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第三十一夜 紡ぐ者達

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第三十一夜 紡ぐ者達



カラーンカラーン

 突然呼び鈴が鳴った。誰か来たようだ。
 戸口につけられたドアカメラ的魔道具に映るのは勇者君。「おはようございます!」と朝から元気に俺達の部屋にやってきた。
 おっと、監視すんの忘れてたぜって、…まだ朝七時だが? 夏休みの小学生かな?

「おはようございます、勇者様。まだ集合時間じゃないですけど…、何かありました?」

「えっと、あの、俺、勇者様と手合わせしてみたくて…。良かったら俺も朝の鍛錬に混ぜて貰えればな…、って。あ、もしかしてちょっと遅かったですか?」

 おー、真面目か!
 確かに勇者君、いつも(起きれる時は)早朝朝練してたな。

「ふふ、大丈夫だよ。実は昨日遅くまで打ち合わせしてたから、今日はまだ、ね。今、準備させるからちょっと待ってて。」

 4時間くらいしか寝てないエルには悪いが、真面目で可愛い後輩勇者の為、勇者活動開始して貰おうな。
 エルフ様の聖地に入室恐れ多いッとひれ伏し入室を拒む勇者君を宥めすかしリビングに招き、エルを起こしに寝室に向かった。

「エル~、起きろ~。勇者君が遊びにきたぞ~。」

「………へ?」

 突然布団を引っぺがされ叩き起こされたエルさんはまだ焦点が合っていないようです。ですよねー!
 有無を言わさず状態回復魔法をかけて、口にスタミナ回復薬を突っ込んでやった。

「え?! 何この強制回復?! 俺、じつは死んでた?!」

 急激に強制元気にされたエルが慌てて辺りを見渡す。

「おはー。死んでないよー。ほら、装備整えてー。」

「え? 何? は? 」

 寝ぼけエルが現状把握する前に装備を着けさせ、腕を引っ張ってリビングに押し出した。

「おはようございます! 勇者様! 朝の鍛錬と手合わせ、どうぞよろしくお願いします!」

 バッとソファーから立ち上がり、キラキラワクワク笑顔で勇者君がエルを出迎えてくれた。
 はいっ!寝起きドッキリ完了!
 今日も頑張っていこう!
 
「…オー、マイ、ガ…。そんな寝起きドッキリある…?」

「勇者と言えば朝鍛錬はテンプレだろ? 先輩?」

 俺を半眼で見る先輩勇者エルさんに、サムズアップで答えてやった。
 エルは物凄い渋面をした。

 キラキラワクワク勇者君にがっちり拉致られ、勇者エルは朝練の旅へ旅立った。強くなれよ!
 そこから思いつきで王子の部屋に残りのメンバーを呼び出し、キラキラワクワク勇者君にはあまり聞かせたくない系の仄暗い打ち合わせや駒になりそうな人物の情報共有をした。平和の為とは言え綺麗事だけじゃ収まんないし、年若い彼らにはある程度の虎の威が必要だからな。俺はオッさんだけど…。
 そして1時間くらいすると筋肉旅から勇者ズが帰還した。よくわからんがなんかめっちゃフレンドリーになってた。拳と拳で語ると心友しんゆうみたいなヤツかな、あれ…。
 朝からバタバタだったが、チェックアウトまでにはなんとか準備はできた。
 
「皆さん、揃いましたね。」

「「「「ハイッ」」」」

 うん、良いお返事ですぞ。さあ気合い入れて行こう。

「まずは全ての始まりの地、アウサリア王国。王子、よろしくお願いしますね。」

「ああ、アウサリアは俺の国だ。任せてくれ。」

 王子はニカッと男らしい笑顔を浮かべ胸を張った。

「アウサリア王国の後、全員で教会総本山のハルトリア、学術都市の魔術塔へ順に挨拶へ周り、一度アウサリア王国に。そこからは各自の持ち回りとなります。」

「打ち合わせ通りってヤツね。いいぜ。」
「私も問題ありません。」

 魔法使い君も神官君も大丈夫そうだ。

「あ、俺は…?」

 勇者君だけポカーンとしてた。あー、そういや勇者君は朝の打ち合わせにいなかったもんな。

「勇者様は俺達と一緒に行動ですね。ふふ、呼ばれれば何処にでも行く何でも屋のお仕事ですよ。」

「何でも屋! うああ、なんか楽しそう!」

 楽しそうで何より。ま、勇者君は顔を売るお仕事だからそれでいい。悪く言えばなんだが、交渉事に立派なお飾りは非常に大事なのだ。イチオシ商品でも目立つパッケージがなかったら、ショボくて誰も買わないだろ? 

