ド平凡少年は異世界テンプレを知らない

琴浦まひる

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第1章 風の大都市

風檣陣馬

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「プリオル様、こちらになにかあるのでしょうか?」

早速食堂へ向かった俺たちは、室内を探索する魔法部隊の兵士達に話しかけられた。

「いいえ、少し彼に見せてあげたい魔法があって少し広い部屋を使う必要があったの。お願いなのだけどしばらく私達2人だけにしてくれないかしら?」

「勿論です。丁度この部屋は捜索が終わったところですからご自由にお使いください。」

そしてぞろぞろと退出する彼らを見ながらプリオルにこそこそと囁く。

「ここに俺みたいな子供がいるのも今プリオルが魔法を見せるのもかなり違和感あるよね……怪しまれないかなぁ。」

「私の方が立場が上だもの。理由なんか適当でも言うことはちゃんと聞いてくれるし疑問なんて持つはずがないわ。それよりもあれが例の暖炉ね。」

プリオルが指差す先には緻密な装飾が施された立派な暖炉があった。日本じゃ写真や物語でしか見ることがないし、実家の暖炉はかなり粗末だったからすごく新鮮な代物だ。

「うちの兵が捜索しても見つけられなかったということは何か仕掛けがあるはずよ。何か心当たりは?」

「いや全く。」

というかそもそも仕掛けがあることすら想定してなかったや。てっきり普通に横にずらせば動くかと。

「この模様蛇みたいね。」

暖炉を囲むように蔦のようなレリーフが掘られているが、よく見ればプリオルの言う通りそれは蛇だった。元々金属と思われるが、長年使われていないせいでやや黒ずんでおり、まるで絵本の黒い大蛇のようだ。
じっと考えているといつのまにかプリオルが暖炉の中に入り込んで壁を調べている。

「あとはこの文字……封印の呪文だわ。この扉を閉じているのね。」

そしてひと通り満足したらしい煤だらけの少女が暖炉から這い出てくる。

「ふう、これ汚れ落ちるかしら?」

「言ってくれたら俺が探索したのに。」

「こういうのは自分の目で見た方が早いじゃないの。あと多分開け方がわかったわ。多分私1人でできるから貴方は念のため下がっていて。」

「もう!?……分かったよ。」

「諸事情で封印の開け方についてはかなり詳しい方なの。もし気になるならその魔道書にでも聞けばいいわ。」

そういうとプリオルはすぐに俺に背を向けて白魔法を放ち蛇の模様をなぞり始める。

我、大いなる野望を持ちて

かのお方に恭順の意を示さん


はじめの言葉は聞き取れたがその後の言葉は全く俺の知らない言語だった。
気になって彼女の言う通り魔道書を開く。

『特定の魔法を蛇のレリーフに注ぎ込んで呪文を唱える事で封印したり開けたりする仕組みやな。割とああいうタイプの仕掛けは多いで。それにしても蛇に生命力を与えるのがトリガーやなんて趣味悪いわ。』

前から何となく思ってはいたけどこの本すごい関西弁なんだよな。この世界にもこんな方言があるのだろうか?
それにしてもこの封印を見ると本当に大蛇が下にいるのだなと実感させられてしまう。

「そういやプリオルが唱えてた呪文って何語?」

『ジョン……あんさん一体あのシスターもどきの何を聞いとったんや?』

あーはいはいいつも通り辛辣ですね君ってやつは!
さっきのわかりやすい解説はどうしたんだよ。
シスターの話、か。確か……

「封印した時と同じ条件で封印の呪文を逆に一言一句間違えず唱えること。だっけ?」

そうか、逆だから単語として聞き取れなかったのか。

「じゃあ聞き取れた方は?」

『魔法の呪文によくある前文や。魔法を使う対象やその魔法に関する上位存在、または自分自身への宣誓みたいなもんやな。
なくてもいいけどあった方が威力が上がる事もあるで。
勿論封印魔法はそれも含めて完全に詠唱する必要があるからちょいややこしく見えるんよ。』

いや急にすごい説明してくれるじゃん。何、これが鳳凰院くんの言ってたツンデレなの?
それにしても前文か、難しいそうだから後でもっとちゃんと勉強しないとな。

「終わったわ。」

丁度いいタイミングでプリオルがこちらを振り向き、俺も魔道書から目を外して暖炉を見る。


ゴゴゴゴゴ……

重々しい音と共に暖炉の奥に空間が現れる。
狭い通路の中は徐々に下へ向かっているように見えた。


「これは……。」

隣でごくりと唾を飲む音が聞こえる。横を見ると固まった表情のプリオル。

「怖い?手とか繋がなくて大丈夫か?」

「結構ですわ。大体それでどうやってここを進むのよ。それにタルファが待っているのだから一刻も早く行かないと。」

俺の言葉に恐怖から呆れの表情になった彼女は、改めてキリッと前を向いてずかずかと空間の中に入っていった。
差し出した手は置いてけぼりになってしまったが、プリオルがいつもの調子になれたならそれでいっか。と手を引っ込めながら俺も彼女に続く事にした。

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