42 / 50
第二章 王都と孤児院
幕間3 やりすぎクリエーター
しおりを挟む
「な、何ですか?これは・・・」
私、ラーシャ・アーレントは、いま孤児院であろう建物の前で立ち尽くしています。四日前までは一緒に来ていたものの、アオイさんの言っていた公衆浴場が完成した時にそのあまりの出来に驚き精神的に疲れてしまったので、ここのところはお姉ちゃんやシャルさん、ミリィさん、それとレナさんとナナさんでホテルの方に手伝いに行っていました。そして今、孤児院が完成したということで私たちはアオイさんに案内していただいてますが、正直ここまでのものになるとは予想していませんでした。もちろん、共同浴場が完成した段階である程度の覚悟はしていましたが、外観と庭の時点でそれを大きく超えるようなものになってしまっています。王族であるシャルさんでも今回のことは予想外だったようで、私と同じように呆然と孤児院の外見についてアオイさんの説明を聞いています。
というか、おそらくレナさん以外はみんな程度の差はあれ、予想外の事態になっていると思います。レナさんだけは別ですね。今も「流石お兄ちゃん!」とか言っていますし。まあ、義理ということですが、アオイさんの妹なので慣れているのでしょう。半分違う感情のような気もしないでもないですが。
* * * * * *
今度は室内へと移動して、それぞれの部屋を見ながらアオイさんが熱く説明されているのですが、何なのでしょうか、ここは。少なくとも公衆浴場の時点で王城を越える価値を持っていたのは間違いありません。ただ、全てが完成した状態で改めて案内されると、王城ですら比較対象となりえないものとなってしまっていることがよくわかります。本当に孤児院として使ってしまって大丈夫なのでしょうか。アオイさんに
好意で作っていただいたものですが、ここまですごいものとなると孤児院として使用しているだけで嫌がらせなどを受けそうです。ただでさえ孤児院というのはいろいろと問題が生じやすいのに、この施設を使い始めたらもっと様々な問題が生じそうで怖いです。
と、こんなことを考えていたのですが、アオイさんの一言でそんな心配は吹き飛んでしまいました。何でもこの敷地内の警備は万全であり、もし嫌がらせを受けても対応出来る範囲で神獣として対応してもらえるのだそうです。例えば、物の購入を拒否されたり、ぼったくられたりした場合にはアオイさんとレナさんの伝手で用意していただけるそうです。
アオイさんとレナさんなら安心して任せられると思っていたのですが、「あとはザーシャとラーシャに任せようと思ってる」との一言でそんなものは崩れ去ってしまいました。えっ。私たちがやるんですか?・・・適任でしょって言われてもどうしようもないんですけど・・・ま、まあもういいです。孤児院のことならばよく知っていますから適任であるということも理解しています。でも。でも、です。そんなことをいきなりいうのはどうかと思うのですよ。せめてそんな確定事項のようにではなく、相談として伝えてほしかったです。まあ、そんなことを言ってももう過ぎたことなのでどうにもなりませんが・・・
そんなことを考えている間にもアオイさんの案内は進んでいきます。音楽室や図書室など王城でなければつくられないであろう部屋には驚きました。特に体育館という室内修練場とは別で用意された部屋には見慣れない道具や機械が並んでいて、そのどれもが世界でここにしかないようなものでした。詳しく話を聞くと全てアオイさんが作ったものらしいです。
アオイさんの案内はまだ続きます。そして最後に金属製の扉の前にたどり着きました。これまでの雰囲気には似つかないその扉は金庫やお金の集計を行う機械がある部屋の入口だそうで、この孤児院の中でも最も警備の厳しい場所ということです。中も見せていただきましたが、中にはいった瞬間に目の前の巨大な金庫に目を引かれます。私とほぼ同じ高さで横幅も一般的なベットの長辺ほどの長さがあるこの金庫は見たことのない黒っぽい色をしています。これは素材の色だそうで、なんとアダマンタイト製!世界でもっとも固く加工のしずらい鉱物で、その特性から採掘すらも難しく王族でもなかなか手に入れることのできないそれをこれほどの物に加工してしまうとは。改めてアオイさんは神獣であると思わせられます。ただ、ついていく私たちからするともう少しヒトの常識の範囲内に抑えてほしいと思ってしまいますが・・・
おそらくこれからもこの兄妹に振り回されるのでしょう。その時、私たちが常識を捨てられていることを願うばかりです。
私、ラーシャ・アーレントは、いま孤児院であろう建物の前で立ち尽くしています。四日前までは一緒に来ていたものの、アオイさんの言っていた公衆浴場が完成した時にそのあまりの出来に驚き精神的に疲れてしまったので、ここのところはお姉ちゃんやシャルさん、ミリィさん、それとレナさんとナナさんでホテルの方に手伝いに行っていました。そして今、孤児院が完成したということで私たちはアオイさんに案内していただいてますが、正直ここまでのものになるとは予想していませんでした。もちろん、共同浴場が完成した段階である程度の覚悟はしていましたが、外観と庭の時点でそれを大きく超えるようなものになってしまっています。王族であるシャルさんでも今回のことは予想外だったようで、私と同じように呆然と孤児院の外見についてアオイさんの説明を聞いています。
というか、おそらくレナさん以外はみんな程度の差はあれ、予想外の事態になっていると思います。レナさんだけは別ですね。今も「流石お兄ちゃん!」とか言っていますし。まあ、義理ということですが、アオイさんの妹なので慣れているのでしょう。半分違う感情のような気もしないでもないですが。
* * * * * *
今度は室内へと移動して、それぞれの部屋を見ながらアオイさんが熱く説明されているのですが、何なのでしょうか、ここは。少なくとも公衆浴場の時点で王城を越える価値を持っていたのは間違いありません。ただ、全てが完成した状態で改めて案内されると、王城ですら比較対象となりえないものとなってしまっていることがよくわかります。本当に孤児院として使ってしまって大丈夫なのでしょうか。アオイさんに
好意で作っていただいたものですが、ここまですごいものとなると孤児院として使用しているだけで嫌がらせなどを受けそうです。ただでさえ孤児院というのはいろいろと問題が生じやすいのに、この施設を使い始めたらもっと様々な問題が生じそうで怖いです。
