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第二十五夜 生まれ落ちた先に
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第二十五夜 生まれ落ちた先に
「我が君。どうぞお席へ。」
宰相さんにエスコートされ俺の対面にドンと席に座った魔王。本日も相変わらずゴージャス黒の石油王スタイルである。
宰相さんは魔王を座らせると、ドアのほうへすすーっと下がっていき動かざる事壁の如きと気配を殺した。これは…、
完全にお話し合いの相手、魔王じゃん…。
宰相、それは最初に話そ?
めっちゃ大事な報告事項よ?
軽く会食って話じゃないからね?
ビジネスマンなら報告連絡相談でしょ?
「サイよ、息災であったか?」
「…え、あ、はい。元気ですね…。」
「そうか、それなら良い。」
満足そうに微笑む魔王。
ジッとこちらから目を離さない魔王。
「………。」
「………。」
…おい、黙るな。
うう、ここからどう話を膨らませればいいん?
天気の話でも振ればいいん?
チラッと宰相さんにヘルプアイを送る。
だが宰相さんはすっと目を逸らし気配を殺して居ないテイをした。おまえ~ッ!! 討伐すんぞ?!
「ええと、本日はお日柄も良く…、」
「そうだな。今日は良い日だ。サイに会えた。」
「…ありがとうございます。」
ここでナイストゥミートゥかよ! ああっもう、ミートゥ!
…この魔王と会話のキャッチボール、無理すぎぃ。すっぽ抜け暴投待ったなしだよぅ。
そんなノーコン会話キャッチボールに泣きが入りかけた所に救世主現る!
満を辞してエルさん登場ッ!
「サイッ!!」
腰に、留めようと必死に頑張ってるアルラウネスタイルのお義母様を引っ付け、部屋に駆け込んできた!
が!
エルは部屋には踏み込めなかった…。
部屋の入口に見えない柔らかい壁があるようで、エルが体当たりを決めてもボヨンと跳ね返されていた。
「?!?!」
「すまないが、話が終わるまで君はそちらで寛いでくれ。」
宰相さんが入口でエルをすげなくあしらう。
「うるさいッ! サイを返せ!」
ブチ切れたエルが気弾を入口に向けてぶっ放しているが、壁に当たるとグニュンと気弾が吸い込まれ無効化した。どうやら入口に宰相さんがなんらかの結界か侵入を拒む仕掛けをしたようだ。
…うーん、今魔法を使った感じがしないから、アレを解除する方法がわからんな。ちょっと詰んだかな?
と言っても、本気出したら多分コレくらいすぐ脱出できる。あとエルが本気出したら、多分ここいら一帯ぶっ壊れる…、あ、ヤバ、別な意味の詰みじゃん!
「…宰相、コレはどういう事です? 閉じ込められるとは聞いてないんですが?」
この状況に困った風を装い、さりげなくピアスに手を当て通信状態にする。エル、気付けー。
「我が君の安全の為だ。許可したモノだけ出入りできるようになっている。君は許可しているから出入り自由だ。心配であれば試してみても良い。」
流石宰相、何をしたかまではネタバレしてくれないか。
ま、これがエルに伝わればいい。
「ではお言葉に甘えて。ちょっと出て戻ってみます。」
席を立ち部屋の入口へ向かう。
そおっと見えない壁に手を突き出してみた。
スカッ
あ、壁なかった! めっちゃ普通に何もないわ!
それを見たエルが手をコチラに伸ばしてみたが、残念ながらボヨンと壁にぶち当たる。…中々高度な判別だな、コレ。魔道具にしろ、スキルにしろ、この世界では最高峰の結界だ。何げにこの宰相お強いかも。
「エル、…ってうわっ?!」
「サイ~~~ッッッ!!」
部屋から一歩外に出た瞬間、お義母様をべりっと引き剥がしぽいっとぶん投げたエルにギュウギュウに抱きしめられた。ちょ、力込めすぎ! 痛えよ!
