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第0章

ジョンは無償の優しさを知らない

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ん?なんだか体がちょっと暖かい。しかも背中がなんだかゴツゴツしている気がする。

「起きたか?」

「うわぁぁぁ!」

目を覚ました俺の前に飛び込んできた光景は、俺を体にもたれかからせたドラゴンが焚き火で肉を焼いている所だった。
あれ?ドラゴンの大きさがさっきと違って半分くらいになってる。

「肉を焼くには俺の体は大きすぎるからな。ほら食え、人間は生肉を食べられないのだろう?」

パニックになりながら手を上下に振る俺を見て相変わらず変な生き物を見る目で俺に説明してくれた。

「あ、ありがとうございます。」

「逃げているかと思えば、意識を失っているとは思わなかったぞ。それに、普通お前くらいの人間の幼子が1人でこんな所にくるはずがない。一体何があった。」

このドラゴン肉くれた上に心配までしてくれるとはなんていいやつなんだ。凡太郎として生きていた時はともかくジョンとしての人生で俺はほとんど他人に優しくしてもらった事がない。だからついつい頬が緩んでしまうしどんな事でもぺらぺら喋りたくなる気分になった。

「俺、実家と住んでる村を追い出されてしまったんだ。こんな小さな体じゃ歩くのに精一杯で、食べることを全く考えていなかった。」

「なんと……。」

「あんたが助けてくれなかったら俺多分もう死んでかも。だから本当に感謝してる。」

「どうして追い出された。」

「俺が魔力無しの穀潰しだからだよ。」

「ん?」

それまでしんみりとした表情で俺の話を聞いていたドラゴンが急に何かを考え出す。

「それは、魔力無しとは、何処で言われたんだ?」

「全国魔力検査だけど。ある年齢に達すれば教会に行って魔力の検査をして得意な属性とかを調べるんだ。」

ドラゴンはさらに考え込む。

「お前は一度都市の大教会で検査してもらうべきだ。」

「え?」

「お前は自分が魔力無しというが、我はお前から強大な魔力を感じる。ただ少し歪な形をしているがゆえにその幼子の体では力を扱いきれず我のような上位生物にしか感知できなくなってしまっているのだろう。」

ええ、そうなの?嘘、俺魔力あるの?
試しに手を前に出してなんかこう、チカラ~デロ~って感じに念じて見るも何も起きず、
ただ奇行をする少年の図が出来上がっただけだった。

「魔力が肉体の中で捻れているんだ。そんなポーズでできる訳なかろう。……はぁ、お前って奴は見ていると妙に色々心配になるな。」

「えへへ、よく言われます。」

「よし決めた、我が今日からお前の保護者だ。ここで捨て置いてもあいつのたれ死んでないか?などとそわそわして眠れんだけだからな。」

さてはこのドラゴンただのいい奴じゃなくてめちゃくちゃいい奴だな?

「いいの?本当に?ありがとう。」

「お,おい人間。お前なぜ泣いている。我が何かしたのか、いいから泣き止め。」

あ,本当だ俺泣いてるわ。仕方ない、家族に友達に、周りの大人に見捨てられて死にかけて路頭に迷っていたジョンはそれはそれは不安で寂しかったのだ。たとえドラゴンでも俺のことを心配だって言ってくれて保護者になってくれる。こんな嬉しい事態に感情豊かな11歳が耐えられるわけがない。

そして俺はオロオロするドラゴンを前に体感30分もギャン泣きし続けた。
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