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第18話 姉妹の再会
~アメリア視点~
こんな絶望と屈辱を味わったのは、人生で初めてだった。今までは、のうのうと楽しく生きて来られた。それもこれも、あたしが可愛いから。確かに、それは事実で、周りの男達もそのことは認めていた。けど、あたしのことをみんなして、バカにしていたんだ。しかも、あたしがバカにして見下していたお姉さまのほうが、ずっと好まれて人気者だったなんて……
「……もう死のう」
あたしは嫌なことからすぐ逃げたくて、死にたいと思った。けど、自殺する度胸もないから、ただフラフラと歩いて行くだけ。そうしている内に、神殿の前にやって来た。
「……たまには、神様にお祈りをしてみようかしら」
今までは、自分は神様に愛されている子だから、神様に媚びてお祈りする必要なんて無いと思い、1度もしたことが無かった。けど、今は……
「おや、お客人ですかな?」
老齢の神官の男が声をかけて来た。
「ええ。ちょっと、お祈りをしたくて」
「そうですか。あなたは運が良いです。いまちょうど、聖女さまのお祈りの時間なので、一緒にご覧になりますか?」
「聖女さま?」
「はい。しばらく、後継者が現れなかったのですが、つい最近になってようやく、現れて下さったのです」
「へぇ~……」
聖女さまとかよく分からないしそんなのいたのって感じだけど。まあ、この際何でも良いや。運が良いとか言われて、ちょっと気分が良いし。
「おじさま、案内して下さる?」
「神官長のオクトレイルでございます」
「はいはい、オクトレイルさんね」
あたしはおざなりに返事をしながら、彼の後に付いて行く。
すると、祭壇の中央に佇む、確かにいかにも聖女さまって感じの女性が立っていた。
「ユリナさま、ご準備はよろしいでしょうか?」
えっ? ユリナ? あたしのお姉さま……いえ、元お姉さまと同じ名前なんて、奇遇ね。
「あ、はい。オクトレイル様」
そして、その女が振り返ると、驚愕した。あたしも、その女も。
「お……お姉さま!?」
「ア、アメリア? どうして、ここに?」
そんな風に動揺するあたし達を見比べて、オクトレイルさんは何か得心したように頷きます。
「……まあ、過去に何かあったとはいえ、神様の前ではみな平等です。アメリアさん、とおしゃいましたね」
「へっ? あ、はい……ていうか、お姉さま……」
「聖女ユリナ様です。さあ、ご覧になって下さい」
その後、お姉さまは気を取り直すように瞑目して、集中力を高めて行く。すると、天井からオーラが迸り、それはやがて終息して行く。その幻想的な光景を、あたしは確かにこの目で見た。
「……これにて、お祈りは終わりです」
振り向いたお姉さまは、あたしの知っているお姉さまの顔ではなかった。神々しく、本当に同じ人間かと疑ってしまうレベルだ。ふと、お姉さまがあたしを見た。思わず、ビクッとしてしまう。
「アメリア、顔色が悪いわね」
「へっ? あ、えっと……」
「何か困りごとがあるの?」
「そ、それは……べ、別に、そんな大したことじゃないんだけどね~」
あたしはつい見栄を張ってしまう。
「……けどまあ、ちょっと嫌なことが重なって。はぁ~、こんな時、レオルド様みたいな超イケメンを拝めば元気も出るのに」
ついつい、愚痴っぽく言ってしまう。相手がお姉さまだから?
「レオルド様……王太子さまに会いたいの?」
「うん、会いたい! この前、街で偶然見かけたんだけどね、もう超イケメンすぎて! あ、誰か一緒だったみたいだけど……まあ、たぶんお付きの家来とかそんなもんよね」
あたしが笑いながら言うと、なぜかお姉さまは少し照れたように顔をうつむけた。
「アメリア、私これからちょうど、王城に行くところなの」
「えっ? 何で? あっ、聖女さまだから?」
「ええ」
「え~、お姉さますご~い!」
あたしはお姉さまの腕に抱き付く。オクトレイルさんが何か微妙な顔をしているけど、気にしないわ。
「ねえねえ、お姉さまぁ~。あたしも一緒に連れて行って?」
「えっと……じゃあ、良いわよ」
「やった~!」
あたしはピョンと飛び跳ねる。何だ、あたしってやっぱり超ラッキー、神様に愛されている。まさか、お姉さまが聖女さまになって、しかもあたしの愛しいお方に合わせてくれるんなんて。そうだ、ブリックス様も他の貴族のご子息さまも目じゃないくらいの男、王太子であるレオルド様。彼をゲット出来れば、あたしの人生は一気に頂点に昇りつめるわ。そっか、このあたしがそんな屈辱的などん底に落ちる訳ないもんね~。さっきまでのそれは、あたしが誰にも及ばない高みに昇る前の、ほんの準備段階。つまりあたしは、生粋の勝ち組って訳ね。もう笑いが止まらないわ!
