3 / 3
第3話【勇者のたまご・魔王のたまご】
しおりを挟む
「リベールシルフィード(ボソッ)」
開店の掛け声と同時にドロシーがラウルに杖を掲げた。
即座にラウルを翡翠色の光が包む。
体が浮かぶように軽くなったのを感じたラウルはドロシーを両手に抱え、入り口のドアを睨んだ。
「いくぞ。」
ドロシーは大事に己の杖を抱き、ラウルに身を委ねる。
ほぼ全ての客がたまごの特売コーナーを目指して走り、また小走りしている。
刹那、西口から入った客は一陣の風を感じよろめく。
まさに風のごときの速さでラウルが人波を縫いながらたまご売り場に迫ったのだ。
魔王アーノはというと、店員にわからないように入り口付近に高圧の重力場を発生させ、他の客の歩みを限りなく遅延させていた。
もともと最前列に近かったのもあって、余裕の表情で売り場に向かっていく。
「いらっしゃいませ!広告の品、特売卵コーナーでございます!」
アーノ一行とラウル達はほぼ同時に売り場についた。
「ふっ、さすがは勇者ということか、このアーノに追い付くとは。」
後ろの側近たちもフフフと笑っている。仲良しか。
「こっちだって装備のメンテナンスとかあるし、食費も切り詰めないとやっていけないんだ。この戦いも負けるわけにはいかない。」
ドロシーは既に自分の分の1個を確保した。アーノの側近たちもたまごを取り始める。
悪の集団とは言えど、1人1個の制約はちゃんと守るらしい。
言い忘れていたがゴーゴンマートは規約違反した者は石にされる決まりがあるからだ。
ラウルとアーノの前口上が終わり、それぞれの取り分を取ろうとした瞬間。
巨大な影が奥の東口から伸びた。
瞬間 特売たまごが恐ろしい速さで消える…いや、食われているのだ。
「な…なんだこいつ!?」
アーノとラウルは顔を上げる。
そこにいたのは千の頭を持つ巨大な狼、魔獣サウザンドケルベロスであった。
アーノも真っ青になっている
「なぜこんなところにサウザンドケルベロスが???」
「ありえない…攻撃力のケタが違う…」
ラウルもそのステータスを目視して頭にGAME OVERの文字が浮かぶ。
サウザンドケルベロスの横からヨボヨボおじいさんが現れ、狼の脇腹をさすりながらヨボヨボと話しかけている。
「よかったのう~ポチや~偶然散歩で通りかかったら好物のたまごが安売りしとって~お前1匹で1000人分じゃあ~存分に食え~」
頭1000個あるけどどこまでがポチなのか全部ポチなのか…いやそんなことよりもこのままではサウザンドケルベロスによって全てのたまごが食べられてしまう!
「お客様!犬は1人に数えられませ」まで話した店員がサウザンドケルベロスに頭から食べられたのを見て戦慄しながらもラウルとアーノは自分のたまごを確保するために手を伸ばすが…伸ばすところどんどんケルベロスに食べられて無の空間になっていく。
残ったたまごはあと2パック。
ラウルは勇気を振り絞って身を乗り出した!
