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第三十六夜 羽化

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第三十七夜 羽化



「前衛、俺が支える! 神官君、君も前衛だ!パワーでぶっ潰す! 魔法使い君は精霊系魔法でいくぞ! …ジェラルドさん、悪いが騎士はこのまま撤退してくれ。」

 俺はジェラルドさんにペンダント型の結界アイテムを手渡す。

「これ気休めだけどお守り。殿しんがり任せました。」

「…エルフの兄さん。…すまん。」

 少し情け無い表情でジェラルドさんが俺の手をギュッと握る。…おぁ~、痛いですぅ~…、騎士の握力ヤバいですぅ~…。

「…救援要請は?」
「不要!城でディナーの準備でもしててくれ!」

 ふふっ、朝メシ前ならぬ晩メシ前ね。

「あい、分かった。酒盛りの準備もしてやるさ。隊長連、砦全体に伝令ッ!総員退避ッ! 人っ子ひとり残すなッ! 年寄りのひとりでも残したら、地獄の王妃訓練に突き出すぞッ!」

「「「ハイッ!!」」」

 ジェラルドさんと残っていた騎士さん達が一斉にコチラに敬礼をし、目的を果たす為凄い勢いで走り去って行った。

「ははは、そんな気にしなくていいのに。つーか、地獄の王妃訓練って。」

「…エルフ様、」

 勇者君がおずおずと声を掛けてきた。
 その顔色は大分悪かった。

 …ああ、そうだな。ちょっと俺の采配ミスだわ。

「…うん、さっき構えろって言ったけど、勇者君達も撤退して大丈夫だ。出来れば撤退しつつジェラルドさんの手伝いに回って欲しいかな。神の加護の無い状況で戦うのって、神官君はパンイチ(※パンツ一丁)で戦うようなもんだしね。パンイチはさすがに可哀想すぎる。あ、俺達は大丈夫。加護無しでも笑える程めっちゃ強いから。」

 軽口でやんわり逃げ道を作ってやる。
 まだ看破が通らない現状、あの神とやらがどんな強さかわからない。この世界の魔王に毛が生えた程度ならエルがパンイチ余裕ですがね…。
 でも…、もし中の人のアサヒこと牙狼ステータスだと俺達もかなり分が悪いんだなぁ。上位ランカー相手にしながら背後のお守りはちょっと無理です、はい。

「…え? エルフ様がパンイチ…?戦うエルフ様が身に付けるのはおぱんつ一枚…だと? え、それどんなシチュ? いや、それもそれで神々しいのでは…?!」

 おいお前、今の文脈から何を読み取った…?

「…えっと! パンイチとかそう言う話じゃなくて、あの…、俺達頑張ります!勇者の名に賭けて絶対勝ちます!! …ご指導お願いしますッッ!!」

 勇者君はバッとお辞儀し、またエルの側に、仲間の元に戻って行った。勇者君が手を挙げると仲間達も勇者君の手を叩き決意も新たにしたようだった。

 …くぅー! アオハルかよーーーッ!!
 こんなん高校最後の試合前の監督気分だわーーーッ!!

「…サイ、そろそろ始まりそうだよ。すっごいバクバクしてる。」

 エルがアサヒだった黒い球を指指す。
 …確かに。今は荒れ狂うように秒を刻む速さでバクバクしている。

 うう、これエイリアン系のパニックホラー映画みたいで正直無理な絵面だ…。絶対あの中からなんかヌルぅってグロ生物出てくるヤツぅ…。そのテンプレはやだぁ…。

「進化するラスボスって羽化すんの好きだよね…。エル、あれ開幕前に焼き払っていいかな?」

「…あー、サイ時間切れ。…始まるぞ!! 」

 全員が武器を構え戦闘体制にはいる。
 さて、まずは強化かな。各種精霊さんオネシャース、と指輪に力を込める。同時に看破の詠唱をアタマの中でスタートさせた。

 ドロリと黒い球から羽化が始まる。

 硬い殻に覆われた手らしき物が球を破り徐々に体を捻り出してくる。まだ実体は黒すぎてわからないが、ゴツゴツした殻に覆われているフォルムが甲虫系っぽい。
 …ムシ系ボスはナイミリにもいたが、まさかアレと同じ現代人を阿鼻叫喚させるGなアイツではないよな…? (悪寒)

 しかし羽化したのは、例のG…、ではなかった。
 
 魔剣士ランキングでほぼ最高位に立つ、ナイミリの『魔王』と呼ばれた男。ある意味Gの名を持つ者…、いやなんでもない…、


「…クソ、マジで中の人はアサヒかよ!!」
「うわ…、ガチの牙狼さんじゃん…。」


 魔剣士の最高レア装備に身を固めた牙狼ことアサヒが目の前に現れた!