しかし今はそれは置いといて。
「痛いっつーの! 過保護すぎだぞ!…(そのまま抱きしめてて。さっきの聞こえたか?)」
抗うフリをしながら耳元に囁く。
「うん。…(聞こえた。でも、魔王が、)」
「おい、ちょっと聞いてんのか?…(ストップ。大丈夫。向こうは守り一択、多分魔王側に何らかの問題あり)」
小声でもあまり長くは話せないから、ささっと案件を伝える。
「心配だったの!…(…どうすんの?)」
「ちょっとメシ食ってくるって言っただろ?…(待機。合図するまで攻撃NG)」
「ほんとに?…(オッケー)」
「マジだからちょっとここで待ってて。終わったら声かける。」
ポンポンと背中を叩いて会話を終わらせた。
抱きしめてた手が離れたので、エルに行ってくると軽く手を上げ魔王が待つ部屋に戻る。
「宰相、もし次があるならこう言うズルはご遠慮願いたいね。彼、頭に血が昇ると手に負えないタイプなんで。」
「…そのようだな。」
宰相さんはプンスコで仁王立ちしているエルと投げられて転がるお義母様を遠い目で見つめた。
「…ウェラム、客人を立たせたままにするではない。」
席でぼっちしてた魔王様がお気遣いの一言を投げた。あ、なんか時間かけてすまん…。
「申し訳ございません。では、食事を。」
俺が席に戻ると、宰相さんが壁に下がっていた紐を引いた。
部屋の奥のもう一つの入口(従業員用の通用口らしい。勿論こちらも開けっぱなしだった)からいつものウェイターさんより格上っぽい、ソムリエや執事風の制服の人達が昼メシをサーブしに来た。
「御前失礼致します。こちらはカラナとプロロのオイル漬けでございます。」
目の前にさっとセットされた皿には、崩すのも勿体ないくらい美しく盛り付けされた冷製料理。
いやぁ、ここのメシってめっちゃ美味いんだよなぁ。カラモもプロロも何か全然わかんないけど、美味しいメシは無罪。喜んでいただきますぅ!!
ちなカラナとプロロのオイル漬けなる料理は、白菜みたいな茎がある野菜とチーズのオイル漬けで、付け合わせに生ハムとなんとなくイタリアンを彷彿させる前菜だった。生ハムに合わせると小じょっぱくて美味しい。
飲み物のリクを聞かれてうっかりワインと言いそうになったね…。ちっ、仕事中だわ! 葡萄ジュースください!
その後期待通りイタリア料理風のコースが振る舞われ、大した会話もせず黙々と美味しく頂いた。
食後のエスプレッソが給仕されると宰相さんが部屋からすっと一歩出た。ドア脇の見える所で待機してる。
ふむ、食事タイム終了。ここから大事な話タイムか。
面倒だがそろそろ魔王と会話のキャッチボール再開しますかー。はい、第一投振りかぶってー、会話ボールぽーいっとな!
「…ところで今日はどう言ったご用です?」
「ああ、そうだった。すっかり料理に魅了されていたわ。………サイよ、其方は『リッデリア』と言う大陸に聞き覚えはないか?」
「は?! 『リッデリア』?!」
知ってるも何も、
その名前を冠した大陸は俺達の古巣、
数多のプレイヤーが集うナイツオブミリオンのメイン舞台、
ーーー始まりの大地、『リッデリア』
「その反応、聞き覚えがあるようだな。では本題だ。我は、…いや俺は多分リッデリアでサイと会っている!」
「えええええ?! マジーーーッ?!」
え、魔王の中の人ナイミリプレイヤーなの?! その魔王スタイル、実はアバ?!
「…昨日の夜、うっかりチェストの角に足の小指をぶつけた瞬間、リッデリア、そして前世を突然思い出した。」
うわ。チェストの角に足の小指、痛そう…。いやいや、じゃなくてどんなタイミングで前世思い出してんだ、この人!
「まだ少し記憶があやふやだが、前世のリッデリアで俺は魔剣士をしていて、まあまあ名が売れる程度に活躍してたようだった。」
…お、まさかのランカー?
俺の知ってる人かな? 有名人かな?
「…えっと、俺と会ったって言ってたけど、魔王さんの名前って聞いていい?」
「ああ、前世では『牙狼』と名乗っていた。」
は? え?
「はあああ?! お前『牙狼』かよーーーッ?!」
あまりの衝撃的事実に開いた口が塞がらない…。
目の前の魔王がフレの牙狼…、だと?