「では、行きましょう。エル、転移を。」

「オーケー。」

 エルのテレポーターでアウサリア王国へ飛んだ。王子が居てくれたおかげで城の玄関ホールにバシッと到着。ただ、突然ホールに現れてしまった為、たまたま現れた近くを掃除してたメイドさん(男)が腰を抜かし、内側に詰めていた衛兵さんが一瞬パニックになる事態に…。お騒がせしてごめんなさい…。
 王子がなんとか場を納め、近隣にいた侍従に繋ぎを取り王様に謁見を申し入れた。待つ事わずか数分後、護衛を伴った侍従長が現れて恭しく謁見の間まで案内してくれた。

 謁見の間で待ち構えていた王様は、王子と似た金髪キラキライケオジで結構気さくな人物だった。

「おかえり、我が息子よ。皆も長旅ご苦労だった。」

 王は俺達が臣下の礼でひざまずこうとしたのを止め、にこやかに玉座から降りてきて王子をハグした。一瞬側仕えや近衛兵の方々があー、あー、王様困りますーみたいな顔で狼狽えていたが、王様はウィンクひとつで黙らせた。

「父上、ただいま戻りました。と言ってもまだ本懐は果たしておりませんが…。父上ではなく、アウサリア王へご報告に参りました。」

「え、パパじゃなくて、王に? …ふむ、では聞こうか。おい、椅子をもて。私の分もだ。」

 普段はパパ呼びか…。いや、呼び名はご家庭の都合ですから偏見とかはないですけどね。みんなの前でパパになっちゃダメでは…?

 鶴の一声に侍従さん達や騎士の皆さんが慌ててソファーやらローテーブルを抱えて急拵えの応接セットを作ってくれた。勿論、お茶セットも出た。プロや…。

「さあ聞かせて貰おう。」

 ドンと構えた王様に王子は和平のかくかくしかじかを報告した。

「ほう、魔王とそんな事に…。」

 一通りを聞いた王様は顎を撫で思案顔になる。

「アウサリア王、私はこの和平に賭けてみたいのです。私の手札は勇者二人。更にまだ完全には準備は整っていませんが、次代の神官長と魔術会第一席。」

 王子は手の内にある勝負札を晒し、王様にを吹っ掛ける。

「失礼ながら、王子。それで賭けに勝てると?」

 王より先に声を発したのは宰相さん。痩せ気味の神経質っぽいいかにもなのインテリイケオジだ。
 王の横に立ち銀フレームの眼鏡を光らせ物言いをつける。

「いや、思わない。手札だけ持っていても賭けのテーブルに入れて貰えないだろう? 賭けにはベッドするコインが必要だ。王よ、貴方の力を、世界をベッドしたい。」

 王子は大風呂敷を広げた。世界か~、言うねえ~!

「ふははは、なんと強欲な。まさか天使のように清廉だった可愛い末の子がここまで私のすねを貪り齧るとはな。面白い。よし宰相、お前の脛も出せ。まだ肉がたんまり残ってるだろう?」

 王様は大笑いで膝を打ち、宰相は呆れ顔でメガネをクイっと押し上げた。

「…全く、この王家の方達は。私の脛はあなた方に齧られすぎて枯れ木の如くですよ? …私はにはビタ一文も払いませんので、お膳立ては完璧によろしくお願いいたします。」

「ふ、お前は手堅く勝つのが好きだからな。では王子、私から一枚泣く子も黙る鬼札を出そう。ジェラルド!」

 王様はパチンと指を鳴らして、ジェラルドさんとやらを呼ぶ。

「はい、ここに。」

 スッと厳つい黒い軍服に身を包んだ壮年の騎士が一人こちらに来る。魔王のアサヒ並みにゴツいボディーだ。

黒龍こくりゅう騎士団大将ジェラルド、今から其方は青狼せいろう騎士団へ転属。第三王子付き参謀とする。尚、大将権限はそのままで良い。思う存分、使える物は使ってやれ。不敗将軍の名に恥じぬようにな。」

「御意。しかし不敗将軍とはまた懐かしい。その名のおかげで賭けのテーブルには呼ばれなくなりましたな。」

 ジェラルドさんは片膝をつく騎士の礼をとった後、顔を上げてニヤリと笑った。

 …うん? 不敗将軍って賭け事の話?

「ははは、あの天幕で私からも随分絞り取ったのだから仕方なかろう?」

「何、戦さもカードも総取りせねば騎士の名折れですからな。はっはっはっは。」

 あっ、これは戦争ジョーク的なやつか。って言うか戦勝報酬で賭け事すんのかよ、ここの王様。どんだけギャンブラー…。

「ジェラルド、いやジェラルド参謀。私に貴殿の勝ち筋を見せてくれ。よろしく頼む。」

 おじさんズの過去の栄光話をぶったぎり、王子が王子らしくキリっとキメる。

「御意。このロートル、粉骨砕身にて付き従いましょう。」

 王子 は 不敗将軍 を ゲット した!


 そこから軽く雑談し、一度神官君と魔法使い君の拠点に出向くと伝えてアウサリア王国を出た。ちなみにジェラルドさんも昔馴染みへ挨拶がてらお付き合いしてくれている。

 またもやエルのテレポーターで、教会総本山のハルトリア、学術都市の魔術塔と順に周る。
 教会トップの大神官長は光の腹黒狸おじさん、魔術塔トップの元老長は闇の狡猾狐おじさん、そんな油断ならない奴らだったが、実は戦場仲間だったジェラルドさんの口利きのおかげで初動は悪い方には転がらなかった。うん、掴みヨシ! 
 他、目星を付けていた何人かにも渡りをつけ、再びアウサリア王国に戻った。




<次回予告>

運命の采配に配られた札。
百戦百勝の勝ち札か、さてまた絶体絶命の負け札か。
次回、山師の血に。『第三十二夜 鬼札』
お楽しみに。

サイ「明けましておめでとうございます。今年も宜しくお願いします。…三が日全部休みって都市伝説ですか?」

※次回予告はあんまり本編に関係ありません。
が、今話の更新日が1月1日なので締めコールは新年のご挨拶でした!

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