 
『新しい世界の幕開けである。』


 アサヒが口を開くと同時に看破が通り、敵ステータスが脳内にざっと表示される。
 

NAME:神(自称)、・マ。シ・ユ・ァ・?ヲ・タ。シ・ッ・?。・、。ヲ・ユ・螂「・ケ
RACE:神(自称)、魔族
JOB:魔剣士、繝輔か繝ュ繝シ謗ィ騾イ隱イ
GENDER:男性

TITLE:魔王、?鴻????
SKILL:魔剣技威力上昇、闇の衣、闇召喚、隠密、毒無効、暗闇無効、…、…、…、…、

MESSAGE:嫁しか勝たん。推して参る。


 うえ、脳内なのに一部文字化けしてんだけど…? 多分看破失敗って事だと思うが、脳内にも文字コードってあるん??
 つーか、(自称)って何だよ…。そんなの初めて見たから。と言うかこの看破画面、絶対いつもの敵ステータス看破の画面じゃないよな? いつもはもっと単純に、HPMP属性や状態とか戦闘ネタしかなかったが??

 ……どう見てもナイミリのフレ簡易プロフィール画面じゃねーか! 最後のメッセージ欄、前世の誰かさんと全く同じ気がしますけど?!

「…サイ、どう?」

「ん?! あ、すまん。ちょっと看破が微妙な結果で…ええと、やっぱり対魔剣士戦だ。闇方面は通らないが、エルの力のゴリ押しいける。前衛、バフるからガンガンいけ。魔法使い君はステイ。使えるバフあったらバフに集中。」

 ざっと指示を出し、対闇のバフや身体強化を手早くかける。魔法使い君もスピードアップ系などが使えたらしく同じようにかけていく。

「おっしゃ! いくぞ!」

 強化が十二分に入ったエルが前衛と共に飛び出していく。タンクに神官君を置いてスイッチで攻めるようだ。

『愚かな…。ーーー闇の衣。』

 出たな、闇の衣!
 魔剣士の闇の衣スキルってやつは、打ち込んだ物理攻撃が当たり所が暗かった為、当たり判定を有耶無耶にされちゃうスキル。完全物理無効ではないが、当たり判定がすこぶる厳しいので結構無敵スキルである。
 盾装備不可の魔剣士(ちな魔剣士は魔法剣士の上位ジョブよ!)ならでは防御補助スキル、と言ったところ。

 が、ちゃんと対処ありますから~。

「…光の司、闇を喰え!『ダークイーター』」

 ピカピカにひかる光の精霊が闇の衣に食いつき闇に穴をあけていく。神官君も対闇アイテムの代表格、聖水を振り撒き光の精霊の援護をする。
 
 ふふん、美味しくいただくぜ! 闇の衣!

『ほお、ただのゴミムシかと思いきや、異分子が紛れ込んでいるようだ。』

 魔剣士虎の子の闇の衣を剥がされたが、神(自称)は不敵にもニヤリと笑う。

「はっ、神とやら! 笑ってるヒマじゃないぜ!」

 エルがフルスロットルで打撃を打ち込み始めた。しかし神(自称)は慌てる事なく多分魔王の魔法かスキルで防御壁を張った。

「くそっ、やたら固いな!」

 エルの攻撃の切れ目に王子君と勇者君も攻撃するが全く通らない。
 …だがまれに何処かがバキンバキンと割れる音がするので、完全に物理無効の障壁ではないのだろう。

「よし。魔法使い君、アレに何個か岩ぶち込んで。」

 ちからイズパワー戦法だ。魔法も岩ならある意味物理。ガンガンぶつけてくぞ。

「はっ、お安いご用すぎっ! 串刺しにしてやるっ!!」

 魔法使い君は土魔法を展開し、前衛とスイッチで無数の岩の槍を集中砲火させる。障壁は少しずつバリンバリンと壊れていく。

『つまらぬ真似を。』

 神(自称)は剣を抜く。

『恐れよ、旧世界のゴミムシ共。我が力の奔流を見るがいい。』

 おっ、もしやアレがくるな?