「ははは、よかった。サイは俺の事知ってたんだな。本当に良かった。あまりにもこの世界と違う記憶だったから、夢かもしれないと思ってたんだ。」
「マジか…。」
「驚くよな…。俺もまさか魔王に生まれ変わってるなんて思わなかった。鏡を見れば前世とまるで違う顔だし、頭にツノは生えてるし…。でも、ここに生まれ変わってからの魔王の記憶もあって、昨夜は大混乱だったよ。しかし、ふとサイの事も思い出してもしやと思ってね。連絡を取ってもらったんだ。」
「…おわぁ、牙狼異世界転生かよ。え、じゃああっちの最後の記憶ってある? 牙狼、しばらく見なかったからどうしてたのかなって思ってたんだ。」
「前世の最後の記憶は…、何処かのダンジョンで突然光に包まれたくらいしかないんだ。」
えええ、ダンジョンで光トラップ? 光トラップで即死は初めて聞いたんだが!
そんな聞いた事もないトラップがあるダンジョンって牙狼はどこまで攻略してんだ…。ランカー怖い。
「そうなんだ…。しかし、こんな異世界で牙狼に会うなんてびっくりなんだけど。もしかして神様に会った系転生?」
有名ランカーの牙狼が俺達の課にスカウトされてないってのは、もしややらかし神に掻っ攫われた系の可能性ですよ。うん。
「神様? 神様…、あ、もしかしてあの声か? 光が最高に強くなった時に、リアル魔王ゲットだぜ!って一瞬聞こえたかもしれない。」
「あ、間違いないわ。」
…そーいや、牙狼って俺と同じく隠しイベのレア称号『魔王』持ちだったよね。まさかの魔王ピックアップで神引きされたのか…。哀れなり…。
「…そうか、アレは神の声か。ところでサイはいつこちらに転生したんだ? それに見た目もあちらと同じなんだが?」
「え、俺?」
…あー、これ言っていいのかな?
「…ちょっとだけ待ってもらっていい?」
「ああ、いいぞ。」
スマホを取り出してメッセする。
牙狼には悪いがこれは筆談で。
『今の聞いてた?』
『聞いてた。マジびっくり。魔王、まさかの牙狼さんかよ。』
『まさかの、だよな。それより牙狼が転生してた件、今すぐ課長に口頭報告して。あと俺達の事情を話すかどうか判断仰いで。』
『りょ!』
いくら牙狼がフレでも、お仕事には守秘義務ってやつがあるんだなぁ。
<次回予告>
始まりの大地から溢れた魂。だが彼らの運命は交わった。
輪郭のブレた魂は掬い上げた手に泣く。
次回、朝陽に。『第二十六夜 落としどころ』
お楽しみに。
「絶対定時帰りナリよ。」
※次回予告はあんまり本編に関係ありません。
「我が君。どうぞお席へ。」
宰相さんにエスコートされ俺の対面にドンと席に座った魔王。本日も相変わらずゴージャス黒の石油王スタイルである。
宰相さんは魔王を座らせると、ドアのほうへすすーっと下がっていき動かざる事壁の如きと気配を殺した。これは…、
完全にお話し合いの相手、魔王じゃん…。
宰相、それは最初に話そ?
めっちゃ大事な報告事項よ?
軽く会食って話じゃないからね?
ビジネスマンなら報告連絡相談でしょ?
「サイよ、息災であったか?」
「…え、あ、はい。元気ですね…。」
「そうか、それなら良い。」
満足そうに微笑む魔王。
ジッとこちらから目を離さない魔王。
「………。」
「………。」
…おい、黙るな。
うう、ここからどう話を膨らませればいいん?
天気の話でも振ればいいん?
チラッと宰相さんにヘルプアイを送る。
だが宰相さんはすっと目を逸らし気配を殺して居ないテイをした。おまえ~ッ!! 討伐すんぞ?!
「ええと、本日はお日柄も良く…、」
「そうだな。今日は良い日だ。サイに会えた。」
「…ありがとうございます。」
ここでナイストゥミートゥかよ! ああっもう、ミートゥ!
…この魔王と会話のキャッチボール、無理すぎぃ。すっぽ抜け暴投待ったなしだよぅ。
そんなノーコン会話キャッチボールに泣きが入りかけた所に救世主現る!
満を辞してエルさん登場ッ!
「サイッ!!」
腰に、留めようと必死に頑張ってるアルラウネスタイルのお義母様を引っ付け、部屋に駆け込んできた!
が!
