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第20話 そして、愚かな妹は……
~アメリア視点~
あたしの背筋が凍るのに比例して、ティーカップの中にある紅茶も冷めて行くようだった。
「あ、あの、あたしは……」
何とか言葉を発しようとした時、お姉さまの手がそれを制した。
「レオルド様、お気持ち感謝いたします。けれども、これは私と妹の問題ですから。どうか、そこまで深く追及なさらないで下さい」
「お姉さま……」
「ああ、すまない、ユリナ。僕としたことが……申し訳ない」
お姉さまに頭を下げてから、
「アメリア、君にもすまなかった」
「い、いえ、そんな……」
「紅茶が冷めてしまったね、入れ直そうか」
「こ、このままでも平気です。いただきます」
あたしは慌ててティーカップをかたむけて飲んだ。
「お、美味しいです、冷めていても」
「そうかい、ありがとう。君たち姉妹は、何だかあまり似ていないね」
「よ、よく言われます」
あたしはぎこちなく笑いながらそう言った。
「ユリナは、どうだい? 僕が入れた紅茶の味は」
「……はい、とても美味しいです。レオルド様が入れて下さったおかげで」
「ユリナ……」
2人は見つめ合う。え、何よこの空気……
「……あ、あの、ちょっとお伺いしますが……お姉さまとレオルド様のご関係は……?」
「ん? ああ、僕はユリナと結婚するつもりだよ」
ズゴーン!と特大のハンマーでぶん殴られるようだった。
「レ、レオルド様……改めて言われると、恥ずかしいです。妹の前で……」
「でも、ユリナ。何度でも言っておかないと、君が誰かに奪われないか心配で」
レオルド様は、お姉さまの見つめながら、キュッと手を握った。
「大丈夫ですよ。例え離れていたとしても、私はいつもあなたを想っています」
「ユリナ……僕もだよ」
あたしはあんぐりと顎が外れそうになる。
「……あ、あの、もしかしてなんですけど……この前、レオルド様と一緒に街にいたのって……」
「ああ、ユリナだよ」
あっさりと言われる。
「けど、僕のせいで思った以上にギャラリーが集まってしまったからね。その後、2人きりで……おっと、これは内緒の話だ」
「レ、レオルド様」
あたしの前で、2人はイチャついていた。何かもう、ここまで来ると敗北感が強過ぎて、何も言えないレベルだ。
「そういえば、アメリア。何だか困った様子だったけど……私で良ければ、相談に乗るわよ?」
「へっ? いや、その……」
今までのあたしなら、プライドが邪魔をして正直に話せなかっただろう。けど、ここまでくるともう、プライドもクソもないから……
「……実は、ブリックス様の事業がピンチで……お金もヤバそうなの」
「そうなの……ごめんね、私がしっかりと他の人も育てておけば良かったわ」
「ユリナ、そんなことは言うな。お人好しが過ぎるよ」
レオルド様はまたお姉さまの手を握り締めていた。もう、何も言うまい。
「ねえ、アメリア。私で良ければ、ちょっとお金を貸してあげるわよ」
「えっ? でも……」
「ちなみに、これがこの前もらったお給料の明細なのだけど……」
そう言って、お姉さまから受け取ったそれを見て、あたしは目玉が飛び出しそうになった。
「……か、勝ち組すぎる」
もはや、嫉妬も何もかも通り過ぎて、体がガクガク震え始めた。
顎もカタカタと震えて、奥歯がガタガタと鳴る。
「アメリア」
レオルド様が呼ぶ。
「は、はい?」
「もし、僕がユリナと結婚すれば、君は義理の妹ということになる。だから、君にも情けをかけてあげたいと思っている」
「あ、ありがとうございます……」
「だが、そのためには……分かっているね?」
美人が怒ると怖いって言うけど、それは美男もまた然り。あたしはすっくと立ち上がっていた。
「ア、アメリア?」
戸惑うお姉さまを前にして、あたしは両膝を地面についた。そして――
「――大変申し訳ありませんでした! 素敵に無敵すぎるお姉さま、どうかこのダメな妹をお救い下さいませええええええええええええええええええええぇ!」
思い切り、地面に額をこすりつけて。
