ゲルトルーネはしとねに語る

えんたくぅ!

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【4】ワイバーン[上]

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幻獣の中に、ドラゴンと呼ばれる種族があります。
それは歴史の長い生き物で、非常に多様化しており一概に特徴としては述べ辛いところがありますが、一般的には鋭い爪や牙を持ち、体は硬い鱗で覆われており、ほとんどの種が非常に大きな体をしています。

エルフを創り出したという、神のような力を持ったヒトがまだ地上に居た頃よりも更に以前はドラゴンが世界を統べていたという文献もあります。そう言った伝承から、まだ歴史が数を刻んでいない程の昔のことを「竜創期」とエルフは呼んでいます。

ワイバーンという、前足に翼膜の付いた空を飛ぶドラゴンがいます。
それは常に世界を飛び続けて、時折天を貫く程の大樹の枝で羽を休め、葉や木の実を捕食する草食の食性です。
しかし数千年に1度地上に降り立ち、その際に食性が肉食になるらしく、家畜やヒトを喰い荒すようになります。
これは脱皮や繁殖の時期になり、動物性蛋白が必要になるからだと言われています。

エルフの一族はワイバーンの降下周期を大体把握しており、予想される時期の50年前後は特に森の奥に居住を移したり、魔法に長けた者が居る所は集落が空から見えないような結界を交代で張り続けるという対策を取っておりました。
ですがヒトは100年生きられない生物の為、長くワイバーンの地上降下の習性を把握しておらず、まさに突然降り立つ天災のように受け止めていたようです。ヒトがエルフと交流するようになった今ではヒトもその習性を理解するに至っておりますが、未だにワイバーンは肉食で獰猛な魔獣であるという認識のヒトは多く存在しているようです。

私から見てもヒトという生き物は、短い命をせわしく生きているように見えます。
それが羨ましくもあり、愚かだとも思い、儚く美しくも見えるものです。
寿命の比率で言ってしまえばヒトがひと夏の昆虫の一生を見るように、エルフから見たヒトの一生というものはあっという間に終わってしまいますが、受け継がれていくものや生きることに対する向上心や意欲は、エルフも見習うべきところは多いかと思っています。

ドラゴンの中でも竜創期から今までを生きているものは俗にエルダーと呼ばれ、言葉を理解したり、話したりするものが居ると言います。
そういったドラゴンは神聖なものとして扱う事も多く狩猟の対象でない場合がほとんどですが、ワイバーン地上降下の際はその地点により、エルフやヒトの生活に重大な損害が出る場合、有害幻獣として駆除対象になります。

私はまだ地上降下の周期に当たった事はないのですが、一度ワイバーンを目の当たりにしたことがあります。
たしか魔法銃での狩猟をまだ始めたばかりの頃、朝の支度をしていると扉を強く叩く音がします。師ウルクドゥラクを中心とするエルフの猟団の仲間の一人、フェルテンという男でした。
少し息を切らせた彼は言った。
「人里にワイバーンが一頭降り立ったらしい、随分怪我人も出ている。腕の立つものや銃を持つものは駆除に出迎えということだ。」

フェルテンは既に背に銃を携えていた。
朝早くから猟場に入っていたのだろう。

すぐに用意すると告げると、うなづいたフェルテンは踵を返しまた走り去った。
フェルテンはエルフとして若いとはいえ1600歳、私よりも随分年上で、ワイバーンの狩猟経験もある。
普段優しい顔しか見たことの無いフェルテンの明らかに焦燥を帯びた顔は、まだ見ぬワイバーンの恐ろしさを私に十分すぎるほど伝えてくれた。
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