エルは部屋には踏み込めなかった…。
部屋の入口に見えない柔らかい壁があるようで、エルが体当たりを決めてもボヨンと跳ね返されていた。
「?!?!」
「すまないが、話が終わるまで君はそちらで寛いでくれ。」
宰相さんが入口でエルをすげなくあしらう。
「うるさいッ! サイを返せ!」
ブチ切れたエルが気弾を入口に向けてぶっ放しているが、壁に当たるとグニュンと気弾が吸い込まれ無効化した。どうやら入口に宰相さんがなんらかの結界か侵入を拒む仕掛けをしたようだ。
…うーん、今魔法を使った感じがしないから、アレを解除する方法がわからんな。ちょっと詰んだかな?
と言っても、本気出したら多分コレくらいすぐ脱出できる。あとエルが本気出したら、多分ここいら一帯ぶっ壊れる…、あ、ヤバ、別な意味の詰みじゃん!
「…宰相、コレはどういう事です? 閉じ込められるとは聞いてないんですが?」
この状況に困った風を装い、さりげなくピアスに手を当て通信状態にする。エル、気付けー。
「我が君の安全の為だ。許可したモノだけ出入りできるようになっている。君は許可しているから出入り自由だ。心配であれば試してみても良い。」
流石宰相、何をしたかまではネタバレしてくれないか。
ま、これがエルに伝わればいい。
「ではお言葉に甘えて。ちょっと出て戻ってみます。」
席を立ち部屋の入口へ向かう。
そおっと見えない壁に手を突き出してみた。
スカッ
あ、壁なかった! めっちゃ普通に何もないわ!
それを見たエルが手をコチラに伸ばしてみたが、残念ながらボヨンと壁にぶち当たる。…中々高度な判別だな、コレ。魔道具にしろ、スキルにしろ、この世界では最高峰の結界だ。何げにこの宰相お強いかも。
「エル、…ってうわっ?!」
「サイ~~~ッッッ!!」
部屋から一歩外に出た瞬間、お義母様をべりっと引き剥がしぽいっとぶん投げたエルにギュウギュウに抱きしめられた。ちょ、力込めすぎ! 痛えよ!
しかし今はそれは置いといて。
「痛いっつーの! 過保護すぎだぞ!…(そのまま抱きしめてて。さっきの聞こえたか?)」
抗うフリをしながら耳元に囁く。
「うん。…(聞こえた。でも、魔王が、)」
「おい、ちょっと聞いてんのか?…(ストップ。大丈夫。向こうは守り一択、多分魔王側に何らかの問題あり)」
小声でもあまり長くは話せないから、ささっと案件を伝える。
「心配だったの!…(…どうすんの?)」
「ちょっとメシ食ってくるって言っただろ?…(待機。合図するまで攻撃NG)」
「ほんとに?…(オッケー)」
「マジだからちょっとここで待ってて。終わったら声かける。」
ポンポンと背中を叩いて会話を終わらせた。
抱きしめてた手が離れたので、エルに行ってくると軽く手を上げ魔王が待つ部屋に戻る。
「宰相、もし次があるならこう言うズルはご遠慮願いたいね。彼、頭に血が昇ると手に負えないタイプなんで。」
「…そのようだな。」
宰相さんはプンスコで仁王立ちしているエルと投げられて転がるお義母様を遠い目で見つめた。
「…ウェラム、客人を立たせたままにするではない。」
席でぼっちしてた魔王様がお気遣いの一言を投げた。あ、なんか時間かけてすまん…。
「申し訳ございません。では、食事を。」
俺が席に戻ると、宰相さんが壁に下がっていた紐を引いた。
部屋の奥のもう一つの入口(従業員用の通用口らしい。勿論こちらも開けっぱなしだった)からいつものウェイターさんより格上っぽい、ソムリエや執事風の制服の人達が昼メシをサーブしに来た。
「御前失礼致します。こちらはカラナとプロロのオイル漬けでございます。」
目の前にさっとセットされた皿には、崩すのも勿体ないくらい美しく盛り付けされた冷製料理。
いやぁ、ここのメシってめっちゃ美味いんだよなぁ。カラモもプロロも何か全然わかんないけど、美味しいメシは無罪。喜んでいただきますぅ!!
ちなカラナとプロロのオイル漬けなる料理は、白菜みたいな茎がある野菜とチーズのオイル漬けで、付け合わせに生ハムとなんとなくイタリアンを彷彿させる前菜だった。生ハムに合わせると小じょっぱくて美味しい。
飲み物のリクを聞かれてうっかりワインと言いそうになったね…。ちっ、仕事中だわ! 葡萄ジュースください!