そこをたまごと一緒にケルベロスにグシャアと噛みつぶされた。
ダメージ数を示す数字が999999を表示する。表示限界によるカウントストップを意味する数字だ。
「ラウルーーーーー!」
ドロシーが呼ぶが、返事はない。
ゆうしゃは しんでしまった。(続きます)
開店の掛け声と同時にドロシーがラウルに杖を掲げた。
即座にラウルを翡翠色の光が包む。
体が浮かぶように軽くなったのを感じたラウルはドロシーを両手に抱え、入り口のドアを睨んだ。
「いくぞ。」
ドロシーは大事に己の杖を抱き、ラウルに身を委ねる。
ほぼ全ての客がたまごの特売コーナーを目指して走り、また小走りしている。
刹那、西口から入った客は一陣の風を感じよろめく。
まさに風のごときの速さでラウルが人波を縫いながらたまご売り場に迫ったのだ。
魔王アーノはというと、店員にわからないように入り口付近に高圧の重力場を発生させ、他の客の歩みを限りなく遅延させていた。
もともと最前列に近かったのもあって、余裕の表情で売り場に向かっていく。
「いらっしゃいませ!広告の品、特売卵コーナーでございます!」
アーノ一行とラウル達はほぼ同時に売り場についた。
「ふっ、さすがは勇者ということか、このアーノに追い付くとは。」
後ろの側近たちもフフフと笑っている。仲良しか。
「こっちだって装備のメンテナンスとかあるし、食費も切り詰めないとやっていけないんだ。この戦いも負けるわけにはいかない。」
ドロシーは既に自分の分の1個を確保した。アーノの側近たちもたまごを取り始める。
悪の集団とは言えど、1人1個の制約はちゃんと守るらしい。
言い忘れていたがゴーゴンマートは規約違反した者は石にされる決まりがあるからだ。
ラウルとアーノの前口上が終わり、それぞれの取り分を取ろうとした瞬間。
巨大な影が奥の東口から伸びた。
瞬間 特売たまごが恐ろしい速さで消える…いや、食われているのだ。
「な…なんだこいつ!?」
アーノとラウルは顔を上げる。
そこにいたのは千の頭を持つ巨大な狼、魔獣サウザンドケルベロスであった。
アーノも真っ青になっている
「なぜこんなところにサウザンドケルベロスが???」
「ありえない…攻撃力のケタが違う…」
ラウルもそのステータスを目視して頭にGAME OVERの文字が浮かぶ。
サウザンドケルベロスの横からヨボヨボおじいさんが現れ、狼の脇腹をさすりながらヨボヨボと話しかけている。
「よかったのう~ポチや~偶然散歩で通りかかったら好物のたまごが安売りしとって~お前1匹で1000人分じゃあ~存分に食え~」
頭1000個あるけどどこまでがポチなのか全部ポチなのか…いやそんなことよりもこのままではサウザンドケルベロスによって全てのたまごが食べられてしまう!
「お客様!犬は1人に数えられませ」まで話した店員がサウザンドケルベロスに頭から食べられたのを見て戦慄しながらもラウルとアーノは自分のたまごを確保するために手を伸ばすが…伸ばすところどんどんケルベロスに食べられて無の空間になっていく。
残ったたまごはあと2パック。
ラウルは勇気を振り絞って身を乗り出した!
そこをたまごと一緒にケルベロスにグシャアと噛みつぶされた。
ダメージ数を示す数字が999999を表示する。表示限界によるカウントストップを意味する数字だ。
「ラウルーーーーー!」
ドロシーが呼ぶが、返事はない。
ゆうしゃは しんでしまった。(続きます)
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
魅了が解けた貴男から私へ
砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。
彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。
そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。
しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。
男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。
元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。
しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。
三話完結です。
乙女ゲームはエンディングを迎えました。
章槻雅希
ファンタジー
卒業パーティでのジョフロワ王子の婚約破棄宣言を以って、乙女ゲームはエンディングを迎えた。
これからは王子の妻となって幸せに贅沢をして暮らすだけだと笑ったゲームヒロインのエヴリーヌ。
だが、宣言後、ゲームが終了するとなにやら可笑しい。エヴリーヌの予想とは違う展開が起こっている。
一体何がどうなっているのか、呆然とするエヴリーヌにジョフロワから衝撃的な言葉が告げられる。
『小説家になろう』様・『アルファポリス』様・自サイトに重複投稿。
【完結】精霊に選ばれなかった私は…
まりぃべる
ファンタジー
ここダロックフェイ国では、5歳になると精霊の森へ行く。精霊に選んでもらえれば、将来有望だ。
しかし、キャロル=マフェソン辺境伯爵令嬢は、精霊に選んでもらえなかった。
選ばれた者は、王立学院で将来国の為になるべく通う。
選ばれなかった者は、教会の学校で一般教養を学ぶ。
貴族なら、より高い地位を狙うのがステータスであるが…?
☆世界観は、緩いですのでそこのところご理解のうえ、お読み下さるとありがたいです。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
【完結】あなたに知られたくなかった
ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。
5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。
そんなセレナに起きた奇跡とは?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる