弟は僕の名前を知らないらしい。

いちの瀬

文字の大きさ
5 / 11

5

しおりを挟む
マルセに着くと、いつもは確実に空いてるマルセの全席が埋まっていた。

うちの学校、こんなに庶民いたっけ?

不思議に思って悠汰と顔を見合わせた後に前方に目を向けると、僕の弟に似た男の子がたくさんの女の子と男の子に囲まれて笑っている。彼らはまだ僕たちが入ってきたことに気づいていないようだった。

「雪、あれおと「弟だよね。たぶん。」

食い気味に答えると、悠汰が変な顔で僕を見つめてきた。

「なんで悠汰変顔してんの?すんごい不細工だけど。」

「おいひでーな。どうする?家帰るか?あ、久しぶりにピ○ーラかドミ○ピザで出前取ろうぜ。」

あーあ、どうしてくれんだよ弟よ。
月五千円のお小遣いの悠汰の財布これで空っぽだぞ。
マルセだったら控えめに言って財布の中身半分は残ったのに。
あーあ、かわいそうに。

かわいそうと思いながらも悠汰の考えを否定する気はない。
悠汰、すまぬ。
お前の財布の中身はよく頑張ったよ。これは仕方ないことなんだ。こんどオレンジジュース奢ってやるからな。

悠汰の肩に手を置いて迷いなく首を縦に振った。

「まじかよ。少しは迷うと思ったのに即答かよ。」

「悠汰、こればっかりは僕にはなにもできない。幸村コーポレーション次男を恨んでくれ。なんなら自宅に嫌がらせファックスを送ってくれても構わない。」

「なんで自ら犯罪者にならなきゃいけねーんだよ。取り敢えず帰ろうぜ。なんか寒いし。」

四月の夜は、昼があったかいせいでマフラーを持ってきていない僕たちにはかなり寒かった。

家に着くと、すかさずリビングのエアコンとホットカーペットをつけて、固定電話を悠汰に渡す。
僕は恥ずかしがり屋さんだからあんまりピザ屋さんとかに電話するのはちょっと…////

そして悠汰のすぐそばで出前用のメニュー表を開き、食べたいものをさっと指差す。
これが僕と悠汰のファインプレーってやつか。

悠汰が注文し終わると、二人してソファーで寝っ転がった。

僕が下。悠汰が僕の上。

重い。

僕より全然身長が高くて筋肉もある悠汰が僕の上に乗っている。
普通逆じゃない?

重いよぉぉぉ、

「ぐぬぬ…ぐぅ…」

呻き声をあげると、仕方ねーなーと言って悠汰が僕をソファの上から下ろし、一人で占領し始めた。

仕方ねーなーじゃないよ!!!
ソファの上を独り占めすんな!!!
くそぅ…

悔しくって寛いでいる悠汰の上に勢いをつけてどすんっと乗っかると下から「ぐぇっ」とカエルの鳴き声のような声が聞こえた。

くふふ。とにやにやしながらほくそ笑む。

「おい雪ぃ~、」

あ、やべ。と思ったところで

ピーンポーン

早いけどピザが来たみたいだった。

「雪行ってきて。俺今肋骨折れたから。」

けろっとした顔で悠汰が肋骨が折れたなどと抜かした。本当に折ってやろうかこのやろう。

インターホンのカメラを確認すると、ピザの配達員がいるはずのところに、制服を着た生徒が立っていた。
あれ?弟?っぽいな。

物音を立てないように悠汰の元へ戻り、しーっと人差し指を口の前に持ってきた。

「え?なになに」

「弟くんが、なんか外いるんですけど。」

「まじ???え、お前嫌われてるんじゃねぇの?」

「取り敢えず僕隠れるから悠汰出ろよ!!」

「はぁ?まぁいいけど」

そのまま僕はソファの裏に隠れて聞き耳を立て、悠汰は玄関へ向かった。

「はーい」

ガチャッとドアを開ける音と、悠汰の声がはっきりと聞こえた。

「あの、僕幸村裕一っていいます。斎藤悠汰さん、ですか?」

「あ、そうですけど。」

どうやら弟くんは僕に用があったんじゃなくて悠汰に用があったみたいだ。
もー、驚かせんなよ。

「お母さんから聞いたんです。僕の兄と仲良しだって。でも、なんか雰囲気的に詳しくは聞けなくて…なにか知っていませんか?僕、僕に兄がいるってこの前知って…お兄ちゃんに会いたいんです。名前もわからないなんて、あんまりです。」

え。結局僕?
まじかよー。
まぁ僕の決意は揺るがないがな!!!

お前の兄はここにはいない!さっさと巣へ帰るんだ!!!

頼む。これから僕と悠汰の楽しい楽しいピザパーティーが始まるんだ…さっさと帰ってくれ!これじゃ配達員さん来られないでしょ!

ソファの裏でひっそりと願った。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

たとえば、俺が幸せになってもいいのなら

夜月るな
BL
全てを1人で抱え込む高校生の少年が、誰かに頼り甘えることを覚えていくまでの物語――― 父を目の前で亡くし、母に突き放され、たった一人寄り添ってくれた兄もいなくなっていまった。 弟を守り、罪悪感も自責の念もたった1人で抱える新谷 律の心が、少しずつほぐれていく。 助けてほしいと言葉にする権利すらないと笑う少年が、救われるまでのお話。

私の庇護欲を掻き立てるのです

まめ
BL
ぼんやりとした受けが、よく分からないうちに攻めに囲われていく話。

とある金持ち学園に通う脇役の日常~フラグより飯をくれ~

無月陸兎
BL
山奥にある全寮制男子校、桜白峰学園。食べ物目当てで入学した主人公は、学園の権力者『REGAL4』の一人、一条貴春の不興を買い、学園中からハブられることに。美味しい食事さえ楽しめれば問題ないと気にせず過ごしてたが、転入生の扇谷時雨がやってきたことで、彼の日常は波乱に満ちたものとなる──。 自分の親友となった時雨が学園の人気者たちに迫られるのを横目で見つつ、主人公は巻き込まれて恋人のフリをしたり、ゆるく立ちそうな恋愛フラグを避けようと奮闘する物語です。

嫌われ者の長男

りんか
BL
学校ではいじめられ、家でも誰からも愛してもらえない少年 岬。彼の家族は弟達だけ母親は幼い時に他界。一つずつ離れた五人の弟がいる。だけど弟達は岬には無関心で岬もそれはわかってるけど弟達の役に立つために頑張ってるそんな時とある事件が起きて.....

学園ものに転生した悪役の男について

ひいきにみゐる
BL
タイトルの通りにございます。文才を褒められたことはないので、そういうつもりで見ていただけたらなと思います。

劣等アルファは最強王子から逃げられない

BL
リュシアン・ティレルはアルファだが、オメガのフェロモンに気持ち悪くなる欠陥品のアルファ。そのことを周囲に隠しながら生活しているため、異母弟のオメガであるライモントに手ひどい態度をとってしまい、世間からの評判は悪い。 ある日、気分の悪さに逃げ込んだ先で、ひとりの王子につかまる・・・という話です。

うちの家族が過保護すぎるので不良になろうと思います。

春雨
BL
前世を思い出した俺。 外の世界を知りたい俺は過保護な親兄弟から自由を求めるために逃げまくるけど失敗しまくる話。 愛が重すぎて俺どうすればいい?? もう不良になっちゃおうか! 少しおばかな主人公とそれを溺愛する家族にお付き合い頂けたらと思います。 初投稿ですので矛盾や誤字脱字見逃している所があると思いますが暖かい目で見守って頂けたら幸いです。 ※(ある日)が付いている話はサイドストーリーのようなもので作者がただ書いてみたかった話を書いていますので飛ばして頂いても大丈夫です。 ※度々言い回しや誤字の修正などが入りますが内容に影響はないです。 もし内容に影響を及ぼす場合はその都度報告致します。 なるべく全ての感想に返信させていただいてます。 感想とてもとても嬉しいです、いつもありがとうございます!

幼馴染み

BL
高校生の真琴は、隣に住む幼馴染の龍之介が好き。かっこよくて品行方正な人気者の龍之介が、かわいいと噂の井野さんから告白されたと聞いて……。 高校生同士の瑞々しくて甘酸っぱい恋模様。

処理中です...