「下がって!!」

 急いで防壁を展開する。

『闇の衝撃。』

ドゴォォンッ

 防壁に重く激しい衝撃波がぶつかり、次いで跳ね返された岩の槍が次々と地面に刺さり足元に振動がドスドスと伝わる。

 …ふぅ、あぶねーあぶねー。

 あの闇の衝撃は、剣から衝撃波を飛ばす遠距離攻撃スキルでもあるが、カウンタースキルの一種でもあるんだよな。今みたいに岩の槍や弓矢など集中砲火を浴びた時なんか特に効果覿面てきめん。衝撃波でフルで跳ね返す。マジおっかねえ。

「よしッ、耐えた! ヤツはしばらく闇の衝撃は打ってこない! エル、物理で叩け!」

「オッケー!! バチボコにしてやんよ!!」

 中距離タイプの魔剣士戦のセオリー通り、エルが距離を詰め物理殴りに走った。前衛組もそれに続く。
 さて俺達魔法組は何をするかって言うと…、

「…(魔法使い君、俺達は嫌がらせだ。魔法は直接当てないで。中級魔法を掠らせてヤツの攻撃タイミングを崩すのに全振り)」

 後ろにいる魔法使い君にコソッと指示する。魔法使い君は頷き、エル達前衛組にあわせ当たるか当たらぬかの場所に魔法を打ち込んでいく。
 
 剣と魔法の二刀流、それが魔剣士たる所以。
 回復こそ使えないが魔法戦も物理戦もいけるオールラウンダーでいいとこ取りに見えるが、実のところソロには向いていないジョブ。魔法は詠唱などタメが必要で、剣と同時に繰り出すのは少々厳しいからだ。最低でも前衛タンクがいないと…、

 ただの剣士か魔法使いなんだなぁ~。世知辛い。

 エルのハイパー素早さ鬼攻撃でも充分効果あるんだけど、魔法使い君の撹乱かくらん追い討ちで魔法詠唱封じってわけ。まあコレ、ナイミリのボス魔剣士戦の王道なんだけどね。

「勇者っ、そっちいくぞ!!」
「任せてっ! せいっ!」

 しばらく押せ押せで俺達有利に戦闘が進んだが、与えるダメージに関してはイマイチだった。最大戦力であるエルも奮闘してるのだが、多分アサヒがナイミリ時代に取得していた打撃耐性スキルで思ったよりダメージが通らないっぽい。
 せめてゲームみたいに敵HPゲージとか見えれば、潰しがきく大技に踏み込んでいけるのだが…、
 
 …いや、そうじゃないな。

 何かのピースがハマってない気がする。
 勿論対人のリアル戦闘で、ゲームみたいにセオリー通りいかないのは百も承知だ。しかしそのセオリーをおさえておく意義はある。セオリーとは事実や観察に基づいた仮説を指すのだから、


「…あ、待って。違う。…違う!」


 セオリー通りの、これ自体間違い…で、

 だってコイツ、いくら魔法封じされているとしても、いまの今まで魔法攻撃の動作なんかひとつも取ってない。と言うか、魔法云々と言うより攻撃動作なんて闇の衝撃だけしかしてない。全て、防御に付随した攻撃だけ。
 
 …これって、

チャラチャラチャラーン♪

「んんっ?!」
「あっ!」
「えっ、何、電話?」

 突然鳴り響く着信音。from俺の鞄。
 エルと勇者君が驚いた顔で振り返る。釣られて残りのメンバー(神も含む)もコチラを振り返る。


 えええええ?! なんで今電話くんの?!


「あっ、あっ、お気になさらずーーーッ!!」

 バッと鞄に手を入れ、スマホのボリュームダウンボタンをガチ押しする。
 うああああ! 音、止まれーーーッ!!

チャラチャラチャラーン♪ 
チャラチャラチャラーン♪
チャラチャラチャラーン♪


 音、全然止まらんのだが…?(震え)


「…エ、エルフ様、あの、電話(?)出た方がいいと思います。急ぎの要件かもしれないし。」

 全く鳴り止まぬ着信音に現代人勇者君がソワァとしながら進言してくれる。

『…許す。』

 何故か神(自称)からも促される。

 完全に重要会議中やらかした人になってしまい、ガチで心が死にそうです…。うおおお、マナーモード仕事してぇ…!