「ふふふ」
「あ、アメリア、もう行くわよ」
「は~い、お姉さま~♪」
あたしは初めて、この姉に敬意を表した。
こんな絶望と屈辱を味わったのは、人生で初めてだった。今までは、のうのうと楽しく生きて来られた。それもこれも、あたしが可愛いから。確かに、それは事実で、周りの男達もそのことは認めていた。けど、あたしのことをみんなして、バカにしていたんだ。しかも、あたしがバカにして見下していたお姉さまのほうが、ずっと好まれて人気者だったなんて……
「……もう死のう」
あたしは嫌なことからすぐ逃げたくて、死にたいと思った。けど、自殺する度胸もないから、ただフラフラと歩いて行くだけ。そうしている内に、神殿の前にやって来た。
「……たまには、神様にお祈りをしてみようかしら」
今までは、自分は神様に愛されている子だから、神様に媚びてお祈りする必要なんて無いと思い、1度もしたことが無かった。けど、今は……
「おや、お客人ですかな?」
老齢の神官の男が声をかけて来た。
「ええ。ちょっと、お祈りをしたくて」
「そうですか。あなたは運が良いです。いまちょうど、聖女さまのお祈りの時間なので、一緒にご覧になりますか?」
「聖女さま?」
「はい。しばらく、後継者が現れなかったのですが、つい最近になってようやく、現れて下さったのです」
「へぇ~……」
聖女さまとかよく分からないしそんなのいたのって感じだけど。まあ、この際何でも良いや。運が良いとか言われて、ちょっと気分が良いし。
「おじさま、案内して下さる?」
「神官長のオクトレイルでございます」
「はいはい、オクトレイルさんね」
あたしはおざなりに返事をしながら、彼の後に付いて行く。
すると、祭壇の中央に佇む、確かにいかにも聖女さまって感じの女性が立っていた。
「ユリナさま、ご準備はよろしいでしょうか?」
えっ? ユリナ? あたしのお姉さま……いえ、元お姉さまと同じ名前なんて、奇遇ね。
「あ、はい。オクトレイル様」
そして、その女が振り返ると、驚愕した。あたしも、その女も。
「お……お姉さま!?」
「ア、アメリア? どうして、ここに?」
そんな風に動揺するあたし達を見比べて、オクトレイルさんは何か得心したように頷きます。
「……まあ、過去に何かあったとはいえ、神様の前ではみな平等です。アメリアさん、とおしゃいましたね」
「へっ? あ、はい……ていうか、お姉さま……」
「聖女ユリナ様です。さあ、ご覧になって下さい」
その後、お姉さまは気を取り直すように瞑目して、集中力を高めて行く。すると、天井からオーラが迸り、それはやがて終息して行く。その幻想的な光景を、あたしは確かにこの目で見た。
「……これにて、お祈りは終わりです」
振り向いたお姉さまは、あたしの知っているお姉さまの顔ではなかった。神々しく、本当に同じ人間かと疑ってしまうレベルだ。ふと、お姉さまがあたしを見た。思わず、ビクッとしてしまう。
「アメリア、顔色が悪いわね」
「へっ? あ、えっと……」
「何か困りごとがあるの?」
「そ、それは……べ、別に、そんな大したことじゃないんだけどね~」
あたしはつい見栄を張ってしまう。
「……けどまあ、ちょっと嫌なことが重なって。はぁ~、こんな時、レオルド様みたいな超イケメンを拝めば元気も出るのに」
ついつい、愚痴っぽく言ってしまう。相手がお姉さまだから?
「レオルド様……王太子さまに会いたいの?」
「うん、会いたい! この前、街で偶然見かけたんだけどね、もう超イケメンすぎて! あ、誰か一緒だったみたいだけど……まあ、たぶんお付きの家来とかそんなもんよね」
あたしが笑いながら言うと、なぜかお姉さまは少し照れたように顔をうつむけた。
「アメリア、私これからちょうど、王城に行くところなの」
「えっ? 何で? あっ、聖女さまだから?」
「ええ」
「え~、お姉さますご~い!」
あたしはお姉さまの腕に抱き付く。オクトレイルさんが何か微妙な顔をしているけど、気にしないわ。
「ねえねえ、お姉さまぁ~。あたしも一緒に連れて行って?」
「えっと……じゃあ、良いわよ」
「やった~!」
あたしはピョンと飛び跳ねる。何だ、あたしってやっぱり超ラッキー、神様に愛されている。まさか、お姉さまが聖女さまになって、しかもあたしの愛しいお方に合わせてくれるんなんて。そうだ、ブリックス様も他の貴族のご子息さまも目じゃないくらいの男、王太子であるレオルド様。彼をゲット出来れば、あたしの人生は一気に頂点に昇りつめるわ。そっか、このあたしがそんな屈辱的などん底に落ちる訳ないもんね~。さっきまでのそれは、あたしが誰にも及ばない高みに昇る前の、ほんの準備段階。つまりあたしは、生粋の勝ち組って訳ね。もう笑いが止まらないわ!
「ふふふ」
「あ、アメリア、もう行くわよ」
「は~い、お姉さま~♪」
あたしは初めて、この姉に敬意を表した。
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