と、こんなことを考えていたのですが、アオイさんの一言でそんな心配は吹き飛んでしまいました。何でもこの敷地内の警備は万全であり、もし嫌がらせを受けても対応出来る範囲で神獣として対応してもらえるのだそうです。例えば、物の購入を拒否されたり、ぼったくられたりした場合にはアオイさんとレナさんの伝手で用意していただけるそうです。
アオイさんとレナさんなら安心して任せられると思っていたのですが、「あとはザーシャとラーシャに任せようと思ってる」との一言でそんなものは崩れ去ってしまいました。えっ。私たちがやるんですか?・・・適任でしょって言われてもどうしようもないんですけど・・・ま、まあもういいです。孤児院のことならばよく知っていますから適任であるということも理解しています。でも。でも、です。そんなことをいきなりいうのはどうかと思うのですよ。せめてそんな確定事項のようにではなく、相談として伝えてほしかったです。まあ、そんなことを言ってももう過ぎたことなのでどうにもなりませんが・・・
そんなことを考えている間にもアオイさんの案内は進んでいきます。音楽室や図書室など王城でなければつくられないであろう部屋には驚きました。特に体育館という室内修練場とは別で用意された部屋には見慣れない道具や機械が並んでいて、そのどれもが世界でここにしかないようなものでした。詳しく話を聞くと全てアオイさんが作ったものらしいです。
アオイさんの案内はまだ続きます。そして最後に金属製の扉の前にたどり着きました。これまでの雰囲気には似つかないその扉は金庫やお金の集計を行う機械がある部屋の入口だそうで、この孤児院の中でも最も警備の厳しい場所ということです。中も見せていただきましたが、中にはいった瞬間に目の前の巨大な金庫に目を引かれます。私とほぼ同じ高さで横幅も一般的なベットの長辺ほどの長さがあるこの金庫は見たことのない黒っぽい色をしています。これは素材の色だそうで、なんとアダマンタイト製!世界でもっとも固く加工のしずらい鉱物で、その特性から採掘すらも難しく王族でもなかなか手に入れることのできないそれをこれほどの物に加工してしまうとは。改めてアオイさんは神獣であると思わせられます。ただ、ついていく私たちからするともう少しヒトの常識の範囲内に抑えてほしいと思ってしまいますが・・・
おそらくこれからもこの兄妹に振り回されるのでしょう。その時、私たちが常識を捨てられていることを願うばかりです。
0
あなたにおすすめの小説
『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる
仙道
ファンタジー
気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。 この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。 俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。 オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。 腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。 俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。 こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。
12/23 HOT男性向け1位
悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業
ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
『三度目の滅びを阻止せよ ―サラリーマン係長の異世界再建記―』
KAORUwithAI
ファンタジー
45歳、胃薬が手放せない大手総合商社営業部係長・佐藤悠真。
ある日、横断歩道で子供を助け、トラックに轢かれて死んでしまう。
目を覚ますと、目の前に現れたのは“おじさんっぽい神”。
「この世界を何とかしてほしい」と頼まれるが、悠真は「ただのサラリーマンに何ができる」と拒否。
しかし神は、「ならこの世界は三度目の滅びで終わりだな」と冷徹に突き放す。
結局、悠真は渋々承諾。
与えられたのは“現実知識”と“ワールドサーチ”――地球の知識すら検索できる探索魔法。
さらに肉体は20歳に若返り、滅びかけの異世界に送り込まれた。
衛生観念もなく、食糧も乏しく、二度の滅びで人々は絶望の淵にある。
だが、係長として培った経験と知識を武器に、悠真は人々をまとめ、再び世界を立て直そうと奮闘する。
――これは、“三度目の滅び”を阻止するために挑む、ひとりの中年係長の異世界再建記である。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
社畜の異世界再出発
U65
ファンタジー
社畜、気づけば異世界の赤ちゃんでした――!?
ブラック企業に心身を削られ、人生リタイアした社畜が目覚めたのは、剣と魔法のファンタジー世界。
前世では死ぬほど働いた。今度は、笑って生きたい。
けれどこの世界、穏やかに生きるには……ちょっと強くなる必要があるらしい。
異世界転生おじさんは最強とハーレムを極める
自ら
ファンタジー
定年を半年後に控えた凡庸なサラリーマン、佐藤健一(50歳)は、不慮の交通事故で人生を終える。目覚めた先で出会ったのは、自分の魂をトラックの前に落としたというミスをした女神リナリア。
その「お詫び」として、健一は剣と魔法の異世界へと30代後半の肉体で転生することになる。チート能力の選択を迫られ、彼はあらゆる経験から無限に成長できる**【無限成長(アンリミテッド・グロース)】**を選び取る。
異世界で早速遭遇したゴブリンを一撃で倒し、チート能力を実感した健一は、くたびれた人生を捨て、最強のセカンドライフを謳歌することを決意する。
定年間際のおじさんが、女神の気まぐれチートで異世界最強への道を歩み始める、転生ファンタジーの開幕。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる