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厄災の予言

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 んで、翌日になり学校……。

 今日は朝からクラスの皆が騒がしい……。

 理由は聴かなくても分かっている。

 更には、久しぶりに隣の子に話しかけられる俺。

「ねね、白野君! 知ってる? 学校の近所で働いていたお姉さんが、深夜に通り魔に刺されたんだって。可哀そう、あの人物凄く愛嬌が良かったのにね」
「うん、知ってる……」

 申し訳ないが、気のない返事をする俺。

(その人、知人だし、色々お世話になってたからね。しかも、今朝その旦那から話を聴いたばっかりだったし。 悲しいやら、情けないやら……)

 それに、ソレにっ!

 正直、まだ気持ちの整理がついてないので、俺その話あまり聴きたくなかったんだよね。

 精神的ストレスの為か、何やら心臓にも負担が来て苦しいしね。 

 そのせいか、何やら今日は右目の奥が凄く、疼くんだ。

 丁度その子との会話を遮るように、学校内に一斉に鳴り響くアナウンスが鳴り響く。

 途端、話すのを止め、一斉に静まり返るクラスの皆さん。

(って、アレ? 何か優と桃井さんが、クラスの出入り口付近で手招きしてるんですが……?)

 仕方ないので、こっそりクラスを出ていく俺。

「生活指導室に呼ばれている、急いで行くぞ! 理由は後だ!」
「お、おう!」

 駆け足で廊下をかけていく俺達。

『深夜この学校近所で通り魔事件が発生しました……。最近頻繁に事件が発生している様なので、生徒の皆様は十分注意するよう心掛けをお願いします……』

 俺達が生活指導室に移動している間に、アナウンスが学校内に静かに響き渡る。

 それがまるで何かの前触れの様な……そんな予感がしてならなかった。

『繰り返します……』

 ふと廊下周辺を見ると、俺達同様、何人かが生活指導室目指して走って行っているのが分った。

「おい! 優っ! コレってまさか?」
「そのまさかだ。携帯で確認したが俺達と同業者だった」 

「うん! しかも、何人かはアルカディアアドベンチャーで見たことある人いたよ!」

 そんな会話をしているうちに、目の前に『生活指導室』のドアが見える!

 急いで中に入る俺達。

 続いて、続々と部屋に入って来るレッドサン関係者の生徒達。

 中に入った途端、担任のチョビヒゲ先生と目が合う。

「お、よく来たな無紅君? いや、私の同胞達よ」
「へ? ど、同胞?」

 ま、まさか……?

「む、無紅君、こ、コレ」

 桃井さんが可愛らしいウサギ型の携帯を、俺にそっと渡す。

 名前……前田 双次郎

 階級……少佐

 任務……???

「げ! ヒゲ先生っ! 少佐だったの?」
「ふっふっふ、驚いたかな? 無紅軍曹殿?」

「そ、そりゃ驚くは……」

 しかもこのヒゲ、歴史の授業中にレッドサンの事、力説していたしな。

 何か妙に説得力あると思っていたら、思いっきり関係者でしかも結構上の位だっていう。

 ちなみに優の奴は俺とヒゲ先生のやり取りを見て、鼻で笑っているし。

(そ、そうか、優の親父さんはレッドサンのメンバーだったから、優も先生が関係者だって知ってただろうしな。く、くっそ、なんか色々腹立つなあ……)

 ちょっとした気分転換の為、周囲を見回すと、先程俺達と同じくして入ってきた生徒達も他の先生と何やら話を詰めている感じだ。

 生徒数は俺達合わせて計10人ってとこかな?

「ところで、前田先生。今日は俺達にどんなお話が?」

 優の言葉で我に返り、ヒゲ先生を見る俺。

「そうだな、君達も校内アナウンスを聴いただろ?」
「はい」

「我が組織で、予言が得意な能力の天使がいてな? ここ数時間内で学校内合わせて、厄災が降りかかる予言があったらしい」
「ええっ!」

「その予言の詳しい内容は?」
「ありのままに伝えるとだな。『始まりの巨星落ち、その流星群は奈落まで沈んでいく。それらは確固たる意志を持ち、新しい始まりの天使を求め……学び舎へ流れ落ちる』だそうな」

 俺達3人はヒゲ先生の言葉を聞き、お互い顔を見合わせる。

「え、ええっ! じ、じゃあ、もしかして最近元レッドサンの感染者が五月雨式に学校付近に現れたのって……」
「おそらくは、予言の流星群達だろうな。そして彼らはただの様子見の斥候。流れから行くと、これからが本番ってとこだろうな」

(……も、もしかして、力丸さんの奥さんが負傷したのも索敵能力を持っていたことを、敵が何らかの方法で知っていたからなんじゃ?)

 今回の敵は元人間。

 しかもレッドサンの内情まで知っているので、とても厄介だ。

 正直、本能的に攻撃して来る地上のコアモンスター達の方が、とてもやりやすかった。

 なにしろ、人じゃないしね。

「……前田先生、そもそも『始まりの天使』とは何を指すんですか?」
「大昔にシックスワイズマン達が呼んだ『選ばれし6人の天使』と予想されるが、今現在で、そもそも誰もその天使達を見たものがいないのでな……」

「そうですか、情報提供ありがとうございました」

 優はヒゲ先生に丁寧にお辞儀する。

「いやいや儂らこそスマンな、巻き込んでしまって。だが、知っての通りレッドサンは常に人材不足でな。今日お前達を呼んだのは、全員が何かしろ天使と繋がりがあるからなんだ」

(……そ、そうか、俺は儀式を終え、『天使の刻印』持ちになっている。桃井さん自身は天使だし、優は俺達の親しい知人だ。ということは、周囲の残り7人も俺達と似た関係なんだろうなきっと)

 そう思うと、逆にその7人の存在がとても心強かった。

「あ、あの、レッドサンからの増援はイザナギ学園こはないんでしょうか?」
「……いい質問だ。既に来ており、学校周辺と学校内に精鋭数十人ほど、もう配置されている。更には私達、潜伏地下防衛部隊が数人学校に最初からいるしね」

 なるほど、今言われて気が付いたけど、軍服を着た強面のおじさんが出入口付近に腕組みをして立っているのはその1人なんだろう。

 その人の行動を見ていると、外の様子を見たり、携帯で連絡を入れたりと色々と忙しそうだ。

 俺は無言で桃井さんに、それを指のジェスチャーで知らせる。

「わかりました。回答ありがとうございます……」

 ヒゲ先生に丁寧にお辞儀する桜井さん。

「正直、もっと増援が欲しいところだが、学校はこのイザナギ学園だけではないし、レッドサンもここにだけ救援を送るわけにはいかないのでな」 
「それはしょうがないとして、ヒゲ先生、相手の的が分かり次第、その人達ってそっちに増援に行くって考えでいいのかな?」

 俺の質問に大きく頷く、ヒゲ先生。

「そうだな、そのつもりらしいが。問題は相手がどう出て来るかが分からないのがな」

 ……確かになあ、相手の目的を予言で理解している。

 けど、攻めて来る経路とかの詳細は不明。

 なので、今のやり方で構えるしかないってことだよなあ……。

 下手に地上特派員側から戦力を回してもらっても、そこが手薄になったら敵の抜け道が増えるっていう本末転倒になりかねないし。

 だから、現状はコレで行くしかないって事か。
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