、肩も、腰も、ぶるぶると揺れるこの熱までもその大きな手のひらで愛されて。
 俺は涙を流しながら、限界を迎えていた。

 その痛みに裂けてしまいそうな奥の感覚に、じんじんと伝わるひどく熱いこの愛。
 俺は満面の笑みを浮かべながら、渾身の力をこめてライの熱を絞り上げる。

「……っ、……!」

 ひときわ大きなその震えに、ライもまた達したのだと俺は知る。

 ずるりと引き抜かれる際も、わずかにぱちりと光が散った。

 俺は息も絶え絶えに、ライの顔を見つめていた。

 その瞳には、燃え上がる炎のようなものが浮かんでいるような気がした。

***

 それからも、俺は時折ライに抱かれていた。

 どうしようもなく寂しくなった時、仕事で疲れ果てた時、その肌に触れていたらなんとなくの流れで。
 ライはいつでも俺の心を満たすかのように、時には激しく時には優しく抱いてくれていた。

 ライの手形に真っ赤に染まったこの肌を鏡に映して、俺は一人静かに笑う。

「何をしている、早く風呂に入れ」
「わかったよ……。ライ、ありがとう」
「礼を言われるようなことはしていない」

 相変わらず口調は素っ気ないものでもあたけれど、その口の端はどちらとも上がっていた。


 春が近づくころ。
 ライは窓辺でぼんやりと外を見つめることが多くなった。

「春になったら、消えるんだろう?」

 そう俺が問いかけると、ライは顔を背けて噛みつくようにこう告げた。

「……ああ、消えるとも。お前から離れたら、もうこの姿形は保てなくなるのだから」

 胸が、ひどく痛んだ。
 それでも、俺は笑ってみせた。
 この震えを隠すかのように。

「楽しかったよ、ライ。ありがとう」

 するとライが近づいてきて、乱暴に俺の腰を抱き寄せた。

 ばちん、と大きな電流がはしる。
 それでも俺は、その大きな背中を離そうとはしなかった。

 腕の中が、ひどく熱い。
 肌が触れるたびに、びりびりと響く。

「そのような顔を、するな」

 耳元に落ちた低い声は、ひどく震えていた。
 肩に触れる太い指先もかすかに震えていて、ますます俺の胸は締め付けられてしまう。

「お前は本当に、愛いやつだ」

 その呟きに、思わず俺は泣きそうになって唇を強く噛みしめた。

 そして、俺たちは最後の口づけを交わした。
 何度も角度を変えて、その熱を忘れないように深く激しく。

 大粒の涙が口元を濡らしたその次の瞬間、勢いよく光が弾けて、世界は真っ白に染まっていた。

***

 目を覚ましたとき、そこにライの姿はなかった。
 部屋のどこを探しても、見つかりはしなかった。

 シンクに残った洗い物、乾ききらない洗濯物。
 確かにそれは、ライがここにいたことを示していた。

 それらに触れると、小さくぱちりと電気が散るような気がした。

 目元を擦って、前を向く。
 俺はもう、泣かないと決めていた。

 泣くと、ライがその顔に眉を寄せてしまいそうな気がしていたから。

 けれど胸の奥で、言いようのない電気のようなものがちりちりと疼いていた。
 それは孤独とは違う、待ちつづけるという痛みでもあったんだ。


 俺は静かに、窓の空を見上げていた。

「……ライ」

 そう呼ぶ声は、白く溶けて消えていく。
 もちろん、返事はない。
 けれど胸の奥には、あたたかいものが残っている。

 ふと、指先に感じるわずかな電流。

 俺は、来年の冬を楽しみにしている。
 また、愛しい君に会うために。

END
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