乳だけ立派なバカ女に婚約者の王太子を奪われました。別にそんなバカ男はいらないから復讐するつもりは無かったけど……

三葉 空

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第20話 お詫びの時間

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 兄弟は睨み合う。私はそれを、見守る他ない。

「おい、さっきからカッコつけてんじゃねえよ、クソ野郎が。お前がなぁ~、お前さえいなければ、俺はなぁ~!」

「国王になれていたか?」

「ああ、そうだよ!」

「けど、お前は自分の身勝手さで、有能なシアラを切り捨てた。せっかく、父上と母上が必死に彼女の両親に頼み込んでくれたのに」

「まあ、確かにシアラは有能だよ。何だかんだ、美人でスタイルも良いし。けど……マミの方がおっぱいデカいんだもん!」

 シーン、と静まり返る。誰しもが『何言ってんだ、こいつ?』みたいな顔をしている。

 当人のマミさんは、いつの間にか姿を消していた。賢明な判断だと思います。

 もし私が彼女の立場なら、もう生きていられません。

「だから、せっくすとかするのめっちゃ気持ち良かったしな! しかも、俺たった1発で当てたんだぜ? さすが王族だろ? まあ、マミは何か流産しちゃったんだけどさ~」

「お前は本当にバカだな。いや、愚かだ」

「はああぁ~?」

「大切な我が子の命が失われたのに、よくそんなヘラヘラと語れるな。神経を疑うぞ」

「う、うるせえ! まだ生まれる前だから良いだろうが!」

 バキッ!

「……えっ?」

 どたっと尻もちを突いたホリミック様は、呆然とする。

 殴られた頬を撫でながら。

「いッ……痛いじゃないか!?」

「今までお前が傷付けた来た人たちの痛みに比べれば、マシだろ。むしろ、足りないくらいだろ?」

「この……おい、みんな見たか!? こんな暴力野郎が国王だなんて、笑っちゃうだろ? お前は王の器じゃないんだよ! なあ、みんなもそう思うだろ!?」

 ホリミック様が喚きますが、誰も同意を示しません。

「な、何でだよ……」

「ホリミック」

 尻もちをついたままの彼にゼリオル様は歩み寄る。

「ま、また暴力を振るうつもりか?」

「すまなかった」

「えっ?……ハッ、自分の罪を認めるか?」

「ああ。お前みたいなバカを信じて、国を託したのが間違いだった。お前はバカでワガママだけど、心根は優しいやつだと思っていたが……どうやら、見込み違いだったようだ」

「う、うるせぇ!」

 立ち上がったホリミック様は、ゼリオル様に殴りかかります。

 けど、ひょいと軽い身のこなしで避けられた。

「逃げんな!」

 再び向かって行きますが、またしてもあっさりとかわされてしまう。

「ホリミック、最後に兄として、お前に頼みがある」

「あぁ!?」

「シアラに、ひいては国民のみなに謝れ。お前の今までの愚行の数々を恥じて、詫びろ」

 ゼリオル様に真っ直ぐ言われて、ホリミック様はたじろぐ。

「うっ……い、嫌だ。何で俺が、謝らないといけないんだ?」

「そんなに謝りたくないのか?」

「ああ、そうだよ! 謝るつもりなんてないね!」

「……そうか。兄として、最後の頼みだったのに」

「ふん、うるせえよ!」

「じゃあ、命令だ」

「はっ?」

 ポカンとするホリミック様を素通りして、国王がゼリオル様に歩み寄る。

「これをお前に、次期国王に」

 王冠を授けた。ゼリオル様は、丁重に受け取る。

「しかと、頂戴いたします」

 ゼリオル様は王冠を載せた。

「あっ……あっ……」

 ホリミック様は口をパクパクとしている。

「改めて、国王として命じる。ホリミック、今までの愚行を謝罪しろ」

「いや、でも……」

「王の命令に逆らうのか? いくら兄弟でも、許されないぞ?」

 普段の柔らかで飄々とした彼とは違う、正に威厳漂う王の風格に、私はゾクゾクしてしまいます。いえ、決して変な趣味に目覚めた訳ではなく……

「ぐっ……!」

 ホリミック様は、ひどく歯ぎしりをした。それから……

「……どーも、すみませんでした」

「そんな詫びの仕方があるか!」

「ひッ! そ、そんな大声で怒鳴るなよ」

「頭が高い、平伏せ。俺たち王族とシアラと国民のみなさまに」

「あ、兄上とシアラはまだしも、何で下らない庶民共にまで……」

「シュッ!」

 ゼリオル様は、目にも止まらぬ速度で蹴りを繰り出す。

 それはホリミック様に命中しませんが、風圧にすっかり当てられてしまいます。

「風穴を開けてやろうか?」

 冷酷に告げるゼリオル様を前に、ホリミック様はがくりと両膝を突きます。

「……申し訳ありませんでした」

 深々と頭を下げる。

「父上と母上に」

「……申し訳ありませんでした」

 深々と頭を下げる。

「ふん」

「はぁ」

 両親はため息を漏らすばかり。

「はい、次はシアラに」

 ゼリオル様が言うと、ホリミック様は膝を突いたまま、私の方を見た。

「……申し訳ありませんでした」

 深々と頭を下げる。

「あ、はい」

「シアラ、もっと言ってやっても良いぞ? まあ、このバカには何を言っても時間の無駄だろうけど」

「えっと……じゃあ、1つだけ。本当に、あなたはゼリオル様の弟なのですか?」

「ガッ……ガガガガガ」

「ぶふッ」

 壊れたブリキみたいな音を発する弟の背後で、兄は顔を逸らし口を押えて笑いを堪えている。

「おい、ホリミック。最後に国民のみなさまに詫びろ」

 また、ゼリオル様が落ち着き払った声で言う。

 ホリミック様はまた膝を突いた姿勢のまま、国民のみなさまと向き合う。

「ぐぎぎ……な、なぜ王族のこの俺が……」

「詫びろ! ホリミック!」

 また兄に一喝を入れられて、

「も……申し訳ありませんでしたあああああああああああああああぁ!」

 半ばキレ気味に額を地面にこすりつける勢いで、全国民に向けて謝罪をされました。


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