「…す、すいません、ちょっと席外します。あのソチラは進めて頂いて結構でございますので…。」

 アホみたいに鳴るスマホを握りしめ、苦笑いしながらかなり後方まで後退ったのだった…。クッ、コロ…!




<次回予告>

新しき神は羽化する。地に這うムシを踏み潰す為。
だが彼らは有象無象のムシケラではない。人なのだ。
次回、思惑に、『第三十七夜 やさしくむずかしい』
お楽しみに。


サイ:「えー、今回は締め台詞おやすみで! 本日のあとがきは特番枠です! …って事らしいよ。まあ、あの頭おかしい台詞じゃないのいいと思うわ。」

エル:「へえ、特番枠ねぇ。長すぎて泣く泣くカットしたバトルシーンを大公開。え、これ需要ある?」

勇者君:「勇者様そんな事言わないで! 俺達この話の中だと空気扱いなんですから、たまには活躍させて下さい!では、『あの時俺達が戦っていたらこんな感じだった?!』スタート!」


ーーーーーーーーーーーー
(以下、今話の闇の衣あたりからのスタート)


「おっと、全員俺の後ろに退避!」

 俺は急いで対衝撃の防壁魔法を展開する。

『闇の衝撃。』

ドゴォォッ!!

 思った通りの強い衝撃。勿論、俺の防壁はしっかり爆風を防ぎ、跳ね返ってきた魔法使い君の岩の槍が周りに突き刺さる。
 ま、やると思ったぜ、魔剣士殿!
 ぶっ飛ばす系の闇の衝撃は攻撃ってよりは跳ね返すカウンターに近いからな。さっきの集中砲火はまさに使い所だ。

「奴のクールタイム(※次のスキルや特殊攻撃までの待ち時間)90秒! 前衛、いってこい!」

「「「「いくぞ!!」」」」

 さて我々後衛もいきますぞ~!

「魔法使い君、ランダムに土壁を生やして! 相手を塞がない程度に!」

 地形をランダムに隆起させ直線ぶっ飛ばし攻撃対策すんよ!
 魔法使い君がうらぁと雄叫びを上げながら土壁を生やしてる間に、俺は次の一手としてアイテム召喚獣のミニデーモンを準備。
 コイツは一分間だけ無差別に四属性の初級魔法を敵にぶつけまくるBOT型召喚獣だ。弱点が魔法の敵に使うのが本来の使い道だが、実は弱点がわからない時にあえてぶつけて、魔法が有効とか弱点属性炙り出しにも使える裏ワザ的一品。(尚、うっかり魔法反射の敵だと一分間痛い目にあうぜ…)

 で、そのミニデーモンを今から放流しまーす。
 魔剣士は闇魔法は無効だが、一応魔法は通る設定ではある。さて神(自称)さんに魔法は通用するかな?!

「ミニデーモン召喚。対象、敵魔剣士。」

 ヌルンと発煙筒っぽい見た目の召喚具から飛び出たミニデーモンが神(自称)に向かってポンポン魔法を放ち始める。…おー、久しぶりにファイアーボールとかみたわ。めっちゃちっさいな。

 …はい、では結果発表ー。

 マジックキャンセラーの鎧っすね、あれ。初級魔法なんか効かないわ。

 そう言えばアサヒの鎧は高火力の魔法しか通らないって本人が超自慢してた。なんてったってレア称号『魔王』のご褒美装備だからな…。
 でもあの鎧って事は…、『高火力』なら通るってこと!

「エル、手数増やして! 神官君はこっちに!」

 加護力パンイチ神官君も出番だぜ。

「…神官君、いま魔力たっぷりだよね?」

「ええ、はい。今のところ自身の身体強化程度にしか使っておりませんから。」

「ん、オッケー。神官君、魔力譲渡役任せた。ここから魔法使い君がガンガン魔力使うから、都度譲渡して。前衛の守りは俺が担当する。」

「…え?魔力譲渡役?! …こ、こんな場面に?!」

 ふっ、こんな場面に使うのさ!

 休めないつらい時に…、
 使いすぎと思った時に…、
 もう飲みたくない時に…、

 (魔力回復薬)飲み過ぎ胃のもたれ、辛くなる前に早めの魔力譲渡!

 液体の回復薬はマジで胃がしんどいから。全回復、胃に負担がかかるので一日一回で勘弁して下さい。からの対人魔力譲渡。今回は誰でも使用可能なアイテム経由だぜい。
 いやあ、空気みたいに魔力吸い取れる魔力譲渡サイコウ!

「…あの、本当にここで魔力譲渡を? 確かに彼に分け与えるのは私が適役ですが…、まさか衆目のさながらとは…。あと都度と言うと、私は、その、早く数をこなせる方では、……ああ、いけません、破廉恥な言葉しか浮かびません!!」

「え、はれんち??」

「さすがに魔力譲渡の公開青姦は難易度が高すぎます! エルフ様!」

 おーまいがー………、

 この世界の魔力譲渡、体液(精液)摂取タイプだったわ…。そんなん強要する俺ってただのセクハラ野郎じゃん!

「あっ!違う!! アイテムで譲渡だから!! 体液は不要だから!!」

「…ア、アイテム? ま、まさか…、性具を使用するんですか?!」

 ああああああ!!もーーーーッ!!!!
 これだからエロベースの世界はーーーッ!!!!
 
 久しぶりに敗北床ドンした…。

「…いや、性具じゃないから。黙ってこの腕輪嵌めて。魔力譲渡の時、相手の背中に手を押し当てると腕輪を介して魔力が移動する。触れてる間ずっと流れ続けるから気をつけて。」

「…そんな魔力譲渡の仕方があるんですね。驚きました。まあ公開青姦も吝かでは、」
「おいっ! 教会ヤロー、何グダグダ喋ってんだよ! エルフ様、そろそろ手を貸してくれ。ちょい休みたい。」

 土壁連発して少しヘロった魔法使い君がキレてきた。
 あっ、魔法使い君ごめんな。ちょっとこの世界の常識に敗北してたよ。

「オッケー、これ魔力回復薬。休んだら次、魔法戦やるから何個か極大魔法の構成、そこの神官君分の魔力込みで何本いけるか想定してて。」

 魔法使い君に500mlくらいの魔法回復薬の中ボトルを渡し、神官君にお世話を任せて俺も戦線に復帰する。

 前衛組は魔法使い君が作った土壁を盾や足場にしながら神(自称)と戦っていた。特に身軽なエルの動きに中距離攻撃型の魔剣士的な間合いが詰めにくいのか、神(自称)は防戦に回ってあまり攻撃に出てこれない。
 
「おっしゃ! 王子君と勇者君、30秒! タコ殴りだ!」

 神(自称)の足元に闇魔法で異空間落とし穴を作る。ヤツはズボッと膝上まで身体が沈んだ。
 ヤツには直接魔法は効かないが地面には効く。即席足枷の一丁あがり~!

「いってこい!」
「「ハイッ!!」」

 飛び出していく二人にガッチガチに30秒分強化をぶち込む。
 さあス◯さん、◯クさんや、やっておしまいなさい!

 前衛組のサポートをしつつ、神(自称)に嫌がらせ魔法攻撃。
 いい感じに嫌な所ギリギリを狙って、神(自称)の攻撃タイミングを狂わせる。

 剣と魔法の二刀流の魔剣士。物理も魔法もイケるオールラウンダーだが、実は剣と魔法の同時攻撃ってのはほぼ出来ない。
 何故なら魔法には魔法詠唱があるからだ。勿論魔法を武器に乗せ攻撃するのは可能だが、まず最初に魔法唱えるがファーストステップ。アタックはその次になる。
 つまり魔法を使う「間」を潰してやれば、魔剣士サマはただの剣士。オールラウンダーの筈が、良いとこ半減ってわけな!

 まあコレ、ナイミリのボス魔剣士戦の王道なんだけどね。


(以上、少し展開は違うがセオリー通りのシーンに繋がります)
ーーーーーーーーーーーーーーー

アサヒ:「今来た。長い。3行で。」

おわり!

以上特番枠でした~
結構いい感じのバトルシーンかなって思ったんですが、このシーンを今話にぶっ込むと8000字(大体二話分のボリューム)以上に…短編か…
ライトなBLアホコメディノベルのボリュームじゃない…
と勇者君達に悪いが活躍シーンをばっさりカットして書き直ししました
更新に間があいたのは全てこのバトルのせい(てへぺろ
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