共依存

第1章 元カレ

くし屋③

歩き始めてから30分経った頃、ようやく目的地に着いた。
普通に歩けば15分で着く距離だが、2人で歩くと30分もかかる。
マイペースな2人だ。

「いらっしゃいませー！」

店のドアを開け聞こえてきたのは姫華の元カレの声。

「巧太！」

カウンターが5席、4人がけのテーブルが4席とこじんまりとしているが、
居酒屋なだけあって賑やかな店内に嬉しそうな姫華の声が響く。

「あー、お前か。
いつもの席空けてるから勝手に座って。」

それに対してめんどくさそうな巧太の声。
姫華はいつものことのように何も気にしていない様子で、
彼女達のいつもの席のカウンターに座った。
その席は働いている巧太を1番よく見える場所で、
働いている巧太に喋りかけれる場所だ。

「いらっしゃい！カシスソーダでよかったやんね？」

と言いながら飲み物を2つ店長が持ってきてくれた。
今日来ることは巧太から伝わっていたみたいだ。
この店の常連なのでいつもサービスなどをしてくれている。

「店長！ありがとー！
相変わらずのイケメンですねー！」

40代前半なのだが顔立ちが整っており、
いつも優しくしてくれる店長のことが彼女達は大好きなのだ。
もちろん、異性としてではなく人間として。