その後期待通りイタリア料理風のコースが振る舞われ、大した会話もせず黙々と美味しく頂いた。
食後のエスプレッソが給仕されると宰相さんが部屋からすっと一歩出た。ドア脇の見える所で待機してる。
ふむ、食事タイム終了。ここから大事な話タイムか。
面倒だがそろそろ魔王と会話のキャッチボール再開しますかー。はい、第一投振りかぶってー、会話ボールぽーいっとな!
「…ところで今日はどう言ったご用です?」
「ああ、そうだった。すっかり料理に魅了されていたわ。………サイよ、其方は『リッデリア』と言う大陸に聞き覚えはないか?」
「は?! 『リッデリア』?!」
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「その反応、聞き覚えがあるようだな。では本題だ。我は、…いや俺は多分リッデリアでサイと会っている!」
「えええええ?! マジーーーッ?!」
え、魔王の中の人ナイミリプレイヤーなの?! その魔王スタイル、実はアバ?!
「…昨日の夜、うっかりチェストの角に足の小指をぶつけた瞬間、リッデリア、そして前世を突然思い出した。」
うわ。チェストの角に足の小指、痛そう…。いやいや、じゃなくてどんなタイミングで前世思い出してんだ、この人!
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俺の知ってる人かな? 有名人かな?
「…えっと、俺と会ったって言ってたけど、魔王さんの名前って聞いていい?」
「ああ、前世では『牙狼』と名乗っていた。」
は? え?
「はあああ?! お前『牙狼』かよーーーッ?!」
あまりの衝撃的事実に開いた口が塞がらない…。
目の前の魔王がフレの牙狼…、だと?
「ははは、よかった。サイは俺の事知ってたんだな。本当に良かった。あまりにもこの世界と違う記憶だったから、夢かもしれないと思ってたんだ。」
「マジか…。」
「驚くよな…。俺もまさか魔王に生まれ変わってるなんて思わなかった。鏡を見れば前世とまるで違う顔だし、頭にツノは生えてるし…。でも、ここに生まれ変わってからの魔王の記憶もあって、昨夜は大混乱だったよ。しかし、ふとサイの事も思い出してもしやと思ってね。連絡を取ってもらったんだ。」
「…おわぁ、牙狼異世界転生かよ。え、じゃああっちの最後の記憶ってある? 牙狼、しばらく見なかったからどうしてたのかなって思ってたんだ。」
「前世の最後の記憶は…、何処かのダンジョンで突然光に包まれたくらいしかないんだ。」
えええ、ダンジョンで光トラップ? 光トラップで即死は初めて聞いたんだが!
そんな聞いた事もないトラップがあるダンジョンって牙狼はどこまで攻略してんだ…。ランカー怖い。
「そうなんだ…。しかし、こんな異世界で牙狼に会うなんてびっくりなんだけど。もしかして神様に会った系転生?」
有名ランカーの牙狼が俺達の課にスカウトされてないってのは、もしややらかし神に掻っ攫われた系の可能性ですよ。うん。
「神様? 神様…、あ、もしかしてあの声か? 光が最高に強くなった時に、リアル魔王ゲットだぜ!って一瞬聞こえたかもしれない。」
「あ、間違いないわ。」
…そーいや、牙狼って俺と同じく隠しイベのレア称号『魔王』持ちだったよね。まさかの魔王ピックアップで神引きされたのか…。哀れなり…。
「…そうか、アレは神の声か。ところでサイはいつこちらに転生したんだ? それに見た目もあちらと同じなんだが?」
「え、俺?」
…あー、これ言っていいのかな?
「…ちょっとだけ待ってもらっていい?」
「ああ、いいぞ。」
スマホを取り出してメッセする。
牙狼には悪いがこれは筆談で。
『今の聞いてた?』
『聞いてた。マジびっくり。魔王、まさかの牙狼さんかよ。』
『まさかの、だよな。それより牙狼が転生してた件、今すぐ課長に口頭報告して。あと俺達の事情を話すかどうか判断仰いで。』
『りょ!』
いくら牙狼がフレでも、お仕事には守秘義務ってやつがあるんだなぁ。
<次回予告>
始まりの大地から溢れた魂。だが彼らの運命は交わった。
輪郭のブレた魂は掬い上げた手に泣く。
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