SATAN-サタン-〜モモカと悪魔〜

夜羽

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#03【命の契約】

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俺は病室に入りゆっくりとドアを閉める。

「来てくれたんですね。」

ガキが静かに言う。

「お前…肺がんとかいう病気なんだってな。」

「聞いたんですね…。」

「俺を呼んだらしいな。何の用だ。」

「…。」

黙り始めた。

窓の外で鳥のさえずりが聞こえる。

夕日がゆっくりと沈んでいってる。

沈黙は続く。

「なんだ。」

「私と…。」

「?」

「私ともう一度契約してほしい!」

やっぱりそれか。

このままダメだと言ってもそれだけでは聞かないだろうから全て話す。

「ダメだ。」

「え…。どうして!!」

「よく聞け…。そもそも闇の取引なんてものはないんだ。今まで話してたのもただの契約ごっこだ。」

「え…。」

「約束を破っても別に死にはしないし
お前が魔法や悪魔が空想の存在だと言ったからお前を利用しようとしていただけだ。
俺はこの世界の情報提供をしてくれる人間をさがしていた。
でも病人を利用する気は無い。ただそれだけだ。」

「なに…それ。」

「これで話はすんだろ。じゃーな。」

「まってよ!」

ガシッ。

ガキがベットから降りてきて俺の服を掴む。

俺は振り返ってしまった。

ガキは泣いていた。

「もう…。もう一人はやだよ…。」

「!?」

ガキの涙が止まらない。

「おい!?やめろ?」

グスッ グスッ。

「ちょ 泣くな。コラ」

次から次へと涙が止まらない。

ガラッ

「夕食お持ちしましたよ!」

その時、業務員が部屋に入ってきた。

「え!?ど、どうかしたんですか!?」

業務員が俺を怪しんだ目で見る。

「グスッ グスッ。」

「いやwえっと…これは…」

「分かった!泣くなって!
考えるから!!
もうちょっと考えるから!!」

「グスッ。ほっ ほんとぉ…?グスッ。」

ガキが顔を上げて言う。

「あの…なにかしたんですか!?」

ついに業務員が聞いてきた。

「いや してない!してない!
何もしてないないよなー!?」

「グスッ グスッ。」

コク。

ガキが首を縦に振った。

「なっ!!ほら!?なっw」

「…。」

そのあとガキは泣き止み、夕食を食べていた。夕食の間は業務員がガキの隣に座り様子を伺っていた。
俺は少し離れたとこで座り俯いている。

なんなんだコレは?
意味が分からん。
何で泣き出した…。
しかもこれ以上にないタイミングの悪さだ。

ガキが夕食を食べ終わると
業務員は食器を持って部屋を出て行った。
俺は終始怪しまれていたがなんとか撒いたようだ。

無言が続く。
なんだこれ…。
でもこのまま出ていこうとしてまた泣かれるのは勘弁だ。

「あの…ごめんなさい。」

しばらく沈黙が続いていたがガキの方から切り出した。

「やめろ。別に謝ることはしてねーだろ…。」

「…。」

「お前は…俺にどうしてもらいたいんだよ…。」

俺は疲れ切った声で言う。

「私は…。」

「?」

ガキは顔を真っ赤にしていた。
そしてゆっくりと言う。

「お友達になりたい…。」

ガキはモジモジしている。

「…そんだけか?」

コク。

ガキが頷く。

「分かったよ!お前のお望み通り
『お友達』になってやる。これでいいか?
あぁ!!?」

「ほ…ホント!?」

ガキの顔が少し晴れた。
なんなんだよ一体。

「それじゃ…また会える!?」

は?

そうかそうだった。

「お友達」というのだから定期的にこのガキに会わなければいけない…。
このガキの望んでいることはそういうことだろう。

思わず言ってしまったが
よくよく考えると面倒くさい。

だが…。

はぁ……。

「わかったよ…。ここに会いにくればいいんだろ?もうそれで勘弁してくれ。」

「い 。いいの!?」

「じゃなきゃお前また泣き叫ぶんだろ?」

「も…もう泣かないもん…。」

やれやれ面倒な事に巻き込まれた。

「それじゃ もう一度私たちの契約をしよう!」

え…?

「いや…。だから契約なんてものは最初からないんだって」

「ううん。違うって!私たちだけの秘密の約束を作りたいの!!ふふーんこういうの一回やってみたかったんだよね。」

何言ってんだ?

「私はあなたがお友達になってくれた代わりにこの世界のことをいっぱい教えまーす!」

…。

「どうかな!!」

…。

「もう…それでいい…。」

「やったぁ!」

まぁ…もともとそのつもりだったしな。ここに定期的に来る見返りってことでいいだろう。

「それじゃ…契約の儀式をしようよ!」

「儀式?」

「はい!」

ガキは腕を伸ばし小指をさしだす。

「何だこれは。」

「指切り!私たちの世界では約束する時にやるんだよ。ほらこうやって小指と小指を合わせて!

「指きった!」

ガキが俺の手を振り下ろす。

「契約成立だね!!」

少女がにっこりと笑う。

……。

何故だろう。
俺はガラにもなくこの時少し微笑んでしまっていた。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「どうしたの?グーちゃん?」

えっ!?

俺がボーッとしていたからモモカさんが心配そうに聞いてきた。

俺はあの時のことを思い返していた。

「いやぁwなんかモモカさんとは色々あったなぁなんて…。
少し思い出してましてw」

「えぇw」

彼女は顔を少し赤くして照れている。

「あっ、ねぇグーちゃん!サクラの花言葉!!知ってる!!?」

するとモモカさんが話をそらすように言ってきた。多分照れくさかったから話題を変えたんだろう。

「え…。えっと。サクラの花言葉?
『かわいい?』とかそういう感じですかねw」

「あぁwいい線いってる!」

モモカさんは花の図鑑を見ながら楽しそうにクイズをだす。

「ねぇw正解言ってもいい?」

「いいですよw」

「いくつかあるんだけど正解は『精神美』『優美な女性』『純潔』でしたw」

「あぁwちょっと難しかったですねw
でもサクラの花言葉はモモカさんにお似合いです。」

「いや…そんなことないよwサクラは好きだけどw」

「あっ!もしかしてモモカさんの名前の『桃』にも花言葉ありますよね!」

「!?」

「きっとモモカさんにぴったりの花言葉だったりしてw」

パタン。

彼女は本を閉じた。

「あっグーちゃん…ごめん。
4時から診察の時間なの忘れてた!」

彼女は少し慌てている。

「あっ!そうだったんですね…。」

「ゴメンちょっと行ってくるね!」

「あれ…でもちょっと早くないですか?」

「5分前行動!5分前行動!」

するとモモカさんは本を持って部屋を出て行ってしまった。

あれ…まだ3時半だよな…。

結構早いような…。

俺は椅子に座りながら病室を見渡す。

変わらないな…。

あの日から。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「契約成立だね!!」

気がつけば夜7時をまわっていた。

「ねぇねぇ!まずはお互いに自己紹介しようよ!」

「自己紹介?」

「だって契約者のことはよーく知っておかないといけないでしょ?w」

「別に言うことねーし…。」

「はい!はーい!じゃぁ私からいきまーすw


なんだコイツのテンション…。

「私は『ナツメ モモカ』って言いまーす!
漢字で書くとこうでーすw」

ガキは自分の名前をメモ帳に書いて俺に見せてきた。だが案の定俺は読めない。

「えっと!好きな食べ物はお餅で…
最近ハマってる芸人は小峠でーす!!」

しらねぇよ…。

「なんて日だっ!!」



なにが!?

「好きな色は…うーんピンクかな…。でも白もすき!好きな漫画は…少女漫画も好きだけど少年漫画も好き!特にジャンプが熱いね!」

何言ってっか全然わかんねー…。

「さっ 次はあなたの番!!」

「いや…だから言うことなんてねーよ」

「名前は!?」

「それは言えない。
悪魔にとって名前は命だ。知れ渡れば危険な呪術に悪用される恐れがある。」

「えー!!」

「えーって言われてもな…。」

「じゃ私がニックネームを考えてあげる!」

「ニックネーム!?」

「だってこのままだと私があなたを呼ぶ時
に困るもんw」

「ちっ。じゃぁさっさと決めろ…」

「わーい!!やったーww」

「なんでお前が喜んでんだよ!」

「だってなんか考えるの楽しいじゃんw」

「あのな!先に言っておくぞ!?
変な名前は拒否するからな!」

「私こういう時マジメだよ!!」

そう言ってガキは考え始める。

ずっと うーん…。と言っている。

俺は座ったまま病室を見渡す。

なんもねー部屋だな。

ガキが両手で頬杖をついて悩んでいる。

「おい机もう一個ねーの?
うつ伏せになって寝たいんだけど」

「ないよ?」

「じゃこの机で寝るから 腕どかせ。」

「やだよぉ!この体勢がいいの!
なんか思いつきそう!」

「俺はお前の言う『契約者様』だ。
ちょっとは気づかえよ!!」

「えぇ…別にここで寝ればいいじゃん。
それかベッドくる?ふかふかだよ?」

おちょくってんじゃねーぞ…。

俺は右手で頬杖をついて寝ようとした。

いや やっぱり距離がちょっと近い。

ガキは目を瞑って考えている。

いや 気にすることはない。

俺も今日一日疲れてんだ。

少しくらい休ませろ。

俺は目を瞑る。

…。

やっぱり目の前が気になって寝れねー。

俺は片目を開けた。

目の前でガキが考えている。

だが…この姿嫌いじゃない。

いや寧ろ少し癒されるような…。

俺はまじまじと見てしまっていた。

よく見ると少しだけ…可愛い顔をしている…。

パッ。

そのときガキが目を開けた…。

目が合う。

やばい見てたのがバレた…。

「え…なんかここついてる!?」

「いや…なんもついてないけど…。」

とっさに俺はそう言った。

「あっ ねぇねぇ 『グーちゃん』はどうかな!」

「え…。」

「グー…ちゃん?」

それが俺の名前?

「だって だって!!さっきお昼のとき
お腹が鳴った音がすごく可愛かったからw」

なんだその恥ずかしい由来は…。

「グーちゃん!いい!すっごく可愛い!」

可愛いさで付けるなよ…。

…。

でも何故か俺は嫌じゃなかった。

目の前で一生懸命考えていたのを見ていたから。

たかが呼び名かもしれないが思えば自分のために誰かが真剣に物事を考えてくれたのは初めてだったのかもしれない。

「嫌…だった?かな…。」

やばい、このまま何も言わなかったらまたガキが落ち込む。きっと結構悩んだのだろう…。

もうそれでいい…。

「お前が呼びやすいならそれでいい…。」

「ホント!?嫌じゃない!?」

「別に…」

「うれしい!!自分の考えた名前気に入ってもらえるってすっごく嬉しいよw」

「はぁ…そりゃよかったな…。」

俺は喜んでるガキの姿を見ていた。
心のどこかでほっとしていた。
明日から俺たちの契約による日々が始まるのか…。

「グーちゃん!うーんかわいいっw」

「おまえ…そんなに気に入ってんのか?」

「うん!とっておきの名前だね!
ねぇねぇグーちゃんも私のこと名前で呼んで!!」

「え?」

「お友達なんだから名前で呼び合いたい!」

なんかいきなり名前で呼ぶのは抵抗があるというかすこし恥ずかしいんだが…。

「あ…やっぱり嫌なら別にいいんだw」

ガキがモジモジしてる。
なんだ?こいつも本当は少し恥ずかしいのか?

「モモカ。これでいいか?」

「…!!」

モモカが少し恥ずかしそうにこちらを見る。

なんなんだよ…。
言えっていたのはそっちだろ。

「う。うん 。悪くない。それで行こう。」

なんだその反応は。

「もしかして名前で呼ばれるの恥ずかしいのか?」

「いや!そんなことない!全然!?」

じゃーなんでモジモジしてんだよ…。

「なぁ 純粋に1つお前に聞きたいことがあるんだけど…。」

「なーに?」

「お前はなんで俺とのあの契約をそんなにしたかったんだ?しかも命を賭けろと言ったことに躊躇しなかった…」

「今も賭けてるよ?」

「!?」

俺は目を少し大きく開いた。

「いや、だからあれは嘘だって言ったろ。」

「私…1番最初に話した契約のつもりでいたけど…。」

「なっ、なに怒ってんだよ…。」

「ねぇ…それで合ってるよね。」

「…。」

「ご…ごめん別に私怒ってないし ちょっと言いすぎた。」

「いや…別にいい。少し聞きたかっただけなんだ。お前が命を張ってでもオレと友達になりたいと言った理由が。」

「私…生まれてからほとんど外に出たことがないの」

「!?」

「ずっと体が弱くて病院で暮らしてきた。
だからお友達なんていない。」

「私はずっと憧れてた…。お友達と遊んだり出かけたり勉強したりすることを。
そしてたまにはケンカもしたりして。
みんながやってるようなことを私はやったことがなかった…。」

「だからどうしても欲しかった。
どうせこの残り少ない命だもの。
それを賭けて私の夢が叶うなら叶えたかった。」

俺は気がつくとモモカの話を真剣に聞いていた。俺はこの質問をしてよかったのだろうか。そう考えるほど彼女の思いは深かった。

「お前はあの時本気で命を賭けていたのに踏みにじるようなことを言って…その…悪かった。」

「ううん。大丈夫。
それにさっき強く言っちゃったのは別の理由かな。
グーちゃんも命がけで私に自分のことを
話してくれたでしょ?私が契約を破ればグーちゃんの命が危険かもしれないのに。そんななかで私を頼ってくれた。だから…。」

深い夜が始まる。


 
                                     【3・命の契約】完

 
















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