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たった二人の従業員
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時刻表がないのに電車が来る。たいそうな矛盾だ。この人はこんなに笑顔で話して。矛盾に気づいていないのか。
独り話の続く中、久しく聴いたあの音が、小規模ながらも響いてきた。電車だ。
「お、電車が来たみたいですね、早いでしょ」
「……そうですね」
なんでこんなに元気なの。
「早く乗らないといっちゃいますよ。さ、急いでくださいぅぁあまた暇だ」
後味を悪くしてから、駅員さんは、また重い扉を開けた。不思議な人だ。
「ありがとうございました」
軽く会釈して、早足で1両編成の小さな電車に向かった。待合室に残った駅員さんは、天井に手が触れてしまいそうなほど大きく手を振っていた。
俺は……。なぜだろう。しばらく彼を眺めていた。呆然と立ち尽くして、肩がだんだん冷えてきていることが感じられる。
「お兄さーん、お兄さーん!!」
「え゛ぇ、あっ……」
「車内に雪を持ち込まないでください!」
「ん?」
なんのことかと振り返ってみると左肩にこんもり積もった大雪が見受けられた。そして右も。嘘みたいに誇らしげに積もってある。
雪を落とそうとするが、手の冷えが気になってためらってしまう。なんせ今日はスーツ一着の軽装備。これ以上冷えてどうする。ただ、雪国の電車が異常に暖かいことを俺は知っている。
両肩の雪を両手で落とし、反射的に濡れ手をズボンにハタハタさせ、笑顔に押されてへっぴり足で暖かな天国へと向かった。
あまり暖かくなかった。
長い間開けてくれたドアが、熱気を放ちまくっていた。
凍えながら席につく。雪国なりに、暖房が完備されているようで、所々からしっかりとした暖かさは感じられた。
それにしても、俺以外に誰も座っていないというのは不思議な気分だ。日々満員電車に敷き詰められて、あれはひどい絵面だった。しかし、人が全くないというのもなにか感じるものがある。もしかしたら、俺は寂しかったのかもしれない。何を求めたのか、俺は運転手さんに話しかけていた。
「もうこの仕事長いんですか」
「そうだね、もう何十年も」
「お客、僕だけですけど大丈夫なんですか」
「全然大丈夫だよ。人件費なんて、私と駅の子だけだ」
「そうなんですね……」
どうしてそんなのでやっていけるんだ。疑問なんて増えるばかりだが、気にしてなどいられない。というか、気にできない。俺はなぜか、不自然な会話を続けた。
「あの、ずっと私と話して、前見てませんけど大丈夫なんですか」
「ああ、それはもう全く問題ないよ。レールは雪で凍ってはいるけど、そもそも全部真っ直ぐに敷かれてるし、踏切もないし、安全も安全だ」
意味はわからない、ただし会話はどんどん続いてく。窓ガラスも真っ白になり、本当に進んでいるかもわからない。
独り話の続く中、久しく聴いたあの音が、小規模ながらも響いてきた。電車だ。
「お、電車が来たみたいですね、早いでしょ」
「……そうですね」
なんでこんなに元気なの。
「早く乗らないといっちゃいますよ。さ、急いでくださいぅぁあまた暇だ」
後味を悪くしてから、駅員さんは、また重い扉を開けた。不思議な人だ。
「ありがとうございました」
軽く会釈して、早足で1両編成の小さな電車に向かった。待合室に残った駅員さんは、天井に手が触れてしまいそうなほど大きく手を振っていた。
俺は……。なぜだろう。しばらく彼を眺めていた。呆然と立ち尽くして、肩がだんだん冷えてきていることが感じられる。
「お兄さーん、お兄さーん!!」
「え゛ぇ、あっ……」
「車内に雪を持ち込まないでください!」
「ん?」
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両肩の雪を両手で落とし、反射的に濡れ手をズボンにハタハタさせ、笑顔に押されてへっぴり足で暖かな天国へと向かった。
あまり暖かくなかった。
長い間開けてくれたドアが、熱気を放ちまくっていた。
凍えながら席につく。雪国なりに、暖房が完備されているようで、所々からしっかりとした暖かさは感じられた。
それにしても、俺以外に誰も座っていないというのは不思議な気分だ。日々満員電車に敷き詰められて、あれはひどい絵面だった。しかし、人が全くないというのもなにか感じるものがある。もしかしたら、俺は寂しかったのかもしれない。何を求めたのか、俺は運転手さんに話しかけていた。
「もうこの仕事長いんですか」
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