もはや、ヤケクソも良い所だった。
あたしの背筋が凍るのに比例して、ティーカップの中にある紅茶も冷めて行くようだった。
「あ、あの、あたしは……」
何とか言葉を発しようとした時、お姉さまの手がそれを制した。
「レオルド様、お気持ち感謝いたします。けれども、これは私と妹の問題ですから。どうか、そこまで深く追及なさらないで下さい」
「お姉さま……」
「ああ、すまない、ユリナ。僕としたことが……申し訳ない」
お姉さまに頭を下げてから、
「アメリア、君にもすまなかった」
「い、いえ、そんな……」
「紅茶が冷めてしまったね、入れ直そうか」
「こ、このままでも平気です。いただきます」
あたしは慌ててティーカップをかたむけて飲んだ。
「お、美味しいです、冷めていても」
「そうかい、ありがとう。君たち姉妹は、何だかあまり似ていないね」
「よ、よく言われます」
あたしはぎこちなく笑いながらそう言った。
「ユリナは、どうだい? 僕が入れた紅茶の味は」
「……はい、とても美味しいです。レオルド様が入れて下さったおかげで」
「ユリナ……」
2人は見つめ合う。え、何よこの空気……
「……あ、あの、ちょっとお伺いしますが……お姉さまとレオルド様のご関係は……?」
「ん? ああ、僕はユリナと結婚するつもりだよ」
ズゴーン!と特大のハンマーでぶん殴られるようだった。
「レ、レオルド様……改めて言われると、恥ずかしいです。妹の前で……」
「でも、ユリナ。何度でも言っておかないと、君が誰かに奪われないか心配で」
レオルド様は、お姉さまの見つめながら、キュッと手を握った。
「大丈夫ですよ。例え離れていたとしても、私はいつもあなたを想っています」
「ユリナ……僕もだよ」
あたしはあんぐりと顎が外れそうになる。
「……あ、あの、もしかしてなんですけど……この前、レオルド様と一緒に街にいたのって……」
「ああ、ユリナだよ」
あっさりと言われる。
「けど、僕のせいで思った以上にギャラリーが集まってしまったからね。その後、2人きりで……おっと、これは内緒の話だ」
「レ、レオルド様」
あたしの前で、2人はイチャついていた。何かもう、ここまで来ると敗北感が強過ぎて、何も言えないレベルだ。
「そういえば、アメリア。何だか困った様子だったけど……私で良ければ、相談に乗るわよ?」
「へっ? いや、その……」
今までのあたしなら、プライドが邪魔をして正直に話せなかっただろう。けど、ここまでくるともう、プライドもクソもないから……
「……実は、ブリックス様の事業がピンチで……お金もヤバそうなの」
「そうなの……ごめんね、私がしっかりと他の人も育てておけば良かったわ」
「ユリナ、そんなことは言うな。お人好しが過ぎるよ」
レオルド様はまたお姉さまの手を握り締めていた。もう、何も言うまい。
「ねえ、アメリア。私で良ければ、ちょっとお金を貸してあげるわよ」
「えっ? でも……」
「ちなみに、これがこの前もらったお給料の明細なのだけど……」
そう言って、お姉さまから受け取ったそれを見て、あたしは目玉が飛び出しそうになった。
「……か、勝ち組すぎる」
もはや、嫉妬も何もかも通り過ぎて、体がガクガク震え始めた。
顎もカタカタと震えて、奥歯がガタガタと鳴る。
「アメリア」
レオルド様が呼ぶ。
「は、はい?」
「もし、僕がユリナと結婚すれば、君は義理の妹ということになる。だから、君にも情けをかけてあげたいと思っている」
「あ、ありがとうございます……」
「だが、そのためには……分かっているね?」
美人が怒ると怖いって言うけど、それは美男もまた然り。あたしはすっくと立ち上がっていた。
「ア、アメリア?」
戸惑うお姉さまを前にして、あたしは両膝を地面についた。そして――
「――大変申し訳ありませんでした! 素敵に無敵すぎるお姉さま、どうかこのダメな妹をお救い下さいませええええええええええええええええええええぇ!」
思い切り、地面に額をこすりつけて。
もはや、ヤケクソも良い所だった。
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